とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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修行編その1です。


45.グリードアイランド編③

 

 ――10日夜、私たち四人は岩石地帯を抜け、マサドラ途中にある小さな町で休憩。朝日が昇って全員の起床を確認し、修行がてらに走っていくこと数時間、その日の昼前にはついにマサドラに到着した。

 

 集めた怪物カードはそこそこ高値で売れ、代わりにグレード高めの食料や簡易テント、替えの服まで買い揃えることが出来たのである。

 

「結構色々売ってるんだね!カードだからあんまりスペースも取らないし、お店も凄いやりやすそう!」

 

「店の商品もカードなんだな…そういえばNPCが持つカードは一分経っても勝手にアイテム化しないし、結構その辺は緩そー」

 

「必要な物は大体買えたし、このまますぐに岩石地帯に戻っても良いけど……折角だから一日だけはここで情報収集でもしない? 修行に役立つようなアイテムや指定ポケットカードも、一定数あるみたいだしね」

 

 修行は大事だが、出来ることならより効率的にだ。あまりに慌ただしいと心に余裕も持てないからね…忙しないのは好みではない。

 

「んー…そうだねえ。このリストバンドの持ち主は、この近くで二枚ほど指定ポケットカードの情報を得ていたようだよ? こうやって後からでも確認出来るのは助かるね♣ やっぱり便利♥ 僕の《追憶(ヴィジョン)》♥」

 

「それで、どんなカードの情報ですか?」

 

「うん…一枚は君が喜びそうなものだね♦ No.006『酒生みの泉』だそうだ…名前の通り、酒が泉のように湧くんじゃないかい?」

 

「!!!」

 

「でもこれはダメ♠ 君はこれからし(・)っ(・)か(・)り(・)鍛(・)え(・)る(・)と言ったからね♥」

 

 ヒソカから釘を刺されてしまったが、私とて分別はある。今回ばかりは我慢だ我慢。

 それに指定ポケットカードであるならば、いずれは入手することになるのだ。複製の呪文(スペル)もあるみたいだし、いつかはゲインして使ってしまっても問題無いだろう。

 

「もう一枚は?」

 

 話に合流してきたゴン君がワクワクを顔に出して質問する。

 

「No.026『7人の働く小人』…ランクはAだけど、これについては大体の入手方法まで分かってるよ♦」

 

「……それ、是非今からでも取りに行きませんか?ランクAは上から3番目。情報を入手するまでの難度を評価している可能性もありますが…少なくとも強(・)さ(・)という尺度では私たちはあのプレイヤーより遥かに上です。これから目指す先がどのレベルかを体験しておくのも良いでしょう。危険そうなら、私が全力で付与したヒソカ一人にやってもらえば危険はありません。」

 

「酷いな♥ 君は師匠を捨て駒にするのかい?」

「ご冗談を。私が支援した師匠は、きっとこの世界の誰にも負けません。」

「……この世界の、ね♠」

 

▽ ▽ ▽

 

(分かってたけど。やっぱり色々とオーバースペックだね…付与ありヒソカ)

 

 入場料10万Jを支払うことで、最大七名が五分だけ入れる借りぐらしの家。

 7人の小人が隠れているので、時間内に全員捕まえて籠に入れればクリアーという課題であり、絶の達人が2人、すばしっこいのが2人、攻撃してくるのが2人、超すばしっこいのが1人という布陣がプレイヤーを苦しめる。

 

 とまあそういうコンセプトなのは分かるのだが、今回ばかりは相手が悪すぎた。

 

 身体に『念』を付与したヒソカはそれはもう圧倒的であり、攻撃してくる2人を瞬殺したかと思えば、絶状態で隠れている小人を秒で見つけ、すばしっこい小人は『伸縮自在の愛(バンジーガム)』すら使わずに指で摘まむ。最後の砦の超すばしっこい小人は、ゴン君の動体視力でも目で追うのがやっとの超速であったが、気付いた時にはもう部屋中がガムに覆われており、逃げ場を失った小人は両手を上げて降参した。

