今回は秋の話。新キャラが4人も登場します!その内の2人は予想しやすいんじゃないかな……?
夏の暑さも過ぎ去り、少しずつ肌寒くなってくる秋が訪れた。地底もその影響で気温が少しずつ下がっていた。夏にはとてつもない暑さだった地霊殿も、今はぽかぽかとちょうどいい暖かさになっていた。
悠翔「ようやく過ごしやすくなってきたなぁ……。」
ルネ《そうだね〜。》
さとり「地底での夏が初めての悠翔さんには結構辛そうでしたね。……扇風機があったのに争奪戦になってしまったので。」
悠翔「能力で増やすことを思いつかなかったらどうなっていたことか……。……そういえばさ、秋ってよく◯◯の秋って言われるけど、さとりは何の秋だと思う?」
さとり「私はやっぱり、読書の秋ですかね。快適な環境で、ゆっくりと本を読めるので。悠翔さんはどうですか?」
悠翔「う〜ん……運動の秋かな?やっぱり涼しいから外に出やすいし。」
さとり「……運動ですか……。」
悠翔「……たまにはちゃんとやりなよ?」
さとり「分かってますよ……。」
悠翔にやんわりと注意され、さとりは顔を逸らす。すると、ドアがバンッと勢いよく開かれる。
こいし「食欲の秋だー!!」
さとり「ちょっとこいし!?ドアが壊れるわよ!?」
こいし「あっごめん!」
悠翔「それで、なんで叫びながら部屋に入ってきたの?」
こいし「そうだった!ねぇねぇ2人とも、地上に秋の食べ物を探しに行こうよ!」
悠翔「秋の食べ物?というかなんで地上に探しに行くの?地底でもそういうのは買えそうな気がするけど……。」
さとり「いえ、そうでもないです。確かに地底でも食料は手に入りますが、それは地底でも育つものか、地上から運び込まれたもののどちらかです。そして、地上から運び込まれるものはいつも同じものでそれ以外のものはほとんど運び込まれません。こいしの言う秋の食べ物もそう簡単に手に入るものではないんです。」
秋の食べ物は地底でも手に入りそうだから地上に行かなくてもいいのでは?という悠翔に対し、さとりは地上の食べ物自体が手に入りにくいと言う。
悠翔「そっか……。なら地上に行こうかな。さとりはどうする?」
さとり「私はまだ仕事があるので残ってます。……それとこいし、あなたにもまだ仕事があるわよね?」
こいし「ギクッ⁉︎ど、どうだったかな〜。」
さとり「どうせ仕事をサボりたいから地上に行こうとしていたんでしょう?秋の食べ物が欲しいのは本当だから、それを口実として。」
こいし「うぅ……。」
さとりに自分の真意を言い当てられ、こいしは下を向いて黙り込んだ。
さとり「まったく……。すみません悠翔さん、地上で秋の食べ物を探すのを頼めますか?私もこいしも手が離せなさそうなので……。」
悠翔「分かった、任せて。」
さとり「よろしくお願いします。お金は大丈夫そうですか?」
悠翔「うん。仕事で稼いだ分があるからね。」
ここ最近、悠翔は地底で大工のいわゆるアルバイトをしている。地底では妖怪たち(主に鬼)が頻繁に喧嘩をするので、よく建物が壊れる。それを直す仕事だ。本来なら人間である悠翔が雇われるはずがないのだが、悠翔は以前勇儀と戦って(ハンデありとはいえ)勝利しているため、周りから一目置かれていたのである。
さとり「悠翔さんが働けているのは勇儀さんのおかげですが……悠翔さんをあんなに傷つけたのは許してないですからね……!」
悠翔「あはは……。じゃあ、行ってくるね。」
さとり「今度は無事に帰ってきてくださいね。」
こいし「行ってらっしゃーい!!」
さとりとこいしに見送られ、悠翔は地霊殿を出発した__。
霊夢「それで、私のところに来たってわけ?」
悠翔「うん。霊夢か魔理沙なら地上のことを良く知ってそうだし、どこにいるか分かってるのは霊夢だったからね。」
