とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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クー子達がゲームを開始したのは新規バッテラ組(プーハット等)の6時間前とします。

オークション後に審査→契約書配布→古城に移動→ゲーム開始で結構ラグがありますからね。



43.グリードアイランド編①

 

(我転移成功せり。いや全く心臓に悪い…個別に扱われて置いてけぼりは御免被るぞ)

(あれ…意外だね? それはそれとして物扱いに怒るかと思ったけど?)

(不満には思っておるぞ? 益が無いから怒らんだけだ)

 

 全くいつものロードだなぁと内心安心しながらも、周囲を観察する。どうやらここは人工的な建物の中のようだ。一本道のようなので素直に道なりに進むと…開けた部屋に到着。その中心に一人の女性が座っていた。

 

「グリードアイランドへようこそ…」

 

「ご歓待ありがとうございます。初めまして。私はクーデリア・リーフィスと言いますが…貴女のお名前をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

 

「おお…これはご丁寧に。折角名乗り頂いたのであればこちらも…イータとお呼び下さい。」

 

(どうにも普通に返してくれるみたいだね。予備知識を蓄えるためにも、時間を見つけてキルアからは何個かゲームを教えて貰ったけど、この人はNPCというより…)

 

「貴女は…もしかしてゲームマスターの一人ですか?」

 

「!…ふむ。成程。そちらの質問の答えとしては、YESです。どうやらあなたはここに一度不法侵入をしているようですね。外見の特徴から察するに…今から大体7か月前、二人組での船での侵入でしたでしょうか?」

 

(おお!まさか本当に正解なんて…! ということは…)

 

「はい。その通りです。その際にレイザーという男に正規ルートで入って来るように注意を受け、特別呪文とやらで強制的に追い出されました。その注意を守ってこの度は正規ルートで入島、つまりこのゲームをプレイさせて頂いている訳ですが…もし可能であればレイザーに伝言をお願いしたいです。」

 

「伝言、ですか。内容次第ですが、構いませんよ?」

 

「ありがとうございます! では…『よくもメンチさんの船を喪失させてくれたな!絶対に許さんぞ!この恨みは必ず晴らすから首を洗って待っておけ!!』でお願いします。」

 

「は…はい…」

 

「ああ後、『船が完璧な保存状態で残っているなら減刑の余地あり』もお願いしますね。私としてもこれは重要なことなので…それと『もし仮に、船が既に使い物にならない程に損壊している場合は、この『紫華の付与師』の名の下に、完膚なきまでに叩きのめす!』も追加でお願いします。」

 

「ええと…はい。確かに、伝えておきますね。会うのは大変かもしれませんが…」

 

 言いたいことは言えたので、若干満足していたところ、ゲームの説明をして良いかと聞かれたので勿論了承する。彼女には少々余計な仕事をさせてしまって申し訳ない。

 

 

 

――ざっくりな説明であったが、説明をまとめると以下である。

 

・配布した指輪を装着することで「ブック」と「ゲイン」の二つの魔法が使える。

 

・「ブック」で宙に浮く本(バインダー)を出現させることが可能。本には100の指定ポケットと45のフリーポケットがあり、指定ポケットのNo.000~No.099までのカードを集めることがゲームクリア条件。

 

・この世界のアイテムは入手することで勝手にカード化する。ただしカード毎に定められたカード化限度枚数を上回っている場合はカード化されない。

 

・カード化したものは「ゲイン」と唱えることでアイテムに戻るが、一度アイテムに戻すと二度とカードに戻せない。本に入れずに1分が経過した場合も自動的にアイテムに戻り、この場合も同様である。

 

・プレイヤーが死亡した場合は本と指輪が破壊され、本の中のカードは全て消滅する

 

 

 

「……すみません。私はこの島から一時離脱するためのアイテムが存在することを既に知っています。もし仮に一時離脱した場合、本の中のデータがどうなるかは御説明頂けますか?」

 

「申し訳ありませんが、その情報についてはゲームを進めながら御自分で入手してください。また、この場での説明範囲は決まっておりますので、これ以上のご回答も出来かねます。」

 

(成程ね…ただまあ先行プレイヤーの誰も知らないということは無いだろうし、この辺は追々調べていけば良い話。最初のチュートリアルで聞けるような話じゃあないってことかな。)

 

「それではこれで説明を終わらせていただきます。ゲームの開始はそちらの階段からどうぞ。貴女のご健闘をお祈り致します。」

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 ――ゲーム開始から十分後

 

 ゴン君、キルア、ヒソカの順でスタート地点の草原で合流。ゴン君の指輪のセーブデータにはジンからのメッセージだけが残されており、そのメッセージの内容も『作ったゲームの自慢がしたい』『自分の手掛かりは特にない』『ゲームを楽しめ』くらいのものだったらしい。

