ラーメンハンター×芹沢 〜エンジョイ念能力寿司バトル♠〜 作:みゅう(蒼山みゆう)
「妨害する意図はなかったが、貴重な時間を浪費させてしまった。詫びさせてほしい」
なぜか俺が森で倒れていたのは
しかしだ。このいけ好かないキザ野郎は気に食わんが、オーラ量からしても、俺に全く気づかれないまま襲撃できるほどの手練れだ。
イルカを模した念もどんな能力か分からん。
こういうときは、さっさと損切りするに限る。
「俺も油断していた。詫びを受け入れよう。さっさとグレイトスタンプを一匹確保して俺のキッチンへ持っていけ。その場での血抜きは忘れるなよ。モツも今回は邪魔だ。それで時間分はチャラでいい」
香味野菜の採取を手伝わせようと思ったが、使える食材がバレるのは癪だからな。
情報などコイツに一つも与えるものか。
「グレイトスタンプ? スシとは、魚を使った料理のはずではないのか?」
はぐらかそうと思ったが、知っているなこのインテリめ。ならば敢えて乗ってやろう。選択肢の多さに頭を悩ませ時間を浪費するといい。
「魚が普通だが、魚でなくてもいい。これは洞察力を測る試験だ。魚に結びつくヒントは敢えて置いていないはずだ。包丁を見れば分からないこともないが、料理に疎い奴らには酷だ」
「確かに言うとおりだ。私は文献の上での知識にとらわれていた。感謝する」
俺の能力で調理時間の問題はどうにかなるが、採取の時間は別だ。ここでタイムロスを挽回しなければならない。
目的の香味野菜類と共に、ここでしかお目にかかれない食材たちも採取してクーラーボックスにしまい込む。
このクーラーボックスは電源付きとは言え市場に出回っている品だが、俺の念能力の1つ、"
調理器具や保管容器にセットした対象の食材に関する熱や時間による影響度を細かく設定でき、加速もしくは減速させることができる。クーラーボックスにセットした場合なら、加速による低温熟成を数分で行うことも、1カ月後でも取れたての魚を維持することもできる。
本来必要とする熱や電気や、変更した時間に応じてオーラ消費が増減するため使い方によっては多少燃費は悪いが、よい能力ができたと自負している。
勝手にできてしまった"マイ・スイートフィシュ"含め、4つの発の内でもっとも重宝する能力だ。
目的の食材を確保した俺は元のキッチンへと戻る。
キッチンの脇には俺の番号を書いた紙と共に血とモツが抜かれた豚が置いてあった。律儀な奴め。
奴はいないが他の材料を取りに行ったのだろう。
では作るか。至高のグレイトスタンプチャーシュー寿司をな!
"
俺の店で使い慣れた調理道具たちなどを具現化する能力。物量に応じて必要オーラ量が変わるが、今回はオーラ泥棒のせいもあり最低限の具現化で済ませる。その場の調理道具でも作れはするが、やはり使い慣れたもので作るのが一番間違いない。
適度に砕いたグレイトスタンプの豚骨に香味野菜類を入れた鍋に、縛った豚肉を放り込み、ふたをした。キチンとタイマーをセットして能力を使用。
チャーシューを一旦取り出してか、煮切調味料を入れた別鍋に移して、先ほどのスープと共に再び煮込む。
スープも余計な材料を濾しきって、少量だけ小鍋に入れる。
このときゼラチン質と油を意図的に多めに移すのも忘れない。
戦闘バカどもが次々と失格になる中、俺はこうして淡々と準備を進める。完成まで、あと少し。
おにぎりや、スターゲイジーパイのライス版など採点対象外の作品が出るたびに笑いが止まらない。
合格一番乗りは俺で決まりだな。
寿司をまともに握ったことがないとはいえ、手順を頭では理解しているつもりだ。こっそりキッチン台の下に移した寿司桶から、酢飯を適量取り片手でシャリを形作る練習をしてからその食感を確かめるため、酢飯を食べ続ける。
