とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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今回は箸休め回に該当するかも
平和な攻略風景です。


51.グリードアイランド編⑨

 

 攻略開始前に最後にちょっとだけ時間を頂き、ビスケさんにも付与を受ける感覚に慣れてもらってから、ついに私たちは本格的なゲーム攻略を開始するために、五人で岩石地帯を脱した。

 

「オレ呪文使いたい呪文!シュパー!ドーン!て感じで格好良いし…お姉さんもヒソカも魔法使えて、キルアもあんなの実質魔法だし!俺も使ってみたいよー!」

 

「好きねえ…今は拳法じゃなくて、どいつもこいつも魔法魔法。適正あって使えるんなら理解(わか)るけど、使えもしないのに使いたがる、学びたがるってのは、私にはどうにも理解(わか)らんわさ。」

 

「ああ年取ると新しいことが覚え――」

 

 言い切る前にアッパーカットで遥か上空に舞い上がったキルアに黙祷を捧げ、ゴン君には『道標(ガイドポスト)』を1枚渡してあげる。

 

「これ使って良いよ。指定するNo(ナンバー)は…082でお願い。」

 

 ゴン君に『道標(ガイドポスト)』を使ってもらって入手地域を確認するのは、ランクAの『天罰の杖』。まずは場所を特定し、そこに住むNPCにカードの名前を出して聞き込み調査をするのが攻略の基本だ。…私の場合はこ(・)れ(・)もあるしね。大した機能ではないけど、やっぱりあると便利だから作ってよかったなあ。

 

 調べてみるとマサドラからそこまで遠く無い場所のようなので、例のごとく走って現地まで向かう。…人数が多いと『同行(アカンパニー)』不足を痛感するなあ。でもあれランクFだけどそんなに沢山入手出来ないんだよなあ…流石に集団での転移なんてマジックアイテムでもどうにもならないし、聖遺物か専用の呪具か、それこそ空間魔法の領域なので、付与師の私には手に負えない。

 

 

――30分後。

 

 現着したので早速5人で聞き込みを開始するが、その前にゴン君、キルア、ビスケさんには小人製のマジックアイテムの効果を説明する。

 

 『標識具(マーカーキット)』…名前の通りにマーキングを付けるための道具であり、人間(NPC含む)の頭上にぼんやりとした光を表示するだけの機能を持つ。多人数での聞き込みの際には、同じNPCに別のメンバーが二度話しかけてしまうのを防ぐのに役立つのだ。付けた光は追随するので、NPCが移動してしまっても安心である。ちなみに光の持続時間は三時間程だ。

 

「えっそんだけ? なんつーか、役には立つけど地味っていうか…」

「素材もあり合わせで作業時間も200時間程度じゃ、これ以上のものは作れないよ!」

 

 キルアからは少々愚痴られたが、有用であることは間違いない。一つしかないので全員が使える訳ではないが、情報収集に使う時間の一割程度の削減には寄与するだろう。このゲームのNPCって、かなり人数が多いからね…。

 

 暫く聞き込みを続けることで、ついに有力情報を入手。どこぞの祭壇の頂上には悪を裁く杖があるが、その祭壇は迷宮になっており今まで生きて帰ってきたものはいないとのこと。『…欲深いものを捕えて殺すその迷宮こそが、天罰の杖の本体なのかもしれぬ』等とNPCらしい月並みな台詞を吐いていたので、そのまま何度か話しかけて祭壇の場所と入場方法を教えて貰った。

 

「へー…ゲーム攻略ってこうやって進めるんだね。結構地道というか、色んな人に教えてもらって情報を集めるのが重要なんだ」

「その辺はジャンル次第だけど、RPGだと大概のゲームがそうだろな」

 

 合流後初のゲーム攻略ということで、ゴン君もキルアもちょっと楽しそうで何よりである。

 

(それにしても迷宮か…ダンジョンみたいなもんかな? だったら私の独壇場なんだけど…)

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 独壇場でした。

 

 

 別に私がいなくても攻略自体は出来てたと思うけど…やっぱり楽さが違うね楽さが。危険極まりないダンジョンで、パーティを支えるのが付与師としての私の仕事…今まで攻略してきた数多の鬼畜ダンジョンと比較すると、殺意としてはかなり緩めと評さざるを得ない。