出されたお茶(悠翔がお賽銭を入れたら出してくれた)を飲みながら悠翔はそう答える。地上に出てきた悠翔は博麗神社に向かい、霊夢と話をしていた。霊夢に秋の食べ物が売っているところを聞こうと考えたのである。
霊夢「そうねぇ……やっぱり『人里』じゃないかしら?あそこには幻想郷の人間がほぼ全員暮らしてるところだし、そういうものもあると思うわ。」
悠翔「人里……か。そこって俺みたいな外の世界の人間でも入れるの?」
霊夢「入れるわよ。なんなら、危害さえ加えなければ妖怪だって入れるのよ。最も、妖怪だってことはできる限り隠さなきゃいけないけど。」
悠翔「妖怪も入れるって……まぁ決まりがあるならまだいいのかな……?ちなみに、その決まりを破ったら、霊夢が退治しに出るって感じなのかな?」
霊夢「そうよ。まぁ大抵は意思のない妖怪が暴れてるのを止めてるくらいだけど。」
人里と呼ばれてるわりには妖怪も出入りできるようになっていることに少し危機感を持つ悠翔だったが、決まりがちゃんとあり、霊夢も対応してくれるというので一旦安心することにした。
悠翔「ありがとう霊夢。人里に行ってみるよ。」
霊夢「力になれたようなら良かったわ。またお賽銭を入れに来なさいね。」
悠翔「ここでそう言うのが霊夢らしいや……。じゃあ、またね。」
霊夢と別れ、悠翔は再び空へ飛び立ち人里へ向かう。……だが、
悠翔「……人里って、どこ?」
ルネ《……うん、私も思ってた。》
……人里の存在は聞けたものの、どこに人里があるのかを聞き忘れたため、悠翔は完全に迷っていた。ルネも知らないらしい。
悠翔「(どうしようかな……。博麗神社に戻って聞くのはちょっと申し訳ないし……魔理沙に聞こうにもどこに住んでるか知らないし……。あ、咲夜なら知ってるかな?……でも紅魔館って遠いしな……ワープゲートは使いたくないし……。なんか能力の調子も怪しいし……。)」
頭の中で思考が延々と渦巻いているが、一向に結論が出せない悠翔。
悠翔「……ん?」
ふと地面の方を見た悠翔は、そこに誰かが倒れているのを見つけた。さとりのようにピンク色の髪をしている少女だったが、さとりと違って髪はロングヘアーのようだ。
悠翔「えっ、大丈夫!?」
慌てて悠翔は地面に降り、倒れている少女に近寄った。次の瞬間、
少女「(ぐう〜)……お腹……すいた……。」
悠翔「いやお腹すいて倒れてただけかい……まぁそれも問題だけど……。」ゴソゴソ
少女がお腹から音を鳴らしてそう呟いたのである。悠翔は軽くズッコケながらも着ている服のポケットの中を探る。
悠翔「……お昼ご飯のおにぎりしかないな……。これでいいか。」
ルネ《えっ、いいの?》
悠翔「(うん、ご飯はまたどこかで探せばいいよ。)」
ポケットから出てきたおにぎりの包みを取り出し、少女に差し出す。
悠翔「ねぇ君、これ食べる?」
少女「…………!食べる……!」
差し出された包みを少女は奪い取るように取り、包みを取り払って中のおにぎりにかぶりつく。……が、そこで悠翔はあることに気づいた。
悠翔「(この子……表情が動いてない!?)」
ルネ《うん……。こいしちゃんに似てる……のかな?》
その少女は、一切表情が動いていなかったのである。驚く悠翔をよそに、少女はモグモグとおにぎりを食べ続け、食べ終わると同時に悠翔の方を向いた。
少女「ありがとう、助かった。」
悠翔「それは良かったけど……なんで君って表情が動いてないの?」
少女「それは……生まれつき?でも、感情は豊かだぞ!」フンスッ
悠翔「……えっと、顔に出てないから分からないっていうか……。」
少女「お面を見れば分かるぞ。」
悠翔「へ?お面?」
ルネ《あっ、悠翔!その子の頭のお面が変わってる!》
