東方幻想記   作:望月水音

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待ってた人いたら、大変お待たせしました……!

12話、悠翔がどうして殺されなければならないのか、そしてどうやって悠翔が幻想郷にやってきたのかが明らかになります!


第12話 妖怪の賢者と悠翔の真実

突如謎の空間に転移させられた悠翔とさとりは、そこで八雲紫という妖怪の賢者と、その式神である八雲藍、そして藍の式神である橙と遭遇する。その目的は、悠翔を幻想郷から排除するというものだった。

 

悠翔「俺を排除するって……どういうことですか!?」

 

紫「さっきも言ったじゃない。あなたは幻想郷にとって危険な存在なの。」

 

さとり「それでは納得できません!詳しい説明をお願いします!」

 

紫「……面倒くさいわね……。」

 

紫は大きなため息をついてから説明を始める。

 

紫「まず、あなたはどうやってこの幻想郷に来たか知っているかしら?」

 

悠翔「……知らないです。俺は記憶喪失なので……。」

 

紫「でしょうね。あんな状態で幻想入りしてきたのだから、そうなってしまうのも当然。」

 

悠翔「……あんな状態?」

 

紫「聞きたいかしら?」

 

さとり「(一体何を考えて……っ……!?)そんな……心が読めない!?」

 

紫が何を考えているのか看破しようとしたさとりだったが、何故かさとりは紫の心を読むことができなかった。

 

紫「あなたの能力を対策してないとでも思ったの?私の『境界を操る程度の能力』で、心の境界に干渉できなくしてるのよ。もちろん、藍と橙もね。」

 

さとり「……悠翔さん、話を聞かないで逃げましょう!嫌な予感しかしません!」

 

悠翔「……いや、それはできない。」

 

さとり「どうしてですか!?」

 

悠翔「目的はどうあれ、話を聞けば俺がどうやってこの幻想郷に来たのかを知ることができる。……それに、逃げようとしてもここは紫さんが作った空間のはず。逃げてもこの場に戻されるだけ……。そもそも、この空間から出ることすらできないはずだよ。」

 

紫「その通りよ。あなたたちには逃げ場はない。……大人しく話を聞くか、無駄な抵抗をせずあなたが死ぬ以外の選択肢は無いわ。」

 

悠翔「……だったら、大人しく話を聞く方を選びますよ。」

 

紫「……そう。なら、聞かせてあげましょう……あなたの真実を。」

 

そうして紫は話し出す。……それは、到底受け入れ難いことだった。

 

紫「星月悠翔。あなたはまず……一度死んでいる(・・・・・・・)わ。」

 

悠翔「…………は?」

 

さとり「悠翔さんが……死んでいる……?」

 

2人は紫の言葉の意味が呑み込めず固まる。

 

紫「理解できないって顔をしてるわね。なら、詳しく話してあげましょう……。」

 

 

 

 

 

 

私が初めてあなたのことを認識したのは、偶然私の能力で幻想郷を見ていた時のことよ。外の世界で死に、魂となった人間たちが地獄の閻魔の元へ向かっている中に……1つ、他とは違う魂があった。……それが星月悠翔、あなたよ。

私はその魂が気になり、しばらく様子を見ていた。すると、あなたの魂に、どこからか2つの魂が接触し、1つの光になった。そしてその光はどこかへ向かっていき、地底に到達した。そして、あなたは地霊殿の真上で蘇った。そこで、古明地さとりに拾われた、というわけよ。

……どうして記憶を失ったかが分からない?簡単よ。あなたは魂になったことで、存在が不安定になっていた。そこにあの2つの魂が無理やり干渉したせいで、あなたの存在が中途半端なものになってしまった。それが原因で、あなたは記憶を失ったのよ。

 

 

 

 

 

 

紫「これが、あなたの幻想入りの真実よ。」

 

悠翔「…………。」

 

悠翔はまったくその話を理解できなかった。……もしくは、脳が理解を拒んでいるのかもしれない。

 

さとり「……悠翔さんがあまりにも特異な方法で幻想入りしたことは分かりました。……ですが、それだけで悠翔さんを排除する理由になるとは思えません!」

 

紫「……まさか、気づいていないの?その子の中で起こっている異変に。」

 

さとり「…………え?」

 

紫「はぁ……。どうして私が悠翔を排除しようと思ったか。それは……

 

 

 

 

 

悠翔の中にいる子が、暴走してしまうからよ。」

 

紫の言葉に、しばらく沈黙が続く。

 

悠翔「……う、嘘だ……ルネが暴走するはずがない!だってルネは……!」

 

紫「あなたの中で大人しくしていた。でもそれは、あなたの能力があったからよ。」

 

