朗報。ヒソカの左腕、完治。
…いやこれが冗談でも何でもなく、世界的な朗報でね。
最初はまあ、『医学界の中ではそこそこ注目のプロジェクト』程度だったのだけど、実際に骨・肉・皮と安定して生えていく辺りからは『メディア注目の一大プロジェクト』になっていた。
とはいえその段階ではまだ懐疑的な声も多かったのだが…手首を超えて指の復元にまで進むころには、殆どの意見が肯定的なものに挿げ替わり、爪まで見えた頃にはもういつ完治するかの秒読みすら勝手にやられる始末である。
しかもその盛り上がりが最高潮に達する瞬間を狙いすましたかのように、クーデリア・リーフィス著『紫華の魔法理論』が発刊。価格は一冊二万Jと、最初から大量に刷る前提の割には少々強気な値段設定であったが、全国の書店からは発注書の山が届き、印刷所がパンクする事態に陥った。
勿論誰もが扱える訳でもなく、適性率が一割程度であることも合わせて説明しているのではあるが…
(偽物が横行したり、転売価格が百倍になってたり…なんというかカオスだったねあの時は…)
元より魔法の普及を推進していたパリストン氏の手腕もあり、供給不足による阿鼻叫喚は少しづつ沈静化、しかし本が普及してから暫しの日数が経過したあたりで、今度は魔法による事故や犯罪が多発と、ある程度予測はされていたとはいえ、問題というのは矢継ぎ早に起こるものである。
ハンター協会からは事前にV5への働きかけがあったことも手伝い、混乱は常識的な範囲で収束に向かったが、社会構造そのものに影響を与えかねない大きな爆弾であったことは確かである。何やら魔法学校や養成所を設置するという話も、行政レベルで既に進んでいるようなのだから驚きだ。
(こういうのはエルドの仕事なんだよなあ…いや違うか。あの人探索者。官僚チガウ。探索者として1日10時間働いて、(実質)官僚としても8時間働く変態とかどこかで言われてたけど、ソンナワケナイジャナイデスカー)
私は私で話題の書籍の著者としてコメント求められたり、ハンター協会から
(確かゴン君がギドさんに勝って…キルアがサダソさんに勝ったんだったかな? 一応どこまでやれるかって話でゴン君がカストロさんと戦って負けてたけど。ゴン君に勝った後のカストロさんの顔は、随分すっきりしてるように見えた。きっとセラピー的な何かがあったんだろうね。ゴン君てそういうとこあるし。)
(あとキルアの方もリールベルトさんには負けたんだったね。キルアは躍起になって接近しようと頑張ってたけど、結局近づけずに完封負け。こっちも武器さえあれば絶対勝ってた!と悔しそうだったけど…確かにキルアの筋力を前提とした武器だと、リールベルトさんでも対応が難しいかも?)
二人もフロアマスターには興味が無く、一度全力で戦って負けたことで区切りが付いたのか、天空闘技場での戦いはこれでお終い。ゴン君はクジラ島という故郷に帰省すると言って、キルアと一緒に帰って行った。そこでゴン君は父親…ジンが残した己の手掛かりの一つである指輪とロムカードを入手。ロムの中身を解析するとグリードアイランドとのことで…残念ながらその道は、私が既に数か月も前に通過した道である。
『狩人の酒場』を凝で観察すれば、指輪の機能もざっくりは見れるので特に真新しい情報もない。強いて言うなら、グリードアイランドがジン作成のゲームだということがきちんと確定したことくらいだろうか?
――とまあ、ここまでが先月までの話。
今の暦は、既に9月1日である。
『238,118,040,090 J』
…何の数字だと思います? これね、私の口座残高なんですよ。
そうなんですよ……どうしますこれ?