少女に言われて、悠翔は彼女の頭についているお面を見てみる。
悠翔「あれ?さっきは猿みたいなお面だったのに……狐の面になってる。」
少女「私は感情が顔に出ないが、代わりにお面が私の感情を表してくれるんだ。」
悠翔「お面が……。ていうか聞いてて思ったんだけど……君ってもしかして妖怪?」
少女「そうだぞ?そういえば、まだ名乗っていなかったな。」
すると、少女の周りにいくつものお面が現れた。
こころ「私はお面の付喪神……面霊気の『秦こころ』だ。」
悠翔「俺は星月悠翔、よろしく。……あれ、付喪神?付喪神って神様じゃないの?」
こころ「付喪神は妖怪の一種だぞ?」
悠翔「そうなんだ……。」
付喪神のことを神様だと思っていた悠翔は、付喪神が妖怪だと知って驚く。
こころ「ところで、悠翔はなんでこんなところにいるんだ?見たところお前は人間だろう?」
悠翔「えっと、ちょっと人里で秋の食べ物を探しに行こうとしてて。こころって人里の場所は知ってる?」
こころ「いや、存在は知ってるが行ったことはないな。」
悠翔「そっか……。(ん〜どうしよう……。霖之助さんとか場所知ってないかな……?)」
ルネ《確かにあの人なら知ってるかも……?》
こころに人里の場所を聞いてみたものの、どうやら知らないらしく、悠翔は霖之助に聞きに行こうか考える。すると、
こころ「だが、秋の食べ物がありそうなところは知ってるぞ。」
悠翔「……えっ、本当に!?」
こころ「あぁ。確か……『妖怪の山』には豊穣を司る神がいる……だったかな?」
悠翔「妖怪の山……か。あれ?そこって確か……。」
妖怪の山という単語を聞いた悠翔は、前にさとりに言われたことを思い出していた__。
悠翔『妖怪の山?』
さとり『はい。地上にある妖怪が住んでいる山です。主に『天狗』と『河童』という種族が住んでいます。』
悠翔『結構有名な妖怪が住んでるんだね。』
さとり『そうですね。元々は勇儀さんたち鬼も住んでいたらしいですが、今は地底に住んでいますからね。』
悠翔『そうだったんだ……。元々は山の長だったりしたのかな?』
さとり『その通りです。勇儀さんは妖怪の山を支配していて、『山の四天王』と言われていました。』
悠翔『四天王……ってことは。』
さとり『えぇ。あと3人、勇儀さんのように四天王と呼ばれていた鬼がいますよ。……最も、私も詳しくは知りませんが。』
悠翔『なるほど……。それにしても妖怪の山か……ちょっと行ってみたいかも。』
さとり『それは無理だと思います。今の妖怪の山は、外部から入ってくる者を受け入れていないはずですから。……天狗に認めてもらわない限りは出入りが難しいでしょうね。』
悠翔「……結構前に聞いた話だったから忘れてたな……。ていうかこころ、妖怪の山って外部の人は出入りできないんじゃないの?」
こころ「む?そうなのか?」
悠翔「うん。確か天狗に認められなきゃいけないって……ん?天狗?」
そこで悠翔は、今度は紅霧異変後の宴会のことを思い出した。
アリス『文は妖怪の山に住む妖怪で、鴉天狗っていうのよ。』
悠翔「そうだよ!文さんがいた!」
こころ「文?」
悠翔「うん。新聞記者で、鴉天狗なんだよ。文さんに頼めば山に入れるかも!」
こころ「おぉ!それなら妖怪の山へ行くぞ!」
悠翔「おぉー!!……って、え?こころもついてくるの?」
福の神の面(お爺さんのようなお面、嬉しい時につける)をつけたこころが早く行くよう言い、ノリかけた悠翔はこころがついてくることに気づいて冷静になる。
こころ「おにぎりの礼だ。私も手伝うぞ!」
悠翔「(……まぁいいか、なんか放って置けないし。)じゃあよろしくね、こころ。」
こころ「任せろ、悠翔!」
そうして、悠翔とこころの2人は妖怪の山へ飛び立った__。
