戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第一話 中編 改稿版

『戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT』

 

第1話 中編

 

――観測者となった蛇、動き出す歴史――

 

 

 石動惣一。

 

 

 それが。

 

 

 

 二度目のシンフォギア世界でエボルトが選んだ仮の名だった。

 

 

 もちろん。

 

 

 

 本当に石動惣一という人間になったわけではない。

 

 

 それは。

 

 

 

 エボルトが作り出した擬態。

 

 

 この世界で活動するための器。

 

 

 

 人間社会へ入り込むための仮面。

 

 

 そして。

 

 

 一度目の世界では持つ必要のなかったもの。

 

 

 「時間」。

 

 

 エボルトは。

 

 

 

 初めて。

 

 

 

 急ぐ必要のない立場になっていた。

 

 

 以前なら。

 

 

 力を取り戻せば。

 

 

 

 すぐに支配へ向かった。

 

 

 星を滅ぼし。

 

 

 

 文明を利用し。

 

 

 

 可能性を奪う。

 

 

 それが。

 

 

 

 エボルトという存在だった。

 

 

 だが。

 

 

 二度目の世界では違う。

 

 

 なぜなら。

 

 

 彼だけが知っている。

 

 

 この世界が。

 

 

 

 これから何を経験するのか。

 

 

 どんな悲劇が起こるのか。

 

 

 誰が傷つき。

 

 

 

 誰が立ち上がるのか。

 

 

 全て。

 

 

 知っている。

 

 

「……」

 

 

 街の喧騒。

 

 

 

 人々の声。

 

 

 

 車の音。

 

 

 エボルトは。

 

 

 

 人間の姿で歩きながら。

 

 

 

 周囲を眺めていた。

 

 

「平和だねぇ」

 

 

 小さく呟く。

 

 

 この光景を。

 

 

 

 彼は知っている。

 

 

 この世界が。

 

 

 

 まだ壊れていない時間。

 

 

 ノイズの脅威が表面化する前。

 

 

 フィーネが本格的に動き出す前。

 

 

 装者たちが。

 

 

 

 絶望と戦いへ巻き込まれる前。

 

 

「一回目の時は」

 

 

「ここから全部始まったんだよねぇ」

 

 

 エボルトは空を見る。

 

 

 その瞳には。

 

 

 

 過去の光景が映っていた。

 

 

 ライブ会場。

 

 

 突然現れるノイズ。

 

 

 歌う少女。

 

 

 命を失う少女。

 

 

 そして。

 

 

 その力を受け継ぐ少女。

 

 

 立花響。

 

 

 彼女が。

 

 

 

 この世界の中心になる。

 

 

「……」

 

 

「本当に不思議な子だった」

 

 

 エボルトにとって。

 

 

 

 響は理解しにくい存在だった。

 

 

 力が欲しいわけではない。

 

 

 勝ちたいわけでもない。

 

 

 ただ。

 

 

「誰かを助けたい」

 

 

 その一点だけで戦う。

 

 

 そんな存在。

 

 

 ビルド世界で出会った。

 

 

 

 桐生戦兎や万丈にも。

 

 

 

 似た部分があった。

 

 

 戦兎は。

 

 

 

 自分の罪を背負いながらも。

 

 

 

 人間を信じ続けた。

 

 

 万丈は。

 

 

 

 どれだけ利用されても。

 

 

 

 最後まで自分自身を曲げなかった。

 

 

「……」

 

 

「面倒な奴らばっかりだったなぁ」

 

 

 そう言いながら。

 

 

 エボルトは笑っていた。

 

 

 嫌いだったはずなのに。

 

 

 なぜか。

 

 

 

 記憶に残っている。

 

 

 だからこそ。

 

 

 今回の世界では。

 

 

 少し違う楽しみ方をしてみる。

 

 

 破壊ではなく。

 

 

 観察。

 

 

 干渉。

 

 

 変化。

 

 

「さて」

 

 

「まずは確認かな」

 

 

 エボルトは歩き出す。

 

 

――最初の観測対象――

 

 

 夜。

 

 

 静かな街。

 

 

 エボルトは。

 

 

 

 一つの場所へ向かっていた。

 

 

 風鳴家。

 

 

 正確には。

 

 

 

 その周辺。

 

 

 一度目の世界で。

 

 

 

 数多くの出来事の中心となった場所。

 

 

 風鳴翼。

 

 

 天羽奏。

 

 

 シンフォギアという力。

 

 

 その始まり。

 

 

 遠くから眺める。

 

 

 そこには。

 

 

 まだ若い少女の姿。

 

 

 風鳴翼。

 

 

 彼女は。

 

 

 

 まだ完全な戦士ではない。

 

 

 だが。

 

 

 剣を握る覚悟だけは。

 

 

 

 すでに持っている。

 

 

「……」

 

 

 エボルトは目を細める。

 

 

「変わってないねぇ」

 

 

 一度目と同じ。

 

 

 孤独。

 

 

 責任。

 

 

 背負ったもの。

 

 

 それでも。

 

 

 前へ進もうとする姿。

 

 

 しかし。

 

