つい最近ペルソナ3本編をクリアしたので、好きな組み合わせで書いてみました。
現在はエピソードアイギスをプレイ中なので、まだまだペルソナを楽しもうと思ってます。
ペルソナ3のネタバレを含むので、未プレイまたは未視聴の方はお気をつけください。
sideCとか書いてますが、続きを書くかは未定です。
「ねぇ、今日もまたついてくるの?」
高い日差しの中、待ち合わせの駅の出口で男の子が立っている。
キャップを被っていて、同じくらいの歳で、ボウズで、背の高い男の子。
いつも通りに動きやすそうな服を着た男の子。
その子にいつも通りのことを聞いてみる。
「おう、千鳥とならどこまでも!」
やっぱり。
そう言うと思っていた。
そう言って笑うだろうとも。
でも…
「順平が来ても楽しいことなんてないと思うけれど」
「アテなんてない『人探し』なんだから」
「千鳥とならなんだって楽しいさ」
もう何度もしたやり取り。
そう、私は人を探している。
私は入院していた。
長い間眠っていて、目が覚めると記憶喪失になっていたらしい。
記憶がないなんてただ眠っていただけなんじゃないのって思っていたけれど、自分の友人と名乗る人たちが何度もお見舞いに来てくれた。
順平もその一人。
たしかに自分の記憶にはぽっかりと空いているところがある。
けれど、きっと確かなものもあった。
きっとなのに確かなんておかしい話だけれど。
「今日、見つかるといいな」
誰に言うでもなくこぼす。
私が覚えているのは、幼い頃の記憶と『あの人』と出会った夢のこと。
夢で会っていた『あの人』はきっと優しい人。
『あの人』を想う度、私はやさしい気持ちに満たされるから。
退院して、冬が過ぎて、春が過ぎて、夏が始まった。
そんな中でもずっと私は人を探している。
『あの人』に会うために。
会っていたかもわからない人を探している。
「なぁ、千鳥」
「なに、順平」
「千鳥はさ、『その人』に会ったらしたいことってあるのか?」
待ち合わせをしていた駅から離れるために歩いている時に順平が聞いてきた。
「したいこと…」
「そう」
なんでもいいんだけどさって彼は笑っている。
「あるわよ」
「え!? あんの! それってどんなこと!?」
「順平、うるさい」
なにをそんなに息巻いているのだろう。
なんにしてもうるさいのは少し苦手。
「『あの人』にしたいことをどうして順平に教えないといけないの?」
「いや、それはまぁ、そうなんだけどさ…」
しょんぼりとした様子で順平は続ける。
「でもさ、俺、千鳥のことならなんでも知りたいってゆーか…聞いときたいっつーか」
そこまで落ち込まなくても…。
入院してた頃から順平は少し変な人だ。
初対面で泣くし、よく笑って、よく驚いて、ちょっと落ち込んだり。
表情がコロコロ変わって変な人。
私に踏み込んでくる変な人。
それが不思議と変じゃなくて、その感覚だけが変な感じ。
「別に、順平が聞いても面白くないと思ったから言っただけよ」
順平が落ち込むのはあんまり見たくない。
私がからかった時ならいいけれど。
「なんでも教えて!なんでも聞くからさ!」
やっぱりすぐ元気になった。
「本当に面白くなんてないと思うけど」
「全然構わない! オールオッケー!」
私が『あの人』に会ったらしたいこと。
それは長い眠りから覚めた時、その時から決めている。
「『大好き』って伝えるの」
「そうしたら次は『ありがとう』って伝えるわ」
「何度も、何度だって」
私に、『恋』を教えてくれてありがとう。
私に、『やさしさ』をくれてありがとう。
私を、『暗いところ』から連れ出してくれてありがとう。
ありがとう、私は、『あなた』のことが大好き。
「ね、面白くないでしょ?」
言い切って順平の顔を見た。
隣を歩く彼の顔を。
きっと、思ってたよりもつまらない話を聞かされたと、そんな表情をしていると思って。
「___ッそんなこと…全然ないよ…!」
___やっぱり、彼は変な人。
どうして、そんなにうれしそうなの?
どうして、今にも泣き出してしまいそうなの?
どうして、そんなにやさしく見つめてくれるの?
「絶対、『その人』見つけような」
「当然よ。当たり前じゃない」
『あの人』に会うときは、きっと順平も一緒だと思うから、その時はちゃんと紹介しなきゃ。
私の大事な人だって。
ちょっと来てくれない時もあったけど、入院してる時も、退院してからも、ずっと支えてくれた人なんだって。
「ねぇ、順平」
「なんだよ千鳥」
「私、あなたのことも好きよ」
「『あの人』程じゃないけどね」
呆けた彼を置いていった。
首が熱い。頬が熱い。耳が熱い。顔が、熱い。
鼓動が早いのはきっと駆け出したからだ。
___きっと、そうに違いない。
こんな顔、順平には見せてあげない。
見せるとしたら、『あの人』にだけ。