神を信じていなかった転生者は、最弱教団から世界を変える 作:むちゃうまご飯
目が覚めると、ノクスが隣で座っていた。
「おはよう、アステル。体調は大丈夫になったかい?」
「はい。元気です。」
そうだ。俺はLv30のゴーレムを倒した後、魔力と神力切れで倒れたんだった。
教団の仲間に迷惑かけたみたいだ。
次あったら御礼を言っておこう。
レベル30のゴーレムを倒したことで俺のレベルは25になっていた。
試しに頭の中のスクリーンで、ステータスを確認してみる。
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LEVEL
Lv.25
HP 825
MP 650
筋力 75
敏捷 60
魔力 100
神力 50
スキル熟練度
・火球魔法 Lv1
・ヒールLv1
・ホーリーボルトLv1
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なるほど。
レベル25になったからか、ステータスが2倍近くなっていた。
腕が軽い。
腕を軽く振ってみる。
ブンッ。
空気を切る音が以前よりも鋭い。
「すごい……。」
身体の隅々まで力が漲っている。
昨日までなら持ち上げるのも大変だった木製のベッドを片手で持ち上げてみる。
「軽い……。」
まるで空箱でも持っているような感覚だった。
以前より確実に強くなっている。
「ふふっ。」
隣で見ていたノクスが小さく笑う。
「レベルが15も上がったからね。そのくらい変わるよ。」
「レベルが上がるだけで、こんなに違うものなのか?」
「もちろん。」
ノクスは立ち上がり、窓の外を眺めながら話し始める。
「この世界では、レベルが上がるたびに身体そのものが神の加護で強化される。」
「筋力だけじゃない。」
「骨も、筋肉も、内臓も、反射神経も、全部少しずつ強くなる。」
「だから、高レベルの人は見た目が普通でも、人間離れした力を持っているんだ。」
なるほど。
ステータスは飾りじゃないということか。
「それと。」
ノクスは俺の方へ振り返る。
「スキル熟練度も見てみな。」
「熟練度?」
もう一度ステータスを開く。
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スキル熟練度
・火球魔法 Lv1(28%)
・ヒール Lv1(41%)
・ホーリーボルト Lv1(35%)
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「数字が増えてる。」
「その百分率が熟練度。」
「魔法や聖法は、使えば使うほど上達する。」
「熟練度が百%になるとスキルレベルが上がって、威力や消費魔力が改善されるんだ。」
ゲームみたいだな。
いや、この世界そのものがゲームみたいなシステムなのか。
「じゃあ、同じ魔法を使い続ければ、どんどん強くなるってことか?」
「そう。」
「でも、それだけじゃない。」
ノクスは人差し指を立てる。
「一定以上まで熟練度を上げると、上位魔法を覚える条件になる。」
「例えばファイアボールなら、熟練度を上げ続ければ《ファイアランス》や《ファイアウォール》を覚えられる可能性がある。」
「ヒールも同じ。」
「将来的には広範囲回復や欠損部位の再生までできるようになるよ。」
「再生まで……。」
思わず息を呑む。
てっきり、あの婆さんの魔術書屋に行かないと覚えられないと思っていた。
やはり、この世界の魔法は奥が深い。
「ところで、アステル。君は気も使えるのかい?」
「いえ、まだ、覚えてはいないだけで、使えるようにはなってみたいです。」
「なるほど。じゃあ、出かけようか。」
あ、この流れは前もやったな。
魔術書屋に行く流れだ。
「はい。じゃあ、行きましょうか。」
「おや、また来たのかい。」
魔術書屋にはいると、婆さんがニヤニヤしながらまた、話しかけてきた。
「今日はどんな教本をお求めで?」
「アステルは気を扱えるようになりたいらしいから、
武法『初級』の教本を頼むよ。」
すると、婆さんの目が見開いた。
「気力も持っているのかい。3属性持ちなんて初めて聞いたよ。」
転生者だからかな。
それとも、転生体、アステルが才能溢れていたのかもしれない。
「今回はサービスだよ。銀貨3枚で買っていきな。」
驚いたことに婆さんがサービスしてくれた。
「ありがとう。婆ちゃんまたくるね。」
ノクスは金が節約できて嬉しいようだ。
「じゃ、教本を読んでみて。」
俺は教本を胸にあてた。
気力の情報が頭の中に入る。
今回は痛みがない。
ステータスが上がったからだろうか。
頭の中にあるスクリーンを確認してみる。
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魔力 100
神力 50
気力 10
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気力の欄が追加されてた。
嬉しい。
「帰ったら、気力も練習しようね」
ノクスは嬉しそうに言った。
自分の信者の力が増えて来て嬉しいのだろう。
そして、俺たちは魔術書屋をあとにした。
ホームに帰って、気力を使い、疲れてベッドてわ横になっていた時。
コンコン。
その時、部屋の扉がノックされた。
「アステル、起きてるか?」
レオンの声だ。
「起きてます。」
扉を開けると、レオンだけでなくガイルやフィーナたちも集まっていた。
「おぉ、元気そうじゃねぇか。」
ガイルが安心したように笑う。
ああ、そうだ。謝らないと。
「心配かけてすみません。」
「気にすんな。」
レオンは肩をすくめる。
「倒れるまで戦ったんだ。」
「むしろ、お前のおかげで全員生きて帰れた。」
「それより。」
フィーナがニコニコしながら言う。
「ギルドから呼び出しが来てるよ!」
「ギルドから?」
「ああ。」
レオンが真面目な表情になる。
「今回の討伐について正式な報告と、お前への褒賞があるらしい。」
「あと……。」
「ギルドマスターがお前に直接話したいことがあるんだってさ。」
ギルドマスターが、俺に?