 まあ自分の作ったものを人に楽しんで貰いたいという気持ちは、著作を抱える私としても痛い程に良くわかるので…文句は言うまい。

 息子へのメッセージとしてはどうかと思うけどね。

 

 あと草原に降りてからずっと感じている、ベットリとした視線については全員気が付いているようで…ただまあここまで離れているのに気づかれるようでは大した存在ではないというのは完全に同意である。ゴン君だけは「そうなんだ…」て感じの反応でちょっと初々しかった。

 

 

「そういえば皆は『堅』の持続時間はどれくらいまで伸びた? あっヒソカ以外ね。」

「俺もゴンもまだ20分てとこ。もうちょい伸ばさないといけないんだけどキツくてさー。」

「これでも最初と比較して十倍くらい伸びたんだけどね…流々舞での『流』の修行は30分超えてからだって。」

 

「そっか…私もやっと30分くらいかな。最近忙しくて鍛錬の時間があまり取れなかったから全然伸びてないんだよね…それでも一応『念』付与ありなら三時間は超えたから、ヒソカから合格は貰えたんだけど…」

「やっぱ付与ってえげつねーよな。六倍だぜ六倍!」

「僕は十「聞いてないので大丈夫です」……♠」

 

 ゴン君とキルアはクジラ島から戻ってきた後は、天空闘技場でヒソカのもとで修行をつけて貰っていたのだ。そのお陰もあってか念能力者としてそれなりに成長しているようである。

 ただしヒソカは他人の『発』には口出ししない方針なので、どちらも『発』の開発には至っていない。

 

 こんな調子で適当な会話をしながら視線を感じる方向に向けて足を進めていると、上空からキィィィンという音がして、飛来する何者かが、私たち四人の近くに着地した。

 

 

 相手は両肩にそれぞれ雷・風という漢字を入れたドレッドヘアの男。

 

 私は反射的に「ブック」と唱えて本を出現させ、その上で杖を構えて男を牽制した。ヒソカは興味深そうな顔で男を眺めているが特に何もせず、ゴン君とキルアは急に現れた男に警戒はしつつも純粋に何者かが気になっているようだ。

 

(多分転移の呪文(スペル)だね…やっぱりレイザーの特別呪文以外にもあると考えて良さそうだ。そしてそのような呪文が使えるということは、こちらも本を出していないとゲーム内での呪文(スペル)の攻防に参加できないと見る…本は手を塞がないからある程度は出し得のはず)

 

「そちらのお嬢さんだけ経験者かな? キヒヒ…まっプレイヤー同士、ちょっとお話しようよ」

 

 そういってカードを1枚取り出して本にセット、操作画面に嵌め込み操作したかと思えば、すぐに私達の名前を把握し始めた。どうやら本とカードを組合せることでそのようなことも可能らしい。正直制圧は余裕に思える相手なのだが…情報が欲しいので今(・)は(・)泳がせておく。

 

 男は暫く悩む素振りをした後、カードを1枚取り出し、私に向けて呪文(スペル)発動のための宣言をしだした。

 

「『追跡(トレース)』使用(オン)!!クーデ「遅いっ!!」リブァアァアアアア!?」

 

「ヒソカ! 拘束!!」

「はいはい♣」

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

『伸縮自在の愛(バンジーガム)』によりギッチリ拘束された男は、現在ヒソカの下敷きである。

 

 因みにさきほど男をブチのめした攻撃は、いつもの杖への『風』の付与。それにリールベルトさんの『双頭の蛇による固定砲台(ソングオブオフェンス)』を参考にして開発した高速攻撃である。

 

 仮に属性魔法として扱うなら《風弾翔撃(ウィンドバレット)》あたりが適切であろう。亜音速程度の速さなのでヒソカ級には対処されてしまうだろうが…並の相手ならこの通り、呪文(スペル)の宣言を妨害して、一定時間怯ませることくらいは十分可能な威力だ。

 

 更に加えて私はこのゲームでの名前を『クーデリア・リーフィス』のフルネームで登録しているため、宣言には少々時間が掛かるのだ。レイザーが発動した呪文(スペル)は複数人対象だったので名前の宣言は無かったが、全ての呪文(スペル)が複数人対象だとは考え辛く、ならばと対個人用の呪文(スペル)に備え、リーフィスまで入れて登録したという訳である。…まあ今回の相手はクーデリアでも十分だった訳だが、いずれ役に立つ日も来るだろう。

 