ルネ《(……文さんって今妖怪の山にいるのかな……?)》
悠翔「よっと……ここ?」
こころ「あぁ、ここだ。」
飛び立ってすぐ、「妖怪の山って……どこだっけ?」となった悠翔だったが、こころが場所を知っていてくれたおかげで、なんとか辿り着いていた。
悠翔「デカいな……豊穣の神様見つけられるかな……?」
こころ「大丈夫だ、私がいるからな!2人で探せばきっと見つかるはず!」
悠翔「あはは、そうだね。ありがとう、こころ。」ナデナデ
こころ「むふー。」
悠翔がこころの頭を撫でると、こころは満足げな声を出す。表情は変わらないこころだが、声色は変わるのでそれでも感情が判断できるのである。
悠翔「まずは文さんを見つけないとな……。とりあえず山に入ってみるか。」
こころ「おー。」
ルネ《(ちょっと不安だなぁ……。)》
不安がるルネをよそに、悠翔とこころは山に入って行った。
悠翔「まずは文さんを探さないとな……。豊穣の神様が見つかればそれでもいいけど……。」
こころ「そもそも文という天狗が住んでいる家がどこかは知ってるのか?」
悠翔「それは分からないんだよね……この山のどこかにいるのは分かr『そこの者たち、動くな!』うぇっ!?」
こころ「む?」
突然どこからか2人を止める声が聞こえ、悠翔とこころはキョロキョロと辺りを見回す。が、どこにも声の主が見当たらないので、おそらく隠れているのだろう。
??『人間と外の妖怪がこの山になんの様だ?正直に答えよ!』
悠翔「えっと……この山にいるっていう豊穣の神様に会いに来ました!隣の子は付き添いです!」
??『豊穣の神様に会うだと?なんのためだ!?』
悠翔「秋の食べ物を分けてもらいに来ました!」
??『…………へ?』
相手の質問に悠翔が正直に答えると、相手が気の抜けた声を出し、姿を現した。相手の正体は少女で、白髪に白い服と紅白の飾りがついた黒いスカート(袴?)を身につけ、頭に山伏風の帽子を被っている。これだけなら天狗に見えるが……その少女の頭には犬の様な耳が生えており、スカートからは白い尻尾が覗いていた。
悠翔「天狗?でも耳と尻尾がある……。……犬かな?」
こころ「狼かもしれないぞ?」
椛「2人とも惜しい、というところだな。私は『犬走椛』、この妖怪の山を守護している『白狼天狗』だ。」
悠翔「白狼天狗……狼の天狗ってことか。文さんが鴉天狗だったから、天狗の中にも色んな種族がいるってことなんだ。」
椛「文様のことを知ってるのか?」
悠翔「前に会ったことがあるんだよ、取材させて欲しいって。でも、文さんの記事って捏造が多いらしいから断ったんだけどね……。」
椛「実際、文様の文々。新聞は捏造の記事だらけだからな……。」
椛は片手で頭を押さえる。どうやら文の記事は同じ天狗も頭を悩ませているらしい。
悠翔「……ところで椛さん。」
椛「椛でいいぞ。それで、どうした?」
悠翔「じゃあ椛……その話し方、話しづらくないの?」
椛「……は?」
悠翔「なんかこう……威厳を見せるように話してるって感じがするんだよ。似たような話し方をする人を知ってるからさ。」
悠翔がそう言った瞬間、どこかの赤い屋敷の主がくしゃみをしたらしいが、それはまた別の話である。
椛「それは仕事中だからなんだが……何が言いたい?」
悠翔「俺たち相手くらいなら話しやすい感じで喋ってもいいよ、ってこと。こころもいいよね?」
こころ「私は構わないぞ。」
椛「……分かりました。そういえば、名前を聞いていませんでしたね。」
悠翔「俺は星月悠翔。こっちは面霊気の秦こころだよ。よろしくね。」
こころ「よろしく頼むぞ。」
椛「はい、よろしくお願いします。」
3人は手を差し出し握手を交わした。
