ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら   作:りんごりら

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第26話 王宮侵入

ルーデウス視点

 

 

 

 路地で兵士2人に捕まりそうになっていたアイシャを助け、宿に匿って彼女の話を聞いた。

 アイシャとリーリャは王宮に抑留され、手紙も出させて貰えないようだ。

 人神も「助け出す」という言葉を使っていたし、もしかすると、割りと酷い事になっているんだろうか。

 

 父様以外にも頼れそうな人はいないのか、例えば兄とかと聞くと、アイシャは微妙そうに眉間を狭めた。

 なんでもトマやリーリャから伝えられて俺の事は知っているそうだが、5歳で水聖級魔術が使えるようになったとか7歳で領主の娘の家庭教師になったとか、どれも信じられない事ばかり話されて信用出来ないらしい。

 さらに御神体もバレていて、まごうことなき変態だと言われてしまった。

 なるほど、これが人神が初めは偽名を名乗った方がいいと言っていた理由なのか。

 もし本名を名乗ればアイシャの救出が困難になっていたのかもしれない。

 アイツも偶には真っ当な助言をくれるじゃないか。

 だからといって、信用は出来ないが。

 

 その後、しばらくアイシャとここ2年間の話を聞いたり話したりしていた。

 そして、日が落ち始めた頃、アイシャは疲れたのか眠ってしまった。

 6歳とは思えない聡い子で、その身に見合わぬ高い会話能力や知識を見せて貰っていたが、さすがに兵士に追い回されて疲れたのだろう。

 

 エリスとルイジェルドは完全に日が落ちきってから戻ってきた。

 若干疲れた表情をしていたので理由を聞いてみると、裏町の方まで情報収集に出かけたら、色々あって喧嘩になったらしい。

 

 まあ、いつものことだ。詳しくは聞くまい。

 誰にだって失敗はする、俺だってする、何かあったら助け合えばいい。

 

 2人にアイシャの件とリーリャが王宮に囚われている事を話すと、両方とも直接乗り込む気マンマンになった。

 確かに難しく考えるより、城に襲撃してリーリャを攫った方が簡単だろう。

 もし怪我を負っても、俺の治癒魔術とトマの神子の力でなんとかなる。

 

 そういえば、トマはまだ帰ってこないのか?

 もう日が落ちて1時間も経っているのに。

 もしかして、迷子か?

 この町は大通りすら曲がりくねっていて迷子になりやすく、アイツが迷子になっていても不思議ではない。

 仕方ない。

 探しに行ってやるか。

 

「僕はトマを探しに行ってきますね」

「俺も行こう」

「私も行くわ!」

 

 2人とも一緒に来てくれるみたいだが、全員出ていったら起きたアイシャが不安がりそうだ。

 

「エリスはここに残っていてください」

「なんでよ!」

「アイシャが1人になると可哀想です」

「……わかったわ」

 

 エリスはしぶしぶ納得してくれたみたいで、アイシャの横に寝転んでくれた。

 俺はルイジェルドと部屋からでて、トマを探し始めた。

 

 

---

 

 

 効率を考えて、ルイジェルドとは別れて別々で捜索する事になった。

 

「おーい!トーマー!トーーマーー!」

 

 大声を出してトマを探す。

 がっつり近所迷惑だが、妹のためなら仕方がない。

 それはさておき、2時間程歩いて声を出しても見つからない。

 本当に何処に行ったんだ?

 

「トマー!トーマ!トーマ!トマトマトーマ」

「ルーデウス」

「おわっ!」

 

 後ろを振り向くと、険しい表情をしたルイジェルドいた。

 ルイジェルドの尾行スキルで後ろに立たれると気配すらしない。

 バクバクと鳴る心臓を押さえながら声をかけた理由を伺う。

 

「どっどうしたんですかルイジェルドさん……」

「屋台の店主に話を聞いた。ブカブカの外套を着た子供はフラフラと王宮の方へ歩いていったそうだ」

「え……」

 

 ルイジェルドがくれた情報は、トマを探すのにとても役立つことだ。

 しかし、王宮の方へ歩いていった?

 いや、それだけで何かが決まる訳じゃない。

 もっと話を聞かなくては。

 

「えっと、それ以外に聞いたことは」

「フードから見えた瞳はそれぞれ色が違っていたらしい」

「……トマですね」

 

 この国で、いやこの世界に生まれてからオッドアイはトマ、ギレーヌ、魔界大帝以外に見たことがない。

 ほぼ確定だ。

 王宮へ歩いていったのはトマだ。

 

「これが店主から聞いた全ての情報だ、ルーデウス、どうする」

「どうするって……」

「トマが帰ってこないのは、王宮に囚われた可能性があるということだ」

 

 トマが……王宮に?

