戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第一話 「残された怪物」中編

 

 

 身体というものは便利だ。

 

 エボルトは、そう思った。

 

 肉体。

 

 声。

 

 表情。

 

 それらがあるだけで、できることが一気に増える。

 

 しかし。

 

「……。」

 

 鏡に映る自分を見る。

 

 今の姿は、借り物。

 

 ただの器。

 

 エボルト本来の力を引き出すには、あまりにも弱い。

 

「いやぁ。」

 

 口元を歪める。

 

「随分と落ちたもんだねぇ。」

 

 かつては星を喰らう存在だった。

 

 仮面ライダーたちを圧倒し。

 

 地球そのものを利用し。

 

 勝利を掴んだ。

 

 それが今では。

 

 人間一人の身体を借りなければ存在すら維持できない。

 

 普通なら。

 

 屈辱を感じるところだろう。

 

 だが。

 

「まあ、こういう展開も悪くないか。」

 

 エボルトは笑う。

 

「最初から無双するゲームなんて、すぐ飽きるしねぇ。」

 

⸻

 

 借りた身体で街を歩く。

 

 情報収集。

 

 まず必要なのはそれだった。

 

 この世界がどういう構造なのか。

 

 何が存在するのか。

 

 そして。

 

 自分が知っている未来と、どこまで同じなのか。

 

 人々の会話。

 

 ニュース。

 

 ネットワーク。

 

 断片的な情報を拾っていく。

 

「歌で戦う少女たち、ねぇ。」

 

 その単語に興味を持つ。

 

 シンフォギア。

 

 聖遺物。

 

 ノイズ。

 

 一度目の世界で知っている。

 

 だが。

 

 今はまだ。

 

 何も始まっていない。

 

「なるほど。」

 

 エボルトは歩きながら考える。

 

「前回とは違って、まだ盤面が綺麗な状態ってわけか。」

 

 これは好都合だった。

 

 敵も。

 

 味方も。

 

 まだ配置されていない。

 

 なら。

 

 自分が少し手を加えるだけで。

 

 展開は変化する。

 

⸻

 

 数日後。

 

 エボルトは一人の人間を観察していた。

 

 普通の人間。

 

 特別な力もない。

 

 だが。

 

 妙なものを感じる。

 

 困っている誰かを助ける。

 

 自分が損をしても気にしない。

 

「……。」

 

 その姿に。

 

 一瞬だけ。

 

 別の男が重なる。

 

「万丈……。」

 

 無意識に名前が出そうになる。

 

 エボルトは止める。

 

「……。」

 

「いやいや。」

 

「まさかねぇ。」

 

 苦笑する。

 

「この世界でも似たようなのを見るとは。」

 

 馬鹿みたいに真っ直ぐ。

 

 理屈じゃなく動く。

 

 以前なら理解できなかった。

 

 だが。

 

 今なら。

 

 少しだけ分かる気がする。

 

「本当に人間って面倒だよねぇ。」

 

 そう言いながら。

 

 声はどこか楽しそうだった。

 

⸻

 

 しかし。

 

 エボルトは忘れていない。

 

 自分が何者なのか。

 

 そして。

 

 なぜこの世界へ来たのか。

 

「さて。」

 

 夜。

 

 誰もいない場所で。

 

 エボルトは自身の状態を確認する。

 

 まだブラッドスタークの力には届かない。

 

 だが。

 

 分体は少しずつ安定している。

 

 細胞。

 

 遺伝子。

 

 存在情報。

 

 時間をかければ。

 

 再構築できる。

 

「エボルドライバー。」

 

「パンドラボックス。」

 

 失われた力。

 

 それらを取り戻す必要がある。

 

 だが。

 

 焦らない。

 

「急いで取り戻して。」

 

「また同じことをするなんて、芸がないからねぇ。」

 

 エボルトは笑う。

 

 一度目の世界。

 

 自分は力で全てを奪った。

 

 結果。

 

 勝った。

 

 しかし。

 

 最後には。

 

 盤面そのものをひっくり返された。

 

「今回は違う。」

 

 小さく呟く。

 

「もう少し、人間ってやつを見てみるか。」

 

⸻

 

 その頃。

 

 まだ誰も知らない。

 

 未来の英雄となる少女。

 

 立花響。

 

 彼女が。

 

 やがてガングニールを手にすることを。

 

 そして。

 

 その少女を。

 

 かつて世界を滅ぼした怪物が。

 

 もう一度観察することになることを。

 

⸻

 

 数週間後。

 

 小さな喫茶店の前。

 

 エボルトは立っていた。

 

 店内を見る。

 

 落ち着いた雰囲気。

 

 人が集まる場所。

 

 情報も集まる。

 

「……。」

 

 悪くない。

 

 人間社会に溶け込むなら。

 

 こういう場所がいい。

 

 そして。

 

 自分が使う姿も決める。

 

「石動惣一。」

 

 名前を口にする。

 

「悪くないねぇ。」

 

 過去に使った顔。

 

 人間たちが警戒しない顔。

 

 気さくなマスター。

 

 その裏に。

 

 宇宙生命体を隠す。

 

「喫茶店のマスターか。」

 

 エボルトは笑う。

 

「まさか俺が、こんな役をやる日が来るとはねぇ。」

 

 扉を開ける。

 

 新しい人生。

 

 二度目の世界。

 

 その始まりだった。

 

⸻

 

 

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