ラーメンハンター×芹沢 〜エンジョイ念能力寿司バトル♠〜 作:みゅう(蒼山みゆう)
「クッ、クッ、クッ……」
この課題、もらったな。ひそかに握りこぶしを固める。
ハンター二次試験の課題が料理、しかも母国の寿司がテストになるとは。思わず口角が上がってしまい、笑いが止まらない。
母国には悪いが極東の島国の郷土料理だからな。知らなくても仕方ない。
しかしここで浮かれていたら、周りにバレてしまう。
知らない振りしてさりげなく合格するのが利口なやり方だ。
周りには寿司のことを知らないどころか、料理さえまともにしたことがないような奴らばかり。
うぷっ。
「いかん、いかん……」
漏れ出す笑みを必死で俺は抑える。
らあめん清流房の拡大のため、半ば仕方なく取りに来たハンターライセンスだったが、得意の料理でここで今後のライバルを蹴落とすのは痛快だろうな。
ざまぁみろ。俺より弱いくせにグレイトスタンプを仕留めた程度でイキる戦闘バカのやつらが落ちていく様を想像するだけで、ビールが進みそうだ。
では、いったいどんな寿司を作ろうか。だがその前に、まずは用意されている道具と酢飯の確認だ。
酢飯を一粒とり、指でつぶす。そして鼻先に近づけ嗅ぐ。
「粒立ち、水分、温度、粘着きは適量」
あの高名なダブル寿司ハンター・ワタル=コジマの義娘にして、唯一の愛弟子であるシングル寿司ハンター・メンチ=コジマが自ら用意した酢飯だ。
俺の念能力で具現化した眼鏡”
食に関する五感の精度を上げ、理解できた内容を数値として落とし込む能力。
ラーメン以外の分析精度は落ちるとはいえ、シンプルな構成だからこそ黄金比の暴力が際立つ。
「流石に美味いな」
これよりも最上級な酢飯を用意できる人間などこの世で10人いるかどうかもわからない。
主張しすぎない酢の味と、甘みの整え方といい、あの試験官めやるじゃないか。
主張の強いちょんまげだらけの髪形とは違ってとても正統派だ。
シャリ一つ分を手に取って食べ、次にもう一度醤油にもつけて食べてみる。
煮切り醤油それもほんのりした枯節入りのシンプルな組み合わせ。
基本の「き」を突き詰めた極上の仕事。
これがシングルハンターの技量か。
純粋に恐れ入った。
ラーメン以外だと、俺は相当分が悪い戦いを強いられるだろう。
他の調味料も一通り味見は終わり、足りないものは把握できた。
流石に良いものを用意している。
このグレードを店でも出したいが、コストが合わないな。
「おかしいなワサビがない。見えたぞ、そういう試験か」
何か他の材料で代替するか、なしで進むべきだろう。
明らかにこの試験は寿司を知らなくても、材料や道具、発言の端々から握り寿司の条件を推察する洞察力重視の試験。
ワサビという発想に至るのは食中毒対策に思い当たる者くらいであり、試験の内容からは推察できない。
よって、必須条件ではないと仮定できた。
ならば加熱系の方に進むのが一石二鳥。方針は決まった。
俺が合格するのは確定として、合格した後も他の受験生にヒントを与えない方がいい。ミスリードさせるべきだ。
使うべきはグレイトスタンプ。
二次試験前半で作った豚の丸焼きの課題。
俺以外の奴らは火加減の調整も下処理も碌にしていないのを見て怒りさえ感じた。
最高級の豚と出会えたのになんという雑な使い方をしているんだ。
そして山のようにそびえたつ骨の山。
俺はあくまでもラーメンハンター志望であって、今回の試験官のような寿司ハンターを目指しているわけではない。
ラーメン屋として、この豚骨を目にしたらやることは一つだ。
豚骨スープを取る。
ゆえに俺は水辺から遠ざかり森林の奥地へ、香味野菜の入手に向かう。
俺を料理人と知っていたらしい何人かが、尾行してくるが残念だったな。
寿司に必要な魚は、ここでは得られまい。
自生している人参類の葉やネギの花、それらはグレイトスタンプの生息地の傍で見かけた記憶がある。ニンニク類は前半の試験向けとして既に入手済み。俺だけが豚に下味をつけていたので拍子抜けしたものだ。
さぁ、最高の食材をハントしに行くとしよう。
◆
スシ、それは────
「確か調味料と酢を混ぜた飯に新鮮な魚肉を載せた料理、のはずだ」
「魚ァ!!?」
