とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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物語としては67話で完結してるのでどうか御目溢しを…着地点は決めてたので、ここで〆ます。


おまけの暗黒大陸攻略(ダンジョン・終点)

 天空の異塔ダンジョン攻略開始から半年が経過。途中、塔から回収した物品――それこそ【無尽石】や【ニトロ米】を超える数多のリターンを、拠点に呼び込んだ転移魔法の使い手と協力して人類が暮らす大陸側に引き渡したりしつつも、攻略は着実に進んでいた。

 

 しかし彼ら四名が鬼畜難度のダンジョンを攻略していく傍ら、世界はまさに激動の一途を辿っていたこともまた、忘れてはならない。

 

 十数年前に広まった魔法に加え、暗黒大陸から続々と届く夢のような素材の数々は、生老病死、飢餓、貧困、労働、災害、資源不足――人類が長い歴史の中で苦しみ、抗い続けてきたあらゆる問題を解決、あるいは大幅に軽減しつつあった。

「最早、法整備や社会制度だけが周回遅れで追いついていない」と、そんな声が世間で声高に叫ばれる…人類はそんな、泡沫の夢が恒久のものへと変わりゆくような時代を、今まさに謳歌していたのである。

 

 万病が治り、無尽蔵に食料が生え、物言わぬ労働力が市場を席巻し、元素変換技術すらもが実用化した世界……無論それらの多くは一般流通するものではないため一定の歯止めは掛かっているが、それでも人類が危うい過渡期にあることは間違いないであろう。

 

 風の噂では、死者蘇生すらも夢物語ではない…そんな限度を超えたファンタジー世界がすぐ近くまできている。…もしかすると、これらの急速にして過剰なリターンそのものが、人類にとっての最後にして最大の災厄なのかもしれない。

 

▽ ▽ ▽

 

「今日は67階を攻略しようか! 最初はどうなることかと思ったけど…装備が整ってからは、結構なんとかなるもんだね! まさか本当に伝説の武器や防具みたいなのまで入手出来ると思わなかったよ…」

 

「思えばゴンってその釣り竿以外はずっと素手だったんだよな。まあ俺も持ち込んでたのはヨーヨーくらいだったから、人のことは言えねーけどさ。今じゃあ天空闘技場でも200階以上は魔法の武器が当たり前なんだっけか?」*1

 

「まあ、装備の差が勝敗を左右するのは事実だからね♣ 僕としては対武器は必要な技能だと思うし、相手の武器を奪って戦うのも嫌いじゃない♥ ただ装備そのものと戦う趣味はないから…いやぁ。バランスが難しいね♠」

 

 いや武器以前に別位相退避とかやってるお前がそれ言う?

 と軽く突っ込まれながらも、ヒソカは自分の袖口を軽く摘まんだ。

 

 今の彼が纏う衣装は、遠目には以前とさほど変わらないものの、その実態はまるで別物だった。鮮やかな色彩のシャツと細身のパンツ、その上から羽織った上着に留まらず、首元の飾りも、指先のリングも、果ては腰に提げた小さな装飾品すらも…その全てが何らかの機能を持つ強力な魔法装備である。装飾品について少し例に挙げるだけでも、視覚や聴覚を補助するもの、状態異常を防ぐもの、魔力の流れを検知するものなど様々である。

 

 かつての、それこそ転移直後(20歳)のクーデリアが一目見れば、確実にこう叫んでいただろう。

 

「全身聖遺物装備!!

(トータルコーデお幾ら!? いいなぁ。こっちは聖遺物二個しか持ってないのに…ちょっと恵んで欲しいなぁ…一人で小国くらいなら買収出来そう。エルドより多いじゃんね) 」と。

 ――心の声の方が煩い。

 

 ゴン、キルア、アルカの装備も当然、ヒソカに負けず劣らずの性能を誇り、特に以下の四つに至っては、特異ダンジョン攻略時点(25歳)のクーデリアですら純粋に欲しがる逸品揃いである。

 ・ゴンの【神撃の籠手】*2

 ・キルアの【雷霆スノウ】*3

 ・アルカの【虚空の杖シェルノア】*4と【相思のイヤリング】*5

 

 その他の装備も非常に強力なものばかりが揃っており、その性能は塔の二階で経験した初見殺しの大半を、防具の力だけでもある程度はやり過ごすことが可能な程である。要は『外付けの念能力や魔法で武装している』状態であり、個人でありながらも一国の軍事力に匹敵…もしくは凌駕する戦闘能力と対応能力を備えていると言っても、決して過言ではないのだ。

