市街地。
夜の闇を裂くように。
無数のノイズが現れる。
人々の悲鳴。
混乱。
逃げ惑う足音。
その中心。
一人の少女が立っていた。
雪音クリス。
手には。
ソロモンの杖。
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「……。」
クリスは街を見る。
この光景を。
本当は望んでいるわけではない。
しかし。
必要なのだ。
世界を変えるためには。
力を示さなければならない。
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その時。
記憶の中の声。
『あなたは迷える子羊ではありません』
『あなたには、世界を変えるための力が与えられているのです』
『その力を恐れる必要などありません』
フィーネ。
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クリスは目を閉じる。
「私は……。」
「やるしかない。」
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第二課。
警報。
「ノイズ反応!」
弦十郎が叫ぶ。
「市街地だ!」
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「響!」
翼が呼ぶ。
「はい!」
「翼さん!」
響はガングニールを纏う。
翼も天羽々斬を展開する。
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二人は戦場へ向かう。
そこで待っていたもの。
ノイズ。
そして。
クリス。
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「クリスちゃん……。」
響の声が震える。
「どうして……。」
「またノイズを……。」
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クリスは振り返る。
「来るな。」
「バカ。」
「これは私がやることだ。」
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「やることって……。」
響は悲しそうな顔をする。
「クリスちゃん。」
「本当にこれが望んでることなの?」
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「……。」
クリスは答えない。
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翼が前へ出る。
「雪音クリス。」
「その杖。」
「貴様がノイズを呼び寄せているのか。」
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クリスは沈黙。
肯定も。
否定もしない。
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「答えろ。」
「その力で何を成す。」
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クリスは視線を逸らす。
「……。」
「私は。」
「必要なことをしているだけだ。」
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その時。
「いやぁ。」
「盛大な話になってるねぇ。」
ブラッドスターク。
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「貴様……。」
翼が警戒する。
「また現れたか。」
「まあまあ。」
スタークは笑う。
「そんな怖い顔しないでよ。」
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響が叫ぶ。
「あなたは何を考えてるんですか!」
「クリスちゃんにも!」
「翼さんにも!」
「ずっと試すようなことをして!」
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スタークは笑う。
「試す?」
「違う違う。」
「見てるだけ。」
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「人間ってさ。」
「追い詰められた時に。」
「本当の答えが出るからねぇ。」
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クリスを見る。
「君もそう。」
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クリスは睨む。
「何が言いたい。」
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「別に。」
「ただ。」
「誰かに与えられた答えを。」
「自分で選んだ答えだと思い込むのは。」
「少し危ないかなって。」
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クリスの表情が変わる。
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その瞬間。
遠く。
高層ビルの上。
フィーネは静かに戦場を見下ろしていた。
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「……ブラッドスターク。」
「不可解な存在ですね。」
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その声には怒りではなく。
興味。
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「雪音クリス。」
「あなたはもう十分に苦しみました。」
「故に。」
「あなたには力を扱う資格がある。」
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「世界は。」
「力なき者の願いだけでは変わりません。」
「強大な力を持つ者が。」
「正しい方向へ導いてこそ。」
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フィーネは微笑む。
「そうでしょう?」
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クリスの耳元。
通信。
『クリス』
『迷う必要はありません』
『あなたの行いは、決して無意味ではないのです』
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クリスは杖を握る。
「……。」
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響が叫ぶ。
「クリスちゃん!」
「お願い!」
「一人で決めないで!」
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「……バカ。」
クリスは呟く。
「お前は何も知らない。」
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「私が。」
「どれだけ……。」
言葉を止める。
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言えない。
過去も。
恐怖も。
フィーネの言葉にすがっていることも。
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戦闘。
響と翼がノイズを迎撃する。
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スタークはその光景を見る。
「いやぁ。」
「面白いねぇ。」
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力を信じる少女。
誰かを信じようとする少女。
孤独を背負う少女。
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かつて。
自分の想像を超えた人間たちを思い出す。
だが。
今は深く考えない。
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「まあ。」
「答えを出すのは本人だからねぇ。」
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スタークは戦場から離れる。
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戦いの後。
クリスは一人。
ソロモンの杖を見る。
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『あなたは間違っていません』
『あなたの力は、世界を救うためにあるのです』
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フィーネの声。
優しい。
だからこそ。
危険だった。
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nascita。
閉店後。
石動惣一はカウンターを拭いている。
「いやぁ。」
「若い子ってのは大変だねぇ。」
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その笑顔の奥。
エボルトは静かに笑う。
「力を与える奴。」
「力を拒む奴。」
「力と向き合う奴。」
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「さて。」
「この世界の人間は。」
「どんな答えを出すのかねぇ。」
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