悠翔「……なんだよその言い方。まるで、俺の能力がもう残ってないみたいな……。」

 

紫「実際、それに近い状態なの。あなた、地底で星熊勇儀と戦った時のことは覚えているかしら?」

 

そこで悠翔は、その時の記憶を思い出す。

 

悠翔「あの時……俺はルネの能力を、自分の力に変換するために強く利用した。」

 

紫「その通りよ。そして、それが原因であなたの能力に異常が発生した。あなたの中にいる子……ルネだったかしら?その子の『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』が、あなたの『ありとあらゆるものを創造する程度の能力』を少しずつ破壊してしまっているのよ。」

 

悠翔「なっ……!?」

 

さとり「まさか……悠翔さんがたまに感じていた違和感は……!」

 

紫「そう、警告のようなものだったのよ。あなたが勇儀と戦って以降、あなたの能力は使うごとに少しずつ壊れていっているというわけよ。それと能力を使った時、たまに大きく能力が破壊されたこともあったはずよ。」

 

悠翔が能力を使った時にたまに感じていた違和感は、能力が壊れていることを警告するものだったのである。

 

紫「そして、あなたの能力が壊れ切った時、あなたの意識はルネという子に乗っ取られ、暴走を始めてしまう。そして、この幻想郷を壊すことになりかねないのよ。」

 

悠翔「……だから、俺を排除するってことですか……。」

 

さとり「能力を直すことはできないんですか!?」

 

紫「直したところでまた壊されてしまうだけよ。……さて、この説明を聞いても、まだ自分が危険な存在であると理解ができないのかしら?」

 

紫の問いかけに対し、しばらく黙っていた悠翔だったが、

 

悠翔「……紫さんが言っていることの理解はできました。でも、俺は死ねない。この世界で、苦しんでいる人が笑って過ごせる未来を創るまで!」

 

紫「……そう、残念ね。藍、橙。彼を強制的に排除するわ。」

 

悠翔の返答に紫はため息をつき、藍と橙と共に臨戦体制を取る。

 

悠翔「……さとりは下がってて。これは俺の問題だ。」

 

紫「そうね。今ならあなただけ元の場所に帰してあげてもいいわ。」

 

さとり「……お気遣いはありがたいですが、私もここで退く気はありません。悠翔が殺されるかもしれないのに、逃げるわけにはいかないんです!」

 

紫「……仕方ないわね。気絶させて無理やり帰すとしましょうか。地底の管理者がいなくなるのは困るしね。」

 

藍「……紫様、古明地さとりは私と橙で相手します。紫様は彼の相手を。」

 

紫「えぇ、任せたわ。」

 

退く気はないというさとりの前に藍と橙が立ちはだかり、悠翔の前には紫が立ちはだかった。

 

悠翔「行くぞ!」

さとり「行きます!」

 

2人の掛け声と同時に、戦いの火蓋が切られた__!

 

 

 

 

 

 

さとり「はぁ……やはり2人がかりの弾幕は避けるのが難しいですね……!想起『恐怖催眠術』!」

 

藍と橙の弾幕を避け続けているさとりは、それがジリ貧であることを悟り、スペルカードを発動する。それは『テリブルスーヴニール』に似ていたが、弾幕の質量が桁違いに上がっていた。

 

藍「くっ……!?」

橙「わわっ!?」

 

藍と橙は弾幕をギリギリで避けることができたが、その代わりにお互いを引き離されてしまう。

 

さとり「これで1対1です!」

 

藍「なるほど、そう来たか……。だが、式神『橙』!」

 

さとり「なっ!?」

 

さとりの狙いは成功し、藍と1対1に持ち込めた……と思ったのだが、藍は落ち着いてスペルカードを発動する。すると、離れていたはずの橙が召喚され、さとりに突進しながら弾幕を撒き散らしてきた。

 

藍「残念だったな。橙は私の式神だから、いつでも呼び出すことができるんだ。このようにスペルカードでも呼ぶことができるがな。」

 

さとり「厄介ですね……!(何より、心が読めないからどこに弾幕を打とうとしているかが分からない……!普段と戦い方がまったく違う……!)」

 

紫の対策のせいで藍と橙の心が読めないさとりは、普段との戦い方の違いに苦しんでいた。

 

悠翔「さとりの手助けをしたいけどっ……!隙が無さすぎる……!」

 

紫「彼女の手助けなんてさせないわよ。仮にこの場から離れられたとしても、スキマを使えば阻止なんて容易なのよ。」

 

悠翔は苦戦するさとりを助けようとするが、紫の弾幕が激しく、隙を見出すことができていなかった。

 