 

▽ ▽ ▽

 

(僕の勘では、ここが最上階な気がするんだよね♥)

 

 世界の混沌を煮詰めたような環境に身を晒しながらも、67階の探索を続ける間に…ふと、そんな感覚が過(よぎ)る。何故――? と聞かれても、そんなものは分からない。分からないから勘なのだ。

 

 視界の端では未来予知…かつて翼を背負ったクーデリアを彷彿とさせる動きで、凶悪なギミックを次々と無力化していくキルアとアルカの兄妹。そして二人の指示と支援を受けて、縦横無尽に駆け巡り魔物を蹴散らすゴンの姿が映る。

 

 思えば今まで、装備らしい装備を殆どして来なかったからか、整った今となっては逆に、2階の時よりも安定して探索が出来ている。ギミックや魔物は凶悪さを増しているが、こちらの成長に追い付いていないとするのが正解か。

 

(異種姦(アニマル)プレイは性癖じゃないケド。協力(パーティ)プレイ自体は嫌いじゃない♥ あの時のドッジボールは楽しかったしね♣)

 

 正直ここずっと、対人の死合に飢えているところはある。かつての同僚…フロアマスターの二人と闘ったり、最高に熟したゴンやキルアと、稽古と称して模擬戦を行うことはあるけれど、命のやり取りの機会までは、トンと減ってしまった。

 

 嗚呼…嘆かわしい。まさか僕ともあろうものが、枯れてしまったのではあるまいか? いや…それは違うか。満たされ過ぎた結果、きっと僕(・)の(・)欲(・)望(・)の(・)方(・)が(・)肥(・)え(・)た(・)のだろう。

 

(最後に命を懸けて戦ったのは、マチ♥ 君だったね♥ あの時は心底、君を生かして良かったと思えたよ♥ あの殺意は最高にヒリヒリした…僕一人を殺すために甘さを捨てて、その場にいた無垢の人間ごと鏖殺しようとする覚悟には、もう最高に惚れ惚れしちゃった♥)

 

 一体どこから手に入れたのか…聴くだけで…奏でるだけで…存在そのものを変滅させる魔王の楽曲を、僕が滞在していた店内に大音量で流すだけに留まらず、同時多発的に致死性の猛毒の散布にまで踏み切った彼女。

 かつて確かに感じた、心の奥底の優しさは完全に消え失せ、復讐鬼として完成していたマチは、正しくA級賞金組の最後の生き残りに相応しい…酷く醜悪(みりょくてき)な面持ちをしていた。*6

 

(己の命を惜しまず、その全身全霊を僕への殺意に変換するだけの熱量……僕を殺すために、何処までも僕を理解しようとし、費やしてきたその時間! 愛し合い、壊し合うあの瞬間は、やはり得難いものがある♥)

 

 【死神のカード】…『死』の属性を宿すカードを巧みに操り、単純な物理攻撃ではまともにダメージが入らなくなってきた魔物達を、速やかに殺して回る。

 

 違う…やっぱり違う。

 たとえ人より強くとも。鋭利な殺意が内包されようとも。

 そこに積み上げた歴史がない。同種の人として、育んできた感情がない。

 

 僕は、ただ、人と愛(こわ)し愛(こわ)されたいんだよ!

 

 かつて誰よりも人に愛されていた愛弟子(クーデリア)を倣って、僕もチョットだけ意識してみたんだ。そしたら気付けば僕も、同じように英雄と呼ばれて、沢山の人から愛を向けられたような気がした。

 僕が望めば沢山の人から手合せの依頼が来たし、無理難題のような面倒な注文であっても、恩返しとばかりに叶えてくれた。

 ネテロも…ジンも…レイザーも…リールベルトも…カストロも…ゾルディック家も。時には素手で、時にはフル装備で。互いに望んで、交渉の末に、無理矢理に…手練手管を駆使して戦闘(ダンス)相手にこぎ着けるにあたって、英雄という立場は大いに役に立った。

 

 それでも、死ぬまで付き合ってくれる好敵手(パートナー)というものは、やはり得難い。

 