何の話だろう。
俺は何も罪を犯していないぞ。
少し緊張しながらも、俺は新しく作ってもらった黒鋼の軽鎧を身に着けた。
胸当てを締め、魔術杖を腰に差す。
鏡に映る自分は、もう転生したばかりの頼りない少年ではない。
まだ弱い。
それでも、一歩ずつ確実に前へ進んでいる。
「よし。」
俺は仲間たちと共に、アクセルの街の冒険者ギルドへ向かった。
ギルドへ向かう道中。
街は朝から賑わっていた。
露店には焼き肉の香ばしい匂いが立ち込め、武器屋では鍛冶師が金槌を振るい、教団へ向かう信者たちがそれぞれの神の名を口にしながら歩いている。
そんな中、俺はふと気になっていたことを口にした。
「なぁ、ノクス。」
「ん?」
「一つ聞きたいことがある。」
「どうしたの?」
「ノクス教団って、どうして街で一番弱いって言われてるんだ?」
昨日のゴーレム討伐。
あれだけの連携と実力があるなら、少なくとも最弱とは思えない。
レオンもガイルも、戦い慣れていた。
アイリの魔法は正確だったし、フィーナの索敵能力も高かった。
ゴルドは一流の鍛冶師。
グラムの聖法もかなり高度だった。
どう考えても、弱い教団には見えなかった。
その言葉を聞いた瞬間。
仲間たちの足が一斉に止まった。
空気が変わった。
さっきまで笑っていたフィーナも口を閉じ、レオンは前を向いたまま黙っている。
ガイルは小さくため息をついた。
「……言う時が来たか。」
レオンが静かに呟く。
ノクスは少し困ったように笑うと、近くの人気のない公園へ歩き始めた。
「ここなら大丈夫かな。」
木陰のベンチへ腰を下ろす。
仲間たちも自然と円を作るように集まった。
しばらく沈黙が続く。
やがてノクスが静かに口を開いた。
「アステル。」
「この街には七つの教団があるよね。」
「ああ。」
「でも、本当は八つあったんだよ。」
「……え?」
思わず聞き返す。
「八つ?」
「そう。」
ノクスは遠くの空を見つめる。
「今から十五年前、この街には八柱の神がいた。」
「その中で一番信者が多かったのは、今と同じキリスト教団。」
「でも、その次に大きかった教団は――私だった。」
「えっ!?」
俺だけでなく、フィーナ以外の全員も静かに頷く。
どうやら本当らしい。
「昔のノクス教団は、この街で二番目の勢力だった。」
「信者は約千五百人。」
「Aランク冒険者も何人も所属していたんだ。」
そんな教団が、どうして今は十人しかいないんだ。
「十五年前。」
「ある日、一夜にして信者のほとんどが消えた。」
「消えた?」
「うん。」
「死体も残らなかった。」
「戦った痕跡もない。」
「ただ、人だけが消えた。」
背筋がぞくりとした。
「それ以来、『ノクス教団は呪われた教団』って噂が広まった。」
「信者は次々と離れ、他の教団へ移っていった。」
「残ったのは……。」
ノクスは目の前にいる仲間たちを見る。
「この子たちだけ。」
静寂が流れる。
誰も冗談を言わない。
「調査はしなかったのか?」
俺が尋ねると、グラムが首を横に振った。
「したが.....。」
「王国も。」
「冒険者ギルドも。」
「他教団も。」
「だが何も分からなかった。」
「唯一分かったのは……。」
老人の表情が険しくなる。
「祭壇だけは、あの日から少しずつ力を失い続けているということじゃ。」
俺は思わず祭壇を思い出した。
あの幻想的な祭壇。
確かに小さいとは思ったが、それ以上にどこか欠けているような違和感があった。
「実はね。」
ノクスは小さく笑った。
「私、本来の力をほとんど失ってるんだ。」
「……え?」
「今君たちに与えている加護。」
「気・魔力・神力が1.2倍になるという加護だよね。」
「あれ、本来なら違うんだ。」
「本当なら、もっと強い加護を与えられるんだよ。」
「でも……。」
ノクスは自分の胸へ手を当てた。
「私の神核が欠けている。」
「神核?」
「神様の心臓みたいなもの。」
「それが十五年前に奪われた。」
俺の頭の中で点と点が繋がり始める。
教団が衰退した理由。祭壇が弱っている理由。
ノクスの加護が弱い理由。
全部、神核が原因なのか。
「でも。」
ノクスは俺を真っ直ぐ見つめた。
「この話は街の誰にもしていない。」
「他の教団にも秘密。」
「知っているのは、この教団のみんなだけ。」
「そして今日から――。」
彼女は少し照れくさそうに笑った。
「アステル、君もその一人。」
俺は静かに頷く。
ただの最弱教団だと思っていた。
しかし違った。
ノクス教団には、十五年前から続く巨大な謎が眠っていた。