とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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これでまた一区切りです。
G.I編が最終章になるので、
少しづつ終わりも見えてきましたね。


42.サザンピースオークション

 

――9月6日

 

 ヨークシンで大規模テロ発生と聞いた時には、サザンピースオークションが中止にならないかとヒヤヒヤしたものだが…3日夜の時点で首謀者は撃退されて、事態は沈静化。6日のオークションには影響なしと知って一安心である。

 

(見せしめとして首謀者とその配下を解剖するスナッフビデオが流布されてたみたいだけど…気分悪いなあそういうの。意味が無いとは言わないけれど、少なくとも好んで視聴するようなものではないね…)

 

 ヒソカはあまりニュースを見ない人間のようなので、そもそも大規模テロに気付いてもいないようだったし、沈静化したと聞いても「ふ〜ん♦」で終わっていた。もういい大人なんだから、時事ニュースくらいには興味を持って欲しいものである。

 

「ついに今日だね…お姉さん!そのカタログ一つで五人までは入場出来るみたいだから、俺たちも参加させてもらうね!」

 

「まあぶっちゃけ勝ち確だろ。7本出品されるゲームソフト、全部競り勝とうとしたら1兆7000億とかだぜ? 国かっての!」

 

 正装したゴン君とキルアも付いてきてくれてのオークション参加であるが…ここは基本的に子供は来れない場所なので、かなり注目されてしまっているようだ。

 

(……いや違うわこれ、注目されてるの私だ。)

 

 発(・)行(・)部(・)数(・)一(・)億(・)部(・)超(・)え(・)は伊達ではない。今や完全に時の人な私である。オークション会場中の視線がこちらに集まり、中には声をかけて来る人まで現れる。

 

「なんという美貌…全ての魔法の母に直接お会いできるなんて、光栄の極みです!」

「まあ……その藍色のドレス、とてもよくお似合いですこと。シルクの艶も仕立ても、素晴らしいものですわねぇ…ふふ、思わず見惚れてしまいますわ」

「い、今!本持ってるんです!紫華様のサインを頂けますか!?」

「私の家内も魔法を使えましてね…今では魔法を嗜むのも社交界ではステータスなのです。いやあ、私も適性があれば良かったのですが…」

「今ではたとえ自分が使えずとも、魔法の知識が無いと恥をかきますからねぇ…私もこれで通して読むのが三回目ですが…非常に読みやすくて助かっております。」

「写真を一枚よろしいですかな? 倅が貴女の大ファンでしてね…いやあそれにしてもお麗しい! あまりに絵になるので、撮った写真を額縁に飾りたいくらいですよ!」

 

 折角だからと2000万ほど掛けてコーディネートした甲斐もあり、上流階級と思しき御歴々からの評価も上々である。まあ、私の場合は元の素材も良いからね! 深い藍色のシルクドレスに、胸元から裾へ流れるような銀糸の刺繍。真珠とダイヤを控えめにあしらい、髪には紫華のブローチを邪魔しない程度に小さな宝石飾りを添える。仕立ての良さと素材の格で、決して派手ではないのに目を惹く装いを意識してみた。

 

 こうして完璧に着飾れば、どこぞの国のお姫様やお貴族様にも引けを取らない自信がある。付与が使えて一つ星のプロハンターで、世界的に話題の書籍の著者で、超がつく大金持ち! 気立ても良くて教え上手で、ついでに器量も良くてスタイルも抜群!! 

 

(うんうん。我ながら何たる高スペック!

こーんな優良物件、放って置くほうがおかしいよねー♪)

 

 多くの人に囲まれて身動きが取れなくなることを少々心配していたが、隣でこれまた正装しているヒソカが睨みを利かせてくれていることもあってか、あちら側も過度な接触は控えてくれていたようである。

 

 煽てられたりサインを求められたりを、上手く執り成して捌いていきながら、頃合いを見てそろそろオークションが始まることを理由に解散して頂く。

 

「ありがとうヒソカ。背も高いしペイントもないし…その正装、似合ってますよ?」

 

「君をエスコートする誉れに預かるからには、僕もちょっとやる気になってね♥」

 

「へぇ…結構気の利いたことも言えるんじゃないですか。ずっとそれなら絶対モテると思いますけどね?」

 

 両者共にプロハンターで、片や全ての魔法の母、片や現役フロアマスターである。傍からすればお似合いカップルに見られてるかもしれないなあ…とは薄っすら思うが、ただの師弟ですと毎度きっちり否定してるので、大きな問題にはなっていない…はず。どうにもゴシップ系の記事は苦手である。

 

 ――そうこうしていたらオークションの開始が宣言されたので、きちんと席に座って進行の邪魔にならないように心掛ける。

 

(……うん。バッテラさんもいるね。最初は色々と小細工も考えてたけど、ここまでの資金があるなら小細工はいらないかな。普通に勝負して普通に競り勝とう。)