「で、貴方はこのカードを使おうとした訳ですか…対象の位置情報を捕捉する効果の呪文(スペル)ということで、これは立派な攻撃と見做します。つまり正当防衛ですね。」

 

「た、助けてくれ!こ…この拘束とんでもなくキツくて…あ…が…が」

 

「カードは全部いただきますし、情報も下さいね。そしたら(ヒソカが)緩めても良いですよ?」

 

「わ…分かった!あとこいつの殺気も抑えさせてくれ!殺される!」

 

「待ってお姉さん! その…情報はいいと思うけど…カードは許してあげられないかな?」

 

 流れるようにカードを全て奪おうとしたのであるが…何故かここでゴン君からストップが入る。

 強奪に近い形でカードを奪うのは、ゲームを楽しんでいるとは言えないのではないか?というのがゴン君からのお達しだ。まあ…分からないでもない。彼からすれば折角父親が作ったゲームをプレイし始めて、さあ楽しもうかと思った矢先の、急に血生臭い展開である。「これは違う」と思ってしまっても仕方が無いところだ。

 

「ごめん…お姉さんの事情を考えたら、単にオレの我儘でしかないってのは分かってるんだけど…」

 

「いや、良いんだよ。少なくとも今回はゴン君の言うことが正しいかな。この人は直接襲い掛かって来た訳じゃなくて、単にゲームの範囲内でカードを使った攻撃をしただけ。それなのにカード全没収は、確かにやりすぎかもしれないね。」

 

 私とヒソカだけであれば、まず間違いなくこのままカードを奪っていたであろうが…ここはゴン君に免じて情報提供だけで許してあげることにした。それに感謝したのかは知らないが、男はあまり出し渋るでもなく、様々な情報を私たちに教えてくれるようだった。

 

 

 ――三十分後。

 

 彼はそれなりにプレイ経験があるプレイヤーだったようで、十数枚の指定ポケットカードに加えて呪文(スペル)カードも相当数抱えていた。手持ちのカードの説明文を読ませてもらったり、一部の指定ポケットカードについては分かる範囲で入手方法も聞き出せた。

 その他にも、近距離呪文(スペル)が適用される範囲が半径20mであることだったり、攻撃・防御・複製・変化などの様々な効果を持つ呪文カードが全40種類もあること等、聞き出せた情報は本当に様々である。

 

 気になっていた一時離脱手段の情報、加えて『離脱の際にはフリーポケットのカードは消滅する』『指定ポケットのカードは残るがそちらも10日経過でセーブデータごと消滅する』という情報も聞き出せたのは大きい。離脱の際にはフリーは空にして、指定ポケットカードは預けるか、10日以内に戻らないといけないね。

 

 更に加えて簡単な地理情報まで聞き出したあたりで、これでもう十分だと拘束は解いてあげる。私達はこれからアントキバの方に向かうと言ったら、そのまま即座に『再来(リターン)』を使ってマサドラに逃げて行ったので…よっぽどヒソカが怖かったのだろう。

 

 

「ハンター試験中も思ってたけど…お姉さんて結構容赦ないよね…?」

 

「そうかな? 普通だと思うけど…少なくとも探索者は皆これくらいはやるよ?まあダンジョンは人数制限があったり、国が入口を厳格に管理してるから、他の人と遭遇するようなことは滅多にないんだけどね…基本的に全部人外の敵」

 

「まあ殺したらカード奪えない仕様みたいだし、その範囲内なら結構鬼畜な方かもな。奪ってから殺すような輩も多分いるんだろーけどさ」

 

「でもこれで一気に進んだじゃないか♠ カードは増えなかったケド、情報面では脱初心者ってやつだね♥」

 

 本には半径20m以内の範囲に入った相手の名前が自動で登録されるので、先ほどの男の名前も当然本に登録されている。もし彼の情報が真っ赤な嘘であれば、私たちの報復の恐れがあるという訳で…きっと男の情報には嘘はないであろうと信頼できる。

 

 更に――

 

『ヒソカ…さっきの男のリストバンド、一個盗ってましたよね?』

『よく視てるね♥ 安心してイイ。あの男の言葉に嘘はなかったよ♠』

 

 ヒソカの《追憶(ヴィジョン)》による裏取りまでもがばっちりである。ついでに聞けていなかった細かな情報までも入手と、まるで隙が無い。

 こうして私たちは、ゲーム開始から一時間にも満たない間に、中堅プレイヤーに近い情報量を一気に獲得したのであった。

 





本当はカード全部奪ってたのを急遽書き直し。
18巻の原作ゴンにガッツリ怒られました。

「オレは問答無用でカードを奪うってやり方はキライだ」
「約束がなければただの強奪」

うう…心が痛い
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