戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第六話 後編

 

 

1

 

――鎧の中の少女――

 

夜が明けても。

 

雪音クリスの心には暗闇が残っていた。

 

簡素な部屋。

 

最低限の家具。

 

壁に立て掛けられたヘッドホン。

 

机の上には食べかけの食事。

 

そこには生活がある。

 

しかし。

 

温もりはなかった。

 

「……」

 

クリスは窓の外を見る。

 

街は動き始めている。

 

人々は笑い。

 

学校へ向かい。

 

仕事へ向かう。

 

当たり前の日常。

 

クリスには、それが遠い世界のものに見えた。

 

「……くだらねぇ」

 

呟く。

 

本当は分かっている。

 

自分が羨ましいだけだ。

 

誰かと笑うこと。

 

誰かに心配されること。

 

誰かを信じること。

 

そんなもの。

 

自分にはもう必要ない。

 

そう言い聞かせているだけだった。

 

 

その時。

 

通信機が鳴る。

 

フィーネ。

 

「クリス」

 

「次の任務よ」

 

クリスは目を閉じる。

 

「……分かった」

 

返事は短い。

 

迷いを隠すために。

 

 

2

 

――救いたい少女、戦う少女――

 

二課。

 

響は訓練場にいた。

 

拳を振る。

 

何度も。

 

何度も。

 

「響」

 

翼が声をかける。

 

「少し休め」

 

「でも……」

 

響は拳を握る。

 

「クリスちゃん」

 

「まだ一人なんです」

 

翼は黙る。

 

響の考えは甘い。

 

そう思う。

 

敵は敵。

 

戦場では、それが全て。

 

しかし。

 

翼自身も気付いていた。

 

昔の自分なら。

 

迷わずそう言っていた。

 

だが。

 

今は違う。

 

「……お前は」

 

翼は呟く。

 

「本当に変わったな」

 

響は振り返る。

 

「え?」

 

「敵を見る目が」

 

「戦う相手を見る目ではない」

 

翼は空を見る。

 

「人を見る目になっている」

 

 

3

 

――フィーネと蛇――

 

地下施設。

 

フィーネは研究資料を眺めていた。

 

そこにはブラッドスタークの戦闘データ。

 

煙幕。

 

瞬間移動。

 

特殊蒸気。

 

未知の武器。

 

「……」

 

フィーネは考える。

 

あの力。

 

もし自分の計画に利用できれば。

 

だが。

 

同時に危険でもある。

 

あの存在は。

 

誰の支配も受けない。

 

 

「警戒している顔だね」

 

背後。

 

蒸気。

 

ブラッドスターク。

 

「……勝手に入るとは」

 

「蛇は隙間から入るものだからね」

 

フィーネは睨む。

 

「あなたは何者?」

 

スタークは笑う。

 

「何度聞かれても答えは同じ」

 

「石動惣一」

 

「ただの研究者だよ」

 

フィーネは目を細める。

 

嘘。

 

しかし。

 

証拠がない。

 

 

「あなたはクリスを観察している」

 

「そうだね」

 

スタークはあっさり認める。

 

「面白いから」

 

「彼女は力を持っている」

 

「でも」

 

赤い複眼が光る。

 

「一番弱いところはそこじゃない」

 

「心だ」

 

フィーネは黙る。

 

 

「あなたも同じだよ」

 

スタークが言う。

 

「人間を信じてない」

 

「だから」

 

「絶対に裏切らないものを求めている」

 

一瞬。

 

フィーネの表情が変化する。

 

しかし。

 

すぐに戻る。

 

「……くだらない分析ね」

 

スタークは笑う。

 

「そういうところが面白いんだよ」

 

 

4

 

――再戦――

 

夜。

 

大量のノイズ発生。

 

二課が現場へ向かう。

 

しかし。

 

そこには。

 

すでにクリスがいた。

 

ネフシュタンの鎧。

 

黒と深紅の装甲。

 

蛇のような鞭。

 

「また会ったな」

 

響が前へ出る。

 

「クリスちゃん」

 

「だからその呼び方やめろ!」

 

クリスの怒声。

 

鞭が走る。

 

響は防御する。

 

 

翼が斬り込む。

 

「雪音クリス」

 

「お前の目的は何だ」

 

クリスは答える。

 