 

▽ ▽ ▽

 

「続いての品、幻のゲームグリードアイランド!!」

 

 進行役の女性がゲームについて、私は既に知っている情報をつらつらと並べて行く。新情報と言えるのは、今回オークションに持ち込まれた7本全てが、ジェイトサリというプロハンターの持ち込みであるということくらいか。このゲームは大変危険なので覚悟のある人のみご参加ください…という注意の後、ついに目的の品物のオークションが開始された。スタート価格は10億Jからである。

 

「11億出ました」

 

「15億出ました」

 

「105番 倍!! 30億!!」

 

「16番 さらに倍!! 60億!!」

 

 親指を立てる形の意味を聞きたかったゴン君が『前の人と同じアップ』の合図を出すが、ゴン君は今回ただのゲストであり、カタログ購入の名義人ではない。胸に番号が付いていない人の合図は無視されるので、彼の合図で金額が倍にアップされるようなことは無かった。

 

「それは『前の人と同じアップ』だから、今回だと倍になるね。今回は私(201番)がやるから、ゴン君は合図しちゃ駄目だよ?」

 

「201番 さらに倍!! 120億!!」

「他ありませんか?」

 

「16番 さらに倍!! 240億!!」

 

「201番 290億!!」

 

(流石にまだまだ序の口だよね…今までの落札額を鑑みても、300億まではほぼ確実についてくる。相手が残り6本に備えてどれだけ資金を残すかだけど、最低でも500億以上は覚悟が必要!)

 

「…………」

 

「グリードアイランド 201番 290億で落札!! ありがとうございました!!」

 

(…………あれ?)

 

▽  ▽  ▽

 

「思ったより安く落札出来たね! ただ…バッテラさんてもっとお金あったよね? …お姉さんがずっと警戒してた人なのに、何かあったのかな?」

 

「……もしかすると、ゲームをクリアしてでも叶えたい願いが既に叶ったか、叶える必要が薄くなった…てことかも?」

 

 バッテラ氏が大金を払って療術師を集めているという話はキャッチしていたけど…ただそれで具体的に何をしているかという情報までは拾えなかった。相当な戒口令が敷かれていたと考えるべきだけど、目的は持病か…身内の難病治療だろうか?

 

 バッテラ氏ほどの大富豪ともなると、己の弱みは可能な限り世間には隠したいものだろう。とはいえ如何に療術師といえども、現代医療でも治療が出来ないような難病を完治させるなど簡単なことではない。それもまだまだ新米の療術師ばかりだ…オーリスのような英雄級の療術師はまだ、この世界では育っていない。確かな才能を感じるピオスさんですら、やっと中堅の入口といったところだろうか?

 

 頭数を揃えることで魔法の出力を上げるという試みは、確かに可能。それで何とかなった、若しくは現在進行形でなんとかしようとしている? 願いを叶える手段が増えたのなら、そちらの方にもお金を分散投資するのは当然…グリードアイランド落札に割く予算が、大幅に減ったとしても不思議ではない。

 

「……魔法のような報酬を求めてたら、まさか魔法の方から世界にやってきたんだぜ? そりゃそういうこともあるんじゃねーの?」

 

「同感だね♣ 君はもっと、自分が与えた影響の大きさを自覚した方がイイ♠」

 

「いやまあ…理屈としては理解してますけど、まだ推測の域は出ないじゃないですか!」

 

 何はともあれ…二千億以上の資産を残してのグリードアイランドGETである。余ったお金は…半分くらい残して寄付してしまおう。ゼビル島の環境保護基金とか、あとは…経済的な理由で学ぶ機会を得られないこの世界の子供たちのためにでも使おうかな。

 

 その辺の話は全てパリストンさん…だと依頼のバランスが良くないし、会長寄りのマーメンさんあたりに相談してみよう。ただこれからすぐにゲーム始めちゃうから……うん。千億程を好きに運用してくださいって形で丸投げすればいっか! こういう話は私が下手に考えるより、そういった調整が得意そうな人に任せればいいのだ。

 

 メンチさんへのお詫びは…船はもう新調したと言っていたし、世界中を飛び回る過程で見つけた美味しい料理やそのレシピで良いかな? ゲームからの一時離脱手段が確立した後なら、一緒にゲーム出来ないか誘ってみるのも良いかもしれない…メンチさんもレイザーには借りがあるからね…。

 ああ今思い出しても怒りが沸く!首を洗って待ってろよレイザー!

