戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第四話 「盤上の怪物」後編

 

 

 戦いの後。

 

 静まり返った街。

 

 ノイズの気配は消え。

 

 残されたのは。

 

 傷ついた装者たちと。

 

 それぞれの中に残った疑問だった。

 

⸻

 

 風鳴翼は刀を納める。

 

 しかし。

 

 視線は一点から離れない。

 

 ブラッドスターク。

 

 あの男。

 

 戦闘能力。

 

 動き。

 

 そして。

 

 何よりも。

 

 戦場にいながら戦いそのものを楽しんでいるような態度。

 

 全てが不自然だった。

 

「……。」

 

「何者だ。」

 

 小さく呟く。

 

⸻

 

 響はクリスが去った方向を見る。

 

「クリスちゃん……。」

 

 翼が振り返る。

 

「立花響。」

 

「今は追うべきではない。」

 

「でも……!」

 

 響は拳を握る。

 

「クリスちゃん。」

 

「すごく苦しそうだった。」

 

「戦いたい顔じゃなかった。」

 

⸻

 

 翼は黙る。

 

 響の言葉は。

 

 時に危うい。

 

 だが。

 

 時に。

 

 人の本質を突く。

 

「……。」

 

「貴様は。」

 

「なぜそこまで他人を信じられる。」

 

 響は少し困ったように笑う。

 

「分からないです。」

 

「でも。」

 

「困ってる人がいたら助けたいって思うから。」

 

⸻

 

 翼は視線を逸らす。

 

 まだ。

 

 その考えを完全には理解できない。

 

⸻

 

 一方。

 

 廃ビル。

 

 クリスは一人で立っていた。

 

 ネフシュタンの鎧。

 

 その力を見る。

 

 圧倒的な力。

 

 これがあれば。

 

 誰も争えない。

 

 誰も奪えない。

 

「……。」

 

 しかし。

 

 頭に響く。

 

 響の言葉。

 

『そんな顔で戦ってる人を放っておけない』

 

「……バカ。」

 

 吐き捨てる。

 

「何も知らないくせに。」

 

⸻

 

 クリスは自分に言い聞かせる。

 

 これは間違っていない。

 

 この力で。

 

 争いを止める。

 

 世界を変える。

 

 そのためなら。

 

 自分が悪者になってもいい。

 

 そう思っている。

 

⸻

 

 しかし。

 

 その迷いを。

 

 見抜いている存在がいた。

 

「いやぁ。」

 

「悩んでるねぇ。」

 

 ブラッドスターク。

 

「……!」

 

 クリスが銃を向ける。

 

「またか。」

 

「何の用だ。」

 

「別に。」

 

 スタークは軽く手を上げる。

 

「ちょっと様子を見に来ただけ。」

 

⸻

 

「私を笑いに来たのか。」

 

「まさか。」

 

 スタークは笑う。

 

「君、結構面白いからね。」

 

「……。」

 

「自分は世界のためにやってる。」

 

「そう信じてる顔。」

 

⸻

 

 クリスの表情が険しくなる。

 

「本当にそうだ。」

 

「そう?」

 

 スタークは首を傾げる。

 

「じゃあ。」

 

「なんで誰にも言わないの?」

 

⸻

 

 沈黙。

 

「世界を平和にするために力を使う。」

 

「それって。」

 

「普通なら堂々と言うことじゃない?」

 

「……。」

 

「でも君は。」

 

「誰にも理解されないって分かってる。」

 

⸻

 

 クリスは銃を握る。

 

「黙れ。」

 

「そういうところだよ。」

 

 スタークは笑う。

 

「君は強い。」

 

「でも。」

 

「自分の本当の気持ちを隠すのは下手だねぇ。」

 

⸻

 

 クリスは撃つ。

 

 スタークは軽く避ける。

 

「危ない危ない。」

 

「相変わらず怖いねぇ。」

 

「ふざけるな!」

 

 さらに撃つ。

 

 しかし。

 

 当たらない。

 

⸻

 

「君さ。」

 

「本当に平和を望んでるなら。」

 

「一つだけ考えた方がいい。」

 

「何だ。」

 

「その力を持った後。」

 

「誰が君を止めるの?」

 

⸻

 

 クリスの動きが止まる。

 

「……。」

 

「力っていうのはねぇ。」

 

 スタークは笑う。

 

「持ってる本人まで変えちゃうんだよ。」

 

⸻

 

 クリスは答えない。

 

 スタークはそれ以上追及しない。

 

「まあ。」

 

「答えは自分で探しなよ。」

 

「俺が決めることじゃない。」

 

⸻

 

 その頃。

 

 フィーネはブラッドスタークについて調べていた。

 

「不可解……。」

 

 情報がない。

 

 しかし。

 

 存在感だけはある。

 

「装者へ接触。」

 

「クリスへ干渉。」

 

「そして私の計画を把握しているような言動。」

 

⸻

 

 フィーネは目を細める。

 

「敵か。」

 

「味方か。」

 

「それとも。」

 

「第三の存在か。」

 

⸻

 

 nascita。

 

 閉店後。

 

 石動惣一はカウンターを拭いていた。

 

「いやぁ。」

 

「最近は物騒だねぇ。」

 

 テレビから流れる事件報道。

 

 しかし。

 

 彼はただの喫茶店のマスターとして振る舞う。

 

「若い子たちは大変だ。」

 

⸻

 

 もちろん。

 

 その裏側では。

 

 エボルトは全てを把握している。

 

 しかし。

 

 今はまだ。

 

 力を取り戻すための準備期間。

 

 そして。

 

 この世界の可能性を見る時間。

 

⸻

 

 かつての彼なら。

 

 迷う暇など与えなかった。

 

 利用して。

 

 奪って。

 

 終わらせる。

 

 それだけだった。

 

 だが。

 

 今は違う。

 

 人間の選択を見ることが。

 

 面白いと思える。

 

⸻

 

「戦う理由。」

 

「守る理由。」

 

「変わる理由。」

 

 石動惣一の顔で。

 

 エボルトは笑う。

 

「さて。」

 

「この世界の連中は。」

 

「どんな答えを出すのかねぇ。」

 

⸻

 

 

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