(僕みたいな人間をどこまでも理解しようとする人間なんて、元々数少ない希少人種♠ そんな希少な人間すらも、どこかで壊して減らしてしまうのだから、当然の帰結♥ 君が聞けば「どう考えても自業自得ですよね?馬鹿なんですか?」とでも答えてくれるだろうね♥)

 

 この世界で僕を満足させられそうな相手はそれこそ…今隣で戦っているゴン達くらいしかもういない。だけど、それはダメなんだ…彼らを殺そうとすると…本気で僕を狙わせようと考えると…どうしても、毎日のように追憶の中で顔を合わせる彼女の、悲しむ顔が浮かんでしまう。

 まさかこの僕が…『そんな目で見て欲しくない』だなんて…そんなセンチな感情に囚われてしまっているのだろうか? これが一度でも最強の自覚を撤回し、属(・)し(・)た(・)罰だというのなら、あまりに重い。真っ当で、舗装された、そんな綺麗な道を歩めと…そんなのは、まるで、この僕が、彼女によって矯正されてしまったようではないか!

 

(捕まったのは僕の方…か♣ フフフ…♥ 実は既に、あの時に答えが出ていたのかもしれないね?)

 

 ああ…それにしても、やはりこの塔は暗黒大陸にあってもなお、異質だ。

 入手できるアイテムも、かつて君が仲間と一緒に喜んで回収していた聖遺物にソックリだ。異世界に通じていると、そう噂されるのも判る気がしてくる。

 

(この塔が忽然と姿を現したのが約十年前…そして君が去ったのも十年前…。

これはきっと、偶然でなく必然♥

――僕もこっちでは強くなり過ぎた。だから異世界にイク♥

……そんな都合の良い夢が、ここで現実になる時が来るのかも?)

 

▽ ▽ ▽

 

 67階の探索を始めて約六時間が経過。

 

 階層主がいると思しき場所…そこに繋がる扉の前で、アルカの予知で得た情報が、瞬時にキルアにも共有される。

 その瞬間、二人が二人して固まってしまった。

 

「…キルア? 大丈夫? 何が視えたの?」

 

 アルカは少々戸惑っているだけのようであるが、キルア側の動揺が酷い。ただ…そこに悪感情は無く、どこか感傷に浸っているようにも思える。暫くするとキルアがニヤッと笑って、ゴンとヒソカを交互に見やる。その姿はまるで年甲斐もなく、早く話したくてウズウズしている子供のようであった。

 

「ヒソカ、アルカの装備の一つに《深層追憶(ヴィジョナリー)・出力(アウト)》を使ってくれよ! きっと、最高にオモシレーもんが見れるぜ? ゴンと一緒に、追体験してくれよな!」

 

 キルアから漂う有無を言わせぬ圧力に動かされ、ヒソカは言われるがままに《深層追憶(ヴィジョナリー)・出力(アウト)》を使用する。対象は勿論、つい先ほどアルカが視た予知の内容。キルアが「最高にオモシレー」という体験である。

 

 発動と同時に広がるは…扉を開けた後の光景。

 起点となるキルアの視線の先には、かつて見慣れた青髪の女が鎮座していた。

 

==================

〇予知一回目

 

「ん? あれここどこ? 夢かな? ……キルア!? ゴン君!? 嘘、大人になってる!?

うわっ師匠もいた!!? と、貴女は初めましてですね。お騒がせしました。それじゃあここは――」

 

「えーつまり…暗黒大陸に何故かあったダンジョンの最上階、それも最奥に私が居たと。つまり流れ的には、私が最後の階層主…てこと? あっなんか情報が流れ込んでくる感じ…あーそっかぁ。ラナのせい…というより私のせいだねコレ。いや後始末してたノルンちゃんの怠慢という線も…」

 

「それにしても、まさかのラスボス化なんてね。折角十年振りに再会したのに…というかキルアにこんな可愛い妹さんがいたんだ? 結構一緒だったのに一回も話してくれなかったのはお姉さんどうかと…えっ? 針のせいで記憶も無かったの? へえそんな事が…う~ん…話を聞く限り、その時のアルカちゃん…ナニカちゃん? とキルアなら、私をノーリスクで元の世界に帰せてたのかも?」

 

〇予知二回目

 

「あーなる程、これ多分、まだ実際には会えてないぽいね。予知…いや未来視ってやつかな?」

 

「折角なら直接話そうよ! 変に分岐なんて覗かないでさ!」

 

「次からは予め世(・)界(・)の(・)記(・)憶(・)を拾うから、話の続きになっちゃうよ? それでも視る?」

 

〇予知三回目

 

「あーやっぱり使ったー。まあ、そうやって慎重なのは、探索者としては高評価だけどね!