 

 迷宮はポピュラーな右手法を封じる構造にこそなってはいたが、空間の捻じれとか、高度な魔力操作技術がないと解除出来ない封鎖陣とか、近づくだけで連鎖して爆ぜて殺しにくる罠とかががある訳でもない。まともに吸ったら死ぬような高濃度の瘴気もなく、建物自体が敵意を持って急に襲ってくることもない。

 

 魔物は変な牛っぽい怪物(ランクB『ミノタウロス』)だけだったし…用意されていたものは、歩くと崩壊する通路とか…落ちて来る岩とか…棘が飛び出すトラップとか……何というか、凄い普通のものばかりである。

 

(雷鱗龍がいたダンジョンとか、たしか階層主戦前に寄り道してギミック解除してたら階層主が超強化されるタイプだったんだよなあ…あの時は運良く回避出来たけど、ここにはそういう理不尽成分が足りないね!絶対に要らないけど!)

 

「君は当初、危険地域の魔獣討伐という経歴で活動していたけど…探索者っていうのは普段からこういう場所を探索するのかい? 随分手慣れてそうだし、大半の罠は君が解除するからか、僕らは凄く快適だよ♣」

 

「う~ん…まあ、ギミック的には中堅レベルのダンジョンだとこんなもんですかね? 魔物も一体だけでしたし…ダンジョン換算だとかなーり優しめだと思います」

 

「クー子の言う厳しめのダンジョンてのが、逆にちょっと気になるわさ」

 

 ビスケさんの要望に応え、『理喰らい』と戦う羽目になった一連のダンジョン融合事故について語っている内に、迷宮を抜けた。どうやら祭壇の最奥にまで辿り着いたようだ。

 

(結局階層主もいなかったなあ。

こんなのはダンジョンじゃないよ!

……失礼、ダンジョンじゃなくて迷宮だったねここ)

 

 

 長い階段を登った先には細長い人骨のような杖が祀られており…それを手に取ることでカード化。No82『天罰の杖』の入手に成功した。

 

 

『罰を与えたい人の名前を唱えながらこのつえを天にかざすと、貴方か相手か今までより多くの悪業をなした方に強い災いが降りかかる。』

 

 

(へえ……こんなカードがあるんだ。もしかしてこれが過度なPK対策だったりするのかな? …いやでもこれにも対応出来そうな『闇のヒスイ』があったから駄目か。『リスキーダイス』にも恐らく対応可能な、かなりの害悪カードだと思うのだけど…なんでそういうの作っちゃうかな? 独占されているのかカード化が出来てないから仕方なしに持ち歩いてるけど…厄災を無効化じゃなくて他人に渡すってのがあんまり嬉しくないなあ。)

 

 ゲーム攻略開始初日から幸先の良いカードゲットを喜び合うゴン君とキルアを横目に、私はカードの活用方法や組み合わせについてを考察していた。

 

 税務長に『コネクッション』を使ってお願いを聞かせることで通常より楽に『税務長の籠手』が手に入ったりと、カードによっては他の指定ポケットカードの効果が、それを集める助けになる場合もある。ランクSのカードに至っては、殆どがそういうパターンではないか? とすら推測している程である。

 だからこそ、帰還に役立ちそうかという観点以外にも、カードの効果はきちんと確認しておく必要があるのだ。

 

 

「これで39種…この調子で頑張って集めていこう!」

 

 

▽ ▽ ▽

 

――30日後

◇とあるプレイヤー組の会話

 

「最近凄い勢いでカードを集めているプレイヤーがいるらしいぜ?」

 

「ランキングでも調べたのか? どんくらいだ?」

 

「それがな…男3女2の5人組なんだが…もう70種までいったらしい。しかも集め始めてからは大体一月半ってとこだ。」

 

「70!? おいおいマジかよ…そこまで来るとランキングも相当上位なんじゃないか?」

 

「ああそれは私も見たよ。もう全体で5位くらいだったかな…集める速度が脅威的だから、ツェズゲラ組も注目してたって話。」

 