 

「今回は」

 

 

「少し違う」

 

 

 エボルトは気付いていた。

 

 

 一度目の世界とは。

 

 

 

 僅かな違いが存在している。

 

 

 歴史は同じではない。

 

 

 オーマジオウによって。

 

 

 

 再構築された世界。

 

 

 完全なコピーではない。

 

 

 だからこそ。

 

 

 未来も。

 

 

 

 同じになるとは限らない。

 

 

「面白いねぇ」

 

 

 エボルトは笑う。

 

 

 彼が求めているのは。

 

 

 勝利だけではない。

 

 

 予想外。

 

 

 それこそが。

 

 

 

 彼を楽しませるもの。

 

 

――フィーネの存在――

 

 

 そして。

 

 

 もう一人。

 

 

 エボルトが注目する存在。

 

 

 フィーネ。

 

 

 数千年の時を生きる先史文明期の巫女。

 

 

 一度目の世界では。

 

 

 彼女もまた。

 

 

 

 世界を変えようとしていた。

 

 

 月へ。

 

 

 人類の未来へ。

 

 

 歪んだ愛情と執念。

 

 

 その全てを抱えて。

 

 

 

 行動していた。

 

 

 エボルトは。

 

 

 

 彼女の存在を思い出す。

 

 

「人間じゃないけど」

 

 

「人間以上に人間らしい奴だったねぇ」

 

 

 矛盾した感情。

 

 

 憎しみ。

 

 

 

 悲しみ。

 

 

 

 執着。

 

 

 全てを抱えながら。

 

 

 

 目的へ進む存在。

 

 

 エボルトにとって。

 

 

 

 興味深い観察対象だった。

 

 

 だが。

 

 

 今回は。

 

 

 まだ接触しない。

 

 

 理由は単純。

 

 

 早すぎる。

 

 

 一度目の歴史を知っているからこそ。

 

 

 

 分かる。

 

 

 今、手を出せば。

 

 

 

 全てが変わりすぎる。

 

 

「まだだね」

 

 

「もう少し泳がせよう」

 

 

 エボルトは。

 

 

 

 あえて距離を取る。

 

 

 敵にも。

 

 

 

 味方にもならない。

 

 

 今は。

 

 

 観察者。

 

 

――そして、蛇は力を取り戻す――

 

 

 しかし。

 

 

 問題もあった。

 

 

 この世界で活動するには。

 

 

 

 今の状態では足りない。

 

 

 エボルトの本来の力。

 

 

 惑星を喰らうほどの力。

 

 

 それは。

 

 

 

 まだ封じられている。

 

 

「まあ」

 

 

「一からやり直しっていうのも悪くないか」

 

 

 エボルトは。

 

 

 

 手元を見る。

 

 

 そこには。

 

 

 

 僅かなエネルギー。

 

 

 かつての力の残滓。

 

 

 そして。

 

 

 この世界に存在する未知のエネルギー。

 

 

 聖遺物。

 

 

 シンフォギア。

 

 

「歌の力」

 

 

「本当に面白い仕組みだよねぇ」

 

 

 エボルトは笑う。

 

 

 一度目の世界では。

 

 

 

 最後まで理解できなかったもの。

 

 

 人間の心。

 

 

 繋がり。

 

 

 想い。

 

 

 それが。

 

 

 

 この世界では力になる。

 

 

「なら」

 

 

「今回は」

 

 

「そこも利用させてもらおうかな」

 

 

 その瞬間。

 

 

 エボルトの手元に。

 

 

 

 小さな黒いエネルギーが集まる。

 

 

 まだ。

 

 

 

 ブラッドスタークになるほどではない。

 

 

 まだ。

 

 

 

 戦闘能力も完全ではない。

 

 

 だが。

 

 

 確かな一歩。

 

 

 蛇は。

 

 

 

 再び牙を取り戻し始めていた。

 

 

――未来を知る者――

 

 

 夜の街。

 

 

 石動惣一の姿をしたエボルトは。

 

 

 

 静かに歩く。

 

 

 誰も知らない。

 

 

 この世界が。

 

 

 

 一度終わったこと。

 

 

 誰も知らない。

 

 

 目の前を歩く少女たちが。

 

 

 

 いずれ世界を救うこと。

 

 

 そして。

 

 

 誰も知らない。

 

 

 その未来を知る存在が。

 

 

 すでに。

 

 

 

 この世界へ入り込んでいることを。

 

 

「さて」

 

 

「二度目の物語」

 

 

「どこまで一回目と同じになるのかな」

 

 

 エボルトは笑う。

 

 

「それとも」

 

 

「俺がいることで」

 

 

「全部変わるのかな」

 

 

 答えはまだない。

 

 

 だが。

 

 

 それでいい。

 

 

 未来が決まっていないからこそ。

 

 

 観察する価値がある。

 

 

 一度世界を滅ぼした蛇は。

 

 

 今度は。

 

 

 世界の中心ではなく。

 

 

 物語の影から。

 

 

 静かに動き始めた。

 

 

第1話 中編

 

――観測者となった蛇、動き出す歴史――

 

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