戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第六話 中編

 

 

1

 

――守る歌、拒絶する鎧――

 

夜の雨は、まだ止んでいなかった。

 

街灯に照らされた水滴が、静かに地面へ落ちていく。

 

その音だけが響く場所で。

 

一人の少女は立っていた。

 

雪音クリス。

 

黒と深紅の装甲。

 

蛇を思わせる曲線。

 

禍々しくも美しい聖遺物。

 

ネフシュタンの鎧。

 

それは彼女にとって武器であり。

 

同時に。

 

誰にも踏み込ませない壁だった。

 

「……」

 

クリスは握った拳を見る。

 

さっきの戦闘。

 

立花響。

 

風鳴翼。

 

そして。

 

あの赤い怪物。

 

ブラッドスターク。

 

特に最後の存在。

 

あれだけは理解できなかった。

 

響たちは力を正面からぶつけてくる。

 

翼は技術で戦う。

 

だが。

 

あの男は違う。

 

戦っているようで。

 

戦っていない。

 

まるで。

 

こちらがどう動くかを最初から知っているようだった。

 

「……気味悪いんだよ」

 

クリスは呟いた。

 

 

2

 

――二課、未知の敵――

 

二課司令室。

 

モニターには戦闘記録が表示されていた。

 

「解析結果が出ました」

 

緒川が報告する。

 

「ネフシュタンの鎧とは異なるエネルギー反応です」

 

翼が眉を寄せる。

 

「聖遺物ではない……?」

 

「はい」

 

弦十郎は腕を組む。

 

「つまり、あの赤い奴は」

 

「シンフォギアでもノイズでもない第三勢力ってことか」

 

響は黙って映像を見る。

 

ブラッドスターク。

 

煙のように消える姿。

 

蛇のように動く攻撃。

 

そして。

 

クリスを見る目。

 

敵を見る目ではなかった。

 

「……あの人」

 

響は小さく呟く。

 

「クリスちゃんのこと、分かってるみたいだった」

 

翼を見る。

 

「翼さん」

 

「何だ」

 

「あの人、クリスちゃんを倒したいんじゃないと思います」

 

翼は答えなかった。

 

確かに。

 

あの戦い。

 

ブラッドスタークはクリスを仕留めることができた。

 

しかし。

 

しなかった。

 

まるで。

 

何かを確認しているようだった。

 

 

3

 

――フィーネの警戒――

 

地下施設。

 

フィーネは静かに資料を眺めていた。

 

ブラッドスターク。

 

未知の存在。

 

彼女の長い記憶にも存在しない技術。

 

「ネビュラガス……」

 

口にしたことのない単語。

 

「人間の肉体へ干渉する技術」

 

「しかし、聖遺物とは違う」

 

フィーネは目を細める。

 

危険。

 

それが最初の感想だった。

 

聖遺物は神秘。

 

シンフォギアは人間と遺産の共鳴。

 

しかし。

 

あの力は。

 

人間そのものを書き換える。

 

「……あれを敵に回すべきではない」

 

だが。

 

同時に。

 

興味もあった。

 

もし利用できるなら。

 

月へ至るための計画は、さらに加速する。

 

 

「あなたは何を望んでいるの?」

 

フィーネは暗闇へ問いかけた。

 

返事。

 

「面白いものを見ることかな」

 

蒸気。

 

現れる赤い影。

 

ブラッドスターク。

 

「相変わらず気配がないわね」

 

「蛇だからね」

 

スタークは笑う。

 

「気付かれず近付くのは得意なんだ」

 

フィーネは警戒する。

 

「あなたはクリスに興味があるの?」

 

「少しね」

 

「彼女は面白い」

 

スタークは続ける。

 

「力を求めているように見えて」

 

「本当は力なんて欲しくない」

 

「ただ、もう傷つきたくないだけだ」

 

フィーネの表情が僅かに変わる。

 

「……」

 

見抜いている。

 

この男は。

 

クリスの弱さを。

 

 

4

 

――蛇の戦闘――

 

数日後。

 

再びノイズ反応。

 

二課は現場へ向かう。

 

しかし。

 

そこには先客がいた。

 

クリス。

 

そして。

 

ネフシュタンの鎧。

 

「またか」

 

翼が構える。

 

「雪音クリス」

 

クリスは睨む。

 

