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1
――守る歌、拒絶する鎧――
夜の雨は、まだ止んでいなかった。
街灯に照らされた水滴が、静かに地面へ落ちていく。
その音だけが響く場所で。
一人の少女は立っていた。
雪音クリス。
黒と深紅の装甲。
蛇を思わせる曲線。
禍々しくも美しい聖遺物。
ネフシュタンの鎧。
それは彼女にとって武器であり。
同時に。
誰にも踏み込ませない壁だった。
「……」
クリスは握った拳を見る。
さっきの戦闘。
立花響。
風鳴翼。
そして。
あの赤い怪物。
ブラッドスターク。
特に最後の存在。
あれだけは理解できなかった。
響たちは力を正面からぶつけてくる。
翼は技術で戦う。
だが。
あの男は違う。
戦っているようで。
戦っていない。
まるで。
こちらがどう動くかを最初から知っているようだった。
「……気味悪いんだよ」
クリスは呟いた。
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2
――二課、未知の敵――
二課司令室。
モニターには戦闘記録が表示されていた。
「解析結果が出ました」
緒川が報告する。
「ネフシュタンの鎧とは異なるエネルギー反応です」
翼が眉を寄せる。
「聖遺物ではない……?」
「はい」
弦十郎は腕を組む。
「つまり、あの赤い奴は」
「シンフォギアでもノイズでもない第三勢力ってことか」
響は黙って映像を見る。
ブラッドスターク。
煙のように消える姿。
蛇のように動く攻撃。
そして。
クリスを見る目。
敵を見る目ではなかった。
「……あの人」
響は小さく呟く。
「クリスちゃんのこと、分かってるみたいだった」
翼を見る。
「翼さん」
「何だ」
「あの人、クリスちゃんを倒したいんじゃないと思います」
翼は答えなかった。
確かに。
あの戦い。
ブラッドスタークはクリスを仕留めることができた。
しかし。
しなかった。
まるで。
何かを確認しているようだった。
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3
――フィーネの警戒――
地下施設。
フィーネは静かに資料を眺めていた。
ブラッドスターク。
未知の存在。
彼女の長い記憶にも存在しない技術。
「ネビュラガス……」
口にしたことのない単語。
「人間の肉体へ干渉する技術」
「しかし、聖遺物とは違う」
フィーネは目を細める。
危険。
それが最初の感想だった。
聖遺物は神秘。
シンフォギアは人間と遺産の共鳴。
しかし。
あの力は。
人間そのものを書き換える。
「……あれを敵に回すべきではない」
だが。
同時に。
興味もあった。
もし利用できるなら。
月へ至るための計画は、さらに加速する。
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「あなたは何を望んでいるの?」
フィーネは暗闇へ問いかけた。
返事。
「面白いものを見ることかな」
蒸気。
現れる赤い影。
ブラッドスターク。
「相変わらず気配がないわね」
「蛇だからね」
スタークは笑う。
「気付かれず近付くのは得意なんだ」
フィーネは警戒する。
「あなたはクリスに興味があるの?」
「少しね」
「彼女は面白い」
スタークは続ける。
「力を求めているように見えて」
「本当は力なんて欲しくない」
「ただ、もう傷つきたくないだけだ」
フィーネの表情が僅かに変わる。
「……」
見抜いている。
この男は。
クリスの弱さを。
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4
――蛇の戦闘――
数日後。
再びノイズ反応。
二課は現場へ向かう。
しかし。
そこには先客がいた。
クリス。
そして。
ネフシュタンの鎧。
「またか」
翼が構える。
「雪音クリス」
クリスは睨む。
「その名前で呼ぶな」
「私は……」
一瞬。
言葉が止まる。
「……私はフィーネに選ばれた」
響が悲しそうな顔をする。
「クリスちゃん」
「まだその呼び方するのかよ」
「するよ」
響は答える。
「だって」
「クリスちゃんはクリスちゃんだから」
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その瞬間。
地面が揺れた。
ノイズ。
大量発生。
三者が同時に動く。
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響が歌う。
ガングニール。
翼が歌う。
天羽々斬。
クリスが歌う。
ネフシュタン。
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戦場が光で満たされる。
しかし。
その外側。
別の蒸気。
「……」
ブラッドスターク。
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「さて」
トランスチームガンを構える。
コブラフルボトル装填。
蒸血。
『ミストマッチ!』
赤い装甲。
蛇の力。
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「邪魔をするな!」
翼が斬りかかる。
スタークは笑う。
スチームブレード展開。
バルブ回転。
「アイス」
冷気。
地面が凍る。
翼の足元が止まる。
「なに……!」
「剣士は足を止めると弱い」
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響が接近。
拳を振るう。
スタークは煙を放つ。
消える。
次の瞬間。
背後。
「真正面から来るところ」
「嫌いじゃないよ」
響は振り返る。
しかし。
スタークは攻撃しない。
ただ。
観察する。
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クリスが鞭を放つ。
「こっち見ろ!」
スタークは右腕を開く。
スティングヴァイパー。
蛇の針が伸びる。
鞭と激突。
「……!」
クリスは驚く。
「鎧じゃなく」
スタークは言う。
「君の攻撃の癖を見てる」
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クリスの動きが止まる。
「……」
図星。
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5
――追尾する蛇――
スタークは手を開く。
青白い光。
コブラ型エネルギー体。
蛇が飛び出す。
響へ向かう。
翼が斬る。
しかし。
蛇は消えない。
別方向から再び襲う。
「追尾……!」
響が防御する。
スタークは笑う。
「蛇はね」
「獲物を簡単には逃がさない」
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そして。
トランスチームライフルへ変形。
狙い。
遠距離。
クリス。
「……!」
しかし。
撃った弾はクリスではなく。
彼女の足元。
地面が砕ける。
逃げ道を塞ぐ。
「なぜ……」
響が問う。
「攻撃しないの?」
スタークは答える。
「簡単だよ」
「まだ壊す価値がないから」
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その言葉に。
クリスの表情が歪む。
「……私を」
「物みたいに言うな」
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6
――孤独の証明――
戦闘終了後。
ブラッドスタークは姿を消していた。
二課は追跡できない。
クリスも撤退。
残った響は空を見上げる。
「……」
「クリスちゃん」
翼が隣に立つ。
「まだ諦めていないのか」
響は頷く。
「はい」
「だって」
「クリスちゃん」
「ずっと一人なんです」
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遠く。
ビルの屋上。
ブラッドスタークはその会話を聞いていた。
「一人、か」
エボルトは笑う。
「人間って本当に面白い」
「孤独から逃げるために力を求める」
「でも」
赤い複眼が光る。
「その力が、さらに孤独を作る」
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雨が止む。
雲の隙間から月が見える。
しかし。
その月を見上げる者たちは。
まだ知らない。
この戦いが。
ただの装者同士の争いではないことを。
フィーネ。
二課。
そして。
エボルト。
三つの思惑が交差する中で。
雪音クリスという少女の未来が。
少しずつ変わり始めていることを。
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