 

「ゲームを開始するのは、天空闘技場のヒソカが所有するフロアにしましょう。防犯もしっかりしてますし、少なくともあと一年以上は追い出されませんからね。」

 

 バトルオリンピアまであと一年くらい時間があるし、更にそこからフロアマスター挑戦で指名されて負けない限りは追い出されない訳だから、猶予はたっぷりとある。逆に私はもう、200階闘士でもないからね…敗北1+不戦敗3が貯まってしまって、8月の中頃には追い出されてしまっている。その時は実況ちゃんが血涙を流して悔しがっていたので、悪いことしたなぁと思ったものである。

 

 ――ゲーム開始直前に知ったことであるが、バッテラさんはその後、残りの6本全てを平均250億前後で落札したそうである。仮に落札額の上限を280億程度に抑えていたのだとすれば…私が290億で競り勝てたことには説明がつく。

 

 落札額の上限こそ下げたものの、こうして買占めを継続するからには、ゲームクリア報酬までを諦めた訳では無いはずだ…彼は沢山のハンターを雇ってゲームを攻略させているため、いずれはバッテラが雇ったプレイヤーとの衝突も予想されるだろう。

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 またも飛行船に乗り込み、意気揚々とヨークシンから天空闘技場まで戻った私たち。ゲームは既に起動済みであり、メモリカードは既に一枠が埋まっているため、セーブが出来るのはマルチタブを使っても最大4人分。私、ヒソカ、ゴン君、キルアでちょうどぴったりである。

 ゴン君だけは、ジンが残したとされる指輪付きなので特別仕様だ。

 

 グリードアイランドをプレイするので暫く現実…というかあの島の外に戻れないであろうことは、マーメンさんとリールベルトさんには伝えておく。特にリールベルトさんは現在『9勝3敗』…フロアマスターになれるかどうかの瀬戸際まで来ているので、ゲームに誘って不戦敗なんてことがあってはならないのだ。

 

 ゲーム中で入手出来るアイテム(カード?)を使えば戻れることは狩人の酒場の情報で既に分かっているので、その頃に都合がつくのであれば一緒にゲームしましょうとは既に誘っている。来月発刊される『付与理論大全』についても、そのサンプル版を先に受け取り、内容確認後にはサイン付きで後輩付与師の方に郵送済みだ。方々にも許可は取っているので、特に心配することも無いだろう。

 

 これで後顧の憂いは断った! さあいざプレイ!

 と…内心気合を入れていたその時、どうにもぎこちない様子のゴン君が口を開く。

 

「結局俺…お姉さんに何も出来てない…。こんなんで本当に一緒にプレイしてもいいのかな? お金も情報も、結局全部お姉さん任せでさ。もしジンに会えても、お姉さんを元の世界に帰す手伝いが出来たなんて、胸を張って言えないよ…」

 

「何言ってるのさ…役に立つのはこれからでしょ? 発売してから十年以上、プロを含めても誰もクリア出来てないゲームなんだよ?」

 

 いつも元気なゴン君にしては、どうにも自信を喪失していそうな感じがするのでフォローを試みるが…どうにもこれでは足りないようだ。

 

「うん…でも…それこそお姉さんとヒソカだけでも…」

 

 ええい女々しい!

 

「そもそも付与師はパーティ全体を支援する支援職! 支援する相手がいてこそ真価を発揮する!つまり…私の本領は今、これから! それも見ないでやれ役に立つだの立たないだの…早計すぎると思わない?」

 

 自分で言ってより深く自覚するが、この世界に来てからというもの、今まで私は己の不得意分野でずっっと戦ってきた。ソロプレイなんて、本来付与師のやることではないのだ。だったらゴン君にはこう自覚して貰わないといけない。

 

「支援さ(・)れ(・)る(・)ことで役に立つことがあるんだよ! 支えら(・)れ(・)る(・)ことが助けになることもあるんだよ! だったら、協力してゲームをプレイすること自体が一番の助け!つまり、手助けが出来たと胸を張って良いの!

他ならぬ、これから助けられる私が許す!!

……これでどう?」

 

「すっげーこじつけ……まあ、本人がこう言ってるんだから良いんじゃねーのゴン? というかゴンに断られたら俺までやりずれーぞ」

 

「支えられることが助けになる……そんなこと、考えたこと無かったなぁ。……うん!ありがとうお姉さん!俺、プレイするよ!それで一杯お姉さんに支援してもらうんだ! 負けないよ!」

 

 いや何を競って勝つんだよ…と言いたげなキルアだったが、折角ゴン君が納得してくれたのだからそのまま黙っていて頂きたい。

 

 始める順番はやはりゲームを買った私からということで、ゲーム機を両手で覆うようにしてから『練』をする。

 

(レイザーとやらの特別呪文と同じ仕様なら、我は物扱いで一緒に転移できるはずだが果たして…)

 

 

 バシュッ

 

 

 ロードのそんな声が聞こえたと思った直後、私の身体はそのままその場から消失した。

 





ここからは完全にクー子無双となります。

・ソロプレイ
・マジックアイテムなし

とかいう完全縛りプレイから解き放たれますので、ようやっと本領発揮ですね。ドラクエで例えると、勇者一人旅+道具使用不可(光の玉とか魔法の鍵とか虹の雫もなし)が近いです。
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