ヴェッチとミードに脳を焼かれたので初投稿です。
もしもミード戦でチューンが気絶程度で済んでいたら。
最初はちょっとした興味本位からだった。
『おれ…記憶が無いんだ』
『はあ?』
記憶も過去も無い、しかしこの冬はどうしても晴らしたい。
自分はどうすれば、なにをすればいいのか分からない。だけど歌を歌いたい。
何もかもが不明瞭な、そんな変なヤツ。
だけど、あいつと一緒だったから新しい
あいつと一緒ならどこまでも羽ばたいていけるような気がした。
そして、あいつと一緒だったから…『
それからだろうか、あいつの歌が何処か空虚なようになってしまったのは。
それでも、まだ信じたかった。
その歌と歌声だけは『
でも、聞こえちゃった。あたし、耳いいから。
『声が勝手に口を突く…』
まるで、地面が抜けたみたいな感覚。
あいつが『歌』を選ぶのはあいつなりの理由があるでもなく、まして自己表現のためでもない。ただ、歌えるから。たったそれだけの理由。
それを聞いて、理解して。今まで信じてきたものが全部崩れてしまった。
気が付けば、私の隣にあいつの姿はなかった。その代わりに立って、いや、座っていたのは……
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『おれの唱に、酔いしれろ!』
『俺が、ミードだ…!』
寒い。手が悴んで、もう指も動かせない。
それでも、耳だけは聞こえる。
耳を通るのは、『
『おまえの冬を終わらせる!そのためにおれは唱うんだ!』
その言葉にはどこにも
あたしは割って入ることができなかった。
だって、理解したから。今この場でハンパなのはあたしだけ。大した信念も覚悟もなく、その場の空気でコロコロ立場を変えて。上手くなったのはギターの腕だけ。『
もしもあたしがあんた達を見捨てないで、一緒に居られたら。そうなれた理由も聞けたのかな。
もっと聞かせて、あんたの、あんた達の唱を。
(ダメだよ…まだ、まだ聞かなきゃ…)
それなのに、あたしの身体はもう限界で。
瞼がゆっくりと降りてくる。
(…ヴェ…ッチ…)
もしもあたしが目を覚まして。あんたがまだあたしを許してくれるなら。そうしたら、今度は…
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
(…う、ん…)
全身を覆う寒気が消えて、目が覚める。
ここは…さっきと同じ、ミードの城。
「…そう、だ…二人は…!?」
急いで起き上がり、辺りを見渡す。そこに立っていたのは、白い衣装を纏った青髪の青年。間違いない、ヴェッチだ。
あいつが勝ったんだ。でも…それじゃあ、ミードはどこに…?
「チューン…」
「…ごめん、あたし…」
「いいんだ。それより聞いてくれ。おれ、ミードを倒したんだ。ようやく『
「…えっ…?」
何を、言ってるの?そんなことしなくても、あんたはもう疑いようもなく…
「ほら、ギター。前みたいに奏でてくれ、行くぞ…!」
混乱する私にギターを押し付け、マイクを握り息を吸う。そうして奏でられた歌声は…
まるで2つの声が重なったような、そんな歪な歌声だった。
「…なによそれ…」
どちらの声にも聞き覚えがある。片方はあたしが倒れる前に聞こえたヴェッチの声。でも、もう片方は…
「すご~い!遂にホンモノになれたんだね!ねっ!!」
「…トゥルース、ああそうだ。おれはようやくなったんだ、『
(!?こいつ、いつの間に!?)
困惑するあたしを差し置いて、手鏡を持った変なヤツがどこからか現れる。
「ほらほら歌って!君の唱で冬を終わらせるんでしょ?ならもっともっと歌って、みんなを熱狂させなきゃ!」
「そうだ…あれ、チューン。大丈夫か?もし、まだ疲れてるなら、少し休んでからでも…」
「ひっ…!?」
差し伸べられた手に、つい怯えの感情が漏れる。
何も変わらないように見える目の前のあいつが、別の違う『何か』になってしまったような気がして。
「チューン…?」
「来ないで…来ないでよ!」
手を払い除け、一目散に城を出る。
ああ、また逃げちゃった。
でも、もう一秒だってここに居たくなかった。
これが、『
もしそうなら、あたしが追い求めてた『
人生で二回目、全てが崩れ落ちていく感覚から必死に目を背け、あたしは冬の大地を走り続けた。
居ないあなたを探して 声を枯らす