 五分どころかまだ一分も経過しておらず、そのあまりの早業にヒソカ以外の三人は何も出来なかった程…これが俗に言う、「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」状態である。

 

 しかしこの蹂躙劇を見届けて尚、キルアが何かを決意するような顔をしてゴン君に何やら耳打ちしていたので、どうやら無駄な時間でもなかったようだ。

 

 こうして首尾よく入手出来た初の指定ポケットカード、No.026『7人の働く小人』。

 

 折角のカードではあるのだが、ここは惜しまずゲインしてアイテム化する。

 

 どうせ私たちは一切の呪文カードを持っていないのだ。奪われるかもしれないし、本格的なゲーム攻略も修行後を予定している都合上、後生大事に抱えておくくらいなら、さっさと有効活用してやった方が良い。

 

 この小人達はゲインした人間を主人として認識し、その主人が眠っている間だけ代わりに働いてくれるという効果を持つ。そして主人の能力を超えるほどの要求には応じないそうだが…それは裏を返せば、主人と同等の仕事をしてくれる可能性があるということ。

 

 どうやらやって欲しいことを紙に書いて置いておくと、寝ている間にそれをやってくれるそうなので…この子達には今日からとある仕事を完遂してもらう。まずは初日…本当にやってくれるかどうかが楽しみである。

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 怪物が蔓延る岩石地帯に戻ってきた私たちは、ヒソカの指導のもと早速修行に入る。

 

 私は『念』を付与した状態でヒソカと全力の組手、ゴン君とキルアはまず『堅』を30分まで引き延ばせるよう反復する。ひと段落がついた後は、三人それぞれが怪物討伐に挑戦する。

 

 私については身体への『念』付与だけが許可されているため、苦戦は免れない。対する二人は先日までとは打って変わって意識を改め、新手の出現と同時に『凝』を徹底、無理に倒そうとはせずにまずは相手の観察と理解に注力するように動いていた。

 

 この岩石地帯での一番の強敵は、ランク的にはランクCのバブルホース。オーラに反応して激しく割れる白のシャボン玉と、絶状態で触れると激しく割れる赤のシャボン玉を同時に大量に振り撒いて逃げるため、捕まえるためにはシャボン玉を最小限の動きで躱しつつ、躱しきれない場合には絶と纏を素早く切り替えてバブルホースを追いかける必要がある。

 

 これを捕まえられるようになるには、まだまだ時間がかかるであろう。

 

 もし使える付与に縛りが無いなら、『風』の付与でシャボンを全て吹き飛ばせるし、爆発するのも壁に当たった赤のシャボン玉だけと、まるで難易度とランクが見合っていない。

 

(魔法について想定してないのは当たり前にしても、能力者の発の内容次第では楽に捕獲することも可能だよねこれ…それこそ風を操る能力でも良いし、マーキング位置に瞬間移動する能力でも良い。能力無しでも仲間と協力して、追い込んで挟み撃ちすれば、絶と纏の高速切替の技能も不要…全てはやり方次第って奴だね。)

 

 

 ゲーム開始時点から『堅』を20分まで維持出来ていた二人は、四日後にはついに30分の壁を突破。

 

 今度はオーラの攻防力移動の技術『流』を学ぶための組手、流々舞の実践に入る。それは基本技1つ1つの流れを確認するため、あえて緩やかに攻防をおこなう組み打ち。

 ゴン君もキルアも、基礎的な身体能力こそ高いが『流』の技術はお粗末もお粗末。今のままでは彼らの鋭い攻撃や防御の動きに、オーラの移動が間に合わない。一朝一夕で身に着くものではないが…だからこそ、出来るようになった今から学ぶことに意味があるのだ。

 

 

▽ ▽ ▽

 

 修行開始から七日目。

 

 毎日のように成果を上げてくれている小人達に感謝しつつ、今日こそはマリモッチを捕まえてみせると意気込む私に、ゴン君とキルアから声が掛かる。

 

 どうやら二人は夜な夜な寝床(と言っても野宿だが)から抜け出しては発の開発に着手していたらしく、今日は私にお披露目兼、一つ相談があるようである。…ヒソカには見せないのだろうか?