悠翔「(ただでさえ能力を使いづらいっていうのに……!)」

 

紫「(事実とはいえ、能力の崩壊について伝えれば、彼は今までのような戦い方ができなくなる。そんな状態で私に勝つことはできないわ。)さぁ、そろそろ本番といきましょうか。」

 

そう言うと、紫はスペルカードを取り出し、発動する。

 

紫「魍魎『二重黒死蝶』。」

 

スペルカードを発動すると、紫は赤と青の蝶々の形をした弾幕を放ってきた。それが交差するように回転するため、悠翔は弾幕をスレスレで避けていた。

 

悠翔「ふっ……はっ……!」

 

紫「あら、なかなかやるわね。」

 

悠翔「お褒めの言葉は受け取っておくけど……なんでわざわざ弾幕で俺を攻撃するんだ?妖怪なら人間の俺を殺すことなんて簡単でしょ?」

 

紫「ふふっ、確かにそうね。でもそれじゃあ……面白くないじゃない。」

 

悠翔「ッ……!!(完全に手加減されてるな……。ルネ、スペルカードを……!……ルネ?)」

 

紫に手加減をされていると分かった悠翔はルネのスペルカードで攻撃をしようとする……が、ルネの反応がないためスペルカードを発動することはできず、悠翔は困惑して止まってしまう。……そしてその隙が命取りとなってしまった。

 

紫「隙だらけよ。」

 

悠翔「ハッ!?しまっ……!?」

 

悠翔が気づいた時には、目の前に紫の弾幕が迫っており、避け切ることができなかった悠翔はその弾幕に当たってしまった。……そして、悠翔を想像を絶する激痛が襲った。

 

悠翔「ぐっ、があぁぁぁぁ!?(なん……だよ……これ……!?)」

 

紫「そういえば言ってなかったわね。弾幕で攻撃していたとはいえ、その威力は普通のものより格段に高くなっているわ。何発も当たれば……ふふっ。」

 

紫は途中で言葉を切って不気味に笑う。

 

悠翔「(マジ……か……。……ルネも……なんで……。)」

 

紫「さて、そろそろトドメかしらね。」

 

そう言って紫は手にとてつもない量の妖力を込めた弾幕を生成する。

 

悠翔「(こんなところで……)終われ……るかぁ!!」

 

紫「(……立ち上がった……か。これじゃあこの弾幕は……。)」

 

避けられる、と考えようとした紫の視界に、藍と橙の弾幕を避け続けるさとりの姿が映る。

 

紫「(……こうする他ないわね。)はぁっ!!」

 

悠翔「どこに撃って……ッ……!?さとり!!」

 

さとり「(後ろを振り向く)あっ……!?」

 

橙「紫様!?」

 

藍「何を……!?」

 

主の行動に驚愕する藍と橙。そしてさとりは自らに迫る弾幕を目にして、思わず目をつぶってしまった__。

 

 

 

 

 

 

悠翔「かはっ……。」

 

さとり「はっ……悠翔さん!?」

 

悠翔の苦しげな声が聞こえ、さとりはバッと目を開ける。そこには、弾幕に体を貫かれる悠翔の姿があった。さとりは自分の服が血で汚れるのも厭わず、悠翔を抱き抱えた。

 

紫「やはり庇ったわね。」

 

藍「紫様、今のは……。」

 

紫「彼は自分の大切な人をなんとしてでも助けようとする。つまりさとりに弾幕を放てば、彼は必ずさとりを庇う。」

 

藍「ですが、能力を使って防がれる可能性もあったのでは?」

 

紫「それは無いわ。彼は今、能力の使用を避けている。自分の能力も、彼の中のルネの能力もね。……まぁ、ルネの方はどうやら引きこもってしまったようだけど。」

 

2人がそう話している間にも、さとりは悠翔に声をかけ続けていた。

 

さとり「悠翔さん!!悠翔さん!!」

 

悠翔「さ……とり……。」

 

目を覚ました悠翔は、さとりの方を見ると微笑む。

 

悠翔「ごめん……ね……。こんな……別れに……なって……。」

 

さとり「違います!!別れなんかじゃないです!!そんなこと言わないでください!!」

 

悠翔「さとり……こいしたちに……伝えて……。一緒に過ごせて……良かったって……。」

 

さとり「ダメです!!そんなこと言えません!!だって……だって……。」

 

悠翔「最後に……さとり……。

 

 

 

君を……守れて……良かった……さ……よう……な……ら……。」

 

その言葉を最後に、悠翔の体から力が完全に抜けた。

 

さとり「いや……いやぁぁぁぁ!!悠翔さんっ!!悠翔さぁぁぁぁん!!」

 