具現化メガネ──”
「お前料理人だろ、なのに臭えぞハゲ。便所かよ。どういうつもりだらぁ!」
珍しいスーツ姿をしていながらも、マフィアの下っ端にしかみえない丸眼鏡が喚き散らす。唾がまな板についたらどうするつもりだこのアホめ。
「ハゲではない、万が一にも髪の毛が食事にはいらぬよう自ら剃っているだけだ」
「そーかよ。って、論点はそこじゃねぇ。これは臭いによる妨害じゃねーのか? なぁ、クラピカ?」
ちっ、404番の連れにしては勘がいい。
チンピラの難癖にも聞こえるが実は図星であったりする。
タンパクで繊細な白身魚の香りなど一瞬でマスキングしてしまうようなこれは意図的に決まっている。
俺が料理でリードを付け、合格することが確実なら他の分野に長けた奴らを今落とさないでいつ落とすというのだ。
「確かにひどい匂いであることは同感だが、レオリオ。彼は料理人として誰よりも真面目にこの試験に参加している」
先ほどの不義理で気まずさもあるのだろう。その気持ちはもう少しだけ利用してやるとするか。
「料理人に慣れてそうなのはわかるが、この臭いだと疑いたくもなるだろう。こっちの大鍋分はもう使わんからな。次に口を開くならこれを飲んでからにしろ」
別に俺にとっては支障はない。くくく、寿司の正解から遠ざかるといい。
美味いという賛辞と共に、俺のスープに詫び、讃えるといい。
「な、なんだこれは。グレイトスタンプが舌の上で暴れ回る。口蓋を伝って鼻に抜ける強烈なニンニク臭。だがその臭みこそが、骨から出る忌避感のある獣臭を相殺し、中毒性のある香しさを何倍にも引き立てている。だが足りねぇ。肉が、炭水化物がいくらでも欲しくなる。喉に張り付くこの旨味、この塩辛さ! いくらでもコイツを啜り、埋もれてぇ!」
素人の癖に舌が良い。麺が今すぐにでも欲しくなるだろうよ。
「悪い。さっきは俺の失言だった。アンタは最高の料理人の一人だ。今度ぜってぇ店に食いにいくから、場所を教えてくれ」
「そうほめて頂けるとは光栄だ。この名刺に各支店の住所が載っている。最高の麺料理を用意するからぜひ立ち寄ってくれ」
差し出された手を素直に握り返す。
チンピラにしてはわかっているじゃないか。いいお客さんになりそうだ。
「俺もその名刺くれ」
「ボクも♣」
「オレも~」
ふはは。大盛況じゃないか、一瞬で30人ほどのお客さん候補ができたぞ。ハンター候補というだけあって五感には優れている奴らだとは思っていたが、味覚も悪くはないじゃないか。
「ご馳走様。それにしても滾るね♠ ほら、ビンビンにインスピレーションが湧き立ちそうだ♡」
いつの間にかモブどもに交じって問題児がスープを飲んでいた。
湧き立たせているのはインスピレーションじゃなくてお前の息子だろうが。変態め。さっさと塩をまきたいところだが、明らかにこいつはこの会場で2番目くらいに強い。勝てない喧嘩は売らない主義だ。
「昂っているうちに作ってしまおうか♢」
ヒソカは淡水系のキス類、ドストレートキス。ほぼ揚げ物専用の立ち位置な魚であり、生食では特異な身質のため、非常に扱いにくい魚だ。それをなぜかトランプで三枚に捌く。
左手で適量のシャリを手に取る。
そしてここから先は俺たち一部の念能力者にしかわからない世界だ。
シャリに膜状のオーラを貼り付けその上からキスの切り身2枚を張り付けて巻きつける。
腕を脱力させながら遠心力で振り、さらにタンゴを踊るかのように激しい腰使いで全身を回転させながら握る。
まるで背景に雷光が走ったかのような衝撃的な手捌きと腰捌き。
「エンジョイ♡」
そう言ってピエロ野郎は寿司を提出する。
寿司……と言えるのか、これは。
