戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第三話 「怪物が見る可能性」中編

 

 

 戦場というものは。

 

 人間の本性が最も出やすい場所だ。

 

 恐怖。

 

 焦り。

 

 怒り。

 

 諦め。

 

 そして。

 

 それでも前へ進もうとする意思。

 

 ブラッドスタークは、それを遠くから眺めていた。

 

「いやぁ。」

 

「やっぱり面白いねぇ、人間って。」

 

 ビルの屋上。

 

 黒い装甲の男は、戦場を観察する。

 

 そこでは。

 

 立花響がノイズと戦っていた。

 

⸻

 

 動きはまだ未熟。

 

 力の扱いも不完全。

 

 シンフォギアとしての経験値は足りない。

 

 普通なら。

 

 戦力としては不安要素だらけ。

 

 だが。

 

「それでも立つ。」

 

 スタークは呟く。

 

 倒れても。

 

 怖くても。

 

 自分が傷ついても。

 

 誰かを守るために立ち上がる。

 

「効率だけ考えたら。」

 

「絶対に選ばない行動だよねぇ。」

 

 かつてのエボルトなら。

 

 その判断を理解しなかった。

 

 勝率。

 

 利益。

 

 結果。

 

 それだけを見ていた。

 

 しかし。

 

 今は違う。

 

「意味のない行動だからこそ。」

 

「そこから予想外の結果が生まれる。」

 

 感情を得たことで。

 

 エボルトは人間の非合理性を理解した。

 

 そして。

 

 理解したからこそ。

 

 それを利用できる。

 

⸻

 

「でも。」

 

 スタークは少し笑う。

 

「まだ足りないねぇ。」

 

 響は戦えている。

 

 しかし。

 

 自分がなぜ戦うのか。

 

 そこまでは辿り着いていない。

 

 力を持ったから戦う。

 

 誰かに必要とされたから戦う。

 

 それだけでは。

 

 いつか折れる。

 

「さて。」

 

「どうする?」

 

 まるで観客が舞台を見るように。

 

 エボルトは問いかける。

 

 もちろん。

 

 響には届かない。

 

⸻

 

 ノイズの攻撃。

 

 響が吹き飛ばされる。

 

「……っ!」

 

 痛み。

 

 恐怖。

 

 身体が動かない。

 

 その瞬間。

 

 スタークは静かに動いた。

 

「そろそろかな。」

 

⸻

 

 黒い影が戦場へ降りる。

 

「え?」

 

 響が顔を上げる。

 

「あなたは……!」

 

「久しぶり。」

 

 ブラッドスタークは軽く手を振る。

 

「元気そうで何より。」

 

「……敵?」

 

 響は警戒する。

 

 当然だ。

 

 目の前の存在は。

 

 味方には見えない。

 

「さぁ?」

 

 スタークは笑う。

 

「どっちに見える?」

 

 その言葉に。

 

 響は戸惑う。

 

⸻

 

 エボルトは知っている。

 

 人間は。

 

 答えを与えられると、その答えに縛られる。

 

 だから。

 

 選ばせる。

 

 考えさせる。

 

 自分自身で判断させる。

 

 それが一番、その人間の本質を引き出す。

 

「俺が助けた。」

 

「そう思うなら、それでいい。」

 

「俺を信用しない。」

 

「それも正解。」

 

 スタークは肩をすくめる。

 

「でもさ。」

 

「今は、目の前の敵をどうするか考えた方がいいんじゃない?」

 

⸻

 

 ノイズが迫る。

 

 響は迷う。

 

 目の前の男は信用できない。

 

 でも。

 

 今は戦わなければならない。

 

 その判断。

 

 スタークは見ていた。

 

「そう。」

 

 小さく呟く。

 

「それでいい。」

 

⸻

 

 スタークは直接ノイズを倒さない。

 

 ただ。

 

 ほんの少しだけ。

 

 流れを変える。

 

 攻撃のタイミング。

 

 敵の動き。

 

 響が気付ける程度の隙。

 

 それだけ。

 

「え?」

 

 響が気付く。

 

「今なら……!」

 

 攻撃。

 

 ノイズを撃破する。

 

⸻

 

 戦闘終了。

 

 響は息を切らす。

 

 スタークを見る。

 

「あなた……。」

 

「何が目的なの?」

 

 スタークは笑う。

 

「目的?」

 

 少し考える。

 

「いやぁ。」

 

「まだ秘密かな。」

 

 軽い口調。

 

 しかし。

 

 その奥には何も読ませない深さがある。

 

「ただ。」

 

 一歩下がる。

 

「君がどこまで行けるのか。」

 

「ちょっと興味があるだけ。」

 

⸻

 

 その言葉に。

 

 響は不思議な感覚を覚える。

 

 敵意。

 

 それはある。

 

 でも。

 

 殺意ではない。

 

 まるで。

 

 試されているようだった。

 

⸻

 

 その頃。

 

 フィーネは報告を受けていた。

 

「ブラッドスターク……。」

 

 資料を見る。

 

「シンフォギアとは異なる力。」

 

「しかし、装者に接触。」

 

「目的不明。」

 

 警戒する。

 

「危険な存在ね。」

 

⸻

 

 しかし。

 

 フィーネはまだ知らない。

 

 ブラッドスタークが。

 

 単なる新たな敵ではないことを。

 

 彼は。

 

 敵味方という枠の外側から。

 

 全てを観察している存在だということを。

 

⸻

 

 夜。

 

 nascita。

 

 石動惣一は店を閉める。

 

「いやぁ。」

 

「今日はなかなか楽しめたねぇ。」

 

 コーヒーを飲みながら笑う。

 

「人間って。」

 

「ほんと、予想外の答えを出す。」

 

 一瞬。

 

 過去の記憶が浮かぶ。

 

 自分の計算を超えた者たち。

 

 しかし。

 

 それ以上深く考えない。

 

 今見るべきものは。

 

 今の世界だ。

 

「さて。」

 

「次はどんな答えを見せてくれるかな。」

 

 怪物は笑う。

 

 壊すためではなく。

 

 未知の可能性を楽しむために。

 

⸻

 

 

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