温もりの消えた体を抱きながら、さとりは泣き続ける。……だが、悠翔が目を覚ますことは無かった。

 

紫「……終わったわね。藍、橙、行くわよ。」

 

藍・橙「「……はい。」」

 

どこか暗い式神の2人を連れて、紫はこの場を去ろうとする。

 

さとり「待ち……なさい……!!」

 

しかし、さとりのそんな言葉に立ち止まって後ろを振り返る。

 

さとり「絶対に逃さない……!!あなたを殺して……悠翔さんの仇を取る……!!」

 

紫「そのまま帰ろうとすれば良かったものを……。藍、橙、手出しは無用よ。ここは私がやるわ。」

 

そうして前に出た紫はさとりと目を合わせる。その目は赤く充血し、異様な殺気を放っていた。……そして合図もなしに、両者は激突した__。

 

 

 

 

 

 

同じ頃……

 

〈地霊殿〉

 

こいし・こころ「「っ……!?」」ガタッ

 

こいし「こころちゃん……今の……!?」

 

こころ「あぁ。悠翔とさとりに何かあったのかもしれない!!」

 

こいし「急いで探さなきゃ!!」

 

 

 

〈紅魔館〉

 

レミリア・フラン「「ハッ……!?」」ガタッ

 

レミリア「フラン……今の感じたかしら……!?」

 

フラン「うん……!!悠翔と……ルネに何かあったのかも!?」

 

レミリア「……ダメだわ、2人の運命がなぜか見えない……!!急いで探しに行くわよ!!」

 

何かを感じ取ったこいしとこころ、そしてレミリアとフラン。4人は悠翔とさとりとルネを探して、それぞれの屋敷を飛び出すのだった__。

 

 

 

 

 

 

〈悠翔side〉

 

体が軽い……というより、感覚がない……のか?……何も見えないし、何も聞こえない。……本当に死んじゃったんだな……俺。

 

紫さんの攻撃で倒れた俺は、何も感じず、ただどこかを彷徨っていた。1つ言えることは、俺が死んでしまったのは確かだということだ。

 

……悔しいな……大切な人を守れても、悲しませてるようじゃ意味がない……。もっと、できることがあったはずなのに……。

 

??『諦めるのはまだ早いぞ。』

 

自責の念に駆られる俺の耳に、そんな声が聞こえてきた。その声に俺は聞き覚えがあった。父さんの声だ。

 

父『お前にはまだできることがある。……でも、その前にお前の記憶を戻さないとな。』

 

記憶を戻す……!?そんなことできるのか……!?

 

父『どうせそんなことできるのか?とか考えているんだろう?お前を蘇らせた時に、お前の記憶がカケラになって俺と『来羽』の元に残ってたんだよ。本当は少しずつお前に戻していくつもりだったが……そんなこと言ってる場合じゃないんでな!』

 

父さんがそう言った瞬間、俺の頭を激しい頭痛が襲った。

 

痛い……頭が割れてるみたいだ……!

 

父『耐えろ!全てを思い出せば、それがお前の力になる!』

 

父さんの言葉を聞き、俺は意地でその痛みに耐え続けた。どんどん頭に、見覚えのない光景が流れ込んでくる。これが俺が忘れている記憶なのだろう。

 

こんな痛みに……負けるかぁぁぁぁ!!

 

そう心の中で叫び声を上げると、俺を苦しめていた頭痛が止まり……全ての記憶が俺に戻った__。

 

 

 

 

 

 

俺は父さん……『星月創真』と母さん……『星月来羽』の子供として生まれた。その時は……2009年だったかな。

それから俺たち3人は、ごく普通の、それでいて幸せな毎日を送っていた。……でもある日、事件が起こった。

2020年。俺たちは旅行の帰りに、速度違反の車に轢かれて病院に搬送された。俺は1週間後に目覚めることができた。だが、父さんと母さんは当たりどころが悪かったらしく……二度と目を覚ますことはなかった。

 

退院した俺は父さん側の祖父母の家に預けられることになり、学校もその家の近くのところに通うことになった。俺が転校してきた理由を知った同級生たちは、俺を遠巻きに見ていた。だが、1人だけ、俺に近づいてきたやつがいた。

時雨優希。優希はお人好しなやつで、今思えば俺のお人好しは、優希に影響されてなったのかもしれないな。優希は当時塞ぎ込んでいた俺に構わずグイグイ距離を縮めてきた。最初は鬱陶しかったものだが、俺はだんだんと優希のことを受け入れていっていた。気がつけば、俺と優希は親友と呼ばれる仲になっていた。