「600億が目標って言ってたじゃないですか! ヒソカにも300億貯めてもらうぞっーてプランも立ててたじゃないですか! 何なんですかこれ! 目標の四倍近いですよ! バッテラさんの個人資産まであと半分じゃないですか! 銀行融資の話とかもう絶対要らないじゃないですか!」
「僕に言われてもねえ♣」
「お姉さん、もうハンターとしても
「兄貴の足も治ったしな…ピオスって人の身柄を
「元の世界だとここまでのお金は持ってないよ!」
私が人並み以上にどかっと稼げるようになったのは、探索者として最高位の紫位になってからだ。一応王都に修練所と実験施設付きの立派な持ち家はあるけどさ…こんな大富豪みたいな金銭までは、当然持ち合わせてはいない。
イルミの脚(とついでに左手の指)の治療については、キルア経由でなんと私の方に依頼が来たのだ。どうにもピオスさんに直接依頼しても多忙を極めて優先が難しいとのことで、ならばと無理矢理にでも優先させられそうな立場の私に、白羽の矢が立った訳である。この世界の療術師は徐々に増えて来ている訳だが、欠損部位再生の実績まであるのは現状ピオスさんだけ…金に糸目は付けないとまで言うし、彼の脚を奪ったのは他ならぬ私である。
という事情も踏まえてピオスさんには平身低頭お願いさせて頂いたのだが…依頼料の300億の半分を私に渡すとゴネだしたのでまたも一苦労。結局三割の90億もの大金を渡されることとなったので、せめてもの仕事として彼女の身柄を保証する旨を、ゾルディック家に"取引"という形で了承させた…という経緯があった。
(キルアは例外にしても、あの家に囲い込まれたらもう一生外に出れないかもだしね…)
――閑話休題
「んで、ヨークシンまで来たけど何するんだっけ? サザンピースオークションまではまだもうちょい先だぜ? 携帯新調出来たのは良かったけどさ」
「久しぶりに皆に会えたし…私も仕事を一段落させた…というか『もう今後暫くは受けません!』て断ったからさ。他のオークションに参加したり、たまには遊んでみようかと思ってね」
「それなら蚤の市行こーよ!サッと見れるし!掘り出し物もあるかもしれないよ!」
「んー♣ それなら僕の魔法が活躍するかもね♥ まさか僕にこんな、特質系みたいな魔法適性があるとは思わなかったよ♥」
「…サイコメトリー的な魔法ですね。名前を付けるなら《
ヒソカには魔法の適性があった…しかしそれは戦闘用というよりは探知に特化したものだ。物に触れることでその記憶…残留思念のようなものを読み取り、追体験する魔法。進化すればきっと自分だけでなく、他人にも同様の体験をさせられるようになるだろう。
…実はヒソカはこの魔法を使って、私の杖の記憶を読んでいる。つまりヒソカは、私の元世界を実際に観測した、この世界唯一の存在である。その中で彼がいたく感銘を受けたのは、やはり
人は…人単体でもあの
――後で気付いたが、四次試験中に私はこの杖と一緒にお風呂に入っている。正直思うところもあるが…流石に不可抗力なので怒りはすまい。ヒソカの興味はやはり戦闘に寄っていたようだし、追体験したのもそちらがメインのはずである。……というかそう思いたい。とまあそういった経緯もあるので、以降は私の愛杖に《
「良いねその名前♥ というかこの世界で『全ての魔法の母』とまで称される君の名付けなら、もうそれが絶対的な正解なんじゃないかい?」
「やめてください…付与魔法とそれに付随して覚えた属性魔法以外は、基礎知識以外からっきしなんですから…。」
(なんか一部では『クーデリア・リーフィスはあらゆる魔法を扱う魔法の神』みたいな扱いすらされてるからね私…大半の人には正しく情報が伝わっているけど、噂にはどうしても尾鰭が付くから仕方ないのかな? この世界用にチューンした『付与理論大全』も来月発刊だし…私はあくまで付与師なんですよーって、これでちゃんと伝われば良いなあ…)
▽ ▽ ▽
その後はそれっぽい掘り出し物を探す過程で『凝』すれば見つけやすいと気が付いたり、私の武器に使えそうなベンズナイフを買ったり、忘れずにサザンピースオークションの入場券を兼ねる
その間にヨークシンシティの地下競売を狙った大規模なテロが発生したようであるが……それがこちらに飛び火するようなこともなく、平和に時が過ぎて行った。
―――あっ忘れてた。
実はヒソカは、6月の時点でフロアマスターに昇格済みだったりする。
本当はクロロという人を指名したかったようなのであるが…昇格からバトルオリンピアが一度開催されるまでの期間中のフロアマスターは指名出来ないという裏ルールがあるらしく、生憎断念。
仕方なしに適当な相手を指名していたが、ヒソカ曰く「65点♠」だそうで…点数的には可もなく不可もなくといったところであるが、このところ80点以上の高得点ばかりが続いたことも手伝い、少々消化不良だとボヤいていた。
私に言われてもなあといった次第である。
一気に時間飛ばします。
旅団関連は次話で簡単にさっくり進める予定。