神を信じていなかった転生者は、最弱教団から世界を変える   作:むちゃうまご飯

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最初の聖物との戦い

魔術書屋を出た俺は、しばらく店の前で立ち尽くしていた。

革袋を開く。

中には銅貨十二枚だけ。

「……やっちまった。」

全財産を魔術書一冊に使ってしまった。

あの婆さんかなり商売が上手い。

この俺が容易く、利用されるとは.....

今日の夕飯すら怪しい。

「いや、必要経費だ。」

そう自分に言い聞かせる。

この世界で生きていく以上、魔法を覚えなければ何も始まらない。

俺は街を出て、東の森へ向かった。

 

舗装された街道を二十分ほど歩くと、木々が生い茂る森が姿を現す。

入口には木製の看板が立っていた。

『東の森 推奨レベル2~10』

「ちょうどいいな。」

深呼吸をして森へ入る。

小鳥の鳴き声が響き、風が木々を揺らしている。

一見平和な森だが、どこから魔物や聖物が現れてもおかしくない。

俺は魔力を意識しながらゆっくり歩いた。

すると。

パラ……。

どこからか紙をめくる音が聞こえる。

「……?」

音のした方向を見る。

木の枝の間を、一冊の本がふわふわと飛んでいた。

赤い革表紙。

翼もないのに空中を漂っている。

「……あれか。」

ブック。

受付嬢が言っていたレベル2の聖物。

敵意はないらしく、こちらには気付いていない。

頭の中に半透明の画面が浮かぶ。

 

前

「……あれか。」

ブック。

受付嬢が言っていたレベル2の聖物。

敵意はないらしく、こちらには気付いていない。

頭の中に半透明の画面が浮かぶ。

 

────────────

ブック

Lv.2

種族:聖物

危険度:★☆☆☆☆

特徴:本なのにページで斬ってくる。

弱点:火属性

────────────

 

「ゲームじゃん……。」

思わず呟く。

「まずは一体。」

俺は深呼吸をする。

頭の中で魔術書の知識を思い出す。

魔力を右手へ集中。

掌が熱くなる。

「ファイアボール。」

ボッ。

拳ほどの火球が生まれ、一直線に飛んでいく。

ーーーーーーーーーー

消費MP:5

残りMP:95/100

ーーーーーーーーーー

「ちゃんとMPまであるのか。」

しかし。

ヒュン。

ブックは紙のように体をひねり、火球を避けた。

「えっ?」

次の瞬間。

バサァッ!!

本が勢いよく開き、ページが何枚も飛び出してきた。

「うおっ!」

慌てて身を伏せる。

ページは刃物のように木へ突き刺さった。

「危なっ……!」

「本のくせに読ませる気ゼロじゃねぇか!」

温厚なんじゃなかったのか。

攻撃したら普通に反撃してくるじゃないか。

俺は木の陰へ隠れながら息を整える。

「落ち着け……。」

相手はレベル2。

俺はレベル1。

ブックはレベルは俺の2倍

だが、魔法なら通じるはずだ。

ブックがゆっくり近付いてくる。

今だ。

木陰から飛び出し、右手を突き出す。

「ファイアボール!」

火球が飛ぶ。

今度は避けられない距離。

ドゴッ!!

火球が命中し、本が大きく揺れた。

「効いた!」

その隙にもう一発。

「ファイアボール!」

再び命中。

ブックは煙を上げながらふらつく。

最後にもう一撃放つと、本は燃え尽きるように光となって消えた。

地面には拳大の淡い白色の石が転がっている。

「これが……聖石か。」

拾い上げると、ほんのり温かい。

宝石のようで綺麗だ。

その瞬間。

体の奥から熱が込み上げた。

筋肉がわずかに軽くなる。

視界が鮮明になった気がする。

『レベル2』

頭の中へ、そんな文字が浮かんだ。

 

==========

LEVEL UP!

Lv.1 → Lv.2

 

HP 100→110

MP 100→115

筋力 10→12

敏捷 11→13

魔力 18→22

 

スキル熟練度

・火球魔法 Lv1

==========

 

「レベルアップ……。」

思わず笑みがこぼれる。

だが、喜んでいる暇はない。

正式な冒険者になるには聖石が五個必要。

俺は革袋へ聖石をしまい、再び森の奥へ歩き始めた。

その時だった。

パラ……パラ……

そんな音がして、振り返ると、

一冊。

二冊。

三冊。

木々の間から、さらにブックが姿を現す。

「今度はまとめてか。」

俺は口元を緩める。

「ちょうどいい。魔法の練習相手になってもらう。」

右手に魔力を集め、次の火球を生み出した。

「ファイアボール!」

火球が一直線に飛び、一冊目のブックへ命中する。

爆ぜるように炎が広がり、ブックは大きく体勢を崩した。

しかし、残る二冊が一斉にページを飛ばしてくる。

ヒュンッ! ヒュンッ!