アニメとか、特撮とかの娯楽に触れ始めたのもこの頃だった。優希におすすめされてそういうのを見てみたら、思いの外ハマっていたらしい。

そうして俺たちは中学・高校と一緒に進学していった。

 

そんなある日、俺たちは夏休みということで、プールに遊びに行こうとしていた。そんな時に、俺たちのところに通り魔が現れたんだ。ナイフを持って俺たちへ突進してくる通り魔を見て、俺は両親を失った時のことを思い出し……優希を突き飛ばし、通り魔のナイフに刺された。タダでは終わらず、俺は最後の力を振り絞って、通り魔の体を掴んで地面に叩きつけた。通り魔はそれで気絶したようだった。限界を迎えた俺は倒れ込んだ。そんな俺の顔を、優希が覗き込んできていた。その目には、涙が浮かんでいた。そんな優希に対して俺は、

 

悠翔『優希……俺みたいにはなるなよ?お前には……俺の代わりに生きてもらうんだからな……!』

 

そう優希に言い放った。それを聞いた優希は驚いた顔をしていたが、すぐに覚悟を決めたような顔をして頷いていた。俺はそれを見て目を閉じて……その世界での一生を終えた。

 

そこからは、紫さんに聞いた話の通りだった。魂となった俺は幻想郷へと流れつき、そこで2つの魂に干渉されて蘇った。そしてその魂は……父さんと母さんだった。2人が俺を生き返らせられたのは奇跡だったのだろう。そうして2人は、俺を簡単には見つからないような場所に行けるよう願い、俺の魂は地底へと向かっていったのだった__。

 

 

 

そこまで記憶を辿って、俺は気づいたことがあった。恐らく俺と父さん、そして母さんは……世界を超えていた。確信した理由は、優希が教えてくれた娯楽の中に、幻想郷に関するものがあったのだ。

 

『東方project 』。教えられたとはいえ、俺も知っていることは少なかったが、霊夢と魔理沙の存在くらいは知っていた。そんな2人が存在する世界が、俺の世界なわけがない。あの2人……そして幻想郷は架空の存在なんだ。それが実在しているということは……ここが別の世界としか言いようがない。

 

……ここまで思い出すことができたが、俺は未だに父さんの言葉の意味が分からなかった。この記憶が、どうして俺の力になるのだろうか。

 

創真『……山場は乗り切れたみたいだな。』

 

来羽『正直怖かったけど……無事で良かったわ。』

 

考え込む俺の耳に、また父さんの声と……母さんの声が聞こえてきた。

 

悠翔「父さん?母さん?どこにいるの?」

 

いつの間に口を開けるようになったことをよそに、俺は父さんと母さんの姿を探す。

 

創真『悪いな悠翔。俺も来羽も、今この場にはいない。言葉を届けているだけだ。』

 

悠翔「そっ……か……。」

 

それを残念に思いながらも、俺は父さんに疑問に思っていることを聞く。

 

悠翔「なぁ、父さん、母さん。記憶を取り戻せたのはいいけど、これが力になるっていうのはどういうことなんだ?」

 

創真『それはな……お前が前に進むってことだ。』

 

悠翔「…………は?」

 

父さんが言っていることの意味が分からず、俺はしばらく硬直する。

 

来羽『悠翔は私たちを失ったことをずっと悔やんでいた。そしてそれをずっと気にしていたの。記憶を失ってもなお……ね。そしてそれが原因で、自分のことを無自覚に責めてしまっていたの。』

 

創真『でも、それをずっと引きずってもらうわけにはいかない。だからそれを思い出して、受け入れ、前に進む必要があったんだ。』

 

来羽『私たちが死んでしまったのは悠翔のせいじゃない。だから、いつまでもそれを引きずらないで欲しいの。』

 

父さんと母さんの言葉は、正直に言えば心当たりのないことだった。2人が死んでしまったのが自分のせいだと思ったことはない。……でも、心のどこかで、そう思ってしまったのかもしれない。

記憶を失っていたのも、蘇ったことによる反動というより、自分がその記憶を拒んだのが原因かもしれない。

そう思って、俺は目を瞑る。……周りの音が聞こえなくなった。だが、誰かの声が聞こえた。

 

??『なんで……俺だけ生き残っちゃったんだろうな……。』

 

その声は……事故に遭った当時の俺の声だった。

 

悠翔「仕方のないことだった、じゃダメなのか?」

 

悠翔(過去)『ダメに決まってる!父さんも母さんも死んじゃったのに、俺だけ生きてるなんておかしいだろ!』

 

過去の俺が言っていることは支離滅裂だった。過去の俺はずっと、自分が生きるべきではなかった、ということを繰り返し言っているだけだった。

 