白身をサザエのように巻き付けた異形。
握ってはいる、大きさも適性。
これまでなら食べる前に弾かれてもおかしくないが、寿司にまとわりつくオーラが異常だ。
どちらかと言えば握り寿司ではなく巻き寿司の亜種ではないのか。
「見た目は独特だけど悪くはないわね」
前衛的な寿司としてなら、確かに店で出してもいい見た目だ。試験官が初めて箸を握った。
ドストレートキスはあまりにもまっすぐな形状を維持するくらいカチカチの歯ごたえが特徴の白身魚だ。これを非加熱でロール状に成型するのは通常の手段ではハードルが高い。
そこを念能力でうまく丸め、留めたというのか。
ドストレートキスは普遍的な食材でまず味も間違いないためフライやてんぷらの定番食材だ。
しかし生の場合、身の質が最大の難点だが、それを念能力で知ってか知らずかねじ伏せている。
しかし試験官はこれを食うのか、俺だったら絶対に評価対象外だ。
操作系の念が込められていたらどうする。
どんな能力かもわからない上、一次試験の話からして、明らかにこいつは殺人鬼の類。
まともな料理なわけがない。
食うのか、これを?
「形は及第点であり革新的でもある。苦痛もなく素早く捌いたことで身の味落ちもないわ」
この女のまともな好評を始めて聞いた気がする。真剣に評価に入っている証拠だ。
「口に入れた瞬間はネバついたあれのおかげで魚の旨味が下に張り付くくせに、噛んだときには元のまっすぐな形状に戻ろうとする圧倒的な弾力、そしてその強烈な反動でいつまでも跳ね続けている」
まるで恋する生娘のように、両頬を抑えながらキスの感触を味わっているのだろう。って、何て表現を思い浮かべているのだ。俺も変態の仲間入りしたみたいじゃないか。
「まるでキスが口の中で生き返ったみたいよ。空気を最大限に膨らませた酢飯を、薄い膜一つでまとめ上げ、米も一気にほぐれるという奇跡的なタイミングの一致! この形状だからこそ味わえる、命に還る寿司────これは新しい哲学的な一品ね」
ここまで言い切ったのだ悔しいが間違いない。アイツは合格だ。
お茶を一口すすってから彼女はわかりきったことをゆっくりと告げる。
「ごちそう様。悔しいけど美味しいわ。44番合格よ」
「……哲学ね♧
ハートのトランプをラブレターの如く、チョキで挟んで渡すのはまだいい。だが、わざわざ両膝を曲げて上半身を後ろに反らすことで腰を突き出すその仕草、必要なのか今ここで?!
「や、
「そうか、ザンネン♢」
元ネタ知ってる人向けですが、寿エンパイアの万雷に、キシでョい腰振りダンスが付いてきてます。
まだ他の念能力寿司も出てきます。
次は「わからせ」回です。
オリジナル念能力説明
③"
調理器具や保管容器にセットした対象の食材に関する熱や時間による影響度を細かく設定でき、加速もしくは減速させることができる。料理時間を圧縮することで、新たなラーメンの試作数の増加や客への短時間でのラーメン提供を可能とする。複数個生成可能。
本来必要とする熱や電気や、変更した時間に応じてオーラ消費が増減するため使い方によっては多少燃費は悪いが、芹沢は便利な能力ができたと自負している。
④"
・清流房本店をどこでも具現化する能力。オーラ節約およびスペースの観点より、一部能力解放として食器、机や椅子、調理道具類を選択して具現化できる。使い慣れた期間の長さに応じてオーラ使用料が効率化される。また、本店に存在する以上のものは召喚できない。必要な水、電気やガスはオーラ消費で代替される。オーラ消費は金銭代わりに同意のもとで客から徴収も可能。
具現化されたものたちに特殊能力はない。どこでもラーメンを提供できるようにするためだけの能力。
備考
クラピカはこっそり