「その名前で呼ぶな」

 

「私は……」

 

一瞬。

 

言葉が止まる。

 

「……私はフィーネに選ばれた」

 

響が悲しそうな顔をする。

 

「クリスちゃん」

 

「まだその呼び方するのかよ」

 

「するよ」

 

響は答える。

 

「だって」

 

「クリスちゃんはクリスちゃんだから」

 

 

その瞬間。

 

地面が揺れた。

 

ノイズ。

 

大量発生。

 

三者が同時に動く。

 

 

響が歌う。

 

ガングニール。

 

翼が歌う。

 

天羽々斬。

 

クリスが歌う。

 

ネフシュタン。

 

 

戦場が光で満たされる。

 

しかし。

 

その外側。

 

別の蒸気。

 

「……」

 

ブラッドスターク。

 

 

「さて」

 

トランスチームガンを構える。

 

コブラフルボトル装填。

 

蒸血。

 

『ミストマッチ!』

 

赤い装甲。

 

蛇の力。

 

 

「邪魔をするな!」

 

翼が斬りかかる。

 

スタークは笑う。

 

スチームブレード展開。

 

バルブ回転。

 

「アイス」

 

冷気。

 

地面が凍る。

 

翼の足元が止まる。

 

「なに……!」

 

「剣士は足を止めると弱い」

 

 

響が接近。

 

拳を振るう。

 

スタークは煙を放つ。

 

消える。

 

次の瞬間。

 

背後。

 

「真正面から来るところ」

 

「嫌いじゃないよ」

 

響は振り返る。

 

しかし。

 

スタークは攻撃しない。

 

ただ。

 

観察する。

 

 

クリスが鞭を放つ。

 

「こっち見ろ!」

 

スタークは右腕を開く。

 

スティングヴァイパー。

 

蛇の針が伸びる。

 

鞭と激突。

 

「……!」

 

クリスは驚く。

 

「鎧じゃなく」

 

スタークは言う。

 

「君の攻撃の癖を見てる」

 

 

クリスの動きが止まる。

 

「……」

 

図星。

 

 

5

 

――追尾する蛇――

 

スタークは手を開く。

 

青白い光。

 

コブラ型エネルギー体。

 

蛇が飛び出す。

 

響へ向かう。

 

翼が斬る。

 

しかし。

 

蛇は消えない。

 

別方向から再び襲う。

 

「追尾……!」

 

響が防御する。

 

スタークは笑う。

 

「蛇はね」

 

「獲物を簡単には逃がさない」

 

 

そして。

 

トランスチームライフルへ変形。

 

狙い。

 

遠距離。

 

クリス。

 

「……!」

 

しかし。

 

撃った弾はクリスではなく。

 

彼女の足元。

 

地面が砕ける。

 

逃げ道を塞ぐ。

 

「なぜ……」

 

響が問う。

 

「攻撃しないの?」

 

スタークは答える。

 

「簡単だよ」

 

「まだ壊す価値がないから」

 

 

その言葉に。

 

クリスの表情が歪む。

 

「……私を」

 

「物みたいに言うな」

 

 

6

 

――孤独の証明――

 

戦闘終了後。

 

ブラッドスタークは姿を消していた。

 

二課は追跡できない。

 

クリスも撤退。

 

残った響は空を見上げる。

 

「……」

 

「クリスちゃん」

 

翼が隣に立つ。

 

「まだ諦めていないのか」

 

響は頷く。

 

「はい」

 

「だって」

 

「クリスちゃん」

 

「ずっと一人なんです」

 

 

遠く。

 

ビルの屋上。

 

ブラッドスタークはその会話を聞いていた。

 

「一人、か」

 

エボルトは笑う。

 

「人間って本当に面白い」

 

「孤独から逃げるために力を求める」

 

「でも」

 

赤い複眼が光る。

 

「その力が、さらに孤独を作る」

 

 

雨が止む。

 

雲の隙間から月が見える。

 

しかし。

 

その月を見上げる者たちは。

 

まだ知らない。

 

この戦いが。

 

ただの装者同士の争いではないことを。

 

フィーネ。

 

二課。

 

そして。

 

エボルト。

 

三つの思惑が交差する中で。

 

雪音クリスという少女の未来が。

 

少しずつ変わり始めていることを。

 

 

 

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