装備もまあ潤沢なことで…ちょっと羨ましいかも? 私のところの特異ダンジョンに相当するみたいだし…さもありなんてことかな?」

 

「折角だし、階層主ロールでもする? 『よく来たな探索者パーティよ! ここがダンジョンの終着点、私を倒さねば~』なんて…いやそんな悠長に話かけてくる階層主はいないか。問答無用で襲わないと、その時点で0点だね!」

 

「てな訳で待ってるよ! 沢山お話聞かせて欲しいな! こっちも話したいことが山ほどあるんだからさ!」

 

==================

 

「お姉さんが予知中に会話してきた!?」

 

「ほんっとそういうとこあるよなあの女。

もう置いてけぼりにするくらい成長したと思ってたら、実際は全然そうじゃねーの」

 

「ねえねえお兄ちゃん。あの人が昔、何度も聞いたクーデリアって人だよね! すっごい綺麗だったけど、再会してデレデレ鼻伸ばしてたら、私がムスーってするし、スパーさんには撃ち殺されるよ? 覚悟できてる?」

 

 いや…何のこと? となっているキルアを、アルカのハイライトが消えた目が追随する。予知中ずっと、気安く…そして心底嬉しそうに、碌に面識のない女と延々お喋りする兄なんて、もの凄く怪しいからね。仕方ないね。

 

 そのままワイワイと騒ぎ立てる三人を放置して、ヒソカが先に扉を吹き飛ばしてダイナミックエントリーする。これがダンジョン流の正規の入室方法だとばかりに一切の気負いなく、そのまま予知の視点となった場所までずんずんと進んでいく。危険がないと分かったのであれば、躊躇う理由はどこにもないのだ。三人も慌ててヒソカを追って入室した。

 

「いらっしゃーい! 一番乗りは師匠! 折角の再会なのに、お酒が無いのが残念だなあ…まあそっちは無いなら即興で造れば良いとして…いやはや、本当にお久しぶりで――」

 

 そこにいたのは、帰還当時より気持ち大人びたクーデリア、その人。そんな十年ぶりとなる再会を、心から喜ぶ顔そのままに、ヒソカは【死神のカード】を弟子に向けて投げつけた!

 

「――す。…う〜ん。56点! 未知の階層主への対応としては合ってますけど、手心アリアリ! 今の私が、この程度でどうこうなる訳ないじゃあないですか! でも、その優しさにはおまけ加点で86点! よっ高得点! 暗黒大陸開拓者筆頭は伊達じゃないっ!」

 

 持ち主以外は触れただけで大概の生物を即死させる【死神のカード】であるが、質量を伴うほどに高密度に圧縮した魔力を膜状にして纏ってしまえば、実質的に無害な代物である。そのまま指で摘んでヒラヒラと見せびらかすクーデリアは、少々得意げなドヤ顔である。

 

「――うん。本物だね♥」

 

「いや何やってんの!? ヒソカもお姉さんも、絶対頭オカシイよ!?」

 

「あ、頭オカシイって言われた…それもゴン君に…。十年ぶりなら絶対にこれくらいはやりそうって、お師匠予想ドンピシャだったのに……」

 

「いやコエーよ。言動もそうだけど、それ以上に存在の圧がもっとコエーよ。あの時のラナさん並か? いやどうだろ…ワカンネ」

 

「んー、今はラナの半分くらいじゃないかな? 万全ならもうそんな変わらないんだけど…予知中にちょっと話した通り、完全には接続してないからか、結構減衰してるみたいなんだよね。

 そしてこれはアレかな? 昔ノルンちゃんが夢で私の様子見れるようにしてたのと、ラナが世界の壁をズバッと斬って繋げたのが変に合わさったのかな? ……大きい力が碌に示し合わさずに勝手にやると、こういう不具合はどうしても発生するからなぁ」

 

 何でも今ではロードという名の神様…キルア達としてはペットの白マウスとしか認識していなかったと存在と一緒に、世界の管理側の仕事も手伝っているそうである。

 こういうこともたまーにあるから困ったもんだよ…等と事もなげに語るその姿を見て、ああやっぱクー子だわコイツと…かつてのクー子を知る三人は、今ここで確信するのである。

