「修行はこれで終わりだ、と言うかもうつけてやれない! やりすぎだバカッ!」
「ごめんなさい〜!」
ルサーべにこってり絞られた、最後に放った自爆まがいな攻撃で何もかも吹っ飛ばしたせいで俺の治療が遅れて本当に死ぬところだったと。
ルサーべはナメック星人のいわゆる龍族だったので薬がなくとも俺を回復させることができたが、そのルサーべも回復が必要なほど瀕死に近い、俺は回復してもらってから急いで彼を小島の家に連れていき置いてあった予備のキンター薬を飲ませてしばらく看病した、俺の気も少し分けたら半日くらいで大体回復した、お互いタフだな。
「山はいいとしてあそこにあったキンター薬がなくなったのがつらい……アレは一ヶ月付きっきりで作る秘薬だ、一回で複数個作れると言っても貴重品にはかわりない」
「えっと……在庫全部消えた?」
「一瓶だけあった、10粒入ってる」
「マジですんません、本当にごめんなさい」
人生で一番キレイな土下座をしたと思う。
「…………はぁ、まぁいい十分叱った……次は今後の話をさせてもらおうか、この1年でお前は見違えるほど強くなったな、サッファでさえ今のお前に正面から戦えないだろう、だが奴は搦手が上手い、心理戦や集団行動を得意としている…………はっきり言えば個人で戦う相手ではない」
「なるほど」
「サッファを孤立させ一気に叩く必要がある、分かるな?」
「話を聞く限りそれしかなさそうだな、まぁ俺が大猿になって大暴れしてやってもいいな」
「……後先考えろ、星ごと破壊する気か、今のお前が大猿になってみろ理性を失った化け物の誕生だぞ」
「そーいやそうだな、1年で一気に強くなったから感覚が追いついてねぇや」
実際スカウターもなしに強さを語ると振れるからしないほうがいいけど、恐らく今の俺戦闘力10万超えてそうなんだよな……大猿で十倍すると100万オーバー……理性無しで100万とかどの道自爆だけどな。
「それとお前、自分がどうなってるか鏡を見たか?」
「え? どうなってんの?」
「毛むくじゃらの子猿」
「……よし! サッファの前に身なり整えてくるわ!」
と言うことで俺は港町パシフクで身なりを整えることにした、お金は前の仕事分が丸々残ってるんで心配はない、修行中のご飯はルサーべの奢りだったから飯代も浮いた。
パシフクは1年前と変わらず風光明媚な港町だ、リゾート地のような居心地の良さは変わってない、ここから美容室なり服屋なり探して行くんだが、残念ながら土地勘と言うものが俺にはない。
「あ、パッドで調べて…………自分で吹っ飛ばしたんだった」
自分でやっといて何だがあの時に何もかも吹き飛ばしてたせいで今の俺が途方に暮れてる、人に聞くにもみんな俺から離れていくし、目が合う奴らは片っ端から走って逃げていく。
「せめて髪くらい切ってくるべきだったか……」
服を買いに行く服がない、髪を切りに行く髪型ではない、そんな状態だ。
出直そうと思って街に背中を向ける、その時背後から意外な人物から声がかけられた。
「お、おい! サイヤ人!」
「……んぁ? ……だれだ?」
「スラトカだ! お前に気絶させられたな!」
そういや居たな……そんなやつ。
ミリタリーなデザインのチョッキに迷彩の長ズボン、暗視ゴーグル、背中にショットガンのようなもの、一応体も鍛えてそうだ筋肉が出来上がってる。
それでも初めて顔を合わせた時から少し強くなった程度かな、気の感じからして。
「すこーしだけ覚えてる、そんなに関わりがあったわけじゃないから何も覚えてないに等しいけど」
「約1年も前の話だから覚えなくて当然だ、お前悪いやつじゃ無かったんだな…………聞いたぜ、犯罪組織潰して回ってたんだろ」
「そんな事もしたな、最近はしてねーけど」
「それでも腰抜け防衛軍とは違う! それで、この1年何処にいたんだ? 探しても何処にもいなかったからオレは諦めかけてたんだ」
「探すのは勝手だけど、何で探してたんだ?」
「うぐ……オレが知りたいから、じゃダメか?」
「まぁ〜……別に隠すもんでもないし答えてやるよ、ルサーべと修行してた、サッファってヤローぶっ倒す為にな」
「さ、サッファ? …………サッファ!? あの銀河を股にかける宝石強盗!?」
「らしいな、とびきり強いって話だから俺の相手にもってこいだろ?」