 何故だ、捕らえる理由がない。

 いや、ある。

 そうだ、神子の力だ。

 王宮にトマの神子の力がバレたのか!?

 クソッ!

 どうする。

 どうやって助け出す。

 じっとりとした嫌な冷や汗が滲み出る。

 

「……トマの力がバレた可能性があります。それなら命は取られていないはずです。リーリャの事もありますし、一旦宿に戻って作戦を立てましょう」

「わかった」

 

 走って宿へ戻る。

 後方の空から光が差し込み始め、夜が明ける。

 いつもなら温もりをもたらす太陽の光が、今は俺達の秘密すべてを暴き出す、不快な光に感じた。

 

 

---

 

 

 部屋に戻って寝ていたエリスを揺すって起こす。

 

「……ん…ルーデウス……?」

「起きてください。緊急事態です」

 

 その一言で、エリスは眠たげにしていた顔から一変した。

 加えてエリスが起きたことで横に寝ていたアイシャも目が覚めてしまった。

 どのみち話さなければならなかったし、ちょうどいいか。

 

「皆聞いてください。僕達は妹とリーリャを助けるため、王宮に侵入します。」

「妹……トマのっ」

「わーっ!トマットマトですよねエリス!」

 

 咄嗟にエリスの口を手で塞ぎ、アイシャに聞かれることを阻止できた……のだろうか。

 

「カイヌシさん!お母さんを助けてくれるんですか!」

 

 アイシャは涙で潤んだ目をキラキラさせて見つめてきた。

 よかった聞かれてないみたいだ。

 

「もちろん!僕達は困った人を助けるパーティー、デットエンドですからね!」

「…!ありがとうカイヌシさん!!」

 

 アイシャは輝くような笑顔を見せてくれた。

 愛想笑いじゃない。

 本当の心からの笑顔だ。

 

「それで、どう侵入するのよ」

「あっ!それなら私、いろんな抜け道知ってます!」

 

 そうか、アイシャは王宮に抑留されているときでも比較的自由に動けたと言っていた。

 その抜け道を教えて貰えれば、リーリャの所まではすぐにたどり着けるはずだ。

 

「では、その抜け道を教えて貰えますか?」

「えっと……言葉で説明するより、私が一緒に行った方が確実だと思います!」

「えっアイシャも一緒に来るんですか!?」

 

 こんな小さな子を連れて行っても大丈夫なのか?

 確かに抜け道がわかるのはありがたいが……

 うーんと唸って悩んでいると、エリスが声をかけてきた。

 

「いいんじゃない?ト……妹も囚われてるんだし、その子に来て貰ったほうが色々うまくいくわよ」

「でも……うーん……ルイジェルドさんはどう思います?」

「ふむ、お前たちがいれば大丈夫だろう。何かあったら魔術で知らせろ。俺は目立つからな、城の外で待つ」

 

 ルイジェルドも乗り気なのか。

 うーん……うーむ……うーん……………………つべこべ言わずに行くしかないか。

 

「わかりました。潜入は僕とエリス、アイシャで行ってルイジェルドさんは外で待機。これでいきます!」

「わかったわ!」

「わかりました!」

「あぁ」

 

 

---

 

 

 こそこそ移動してシーローン王宮に着いた。

 木の影で体を隠しながら、アイシャの指示通りに動く。

 ルイジェルドは途中で別れ、城外で待機中だ。

 

「こっち側の警備は手薄です。ここから侵入しましょう」

 

 アイシャが指差すのは人気のない塔。

 エリスが縄を投げ先に登り、結んで垂らした縄をアイシャを背負いながら俺が登る。

 

 続いて城の外側の出っ張った部分を横歩きで進み、子供1人分が通れる壊れた穴に体を捩じ込み、渡り廊下を爆走する。

 気分はさながらス○ークだ。

 ダンボールを持ってきた方がよかったな。

 扉を音が鳴らないよう慎重に開ける。

 

「次の角を曲がって、階段をあがってください!」

「はい!はあっはあっはあ」

 

 息切れしてきた。

 エリスは全然余裕そうなのに。

 これが魔術師と剣士の差なのか。

 

「ふぅー……後少しですよね?」

「はい!次はそこの奥の角を右に曲がって、まっすぐ行きます」

「すごいなぁアイシャは、ここまで見つからずにこれたのはアイシャのおかげです」

「え…………えへへ」

 

 背中に背負ったアイシャが嬉しそうに身を捩る。

 本当に聡く優秀な子だ。

 さぁ、早くリーリャとトマを見つけなくては!