 

「でも大丈夫! こうして私が来たからには、今度こそきっちり閉じれるよ!」

 

 さあさあもっとお話しましょと、杖でトンっと床を叩くだけで、机と椅子…ついでにふかふかなクッションまでもが生成される。ここまでくると創造魔法の領域であるが…クー子の分類上は付与魔法のようだ。付与の対象をより細かく精微に分割することで、決して不可能ではないとのこと。

 流石にこの場でお酒はちょっと…と四人ともに断られるとガックリしていたが、積もる話をしたい欲求は、この程度では決してへこたれない。

 

 そこから決して長すぎないだけの幾らかの時間…ここ十年の間に起きた様々な話を語りあった。

 

 全滅を覚悟した対護衛の話、無敵とすら思われた蟻の王の話、キルアが魔法適性を得た細かい経緯、アルカとの改めての自己紹介、ヒソカとゴンがそれぞれ打ち立てた偉業の数々。そしてクー子がいつの間にか、この世界でトリプルハンターとして扱われていることを語る。

 対するクー子は持ち帰った物品が無事に世界に広まったこと。念の技術関連はこの世界に倣い、一部を除いて秘匿したこと。特異ダンジョンという世界の寿命を延ばすためのダンジョンが生成される運びになったこと等を語った。

 

 途中キルアが既婚者…それもお相手が七歳若返ったスパーであることを知ったクー子が大仰に祝福しだしたのを皮切りに、クー子もまた既婚であることが露呈。アルカが急に上機嫌になり、夫や家庭のことを褒めちぎるという一幕があった。

 

――???分後

 

「う〜ん。もっと話していたいんだけど……さっきから『階層主らしく戦えー』て頭の中が騒がしいんだよねぇ…悪いけどそろそろ切り上げて、形だけでも戦おうか?」

 

 名残惜しい気持ちはあるけれど、そういえば目の前の女は立場としては階層主であると思い直し、ゴン達は構えをとる。結局何故自分が階層主になっているのかよく分かっていないようだが…もしかすると今まで戦ってきた階層主も、クー子世界のダンジョンの存在が流れてきたものなのかもしれない。

 

 とはいえつい先程まで仲良く会話していた恩師である。あまり本気で戦うというのも……というゴンの慮りは――

 

「大サービスで、誰か一発でも当てればそれで勝ち! なんなら健闘次第ではお願いだって叶えちゃう! 制限時間は一人三分! さあさあさあ、我こそはという挑戦者はいるかな!?」

 

 という挑発めいた態度で一気に氷解する。

 

 ……随分と調子に乗った安請け合い女である。

 

 これは少しわ(・)か(・)ら(・)せ(・)ないとイケない。

 

 俺だって、もうあの頃の俺(こども)じゃあないんだよ?

 

 <<ゴン ノ 弾道ガ 1 上ガッタ!>>

 

▽ ▽ ▽

 

「うぅ…不甲斐ない…まさか三人に一発ずつもらうなんて…師匠の番とか割と本気でやったのに…まあでも、それだけ皆が成長したってことだね! 装備の使い方も探索者さながら! これなら特異ダンジョンでもガッツリやっていけるって! どうかな? 一緒にお仕事してみない?」

 

 勝利条件をガッツリ満たされてしまったことで、もしかして消滅したりするのかな? と少し戦々恐々としていたが…どうやらそれは杞憂なようである。

 ロードに連絡を取るとちゃんと繋がったので、何故私がこちらに呼ばれたかを確認したところ…この塔の最上階の階層主として相応しい力量を持つ存在が用意出来なかったことから、この世界に最も縁が強い私が無理矢理呼ばれたのでは? との説が浮上した。

 

 筋は通った説のように感じるが…これまた随分と迷惑な話である。とはいえ大本を辿れば私がこの世界に転移したせいでもある。ここは神様補佐?的な立場として、きっちりお仕事をせねばなるまい。

 

「このダンジョンは皆が脱出したらもう完全に閉じちゃうから、管理してる魔獣の人には説明よろしくね?