鋭い音とともに紙の刃が迫る。

「くっ!」

横へ飛び込み、何とか回避する。

紙は後ろの木へ突き刺さり、幹を深く抉った。

「あれに当たったら洒落にならないな……。」

俺は木を盾にしながら魔力を練る。

魔力は無限ではない。

使えば使うほど体が重くなっていくのが分かる。

ーーーーーーーーーーーーーーー

MP:63/115

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「だったら、一発一発を確実に当てる。」

木陰から飛び出し、ブックがページを放った直後を狙う。

「ファイアボール!」

火球が開いたページの隙間へ飛び込み、爆発した。

バサッ!

一冊目が光となって消える。

すぐに体を反転させ、二冊目へ。

「ファイアボール!」

命中。

残る一冊は逃げるように上空へ飛び上がる。

「逃がすか!」

魔力を右手へ集中。

今までより少しだけ大きな火球が生まれた。

「いけ!」

放たれた火球は真っ直ぐ飛び、ブックへ命中した。

三冊目も光となって消え、三つの聖石が地面へ転がる。

俺は荒い息を吐きながら聖石を拾った。

その瞬間。

体が再び熱を帯びる。

『レベル3』

『レベル4』

『レベル5』

立て続けにレベルが上がっていく。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スキル習得

 

《魔力操作 Lv1》

 

魔力制御が少し上達しました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「一気に上がった……。」

体が軽い。

腕にも力が入る。

魔力の巡りもさっきより滑らかだ。

「これなら、もっと戦える。」

俺は森の奥へ足を進めた。

それから数時間。

「ファイアボール!」

「ファイアボール!」

炎が森の中を駆け抜ける。

最初は一体倒すだけで息が上がっていた。

だが今では違う。

ブックがページを飛ばす前に間合いを詰め、確実に火球を叩き込めるようになっていた。

戦えば戦うほど魔力の扱いにも慣れていく。

十体目を倒した頃には、詠唱を意識しなくても自然と魔法が放てるようになっていた。

十五体目。

『レベル8』

十八体目。

『レベル9』

そして――

二十体目のブックが炎に包まれ、静かに消滅した。

足元には二十個目の白い聖石が転がっている。

拾い上げた瞬間、今までで一番強い熱が全身を駆け巡った。

『レベル10』

 

==========

LEVEL UP!

Lv.9 → Lv.10

 

HP 260

MP 310

筋力 35

敏捷 37

魔力 58

 

職業選択可能

==========

 

「おっ。」

そういえば受付嬢が言っていた。

レベル10になると職業を選べる、と。

「帰ったら祭壇に行くか。」

同時に体の芯から力が湧き上がってきた。

視界はさらに鮮明になり、呼吸も乱れない。

魔力の総量も明らかに増えている。

「これが……レベル10。」

俺は右手を握り締めた。

転生してまだ一日も経っていない。

それでも、この世界で生きていけるかもしれない。

そんな自信が少しだけ芽生えていた。

革袋を開く。

中には二十個もの魔石が入っている。

正式登録に必要なのは五個だけ。

だが、せっかく倒したのだ。

全部持って帰ろう。

森を抜ける頃には夕日が街を赤く染めていた。

 

ギルドへ入ると、昼間の受付嬢が俺に気付いて目を丸くする。

「お帰りなさい。もう戻られたのですか?」

「ああ。」

俺は革袋を受付カウンターへ置いた。

ガチャッ。

袋の口を開くと、白い聖石が次々と転がり出る。

一個。

二個。

三個。

受付嬢は数えながら目を見開いていく。

「じゅ、十五……十六……二十個……?」

驚いた表情のまま俺を見つめた。

「すべて……今日の討伐ですか?」

「そうだけど。」

受付嬢は信じられないという顔をしながら聖石を確認し、小さく息を呑んだ。

「確認いたしました。すべてレベル2の聖物ブックの魔石です。」

彼女は微笑み、カウンターの奥から一枚の金属製カードを取り出す。

「おめでとうございます、アステル様。本日をもって、あなたを正式な冒険者として登録いたします。」

ついに俺は、この世界で最初の身分を手に入れたのだった。

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