異世界転移したんでトレーディングカードゲーム作る   作:一宮 千歳

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産業革命ものは初投稿です


攻撃力2400/守備力2100/このカードは魔法カードの効果を受けない

トレーディングカードゲーム!それは浪漫!

異論は認める。

 

いや、「金を刷ってるようだ」って、言ってみたくない?

だからこのたび異世界召喚された経営破綻寸前限界国家、レツブソーにTCG事業を開拓することにしたのだ。てかこれ誘拐だろ、まあ日本の暮らしに未練なんかないからいいけど。

 

「そうですね……林業、製紙が国の誇りなんでしょう? それならアテがあります」

「本当か!?」

 

あとがないレツブソーは国王陛下も宰相も財務大臣もその他有象無象もおれの言うことを全力で聞いてくれる。国家が俺の言いなり! 楽な異世界転移ですまんな。

 

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TCGは元のルーリングと、カードのバランスがキモだ。

なんなら普及のためのメディアミックスも重要。

ドのつく新し物好きで思考の柔軟なオタクならmtgをいきなり与えても問題ないかもしれないが、一般層への普及は遊戯王原作漫画からOCG、みたいな流れをつくらなくてはならない、と思っている。いやmtgも背景世界の小説はあるはずなんだけどさあ……。

土台のない状態で城は立たない。そして土台はない。じゃあやること決まってるよね。

 

「木版印刷を改良します」

「そんなことができるのか……!?」

 

この世界、聞いたところ木版印刷はあるが活版印刷がまだない。

外交不足でこの国だけがその辺を把握してない可能性があるが、ともかくこの国にはない。

じゃあまあ、やったろうじゃないの技術革命。

技術水準が遅れた世界に転生や転移したときのいいところって「こちらは答えを知ってる」とこだよね。

 

というかこの国、「少し考えればできる」の「少し考える」の部分の余力がほとんどない。だから木版印刷から先に進めなかったんですね。

俺を召喚するための召喚魔法もレツブソーにノウハウがあったわけではなく、レツブソーに恩を売りたい国、ヤシガネカが「マジでヤバそうならよかったらやってみない……? 安くしとくからさあ……」と誘われてダメ元でやったらしい。

異世界からの誘拐を薦める国とか割とろくでもないが、善意も確かにあるようなのでなんとも言えない。損する奴がいないからな……。

 

ところでこの国、今年建国100年を迎えるらしい。

つまり俺は100thアニバーサリーレアだ。ごめんちょっと無理があった。

 

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異世界転移から1年経った。活版印刷技術により、印刷物の大量生産がより簡単に可能になった。

これで絵本と小説本を出すんだよォーッ!

 

この世界、剣と魔法のファンタジー、と言う感じで割と血生臭い。「魔王の遺産」と呼ばれる、いわゆるダンジョン攻略にみんな躍起になっている。ウマい報酬があるダンジョンの権利巡って小競り合いもあるようだ。ヤンナルネ。

なお、うちの国にはダンジョンがない。そういうところだぞ。

つまるところ剣と魔法のないだらだらとした世界……つまり学園日常モノに商機があると逆算した。当たるかなあ。

あとは架空戦記モノと、架空のオモチャで世界征服を試みる謎の集団とそれと対峙する心優しい少年、というのをねじ込んだ。これはもちろんTCG普及のための布石だ。

 

さて、小説も識字率がいるが、TCGはそれに加えて計算能力に強く依存する。そのためターゲットの低年齢層と金の余ったオタクに母国語と数の大小、四則演算が身についてないと話にならない。

なので絵本、小説本を出す商会を作りつつ、同じ商会の名義で教育振興を行う。具体的には商会の影響範囲内において、教育費と食費を商会が負担する私塾を作成する。義務教育の強力さは知っているね?

 

まあ商会が負担とか言いつつ商会の金がどこから出てるかというと国なのだが。マジでズルしてんな。

テキストはもちろん活版印刷だ。

 

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異世界転移から3年経った。小説業が思ったよりちょっと順調すぎる。商会は全世界に支店を作り、そこから直販で小説本を販売、私塾を展開している。

小説の売り上げの上納金で、レツブソーは経営破綻の危機を脱した。もういいんじゃない? とか言われたけど俺は止まらねえからよ……!

 

ところで世界的ベストセラー、「魔法のない異世界で学園ハーレム生活!」のあらすじはこうだ。

自分だけが魔法が使える世界で、翻訳魔法で世界に馴染もうとする。その辺の学園に入学して一般常識を得ようとしたところ転入直後にチンピラに絡まれ、魔法を使っている所をクラスメイトの美少女に見せてしまい、主人公から美少女への魔法の手解き(意味深)がはじまる……。

 

元々異世界ハーレムものジャンルはあったし、人気もあったのだが、「まほない」が流行ったのは我がレーベルが活版印刷によりこの作品を"迅速に"、"安定して"各国に提供できた点が大きい。ほかは基本木版印刷一枚刷りと人力写本だもんね。版を作り直すか保存するコストが多大になる木版印刷とは「欲しいと思ってる人間の手元に来る」速度がまったく違う。活版印刷は他の国にもあったが、娯楽作品に活版印刷を導入している国はなかったのだ。

ハーレムが流行るのは、まあ血生臭くて才能がものを言う世界だからね。この作品の出版と市場調査にあたり、結構な国が一夫多妻制を採用していると知った。

流行ったジャンルとしては日常ものとはちょっと違ったね、と言う感想。あとこの世界から見ると知識チートが魔法チートにあたるんだなーと。参考になる。なんの?

 

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異世界転移から4年経った。

識字率が十分高くなったので、普及に問題ないだろうとしてTCGのアルファ版を作成開始、ルール制定とテストカードの作成、テストプレイの日々だ。

 

とりあえず作るシステムA。デッキ六十枚、初期手札七枚、カードを場に出すのはコスト制、同名カード四枚まで。これでライフ二十点を削り合う。まあ、mtgのパチモンだ。マナ周りのルールは変えて、別途「マナデッキ」として事前に組んだものから任意のマナカードを選んで一枚ずつ任意に出せることにした。魔法使い同士の戦いで戦場のマナが活性化する、というフレーバー。

 

で、システムAは土地由来の手札事故が起きなくなった分三色以上の多色が組みやすすぎることがわかったため、全体に色拘束を強める方向にした。

 

テストプレイヤーは私塾の子供たちだ。

 

一番問題視されたのはマナだ。「最初からでっかい魔法使いたい!」

 

そりゃそうだな。

 

我慢の苦しみは子供には早かった。システムAは大人向けとして、並行してシステムBを作る。こちらはコストはイコール手札そのものの遊戯王式にした。デッキも四十枚で、初期手札は五枚。デッキ内の同名カードは二枚までにし、プレイの多様性を確保する。

 

システムBは「最初にでかいものを置きたい」にマッチした。しかし「最初にでかいものを置けたら勝ち」が濃い。これのために、最初から除去札を大量に刷ることになった。

 

でも、トップレアは除去耐性持ちのほどほどのデカブツだ。ほら、買え。

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