悠翔「……さっきまで忘れてた俺が言えることじゃないけど……切り替えて前に進めよ。お前に……いや、俺たちに残された道はそれだけだろ?」

 

悠翔(過去)『ふざけるな!父さんと母さんが死んだのに、俺だけがおめおめと生きてるわけにはいかないんだよ!』

 

悠翔「いい加減にしろよ!!」

 

悠翔(過去)『ッ……!?』

 

過去の俺の変わらない態度に、俺は思わず怒鳴ってしまう。

 

悠翔「確かに父さんと母さんは死んで俺だけが生き残った、それは事実だよ。でもそれをマイナスに解釈してどうするんだよ!」

 

悠翔(過去)『だって……!』

 

何かを言い返そうとした過去の俺だったが、言いたいことが思いつかなかったのか黙り込んでしまう。

 

悠翔「……さっき、記憶を見て分かったことがあるんだ。事故の時……父さんと母さんは俺を庇ってた。2人は、せめて俺だけでも生きれるよう守ってくれたんだよ。」

 

悠翔(過去)『…………!?』

 

悠翔「だから、今みたいに過去のことを引きずってる場合じゃない。2人に託された命を、俺たちは生きていかなきゃいけないんだよ!!」

 

そう言い切った後、しばらくその場を静寂が支配する。……そして、過去の俺が口を開いた。

 

悠翔(過去)『……いいのかな、このまま生き続けて。』

 

悠翔「いいんだよ、それで。」

 

悠翔(過去)『……分かった。俺がそう言うなら……俺も前に進むよ!』

 

次の瞬間、過去の俺が光の玉となって俺の中に入っていった。……これできっと、俺は前に進めたはずだ。

 

創真『上手くいったみたいだな。……でもおかしいな……能力が進化しない……?』

 

悠翔「どういうこと?」

 

父さんの声が聞こえたかと思えば、また気になることを言っていた。

 

創真『お前が自分の過去を受け入れて前に進めば、お前の能力が進化する……ってはずだったんだけどな……。』

 

悠翔「……それならそれでいいと思う。俺の能力って元から強かったし。」

 

来羽『悠翔がいいって言うなら大丈夫なんじゃない?』

 

創真『……まぁいいか。』

 

俺の能力については解決したが、まだ解決していないことがある。

 

悠翔「……俺、どうやって生き返ればいいんだ?」

 

そう、いくら記憶を取り戻そうが、過去を受け入れて前に進もうが、今の俺は死んでしまっている。生き返れなければ意味がない。

 

創真『それなら……その子がなんとかしてくれるそうだぞ?』

 

悠翔「へ?」

 

父さんの言葉を聞いて、俺は辺りを見回す。……俺の後ろに、ルネの姿があった。

 

ルネ「悠翔……。」

 

悠翔「ルネ!良かった、無事だったんだ……!さっき応えてくれなかったから心配で……。」

 

ルネ「ごめんね。あの紫さんって人の話を聞いて……怖くなっちゃって……。」

 

それもそうだろう。もう何も壊さないと思っていたルネの力が、俺の能力を破壊してしまっていたのだから。

 

ルネ「でも、そんなこと言ってる場合じゃないって思ったの。……助けてくれた人がピンチなのに、私が助けられないのはダメなんだって。」

 

悠翔「そっか。……それで、俺をどうにかして生き返らせてくれるって、本当?」

 

ルネ「……うん。でもね、そのためには、また悠翔が辛い思いをしなきゃいけなくなるの。」

 

悠翔「……それって、どういう……?」

 

ルネ「……悠翔、私、悠翔を生き返らせるために、

 

 

 

私(・)の(・)命(・)と(・)能(・)力(・)を(・)悠(・)翔(・)に(・)あ(・)げ(・)る(・)。」

 

悠翔「……な……は……え……?」

 

ルネの言葉を理解することを、脳が拒んだ。でも、理解せざるを得なかった。俺が生き返るためには……ルネの命を、犠牲にしなければならないのだと。

 

悠翔「待ってよ……それじゃあダメだ!まだ、他に方法が……!」

 

ルネ「ううん、これしかないよ。」

 

悠翔「そんなわけない!!……そんな、ルネを犠牲にする方法なんて……。」

 

ルネ「違うよ、悠翔。私はただ犠牲になるわけじゃない。……私は、ずっと悠翔の中にいる。会うことはできなくても、心でずっと繋がってる。……だから大丈夫。」

 

ルネの覚悟を受け取った俺は、流れてきた涙を拭く。

 

悠翔「……分かった。それが、ルネのやりたいことなら……そうする。」

 

ルネ『……ありがとう。……その、ちょっと、頼みごとしてもいい?』

 

悠翔「?いいけど……。」

 

