戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第二話 「歌う戦士の始まり」後編

 

 

 夜の街。

 

 人の気配が消えた路地裏に。

 

 少女の歌声が響く。

 

 立花響。

 

 まだ戦い方も分からない。

 

 まだ自分が何を背負ったのかも理解しきれていない。

 

 それでも。

 

 彼女は歌う。

 

 誰かを守るために。

 

⸻

 

「……。」

 

 ビルの屋上。

 

 その姿を見下ろす影があった。

 

 ブラッドスターク。

 

「いやぁ。」

 

「頑張ってるねぇ。」

 

 軽い口調。

 

 まるで知り合いの成長を眺めるような声。

 

 しかし。

 

 その瞳は冷静に響を分析していた。

 

 動き。

 

 判断。

 

 精神状態。

 

 全て。

 

「まだまだ荒い。」

 

「力任せ。」

 

「自分が傷つくことを考えてない。」

 

 だが。

 

 それだけではない。

 

「でも。」

 

 スタークは笑う。

 

「逃げるって選択肢を最初から捨ててる。」

 

 そこが厄介だった。

 

 恐怖を感じないわけではない。

 

 怖い。

 

 辛い。

 

 苦しい。

 

 それでも。

 

 誰かのために動く。

 

 そういう人間。

 

「ほんと。」

 

「人間って面倒だよねぇ。」

 

 呟く。

 

 だが。

 

 その声に以前ほどの冷たさはなかった。

 

⸻

 

 戦闘が終わる。

 

 響は息を切らしながら立っていた。

 

「……。」

 

 スタークは姿を消そうとする。

 

 しかし。

 

「そこにいるの、誰?」

 

 響が振り返った。

 

「おっと。」

 

 気付かれた。

 

 スタークはゆっくり姿を現す。

 

「おやおや。」

 

「意外と勘がいいじゃない。」

 

 響は警戒する。

 

「あなた……。」

 

「シンフォギアじゃない。」

 

「でも、力を持ってる。」

 

 スタークは笑う。

 

「よく見てるねぇ。」

 

「褒めてあげるよ。」

 

「でもさ。」

 

 一歩近付く。

 

「その力。」

 

「本当に君が使う覚悟、あるの?」

 

 響の表情が変わる。

 

⸻

 

 エボルトは分かっていた。

 

 この問いが。

 

 この少女に必要だと。

 

 力を持った者は。

 

 必ず一度は考える。

 

 なぜ自分なのか。

 

 本当に戦えるのか。

 

 その答えを。

 

 誰かに与えられてはいけない。

 

「俺さぁ。」

 

 スタークは軽く腕を組む。

 

「力を持った奴ってのを、たくさん見てきたんだよねぇ。」

 

「強い力を持った瞬間。」

 

「勘違いする奴。」

 

「自分なら何でもできるって思う奴。」

 

「逆に。」

 

「力を持つ資格がないって、自分を否定する奴。」

 

 響を見る。

 

「君はどっちかな?」

 

 響は黙る。

 

⸻

 

 エボルトは試していた。

 

 戦闘能力ではない。

 

 精神。

 

 選択。

 

 この少女が。

 

 どんな答えを出す人間なのか。

 

 それを見たかった。

 

「……。」

 

 一瞬だけ。

 

 過去の記憶がよぎる。

 

 力を手にした人間。

 

 その力で苦しんだ者。

 

 それでも前へ進んだ者。

 

 だが。

 

 エボルトはすぐに意識を戻す。

 

 今見ているのは。

 

 立花響だ。

 

 過去の誰かではない。

 

⸻

 

「私は……。」

 

 響は拳を握る。

 

「怖いよ。」

 

 正直な言葉。

 

「戦うのも。」

 

「傷つくのも。」

 

「間違えるのも怖い。」

 

 スタークは黙って聞く。

 

「でも。」

 

「誰かが傷つくのを見て。」

 

「何もしない方が、もっと嫌なんだ。」

 

 その答え。

 

 エボルトは少し笑う。

 

「なるほど。」

 

「そう来るか。」

 

⸻

 

 普通なら。

 

 ここで利用価値を判断する。

 

 危険なら潰す。

 

 使えるなら利用する。

 

 それが以前までのエボルトだった。

 

 しかし。

 

 今は違う。

 

 感情を知った。

 

 だから。

 

 人間の選択を見ること自体を楽しめる。

 

「まあ。」

 

 スタークは背を向ける。

 

「合格かな。」

 

「え?」

 

「いや。」

 

 振り返る。

 

「こっちの話。」

 

「でもさ。」

 

 少し声を低くする。

 

「その甘さ。」

 

「いつまで持つかねぇ。」

 

 挑発。

 

 警告。

 

 そして。

 

 興味。

 

 それらを混ぜた言葉。

 

⸻

 

 スタークが消えた後。

 

 響は考える。

 

「あの人……。」

 

 敵なのか。

 

 味方なのか。

 

 分からない。

 

⸻

 

 その頃。

 

 フィーネもまた。

 

 ブラッドスタークについて調査していた。

 

「未知の戦闘能力。」

 

「シンフォギアとは異なる技術。」

 

「目的不明。」

 

 資料を見る。

 

「危険な存在ね。」

 

 しかし。

 

 彼女は知らない。

 

 その存在が。

 

 自分より遥かに長い時間。

 

 他者を利用してきた怪物だということを。

 

⸻

 

 nascita。

 

 閉店後。

 

 石動惣一はコーヒーを淹れる。

 

「いやぁ。」

 

「若いっていいねぇ。」

 

 誰もいない店内。

 

 その声は。

 

 少しだけ本音だった。

 

「自分の答えを探して。」

 

「迷って。」

 

「それでも進む。」

 

 カップを眺める。

 

「昔は。」

 

 一瞬。

 

 言葉が止まる。

 

 しかし。

 

「……まあ。」

 

 すぐに笑う。

 

「今さら昔話って柄でもないか。」

 

 コーヒーを飲む。

 

「さて。」

 

「次はどう転ぶかな。」

 

 怪物は笑う。

 

 世界を壊すためではなく。

 

 自分でも気付かないほど。

 

 少しずつ変化していく物語を。

 

 楽しむために。

 

⸻

 

 

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