戦いの後。
静まり返った街。
ノイズの気配は消え。
残されたのは。
傷ついた装者たちと。
それぞれの中に残った疑問だった。
⸻
風鳴翼は刀を納める。
しかし。
視線は一点から離れない。
ブラッドスターク。
あの男。
戦闘能力。
動き。
そして。
何よりも。
戦場にいながら戦いそのものを楽しんでいるような態度。
全てが不自然だった。
「……。」
「何者だ。」
小さく呟く。
⸻
響はクリスが去った方向を見る。
「クリスちゃん……。」
翼が振り返る。
「立花響。」
「今は追うべきではない。」
「でも……!」
響は拳を握る。
「クリスちゃん。」
「すごく苦しそうだった。」
「戦いたい顔じゃなかった。」
⸻
翼は黙る。
響の言葉は。
時に危うい。
だが。
時に。
人の本質を突く。
「……。」
「貴様は。」
「なぜそこまで他人を信じられる。」
響は少し困ったように笑う。
「分からないです。」
「でも。」
「困ってる人がいたら助けたいって思うから。」
⸻
翼は視線を逸らす。
まだ。
その考えを完全には理解できない。
⸻
一方。
廃ビル。
クリスは一人で立っていた。
ネフシュタンの鎧。
その力を見る。
圧倒的な力。
これがあれば。
誰も争えない。
誰も奪えない。
「……。」
しかし。
頭に響く。
響の言葉。
『そんな顔で戦ってる人を放っておけない』
「……バカ。」
吐き捨てる。
「何も知らないくせに。」
⸻
クリスは自分に言い聞かせる。
これは間違っていない。
この力で。
争いを止める。
世界を変える。
そのためなら。
自分が悪者になってもいい。
そう思っている。
⸻
しかし。
その迷いを。
見抜いている存在がいた。
「いやぁ。」
「悩んでるねぇ。」
ブラッドスターク。
「……!」
クリスが銃を向ける。
「またか。」
「何の用だ。」
「別に。」
スタークは軽く手を上げる。
「ちょっと様子を見に来ただけ。」
⸻
「私を笑いに来たのか。」
「まさか。」
スタークは笑う。
「君、結構面白いからね。」
「……。」
「自分は世界のためにやってる。」
「そう信じてる顔。」
⸻
クリスの表情が険しくなる。
「本当にそうだ。」
「そう?」
スタークは首を傾げる。
「じゃあ。」
「なんで誰にも言わないの?」
⸻
沈黙。
「世界を平和にするために力を使う。」
「それって。」
「普通なら堂々と言うことじゃない?」
「……。」
「でも君は。」
「誰にも理解されないって分かってる。」
⸻
クリスは銃を握る。
「黙れ。」
「そういうところだよ。」
スタークは笑う。
「君は強い。」
「でも。」
「自分の本当の気持ちを隠すのは下手だねぇ。」
⸻
クリスは撃つ。
スタークは軽く避ける。
「危ない危ない。」
「相変わらず怖いねぇ。」
「ふざけるな!」
さらに撃つ。
しかし。
当たらない。
⸻
「君さ。」
「本当に平和を望んでるなら。」
「一つだけ考えた方がいい。」
「何だ。」
「その力を持った後。」
「誰が君を止めるの?」
⸻
クリスの動きが止まる。
「……。」
「力っていうのはねぇ。」
スタークは笑う。
「持ってる本人まで変えちゃうんだよ。」
⸻
クリスは答えない。
スタークはそれ以上追及しない。
「まあ。」
「答えは自分で探しなよ。」
「俺が決めることじゃない。」
⸻
その頃。
フィーネはブラッドスタークについて調べていた。
「不可解……。」
情報がない。
しかし。
存在感だけはある。
「装者へ接触。」
「クリスへ干渉。」
「そして私の計画を把握しているような言動。」
⸻
フィーネは目を細める。
「敵か。」
「味方か。」
「それとも。」
「第三の存在か。」
⸻
nascita。
閉店後。
石動惣一はカウンターを拭いていた。
「いやぁ。」
「最近は物騒だねぇ。」
テレビから流れる事件報道。
しかし。
彼はただの喫茶店のマスターとして振る舞う。
「若い子たちは大変だ。」
⸻
もちろん。
その裏側では。
エボルトは全てを把握している。
しかし。
今はまだ。
力を取り戻すための準備期間。
そして。
この世界の可能性を見る時間。
⸻
かつての彼なら。
迷う暇など与えなかった。
利用して。
奪って。
終わらせる。
それだけだった。
だが。
今は違う。
人間の選択を見ることが。
面白いと思える。
⸻
「戦う理由。」
「守る理由。」
「変わる理由。」
石動惣一の顔で。
エボルトは笑う。
「さて。」
「この世界の連中は。」
「どんな答えを出すのかねぇ。」
⸻