 

 まずはゴン君の発…というよりこれは『硬』だね。『纏』『絶』『練』『発』『凝』全てを複合した応用技で、身体のオーラを全て一か所に集約する高等技術。これが見せたかったのだろうか?と考えたのだがどうやら違うらしく。これをベースにした自分に合った必殺技を考えたいとのこと。

 

(成程ね。ヒソカは他人の発には口出ししないってスタンスだし、相談し辛かったのかな?)

 

 ゴン君は強化系なので正直な話、この『硬』で殴るだけでも十分必殺技なのであるが…

 

「そもそもゴン君はどんな状況で、その必殺技を使いたいの?」

 

「状況? う~ん………凄い強い敵が目の前にいる時?」

 

「うん。じゃあそれが一つね。でもゴン君て、その強い敵には毎回正面から戦うの? 四次試験での絶とか凄かったけど…あんな感じで隠れて狩りをすることもあるんじゃないかな? 不意打ちが嫌いなのかもしれないけど…」

 

「あっ、確かに。なんか俺、正面から戦うことばかり考えてたよ。」

 

 どうにも本人も言語化が難しいようだが、不意打ちは好きじゃないけどよく考えたら狩りでも釣りでも実質不意打ちみたいなものということで…頭がプスプスと音を立て始めていた。これはマズいね。経験上、爆発一歩手前である。

 

「自分でも言語化出来ないなら、いっそ二つに分けてみたら? 正々堂々やる用の発と、こっそり狩りをするような発。その釣り竿も使い込んでるみたいだし、組み込んでみるのもいいんじゃないかな?」

 

 あんまり他人のアドバイスに固執しちゃ駄目だよーとは最後に補足こそしたが、ゴン君の方でも幾分かスッキリしたようなので、お悩み解決は達成だろうか?

 

「あっ次俺ね。こっちはもう決まってるから、単にお願いなんだけど…」

 

 キルアからはお願い…一体なんだろう?と思った矢先、キルアの手からばちりと電気が発生する。

 

「えっ…電気? 確かに変化系ならオーラを電気にも出来るだろうけど…あれ、でも何というか…ちょっと魔法っぽい? でも魔力は感じないし…。」

 

「ああこれは魔法じゃないぜ、結局俺に魔法の適性無かったしな…。でも、やっぱ気になるじゃん? だから俺なりに『紫華の魔法理論』を読み込んでさ、ちょっと魔法のギミックも取り入れてみたってワケ」

 

 そう言ったキルアが掌に生成したのは…

 

「嘘…《小雷球(しょうらいきゅう)》!? 魔力以外の力で魔法を再現したんだ…!」

 

 私はどうやらキルアという人間の才能を見誤っていたみたいだ。勉強が嫌いそうな子と勝手にイメージしていたが、楽(・)し(・)い(・)と(・)思(・)え(・)る(・)こ(・)と(・)に(・)の(・)め(・)り(・)込(・)め(・)る(・)というのも、魔法使いとして大成するために重要な素養。残念ながら適性自体は無かったようだが、キルアにはそれを補うだけの天性のセンスがある。

 

 

「魔法で念能力みたいなのを再現出来るなら、その逆もイケるだろ? で、俺がクー子にお願いしたいのはこっからでさ、『付与理論大全』の方もさっさと読みたいってのが一つ…これは『雷』の部分だけに限れば、小人パワーで三日もあれば十分だろ? それでもう一つがさ……」

 

 

 

 

「クー子が使える最大威力の雷魔法を、俺に叩きこんで欲しいんだよね。」

 

 





キルアの発は方向性までは変わりませんが、ゴンの発は結構変わると思います。
うーんこのライブ感よ…即興執筆じゃないと絶対生まれません。
週刊連載もこういうの多いみたいですね。
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