「……」

 

一瞬。

 

迷う。

 

だが。

 

「私は」

 

「力を使うだけだ」

 

 

その瞬間。

 

蒸気。

 

戦場に白い煙が広がる。

 

「また来たか」

 

翼が構える。

 

赤い影。

 

ブラッドスターク。

 

 

5

 

――蛇の狩場――

 

スタークはトランスチームガンを構える。

 

コブラフルボトル。

 

装填。

 

『ミストマッチ!』

 

蒸血。

 

赤い装甲。

 

ブラッドスターク。

 

 

響が走る。

 

「あなた!」

 

「クリスちゃんを利用するなら!」

 

スタークは笑う。

 

「利用?」

 

「違うなぁ」

 

「観察だよ」

 

 

右腕。

 

スティングヴァイパー。

 

伸縮する蛇の針。

 

響の横を通り抜ける。

 

狙いはクリス。

 

クリスは鞭で防ぐ。

 

「……!」

 

「また私を見るのかよ」

 

スタークは答える。

 

「君が一番面白いからね」

 

 

クリスの怒り。

 

鞭の速度が上がる。

 

しかし。

 

スタークは読んでいた。

 

煙。

 

消える。

 

背後。

 

「怒った時」

 

「攻撃が直線的になる」

 

クリスの動きが止まる。

 

「……」

 

 

その時。

 

青白い光。

 

コブラ型エネルギー体。

 

複数の蛇が出現。

 

響たちへ襲いかかる。

 

「なにこれ……!」

 

翼が斬る。

 

しかし。

 

蛇は別方向から再生する。

 

「追尾型か」

 

翼が分析する。

 

 

スタークはスチームブレードを展開。

 

バルブ回転。

 

「エレキ」

 

電撃。

 

地面を走る雷撃。

 

装者たちの動きを制限する。

 

 

「次はこれ」

 

バルブ回転。

 

「デビル」

 

紫色の蒸気。

 

一瞬。

 

空気が変わる。

 

響は警戒する。

 

「……!」

 

本能的な危険。

 

これは。

 

ただの攻撃ではない。

 

 

スタークは笑う。

 

「安心して」

 

「今日は使わない」

 

「まだね」

 

 

6

 

――偽りの守護者――

 

戦闘は終わる。

 

ノイズは消滅。

 

スタークも姿を消す。

 

残ったのは。

 

響。

 

翼。

 

そして。

 

クリス。

 

 

響は叫ぶ。

 

「クリスちゃん!」

 

クリスは止まる。

 

「……」

 

「どうして」

 

響は続ける。

 

「そんなに苦しそうなのに」

 

「一人でいようとするの?」

 

 

クリスの表情が揺れる。

 

「……」

 

「うるさい」

 

「お前に何が分かる」

 

 

響は答える。

 

「分からないよ」

 

「まだ」

 

「でも」

 

一歩近付く。

 

「知りたい」

 

「クリスちゃんのこと」

 

 

クリスは拳を握る。

 

「……馬鹿だな」

 

「お前」

 

「そんなこと言ってたら」

 

「いつか裏切られるぞ」

 

響は首を振る。

 

「それでも」

 

「私は信じたい」

 

 

その言葉。

 

クリスには眩しすぎた。

 

 

7

 

――観察者――

 

遠くのビル。

 

ブラッドスターク。

 

その会話を見ていた。

 

「信じたい、か」

 

エボルトは呟く。

 

「人間は本当に不思議だ」

 

「裏切られる可能性があるのに」

 

「それでも誰かを求める」

 

 

手元のコブラフルボトルを見る。

 

「この世界の人間は」

 

「どこまで変化する?」

 

 

その時。

 

通信。

 

フィーネ。

 

「ブラッドスターク」

 

「あなたは何を望む?」

 

スタークは笑う。

 

「さあね」

 

「まだ決めてない」

 

嘘。

 

本当の目的。

 

この世界そのものの観察。

 

それを知る者はいない。

 

 

夜空。

 

月が浮かぶ。

 

その月へ向けたフィーネの執念。

 

人を救いたい響の願い。

 

孤独から逃げたいクリスの叫び。

 

そして。

 

全てを観察するエボルト。

 

四つの思惑が。

 

静かに交差していく。

 

 

 

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