戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第四話 「盤上の怪物」中編

 

 

 夜の街。

 

 鳴り響く警報。

 

 逃げ惑う人々。

 

 そして。

 

 その中心に立つ少女。

 

 雪音クリス。

 

 身に纏うのは。

 

 ネフシュタンの鎧。

 

 かつて人類が求めた絶大な力。

 

 クリスはその力を使い、ノイズを操る。

 

 破壊のため。

 

 ――そう見える。

 

 だが。

 

 彼女自身の中にある目的は。

 

 それだけではなかった。

 

⸻

 

 少し前。

 

 フィーネの言葉。

 

『争いを止めるには、圧倒的な力が必要なのです』

 

『誰も逆らえない力を持てば、人は争うことをやめる』

 

『あなたのその力なら、世界を平和へ導ける』

 

 その言葉。

 

 クリスは完全には信じていない。

 

 しかし。

 

 否定することもできなかった。

 

 力があれば。

 

 奪われなかった。

 

 力があれば。

 

 守れた。

 

 力があれば。

 

 世界から争いを消せる。

 

 そう思い込もうとしていた。

 

⸻

 

 ビルの屋上。

 

 ブラッドスタークは街を見下ろす。

 

「いやぁ。」

 

「随分と大義名分を背負わされちゃったねぇ。」

 

 笑う。

 

「世界平和のための絶対的な力。」

 

「分かりやすい話だ。」

 

「……。」

 

「でも。」

 

 目を細める。

 

「本人は本当にそう思ってるのかな?」

 

⸻

 

 地上。

 

 風鳴翼が立つ。

 

「雪音クリス。」

 

「その力を止めろ。」

 

 クリスは睨む。

 

「……またお前か。」

 

「その力で何をするつもりだ。」

 

「決まってるだろ。」

 

 クリスは銃を構える。

 

「争いをなくす。」

 

 翼の表情が変わる。

 

「……何?」

 

「私がこの力を使えば。」

 

「誰も逆らえない。」

 

「誰も戦争なんかできなくなる。」

 

 しかし。

 

 クリスはそれ以上を語らない。

 

 フィーネの言葉を。

 

 自分の本当の願いを。

 

 誰にも明かさない。

 

⸻

 

「それが平和だと言うのか。」

 

 翼は刀を握る。

 

「力で押さえつけた世界など。」

 

「真の平和ではない。」

 

「綺麗事だな。」

 

 クリスは吐き捨てる。

 

「力がない奴は。」

 

「そうやって理想を語る。」

 

⸻

 

 激突。

 

 翼の刃。

 

 クリスの銃撃。

 

 ノイズの群れ。

 

 その戦場に。

 

「おっと。」

 

 軽い声。

 

「熱いねぇ。」

 

 ブラッドスタークが現れる。

 

⸻

 

「貴様……。」

 

 翼が警戒する。

 

「また現れたか。」

 

「いやぁ。」

 

 スタークは笑う。

 

「人気者は困るねぇ。」

 

「みんな俺を気にしすぎじゃない?」

 

⸻

 

 翼が斬り込む。

 

 一閃。

 

 しかし。

 

 スタークは軽く身体をずらす。

 

「危ない危ない。」

 

「いきなり斬るなんて。」

 

「最近の子は怖いねぇ。」

 

「ふざけるな!」

 

 翼は続ける。

 

 しかし。

 

 全て避けられる。

 

⸻

 

「へぇ。」

 

 スタークは翼を見る。

 

「君。」

 

「本当に真面目だねぇ。」

 

「でもさ。」

 

「正しいと思うことを守るために。」

 

「自分まで壊しそうだ。」

 

 翼の動きが止まる。

 

⸻

 

「余計なことを。」

 

「そう?」

 

 スタークは笑う。

 

「まあ。」

 

「似たようなタイプは見たことあるからねぇ。」

 

 それ以上は言わない。

 

⸻

 

 そこへ。

 

 銃撃。

 

「邪魔すんな!」

 

 クリス。

 

 スタークは弾丸を避ける。

 

「おっと。」

 

「君も怒ってるねぇ。」

 

「私のことを知ったように言うな!」

 

「いやいや。」

 

 スタークは笑う。

 

「結構分かりやすいよ。」

 

⸻

 

 クリスへ近づく。

 

 しかし。

 

 攻撃範囲には入らない。

 

「世界平和。」

 

「絶対的な力。」

 

「悪くない響きだよねぇ。」

 

 クリスの表情が変わる。

 

「……。」

 

「でもさ。」

 

 スタークは続ける。

 

「本当に世界のためだけなら。」

 

「なんでそんな苦しそうな顔してるの?」

 

⸻

 

「黙れ。」

 

 クリスは銃を向ける。

 

「私は……。」

 

 一瞬。

 

 言葉が詰まる。

 

「私は世界を平和にする。」

 

「そのために必要なことをしてるだけだ。」

 

⸻

 

 スタークは笑う。

 

「そっか。」

 

「なら。」

 

「誰にも言わないんだ?」

 

「その理由。」

 

 クリスの手が止まる。

 

⸻

 

 その時。

 

「クリスちゃん!」

 

 響が現れる。

 

 ガングニール。

 

「またお前か……。」

 

 クリスは顔をしかめる。

 

「バカが。」

 

「何で来た。」

 

⸻

 

「クリスちゃんを止めるため。」

 

 響は真っ直ぐ答える。

 

「だって。」

 

「そんな顔で戦ってる人を放っておけないから。」

 

「……。」

 

「本当にバカだな。」

 

 クリスは吐き捨てる。

 

「何も知らないくせに。」

 

⸻

 

 スタークは響を見る。

 

「いやぁ。」

 

「相変わらず真っ直ぐだねぇ。」

 

「あなたも何なんですか!」

 

 響が叫ぶ。

 

「何をしたいんですか!」

 

「俺?」

 

 スタークは笑う。

 

「俺はただ見てるだけ。」

 

「君たちが。」

 

「どんな答えを選ぶのかね。」

 

⸻

 

 響とクリス。

 

 翼とクリス。

 

 それぞれの信念。

 

 スタークは眺める。

 

「力で平和を作るか。」

 

「誰かと繋がって変えるか。」

 

「一人で背負い続けるか。」

 

「面白いねぇ。」

 

⸻

 

 遠く。

 

 フィーネはスタークを見ていた。

 

「ブラッドスターク。」

 

「余計な存在……。」

 

 彼は。

 

 装者の心に触れる。

 

 しかし。

 

 目的が読めない。

 

⸻

 

 スタークは煙を残す。

 

「今日はここまで。」

 

「まだ答えが出てないからねぇ。」

 

「途中で壊したら。」

 

「つまらないでしょ?」

 

⸻

 

 夜。

 

 nascita。

 

 石動惣一はコーヒーを飲む。

 

「いやぁ。」

 

「若い子って面白いねぇ。」

 

「翼ちゃんは不器用。」

 

「響ちゃんは真っ直ぐ。」

 

「クリスちゃんは……。」

 

 少し笑う。

 

「自分で決めたと思ってる答えに、必死にしがみついてる。」

 

⸻

 

 エボルトは笑う。

 

 今すぐ崩すこともできる。

 

 しかし。

 

 それでは面白くない。

 

 人間が。

 

 自分自身の答えを見つける瞬間。

 

 それを見ることが。

 

 今の彼にとっての楽しみだった。

 

「さて。」

 

「次はどう転ぶかな。」

 

⸻

 

 

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