椛「さてと、確か悠翔さんとこころさんは豊穣の神様に会いたいという話でしたが……?」
悠翔「うん。本当は人里に行こうと思ってたんだけど、場所が分からなくてさ……。こころが妖怪の山に豊穣の神様がいるって教えてくれて、それでここに来たんだ。」
椛「なるほど……こころさんはその話をどこで聞いたんですか?」
こころ「う〜ん……いつだったか……幻想郷を彷徨っている時に小耳に挟んだ程度だったはず……。」
ルネ《ちょっと曖昧なのかな……?》
悠翔「(みたいだね……。)」
猿の面(困った時につける)をつけたこころは、腕を組んで豊穣の神様についての話をいつ聞いたかを思い出していた。
椛「う〜ん……まぁいいか。それじゃあ、私が2人を案内しますよ。」
悠翔「え、いいの?でも妖怪の山って外から来た者は受け入れないって……。」
椛「まぁ……できる限り姿を隠す様にしてくれれば大丈夫だと思います。それに万が一見つかっても、2人を山の外に送るまで見張っていると言えば、納得してくれるかもしれません。」
こころ「……1つ気になったんだが、どうして椛は私たちを案内してくれるんだ?天狗からしたら私たちは侵入者なんだろう?」
椛「そう……ですね。2人からまったく悪意が感じられないから、ですかね。目的だってすごい平和でしたし。……何より、私が2人を信じてみたいって思ったからです。」
悠翔「……ありがとう椛。じゃあ、案内をお願いできる?」
椛「えぇ、任せてください!」
こうして悠翔とこころは椛の案内で妖怪の山を登っていくのだった__。
こころ「かなり歩いてきたが……まだ着かないのか?」
椛「はい、豊穣の神様……『秋穣子』さんの畑は山頂に近いところにあるんです。」
悠翔「そうなんだ……。空を飛ぶわけにもいかないし、こればっかりはしょうがないか。」
ルネ《目立ったら他の天狗たちに追い払われちゃうからね……。》
椛の案内で歩き始めてから十数分、悠翔たちは未だ、豊穣の神様……秋穣子がいるという畑に辿り着いていなかった。その畑は頂上に近いところにあるという話だが、目立った行動ができない悠翔たちは空を飛ぶこともできないので、余計に時間がかかっていた。
椛「あ、でもそろそろ着きますよ!」
山の森を抜けると……目の前に黄金に輝く水田が現れた。
悠翔「うわ、すごい……これ全部お米か……?」
こころ「ん!見ろ悠翔、あそこにはぶどうがなってるぞ!」
椛「穣子さんはお米や秋の食べ物を育てることが得意なんだそうです。というより、能力でしたかね?」
悠翔・こころ「「へぇ〜!」」
椛の説明に2人が感嘆していると、
??『そこにいるのは誰?』
畑の方から1人の少女が歩み寄ってきた。髪はウェーブのかかったボブの金髪でその髪には紅葉の髪飾りがついている。そして、茜色の上着と、赤色から黄色へのグラデーションになっていて、裾に椛の切り抜きがあるスカートを身につけている。
悠翔「あなたが秋穣子さんですか?」
静葉「それは私じゃないわ。私は『秋静葉』。紅葉を司る秋の神様よ。穣子は私の妹。」
こころ「姉妹の神様だったのか!?……紅葉を司る神様……か。」
椛「……なんでこっちを見るんですか?もみじ違いですよ……。」
現れた少女が穣子ではなく秋静葉という神様だったことと、静葉が穣子と姉妹であることに驚くこころ(大飛出という金ピカの面をつけている)だったが、紅葉という単語に反応してふと椛の方を向いていた。対する椛はバツが悪そうに顔を逸らしていた。
悠翔「えっと、静葉さん。俺たち、穣子さんに秋の食べ物を分けてもらいたくてここに来たんです。」
静葉「え!?そのためにわざわざ山を登ってきたの!?……というか、君ってこの山に住んでる妖怪じゃないよね?」
悠翔「うん。俺は星月悠翔。人間だよ。」