ルネ「お姉様と私(フラン)に『お別れを言えなくてごめんない。……2人のこと、大好きだよ』って伝えて欲しいの。」

 

悠翔「分かった。絶対に伝える。」

 

ルネ『……悠翔、最後に1つだけ言わせて。

 

 

あの時私を助けてくれて、ありがとう!!』

 

満面の笑みでその言葉を告げるのと共に、ルネは過去の俺と同じように光の玉になり、俺の中に入っていった。その瞬間、俺の体を凄まじい力が巡った。そして、俺の髪と瞳の色が朱色に染まる。

 

悠翔「これは……!?」

 

来羽『……なるほど、その子が最後の鍵だったのね。』

 

創真『遂に成ったな。お前の本当の能力……『創造と破壊を司る程度の能力』が!……髪が染まったのは、さっきの子の影響だろうな。』

 

悠翔「創造と……破壊を……。」

 

創真『その力があれば、お前の夢を叶えることができるはずだ。あとは……お前が頑張るだけだ。』

 

来羽『悠翔、最後に約束して?……ちゃんと自分の人生を楽しむってこと。』

 

悠翔「分かってる。もう大丈夫だよ、母さん。」

 

俺の言葉を聞いた母さんは安心したように微笑んだ。

 

創真『……時間だな。』

 

父さんがそう言うと、俺の目の前に光の道が現れた。この先がきっと、現世なのだろう。

 

悠翔「父さん、母さん。……ありがとう。俺、この世界でもう一度、頑張ってくるよ。」

 

創真『お前は俺たちの自慢の息子だ。きっと、夢を叶えられるはずだ。』

 

来羽『あなたのことを、ずっと見守ってるわ。』

 

悠翔「あぁ!じゃあ、行ってくる!!」

 

俺はそう言うと、光の道を駆け抜け、現世へと帰っていった__。

 

 

 

 

 

 

さとり「はぁ……はぁ……。」

 

紫「あなたにしては頑張った方だと思うけれど……相性が悪かったわね。」

 

さとり「うるさい……ですよ……。」

 

悠翔の仇を取るため紫と戦っていたさとりだったが、やはり相手の心を読むことができない以上、相手のトラウマとなっているスペルカードを想起することもできず、弾幕と少ない自分のスペルカードだけで戦わなければならなかった。そんな状態では、結果は分かりきっていることだった。

 

紫「今ならまだ許してあげるわ。大人しく地底に帰りなさい。」

 

さとり「嫌です……!勝てないと分かっていても……諦めるわけにはいかないんです!」

 

紫「……仕方ないわね。」

 

そう言うと紫は(先ほどよりは少ないが、)妖力を凝縮した弾幕を作り出す。

 

紫「しばらく気絶してなさい。はぁっ!!」

 

さとり「負け……ないっ!!」

 

さとりも自身の妖力を込めた弾幕を放つ……が、紫の弾幕には敵わず、かき消されてしまった。

 

さとり「うそ……!?」

 

紫「(終わったわね……。)」

 

絶望するさとりをよそに、勝利を確信する紫。そして紫の弾幕がさとりに向かっていき……直前で現れた鏡が放ったまったく同じ弾幕に相殺された。

 

紫「なっ……!?(あの鏡は……まさか!?)」

 

さとり「どうしてこの鏡が……だって悠翔さんは……っ……!?」

 

出現した鏡は間違いなく、悠翔の『ミラージュインフェルノ』の鏡だった。それを見た紫はあり得ないと言うように後退り、さとりは後ろから感じた力に気づいて後ろを向く。そこには、光に包まれて立ち上がる悠翔の姿があった。

 

紫「あり得ない……確かにあなたは私が殺したはず!!」

 

悠翔「確かに俺は殺された……それは間違ってない。蘇ったんだよ。大切な人たちの思いを継いでな。」

 

そう言うと、こちらではまだ黒かった悠翔の髪と瞳の色が朱色に染まった。

 

さとり「悠翔さん……なんですか……!?」

 

悠翔「心配させてごめん、さとり。……ただいま。」

 

その瞬間、さとりは涙を流しながら悠翔に抱きついた。抱きついてきたさとりの頭を悠翔は優しく撫でる。

 

さとり「良かった……もう、会えないのかと……。」

 

悠翔「……ルネが、俺に命を託してくれたんだ。」

 

さとり「ルネさんが……。」

 

悠翔「あぁ。あいつの命を無駄にしないためにも……俺はもう死なない。さとりやみんなを、置いていったりしない。」

 

さとり「……本当に、お願いしますよ?悠翔さんは良く私たちを心配させるんですから……。」

 