レオリオの大声に釣られ、一斉に受験者たちが走り出す。馬鹿者が。情報アドバンテージが消えた今、敢えて私は動かなかった。
他の受験者を出し抜くなら、より詳しく知っている者から情報をハントする。
その前から動いていたのは5人、得体のしれない針だらけの男とヒソカ、見事な絶で颯爽と消えたゴンさんとキルア、そして剃髪に眼鏡の狐目男。
彼らは明らかに正解を知っていると思われる。
誰かの動向を探るの方が私のあやふやな文献だよりの情報よりも確度が高いだろう。
ヒソカおよび組んでいると思われる針だらけの男は論外。
ゴンさんとキルアもあのスピードと絶では追跡できる自信がない。
故に明らかに念能力で取り出したと想定される自前の調理器具を持ち、美食ハンター候補と思われる未熟そうな念能力者、
米や調味料をぶつぶつ呟き、水で口をゆすぎながらしっかりと味を確かめるその動き。
料理に対する手慣れ方が他のメンバーと動き方が違う。やはりハントするべきはこの男だ。
オーラ量はほとんど凡人。足運びや周りへの警戒度、視線の配り方を見る限り戦闘はおそらく手馴れていないとみる。狙い目で間違いなかった。
なぜか彼は沼や川とは真逆の、水気の少ない方面へと向かう。そちらに進んだ受験生は私と他3人。未熟と言えど念能力者だ、素人3人は撒けたようだが、陰の私には気づいている様子がない。
私は陰を保ったまま、彼の背後を取った。
やれる。
“
鎖の先の注射針は容易に彼の背中に突き刺さる。
予想通り、彼からの抵抗も、試験官からの制止はない。
時間がもったいない。オーラ全部を吸う必要はないか。
だが294番は荒事に慣れていないのか、すぐに気を失ってしまった。
“
「奪った能力をセット」
『セット完了、解析します!』
おそらく料理の完成度を上げる類の道具作戦能力と見た。
だがしかし、イルカが告げたのは絶望的な言葉だった。
『”
「ら、ラーメン……寿司ではないのか?」
確か東の国々の熱いスープに入った大衆麵料理だったはず。
美食ハンター志望が能力にするくらい素晴らしい食材なのかもしれないが、明らかに米料理である寿司に使えるビジョンが思い浮かばない。
『手をたたき鮎煮干しを召喚してください。能力を発動し、ワタシを解除しない限り、絶対時間は強制的に続きます』
「くそっ。なんてうかつな。複数の発持ちの可能性を視野に入れておくべきだった」
無駄に寿命を使ってしまった。思わず右ひざを手のひらでたたく。
すると掌に小さな固いものが触れた。
『鮎の煮干しが召喚されました。鮎の煮干しを消費せず半径1m以内に存在させたまま手をたたくとさらに煮干しが増えます』
「あぁ、頭が痛い」
頭痛が痛いなどと、誤った言い回しを使ってしまいそうなほど、バカらし過ぎて眩暈がする。
額を手で押さえようとするが、パチッと音がするとともに再び固い感触が生じる。
『煮干しを召喚しました』
「黙れ。煮干しにするぞ」
ギャグ時空なので、原作キャラ一部魔改造あり。
念能力取得者多数です。
次話から本格念料理バトル開始。
暗いご時世なので、頭を空っぽにして、ちょっとでもクスっと笑ってくれたら嬉しいです。
芹沢のオリジナル念能力はトータル4つのうちまず2つ。残り2つはもう少し使い勝手のいい、マトモな能力です。
また、元々は具現化系からの後天的な特質系であり、4つの発に関して料理にしか使わない、用途外に使ったら死ぬ、そしてもう一つの誓約「毛根を捧げる」を本人も知らずにつけてしまっているという、クラピカもビックリな雁字搦め男。それによってメモリ不足対策をなんとか行えている。
①”
鮎の英名より。入手が難しい特注の鮎の煮干しが手をたたくたびにほぼ無限に増殖する。最初に勝手にできた発。具現化されたのか放出系で召喚されたのかさえ本人にも謎な煮干し。実際は某産地の鮎を強制乾燥と転送させる能力。鮎の敵など、ごく限られた場面でしか使えない鮎特効能力を有する。煮干しに特殊能力はない。
②”
食に関する五感の精度を上げ、味の分析など理解できた内容を数値として具現化した眼鏡のレンズに書き込む能力。過去分析データはすぐに引き出し比較できる。ラーメンに関する分析精度は非常に高くなる。