俺は、神を信じていなかった。
 神話は人間が作った物語。
 祈りは心の支え。
 奇跡と呼ばれるものも、いつかは科学で説明できる。
 それが、俺の当たり前だった。
 だから、死んだ後に目の前へ現れた存在が「神」だと名乗った時も、俺はすぐには信じなかった。
 だが、その瞬間。
俺の常識は、音を立てて崩れ去った。
 神は存在した。
 魔法も存在した。
 そして、世界には神々を信じることで力を得る者たちがいた。
 この世界では、神はただ人々に祈られるだけの存在ではない。
 信者を集める。
 教団を築く。
 他の神々と競い合う。
 時には、神の名を懸けて戦う。
 信仰こそが、力になる世界だった。
 そんな世界へ、俺は何の準備もなく放り込まれた。
 与えられた使命は、たった一つ。
『お前が信じられる神を見つけろ』
 簡単な話だと思っていた。
 だが、俺が最初に出会った神は――。
 世界で最も弱い神だった。
 信者はほとんどいない。
 教団は小さい。
 他の神々からは見下され、馬鹿にされる存在。
 普通なら、そんな神を選ぶ理由なんてない。
 けれど。
 その神は、誰よりも前を向いていた。
 力がないことを嘆くのではなく。
 信じてくれる者を守ろうとしていた。
 その姿を見た時、俺は初めて思った。
 もしかしたら、神を信じるということは――。
 強い存在にすがることではなく、共に未来を作る相手を選ぶことなのかもしれない。
 そして数年後。
 誰も見向きもしなかった小さな教団は、世界中の神々が無視できない存在になっていた。
 最弱の神。
 最弱の教団。
 そして、神を信じなかった転生者。
 三つの異端が出会った時、世界の信仰は大きく変わり始める。
 これは、神を信じなかった男が――。
 神々すら認める教団を築き上げるまでの物語。