紫「いい雰囲気のところ申し訳ないのだけれど……ちょっといいかしら?」

 

いつの間にか紫と藍と橙がこちらに近づいてきていた。

 

紫「ルネがあなたに命を託した……と言ってたわね。つまり、あなたの能力はもう壊れない、という認識でいいのかしら?」

 

悠翔「その考えでいいと思う。」

 

紫「……そう。なら、もうあなたを排除する必要は無いわね。私たちはこれで……「ちょっと待ってもらえる?」っ……!?」

 

悠翔の能力が壊れることが無くなったことを確認した紫は、仕事は終わったと帰ろうとする。……が、悠翔が放ったオーラに身をすくませて止まる。

 

悠翔「何帰ろうとしてるんだよ?あんたが懸念してた事態にならなかったとはいえ、あんたは俺を殺し、さとりを傷つけた。それが許されると思ってるのか?」

 

紫「そ、それは……その……。」

 

悠翔「それに俺を殺す時に弾幕をさとりに当てようとしていたこともあるな。俺が庇うのが間に合わなかったらどうするつもりだったんだ?」

 

紫「…………。」

 

弾丸のように放たれる悠翔の追求に、紫は黙り込んでしまう。

 

悠翔「……そういうわけだ。あんたには少しでも罪を自覚してもらわなくちゃいけない。だから……。」

 

そう言いながら、悠翔は1枚のスペルカードを取り出す。

 

悠翔「少し、痛い目にあってもらうよ。創符『世界の記憶』!」

 

新たなスペルカードを悠翔が発動すると、悠翔の周りに大量の光の玉が出現する。

 

藍「攻撃ではない……のか?」

 

悠翔はその玉に目を通し、その中の1つを掴む。すると周りにあった玉が消える。

 

『DESIRE DRIVER』

 

そして悠翔の腰に『デザイアドライバー』が、手には『ブーストマークIIIレイズバックル』がそれぞれ出現する。悠翔はそのまま『ブーストマークIIIレイズバックル』を分離する。

 

『MARK IX』

 

レイズバックルからその音声が鳴ると、悠翔はバックルをドライバーの両サイドにセットする。

 

『SET IGNITION 』

 

ファンファーレのような音が鳴り、悠翔は自分の右前に現れた円盤のエフェクトの取手を捻り、それを右に動かす。『BOOST MARK IX』のロゴが現れるのと同時に悠翔の側に狐型のロボット、『レジェンドキュウビ』が出現する。悠翔は顔の横に手で狐を作り、フィンガースナップをする。

 

悠翔「変身!!」

 

そしてドライバーの『リボルブアンロック』を外し、ドライバーを半回転させる。

 

『REVOLVE ON 』

 

バックルが変形し九尾の狐のような形になり、悠翔は(自分から見て)右側の『ブーストスロットルレバー』を引く。バックルの九尾から青い炎が吹き出した。

 

『DYNAMITE BOOST 』

 

その音声が鳴ると、レジェンドキュウビが悠翔の周りを駆け上っていき、九つの柱を立てていく。そしてレジェンドキュウビが上半身のアーマーとマスクに変化し、『BOOST MARK IX』のロゴが下半身のアーマーに変化する。そして後ろの柱が悠翔とアーマーを包み込み、悠翔にアーマーとマスクを装着させた。

 

『GEATS IX 』

 

『GEATS BUSTER QB9』

 

『仮面ライダーギーツ』の最強の姿、『ギーツIX』に変身すると、悠翔の手にギーツIXの専用武器、『ギーツバスターQB9』が出現した。そして、地面からエネルギーが飛び出し、背中に九尾のマントを生成した。

 

『READY? FIGHT!』

 

紫「その姿は……!?どうして『神力』を感じるのよ!?」

 

悠翔「それは簡単だ。この力が、創世の神様の力だからだよ。」

 

藍「創世の……神……。」

 

橙「狐の姿……藍様みたい……。」

 

さとり「それが、悠翔さんの新しい力なんですね……!」

 

悠翔「あぁ。……この力で叶えてやる。大切な人が、幸せに暮らせる世界を。」

 

そして悠翔は紫の方を向く。

 

悠翔「さぁ、ここからが……ハイライトだ!!」

 

 

 

続く




クロスオーバータグがやっと機能した……!

というわけで悠翔が記憶を取り戻し、前世の記憶をもとに様々な力を行使できるようになりました!まぁ主に使っていくのは特撮系になりますが……。

最初に使うのはギーツIXということで、おそらく紫たちに勝ち目はありません(無慈悲)
悠翔の能力も元ネタはこれなので1番最初に使いたかった力です。

次回、春雪異変解決です!冥界の方も描写します!
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