スラトカは血の気が引けたようだ、半魚人の顔色って元から青いのに更に青くなってる。
言葉に困ったような詰まってるような感じで何分も無言の時間が続いた、そろそろ良いかと俺がその場を離れようとするとスラトカが再起動して止めてくる。
「あ、待った!」
「あぁんなんだ?」
「いきなりなんだが、オレを仲間にしてくれないか!」
「仲間……? 一体何の仲間にするってんの?」
「犯罪組織をぶっ倒す仲間だ! オレは……他人を蹴落として、のうのうと生きてる奴らが大っきらいだ! 最初はお前もその仲間だと思ってたが、そうじゃないことがわかった今、オレはお前を頼ってでもそいつらを一人残らずこの星から消してやりたいんだ!」
彼の情熱的な演説が俺の心に響くかと言われればそうではない、そうではないが無視するほど人間の心が無い訳じゃない、スラトカを動かす強い思いが俺も動かした、それだけ。
「分かった、仲間にしてやろう」
「ほ、本当か!」
「とは言っても非戦闘員として扱うことになる、強さが俺とお前じゃ離れすぎてて話になんねーからな」
「それでもいい!」
意外な返事だ、てっきり犯罪者を皆殺しにしたいから俺の仲間になりたがっていたのかと思ったが。
「いいのかよ、なんかこう復讐とか憎悪とか、って話はない?」
「ない……オレの敵討ちはルサーべさんがやってくれた、だからオレは復讐じゃなくて純粋に正義感で戦ってきた、オレはお前の支援に回るつもりだ、オレより強いやつが十全に働けるようになればもっと多くの犯罪組織を壊滅できると、思ってるからな」
自分で直接手を下さなくても、世の中から犯罪者が減ることを望むってことか、大きな目線で見ているんだな、てっきり復讐に燃えるタイプかと思ってたぜ、なんせ1年前実力差も分からず突っかかってきたんだからな。
ビビりだが前に出るくらいに正義感がある、一歩引いた冷静さもある、後は相応の実力と観察眼さえあれば立派なヒーローになれるけど向いてるのは指揮官、参謀だな。
「色々と深く考えてるんだな、どっちかと言うと参謀タイプじゃないか?」
「そうなのか?」
「俺の見る限り参謀っぽいぞ、じゃあ今日から参謀と言うことで……スラトカ参謀早速だが美容室知らない? あと服屋」
「え? は……あぁ……じゃあ行きつけの店でいいか?」
半ば強引にスラトカを参謀に据えた、意外とフィットするのか本人もその立場で良さげだった。
そして意外な事に美容室で初めて自分の顔を見た、俺の顔つきも髪型もベジータに似ていた、違いがあるとするならすでに超サイヤ人4の毛量がある、カットしてもこの髪型を戻ったのでデフォでこれだ。
ベジータのそっくりさんとしてテレビに出てもバレないだろう、そんなレベルで似ていた、顔が似るのは下級戦士あるあるなのだがベジータ顔はあったかな、エリートなのにな。
服はいい感じの戦闘服があったのでそれを買った、顔がベジータなのでいっそ寄せてみようと思い、黒いタイツに白い胸当て、白いブーツを購入、いい感じにベジータになった。
「世話になったな、アイスを奢ってやろう」
「アイスより魚がいい」
「ブカリの価値観どうなってんの?」
髪も整え服も新しくなってさっぱりした後は、その辺のベンチに座って串焼き魚を頬張った、2人仲良くな!
食べ終わってからぼーっとしていると、スラトカがソワソワしていた、何をソワソワしてんだろうね、ドンと構えてなさいよ。
と思ったら背後からルサーべの気配、なるほどスラトカはルサーべを見つけてソワソワしていたのか。
「ここにいたかトロモシ……うむ、見違えたな」
「おっ、ルサーべ」
「ルサーべさん……?! ……おお、おお、お、お疲れ様ですっ!」
「なんだスラトカも一緒にいたのか、いつの間に仲良くなったんだ?」
「仲良くなっただけじゃねぇぜ、スラトカは俺の参謀だ」
「は? …………まぁ深くは聞かない、それよりも朗報だ、サッファが姿を現したぞ」
「いつ頃やる?」
「今晩だろうな、明日には何処かへ飛び立つ素振りがあるそうだ」
「聞いたなスラトカ、今晩サッファとの因縁に決着つけるぞ」
「え?」
置いてきぼりのスラトカをよそに俺とルサーべは戦いに備え気を集中させるのだった。
この戦いが試金石となる、今後現れるだろう強敵、そしてフリーザ、俺の素質が奴に追いついけるのか試してみないとな。