 気合いを入れて走り出す。

 

「あっまってカイヌシさん!ここは親衛隊がいるかもしれな────」

「っ!?なんだキサマら!何処から来た!?」

 

 角を歩いてきた2人の兵士に見つかった。

 まずいっ!見られた!

 気絶するくらいの威力で作った岩砲弾(ストーンキャノン)を放つ。

 

「ふんっ!」

 

 うそぉ!?

 無詠唱の魔術だぞ。

 初見で反応されたのか?

 それともロキシー師匠が対無詠唱訓練でもしていたのだろうか。

 

「伏せて!ルーデウス!」

 

 エリスの声だ。

 反射的に身を屈める。

 するとエリスが兵士の剣を斬って、兵士2人を纏めて蹴飛ばした。

 

「今のうちに行くわよ!」

「はい!」

 

 アイシャの言った部屋までもう少しだ。

 重くなる体に鞭を打って走る。

 次は何処に行けばいいんだ?

 

「ハァハァ!リーリャさんの場所は何処ですか?」

「……あ…えっと……そこの部屋です。よくお母さんが呼び出されてました」

 

 アイシャの言った部屋までついた。

 耳をすますと、微かに部屋の中から声が聞こえる。

 扉に耳をペッタリつけて、中の様子を伺う。

 

(くくく……ほら、どうしたやらんのか?)

(くっ……や…やらせていただきます……)

(ブファファ、そうだろうなぁ貴様がやらねば小娘はどうなるか……わかっておろうな?)

(存じております……)

(ならば余に奉仕せよ)

(かしこまりました……)

 

 あぁ!?

 コイツリーリャにナニしてくれてんだ!?

 

「おいゴルァ!ナニしとんじゃ変態王子!!!」

 

 扉を蹴飛ばして一番に目に入ったのは、丈の合っていないメイド服姿のリーリャ。

 リーリャは王子と一緒に日本のメイド喫茶のような仕草を教えられている。

 両手でハートを作ってメロメロキュン。

 なんだこれ。

 

「いいぞリーリャー実に余の心を……なんだ貴様!?」

「アイシャ!?なんでここに……それにもしやあなたは……」

「まさか…余を狙う暗殺者か!?であえであえー!」

 

 拍子抜けしたような安心したような。

 いやでも!コイツうちのリーリャに!

 

「なにしとんのじゃー!!!」

 

 

---

 

 

 魔術を思いのまま放ったが、気絶しているだけだろう。

 リーリャを連れてバカ王子の部屋から出る。

 後はトマを見つけるだけだ。

 

「ルー──」

 

 リーリャがルーデウスと言いかけたのでジェスチャーで防ぐ。

 それだけわかってくれたようで、リーリャはその言葉を飲み込んだ。

 

「妹様の居場所へ案内できます」

「ッ本当ですか!?」

「はい、こっちです!」

 

 リーリャが先頭になり俺達をトマの所まで導く。

 そうして俺達はある部屋にまで連れられた。

 

「この部屋の魔方陣によって囚われているはずです」

「魔方陣!?」

「行くわよ!」

 

 エリスが扉を開けた。

 階段の先には、魔方陣から出てロキシー人形を愛でるトマとおかっぱ眼鏡の人物がいた。

 え?

 魔方陣から既に出ている。

 それに寝そべって脚をプラプラ楽しげに揺らし、両肘をついて顔を支えている。

 それにおかっぱ眼鏡の方は身なり的に王子だろう。

 

「えっと……」

「あっにいさま!」

「なんと!あの方が例の!?」

 

 俺達に気がついたトマと王子は顔を上げて近づいてきた。

 特に王子はその細身から考えられないほどのスピードで接近して俺を上に投げた。

 

「ぐはぁ!!!」

「師匠ーー!」

「にいさまー!?」

 

 天井を突き破り、ずるりと落ちた俺にトマが治癒魔術を使う。

 そしてエリスが戦闘モードに入る直前、王子は五体投地で謝り倒してきた。

 

「申し訳ございません師匠ー!」

「もうっ手加減してよねザノバ!」

「……なによこれ」

 

 俺はなんとか起き上がり、地に全身を伏しているザノバを見やる。

 

「この人にいさまの作品の大ファンなんだって!」

「俺の…?」

「そうでございます。あなた様の作品を毎日見ていました。見る度に発見があり、尊敬の念を募らせていました。ぜひ、師匠と。そう呼ばせてください」

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