「確かメンツがガキ3人に大人2人だったな…ガキ3人も結構腕が立つようだが、残りの2人が兎に角ヤバいらしい。」

 

「そりゃこんなペースでカード集めてんだからヤバいのはヤバいだろ。

だがどうヤバいんだ? 強さか?」

 

「ああ、強さが半端じゃない。特に男の方は好戦的で…ふらっと現れては上位プレイヤーを一方的にボコして、所持してる中でも一番ランクが高いカードを一人一枚奪ってくんだとよ。最近は被りが増えたからか奪うカードも選んでるみたいだけどな。」

 

「なんだよそれ!? そんなんに出会ったらもう交通事故だろ!」

 

「ああ…それでカヅスール組とハンゼ組…あとハガクシ組も被害にあったようだ。他にも被害にあったプレイヤーは多いだろうな。」

 

「確かその人って『爆速宅配ピエロ』とか呼ばれて無かったっけ? あまりにも速いからそういうイベントかと思ったらプレイヤーだったって一時期話題になってたよ。」

 

「あー多分そいつだ。相方の女も『青の物の怪』って奴だな。どう考えても並の能力者じゃねえよ…話を聞く限り、人間が出せる速度じゃねえ。」

 

「……んー。どっちもどこかで見た覚えがあるんだよな。俺達がここに来たのは半年以上前だから、その頃から外で活躍してたやつだと思うんだが…何だったかな……」

 

「マジ? 折角ならここで思い出しちまえよ。何かの役に立つかもしれねーぞ?」

 

「あっ思い出した。天空闘技場だ。二人ともそこの有名人だった気がする!」

 

「あ~あそこか~。野蛮人の聖地だろ? しかも200階以上はガンガン能力使って戦って、殺しもOKとかいうヤベーとこ。今でも行動がヤベー男の方は兎も角、女の方もそこで戦ってたとか正気かよ。」

 

「女の方はなんか試合映像が目立つとこで売られて、限定版まで販売されてる人気闘士だったっぽい。今一緒に行動してる男とも試合してたはず……あんま詳しくないけど、人気あったってことは少なくとも200階でもかなり戦えてたんだろ。んで、男の方は200階の試合で人殺しまくってるってことで相当恐れられてたっぽいんだよな。」

 

「お…おう。ガチの奴だったのか…近寄らんとこ…」

 

「詳しいやつならもっと話せると思うぜ? もし仮にフロアマスターにでもなってるなら超有名人だし、最近このゲーム開始した奴なら知ってる奴もいるんじゃねーかな。」

 

「別に探る必要はないけど、スタート地点で聞き込みでもしたら知ってる人はいそーだよね。まあ、なんのメリットも無いからやらないけど。」

 

「……最近といえばなんか、魔法がどうたら言う奴が増えてねーか? どうも話を聞く限りゲーム内の魔法て意味じゃなくて外でも使える魔法みたいでよ…ここずっと外に出てないから分かんねーけど、ちょっと気になるんだよな…。」

 

「あっそれ私も聞いたかも? 異世界から来た付与師が魔法を伝来したとかなんとか…? 漫画の話かと思って普通に聞き流してたけど…」

 

「おいおいおい。そんな話にマジになってどーすんだよ? 『離脱(リーブ)』なんざ当然持ってないし、港まで行くのも結構危険なんだぜ? 行けなくはないけどよぉ…」

 

「どうせこのまま続けてもクリアは誰かに先越されるだろ。だったら一回外に出て情報更新しよーぜ? ここって結構ガラパゴスなとこあるからよ。数日休んで外を満喫するのも悪くないだろ!」

 

「ゲームは1日1時間…どころかもう半年以上ぶっ続けだもんね。」

 




最後のモブ三人組は頑張れば港から脱出出来るけど、割と危険なので積極的ではない程度の実力者です。
グリードアイランドは外部からの情報流入が鈍いよってのを説明するための存在でもあります。

そしてついに!
次回で皆大好きプーハットさんが登場します!
優秀だけど90点しか取れないあの感じが堪りません。
もう今から大興奮!
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