静葉「にっ、人間!?……よくここまで無事だったね?天狗たちに見つかったら生きて帰れたか分からないのに……。」
悠翔「……椛、天狗ってそんなに物騒なの?」
椛「……天狗の中にはそういう人がたまにいるんですよね……。」
悠翔「マジか……。」
椛の言葉に悠翔は天を仰いだ。
静葉「そこの天狗は安全そうね。とりあえず、穣子を呼んでくるわ。ちょっと待ってて。」
そう言うと、静葉は畑の方へ戻っていき、間もなく1人の少女を連れて帰ってきた。その少女は金髪赤眼で、頭にはブドウの飾りがついた赤い帽子を被っている。そして、だぼっとした肩と袖のふくらんだ黄色い上着に、その上からオレンジ色のエプロンを身につけ、黒いスカートを履いている。
穣子「お姉ちゃんに呼ばれて来たけど、あなたがお客さん?私は秋穣子。豊穣を司る秋の神様よ。」
悠翔「星月悠翔です。よろしくお願いします、穣子さん。」
穣子「穣子でいいよ。それで、秋の食べ物を分けて欲しいんだっけ?」
悠翔「うん、そうだよ。お金が必要だったらちゃんと払うし、お願いできる?」
穣子「えぇ、任せて!選りすぐりのものを持ってくるわ!」
そう言うと穣子は、やけに上機嫌で畑に向かって行った。
こころ「……元気だな。」
静葉「きっと嬉しいのよ、自分が必要とされるのが。」
悠翔「それもそうか。……ところで静葉さんって紅葉を司る神様って言ってたけど、普段は何してるの?」
静葉「私も静葉でいいわよ。普段は……と言っても秋だけだけど、妖怪の山の木々を紅葉させてるのよ。」
悠翔「へぇ……それは能力でやってるの?」
静葉「うん。私の能力は『紅葉を司る程度の能力』だからね。木の葉っぱを一枚一枚丁寧に塗ってるんだ。」
悠翔「…………ん?もしかして手作業でやってる?」
静葉「そうだけど?」
悠翔「えっ、大変じゃない!?」
ルネ《それは流石に予想してなかった……!?》
こころ「……静葉ってすごいんだな。」
静葉が木々を紅葉させるのが手作業だと知った悠翔とルネ、それと近くで話を聞いていたこころは驚愕に包まれていた。
静葉「確かに大変だけど、私が頑張れば妖怪の山のみんながその景色を楽しんでくれる。それを考えたら、すっごくやる気が出るんだ!」
悠翔「……立派な神様なんだね。」
静葉「当たり前でしょ?」
悠翔と静葉はそう話して笑い合う。
穣子「お待たせ!持って来たよ!」
悠翔「あ、ありがと……って多いな!?」
穣子「つい張り切っちゃった。」テヘペロ
穣子が持って来たのは、大きなカゴいっぱいに詰められた、さつまいもやリンゴ、ブドウといった秋の食べ物だった。
悠翔「本当にありがとう!これでさとりたちも喜ぶと思う!」
穣子「へぇ〜、あなたの友達のためだったんだ。じゃあ絶対届けてあげてね!」
悠翔「あぁ!」
椛「それじゃあ悠翔さん、こころさん。ここからは飛んでいってしまった方が早いです。でも、できる限り見つからない様に気をつけてくださいね。」
悠翔「分かった。ここまで案内してくれてありがとう、椛。また会いに来るよ。もちろん、静葉と穣子にもね!」
椛「ふふ、楽しみにしてますね。」
穣子「また何か買いに来てね!」
静葉「ちょっと穣子……。……まぁいいや。またね悠翔。」
悠翔「またね、3人とも!」
こころ「またなー。」
椛たちに別れを告げ、悠翔とこころは空を飛んで妖怪の山から去って行った__。
静葉「……あれ?悠翔って人間なんだよね?……なんか普通に空飛んでない!?」
穣子「……言われてみれば確かに!?」
椛「きっと、かの博麗の巫女と同じ感じなんでしょうね……。」
悠翔「いやー、無事に手に入って良かったよ。ありがとね、こころ。」
こころ「礼には及ばない。助けてもらった恩返しだからな。」
