戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第三話 「怪物が見る可能性」後編

 

 

 ブラッドスターク。

 

 その名が。

 

 少しずつ広がり始めていた。

 

 ただし。

 

 それは恐怖の象徴としてではない。

 

 理解不能な存在として。

 

⸻

 

 特異災害対策機動部。

 

 通称、2課。

 

 会議室。

 

 机の上には、いくつもの資料が並べられていた。

 

「ノイズとは異なる戦闘能力。」

 

「シンフォギアとの関連性は不明。」

 

「しかし、装者である立花響に接触。」

 

 報告を読む声が響く。

 

「敵性存在と判断するべきでは?」

 

 その意見に。

 

 別の声が返る。

 

「だが、現時点で直接的な被害報告はない。」

 

「むしろ、装者の戦闘を補助した形跡がある。」

 

 結論は出ない。

 

 敵なのか。

 

 味方なのか。

 

 それすら分からない。

 

「……。」

 

 その全てを。

 

 別の場所から聞いている存在がいた。

 

⸻

 

「いやぁ。」

 

 石動惣一。

 

 カフェnascitaの店主。

 

 その姿で。

 

 何気なくニュースを見ている。

 

「話題になっちゃったねぇ。」

 

 もちろん。

 

 偶然ではない。

 

 ブラッドスタークが残した痕跡。

 

 あえて消しきらなかった情報。

 

 人間が疑問を持つ程度の手掛かり。

 

 それが今。

 

 2課を動かしている。

 

「情報っていうのは。」

 

「多すぎても駄目。」

 

「少なすぎても駄目。」

 

 笑う。

 

「相手が考える余地を残すくらいが、一番面白いんだよねぇ。」

 

⸻

 

 夜。

 

 ブラッドスタークは再び響の前に現れる。

 

「また会ったね。」

 

 突然の登場。

 

 響は構える。

 

「あなた……!」

 

「そんな警戒しなくてもいいじゃない。」

 

 スタークは笑う。

 

「一応、前回は助けた側だよ?」

 

「でも、あなたが何者なのか分からない。」

 

 響の言葉。

 

 真っ直ぐな疑問。

 

 エボルトは少し楽しそうに笑う。

 

「そういうところ。」

 

「嫌いじゃないねぇ。」

 

「え?」

 

「いや。」

 

 スタークは誤魔化す。

 

「気にしないで。」

 

⸻

 

 エボルトは理解していた。

 

 響は疑っている。

 

 当然だ。

 

 自分のような存在を。

 

 簡単に信用する方がおかしい。

 

 だから。

 

 無理に信じさせる必要はない。

 

 信頼は。

 

 与えるものではなく。

 

 積み重ねで生まれるものだ。

 

「君さ。」

 

 スタークが問いかける。

 

「俺が悪い奴だったら、どうする?」

 

 響は迷う。

 

 しかし。

 

「その時は……。」

 

「止めます。」

 

 答える。

 

「誰かを傷つけるなら。」

 

「私は戦います。」

 

 その答え。

 

 エボルトは少し黙る。

 

⸻

 

 かつて。

 

 自分に向かってきた者たちも。

 

 似たようなことを言った。

 

 力の差。

 

 状況。

 

 勝率。

 

 そんなものを無視して。

 

 自分の答えを選んだ。

 

 だが。

 

 今。

 

 エボルトはそれを懐かしむだけで終わらせる。

 

 目の前にいるのは。

 

 立花響。

 

 この世界の少女だ。

 

「そっか。」

 

 スタークは笑う。

 

「なら。」

 

「その答え、最後まで貫いてみなよ。」

 

⸻

 

 その時。

 

 遠くで異変が起きる。

 

 ノイズ。

 

 響が振り向く。

 

「行かなきゃ!」

 

 走り出す。

 

 スタークはその背中を見る。

 

「迷わないか。」

 

 小さく呟く。

 

「普通なら。」

 

「一度くらい、自分の安全を考えるところなのに。」

 

 しかし。

 

 響は迷わない。

 

⸻

 

 戦場。

 

 響は苦戦する。

 

 まだ未熟。

 

 経験不足。

 

 だが。

 

 前回より動きが変わっている。

 

 自分で考えている。

 

 敵を見る。

 

 仲間を見る。

 

 周囲を見る。

 

「成長が早いねぇ。」

 

 スタークは遠くから観察する。

 

 そして。

 

 ほんの少しだけ。

 

 楽しそうに笑う。

 

「いいねぇ。」

 

「やっぱり、ゲームはこうじゃないと。」

 

⸻

 

 戦闘終了。

 

 響は疲れ果てながらも立つ。

 

 その姿を見て。

 

 エボルトは考える。

 

 もし。

 

 この少女が。

 

 もっと力を得たら。

 

 もっと仲間を得たら。

 

 どこまで行くのか。

 

 それを見てみたい。

 

「……。」

 

 一瞬。

 

 自分でも気付く。

 

 以前なら。

 

 そんな理由で誰かを見ることはなかった。

 

 利用価値。

 

 危険度。

 

 それだけだった。

 

 だが。

 

 今は。

 

 面白いから見る。

 

 変化する姿が興味深いから見る。

 

 それもまた。

 

 感情なのだろう。

 

⸻

 

 nascita。

 

 閉店後。

 

 石動惣一はカウンターに座る。

 

「いやぁ。」

 

「困ったねぇ。」

 

 口元は笑っている。

 

「面白いものを見ると。」

 

「つい長く遊びたくなる。」

 

 コーヒーを飲む。

 

「昔なら。」

 

 そこで少し止まる。

 

「……。」

 

 しかし。

 

 続きを言わない。

 

 過去は過去。

 

 今は。

 

 この世界の物語だ。

 

⸻

 

 その頃。

 

 フィーネもまた動き始めていた。

 

 ブラッドスターク。

 

 未知の存在。

 

 計画外の変数。

 

「排除すべきか。」

 

「利用すべきか。」

 

 判断を迫られる。

 

⸻

 

 だが。

 

 彼女は知らない。

 

 自分が盤面を動かしているつもりでも。

 

 その盤面そのものを眺めている存在がいることを。

 

 ブラッドスターク。

 

 エボルト。

 

 かつて世界を滅ぼした怪物。

 

 しかし今は。

 

 感情を知ったことで。

 

 別の楽しみ方を覚えた存在。

 

「さて。」

 

 暗闇の中。

 

 エボルトは笑う。

 

「次は誰が、どんな答えを出してくれるかな。」

 

⸻

 

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