あとお仕事やる気のある方は挙手してください! 異世界人反対派のノルンちゃんへの説得については私がやるし、そこは安心! これでも最近は、結構発言力あるんだよ?」

 

「そのノルンてのが、あの時に僕を拒否してた子だよね? それなら説得は、むしろ僕がやりたいなあ♥」

 

 おおう…駄目元だったけど師匠が釣れた。まあキルアは妻帯者だし、アルカちゃんはキルア大好きみたいだから候補としては最初からゴン君か師匠の二択だったけど…まあそうなるか。こんな急な話で「じゃあ行きます」って方が、明らかに普通じゃないからね。

 

 それにゴン君とキルアとアルカちゃんに至っては、もう完全にお見送りムード…元々異世界に繋がってるかもって噂されてたくらいだから、四人で事前に話を通してたりするのかな?

 

「あんまり乱暴なことしちゃ駄目ですよ? ロードはそういうのも割と好きですけど…ノルンちゃんの方は荒事はそんなに好きではないので…その…加減が下手です。ただ、割と人間に甘くてご褒美も沢山くれる子だったりするので、きちんと働けば色々と便宜は図ってくれると思います…それこそヒソカ専用の箱庭くらいなら創れるんじゃないですかね? こう…夕方になったら肉体が蘇生する…ヴァルハラでしたっけ? ああいうのとか…もしくは修羅界とか? その辺のニーズを探るのもお仕事の一環とか言ってましたし…詳しく要望伝えれば、きっと参考にしてくれると思いますよ?」

 

 てなわけで、我が師一名。異世界にご招待となります。元々行きたがってたし、別に良いよね! 個人的には、預けた紫華のブローチを、己の命と同等レベルに大切に扱っていたらしいのも高評価だ。愛が重くて困るね!

 特異ダンジョン専門の教導官とか足りてないし…特に希望が無いなら、師匠にはそこで頑張ってもらおうかな?

 

 ただここで「…本当に大丈夫か?」

 という視線と言葉をキルアが投げかけてくれたので、念のために一応、ここでヒソカにも釘を刺しておく。

 

「そこは私が責任持つよ。変なことしたら、こっちでしっかり処分するからご安心を!」

 

「お…おう。相変わらずの師弟だよなやっぱり…」

「ヒソカ…夢が叶って良かったね。お姉さんに迷惑かけちゃ駄目だよ!」

「私はもう少しお話したかったかな? この世界にも、神様とかいればいいのにね?」

 

 まずは先に三人を塔の麓まで送って、そこからヒソカと一緒に元の世界に帰還。

 そこから座標を元にきっちり閉じればそれでお仕事は完了だ。

 ノルンちゃんはまあ…甘味でも奢れば大丈夫でしょ…多分。

 

(人生何があるか分からないね……あれだけ帰還に苦労した異世界に、今じゃあ日帰り旅行だよ!?)

 

――とあるピエロの異界渡り・完

 

*1:
持ち込む武具の性能で勝敗が決まってしまうことを危惧してか、天空闘技場200階以上では2006年以降、別途部門分けがなされている。

*2:
実体が無いもの、触れられないものに直接触れることが可能となる。メルエムの『《王の完全なる領域》』やヒソカの別位相退避にも有効。籠手自体も非常に頑丈なので、防具としても一級品。

*3:
雷魔法強化効果がある頭飾り。常に微弱な電磁波を放出しており、キルアが使用することで周辺状況の把握が可能となる。

*4:
杖自体に特定の魔法が仕込まれているタイプの珍しい杖。魔力さえあれば、誰でも高度な空間魔法が行使可能。

*5:
一組のイヤリングを二人(キルアとアルカ)で装着することで、思考の共有が可能。つまりアルカの予知を同時にキルアも認識できる。

*6:
闇のソナタの楽譜入手後、各担当楽器の音楽家4名の命と自身の両腕を犠牲に録音に成功。人類史上初の、暗黒大陸産の災厄を利用した大規模テロとして記録されている。




異界渡り…達成です。
実質第二の主人公ですし、特別待遇ですね。

戸愚呂弟パロをやりつつも念願の異世界入りを果たしたヒソカですが、ニトロ米も食べてるので向こう数百年は長生きしそうという、随分な厄ネタになりそうです。
まああんまり酷いなら上位者とかが何とかするから…ヘーキヘーキ!

…流石にもうネタ切れなので、蛇足もこれで終わりですね。
仮に心変わりするにしても、別作品としての投稿になるかと思われます。

ハクスラゲーのごとく装備を強くし過ぎちゃうと『もうこれハンタの二次創作である意味ねぇな!』てなったのが、最後の反省点ですね!

以上! 閉廷! 皆解散!
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