悠翔「そうだったね。……ところで、こころってこれからどうするの?さっき言ってたみたいに、また幻想郷中を彷徨うの?」
こころ「そうするつもりだったが……悠翔について行ってもいいか?」
悠翔「……え?」
こころ「悠翔といるのは楽しそうだからな。ダメか?」
悠翔「……え〜っとね……。」
そこで悠翔は、前にさとりから聞いていた、地上と地底の不可侵条約について話した。この条約がある限り、地上の妖怪は地底に入ることができないのである。
こころ「なるほど……。というか悠翔、地底に住んでたんだな。」
悠翔「ごめん、言ってなかったね。……とにかく、一緒に来るのは難しいと思うんだ。だから……。」
こころ「いや、姿を隠しながら行けば問題ないだろう?」
悠翔「いやそれでも無理が……。」
ルネ《……ねぇ悠翔。能力で地霊殿までのゲートを開けばいいんじゃないの?》
悠翔「(…………あ。)」
ルネに指摘されてそれに気づいた悠翔は、こころに自分の能力を説明した後、ゲートを作って地霊殿に帰ってきた。
こころ「ここが地底なのか。……暑いな。」
悠翔「まぁ、その内慣れるよ。……さてと、さとりは……?」
さとり「お帰りなさい、悠翔さん。……まずはそこの女の子について説明してもらってもいいですか?(主にその子を堕としていないか、きちんと確認する必要がありますからね……!)」ゴゴゴゴゴ
悠翔「あ……はい。(なんか……さとりがすっごいオーラを放ってるんだけど!?)」
ルネ《(……こうなること完全に失念してたなぁ……。)》
こころ「(……あの人、なんか怖い……。)」
何やらとてつもないオーラを放つさとりに対し、悠翔はタジタジとなりながらもこころについて説明する。説明を終える頃には、さとりのオーラは引っ込んでいた。
さとり「なるほど、そういうことでしたか。確かにこのまま放っておくと、冬に凍えてしまう可能性がありますしね。……こころさん、でしたよね。しばらくはこの地霊殿に住んでいてください。」
こころ「ありがとう。……えっと。」
さとり「古明地さとり、この地霊殿の主です。よろしくお願いしますね。」
こころ「よろしく、さとり。」
こうして、地霊殿の住人に秦こころが加わったのだった__。
続く
☆オマケ
こいし「こころちゃんにぎゅー!」
こころ「んむ……こいし、くすぐったい……。」
こいし「えー?」
さとり「ふふ、こいしが楽しそうで良かったです。」
悠翔「だね。……ところでさとり、さっきはなんであんなオーラを向けてきたの?」
さとり「…………いえ、こころさんを悠翔さんがどこかから攫ってきたのかと思ってしまって……。」
悠翔「俺そんなことしないよ!?」
さとり「分かってますよ。(本当に鈍感ですね、悠翔さんは……。……それにしてもこころさん、まだ自覚してないみたいですが、少しずつ悠翔さんに惹かれているんですよね……。また悠翔さんを狙う子が増えちゃうんですかね……。)」
心の中で苦笑しながら、さとりは紅茶に口をつけるのだった__。
秦こころ登場!というわけで前回の後書きでかなり後に登場するキャラと言っていたのはこころでした。この子小数点作品で初登場したのになんだかんだ人気なんですよね。人気投票も今年17位だったし。お面が変わってるのは各々想像していただいてもらって……(多分今後のストックとか見てもその描写してなかったので)。
その他妖怪の山から椛、穣子、静葉も登場しました!風神録編で出番あるのかな……?(風神録編は内容がまだ未定)
椛は仕事中は文を『様』付けして呼びます。ZUNさんが文と椛は不仲って言ってましたけど、この小説ではそんな仲は悪くないです。
次回は冬の話。次回も1人、新しいキャラが登場します。これが終わった後、妖々夢編に入ります!