「レッドシューズですか?ええ、V.T.Cに居ますが、彼女が何か?」
「一つ、彼女にアポイントを取って貰いたいのじゃ。妾からのツテで頼んでもよいのじゃが、次期教皇候補のラプンツェルの方が何かと話が通しやすいじゃろう?」
ラプンツェルも同じゴッデス部隊のメンバーであり、まだ完全に堕ちていない清楚なシスターな印象を受ける。レッドフードのあぶな絵が絡まなければまだ…いや、元来の素質が助兵衛なのじゃから、そのうち自分であぶな絵を描くのじゃろう…。
勝利の翼号の食堂にそのラプンツェルを呼び出し、レッドシューズに話を通す。
レッドシューズはこの世界における転換点と言っても過言ではないじゃろう。逆に彼女の蛮行を止めることが出来れば、人類勝利という番狂せも夢物語ではなくなる。
時系列的には、まだレッドフードが特殊なラプチャー"ウルトラ"から侵食を受けていない。つまり、『RED ASH』以前の出来事で、アナキオール___シンデレラ、レッドシューズやリトルマーメイド、ヘンゼル、グレーテルといった第二世代フェアリーテールモデルの設計段階、といったところじゃろう。
後々に、レッドフードはウルトラの侵食によってその命を落とす。侵食性能が強力なラプチャーの出現には、護衛をつけて妾を優先的に出撃するように指揮官に打診しておるが、その前にレッドシューズとのアポイントが取れるなら僥倖じゃ。
「___かぐや?」
「…すまぬ、少し考え事をしておった。なんじゃったかのう?」
「アポイントを取るのはいいですが、どうしてか理由をお聞きしても?」
「そうじゃのう…」
侵食の研究について…が無難かのう。もう少し、レッドシューズの興味をそそられる材料を提示できればよかったのじゃ…待てよ?レッドシューズの興味を惹きつけるものを妾は持っておるじゃないか。
「忙しい立場じゃからのう。ラプチャーの侵食研究と、『ラプチャーの"クイーン"について、話したいことがある』と、言ってくれるかのう」
◆◆◆
アポを申し出て半年ほどか…妾も出撃が多く、都合のいい日程が組めなかったが、ようやく話をこぎつけることができた。
レッドシューズの到着を待ちながらも、周りを見渡す。V.T.C.の司祭室は妾が思うておったよりも、簡素な内装となっておる。戦時中であるし、調度品とまではいかないまでも、最大手宗教の幹部となれば、来客も多いはずなのじゃがのう。別のところに居て、興味を示していない…のじゃろうな。
「お待たせしてしまって申し訳ありません。元陸軍特務大尉、現ゴッデス部隊のかぐやさんですね。今日はどう言ったご用件でしょうか?」
目の前のレッドシューズは、ニケになった立ち絵とは違い、司教服を身につけている。見た目だけなら、おっとりとしたお姉さん属性に見えるのじゃがのう…。
「いや、こちらこそ多忙な中、時間を割かせて申し訳なく思う。お互い忙しい身の上じゃからのう、単刀直入に入ろう。お主の実験について、聞きたいことがある」
「実験…聞きたいこと、ですか。一応私の担当はラプチャーの侵食コードの解析が主な研究内容となっています。」
「…この部屋の監視カメラを一時的にジャミングさせた。盗聴器の類もノイズが入るように細工しておる。お互い、気になることがあると思うて、おったのじゃが…っ!」
盗撮盗聴の類はないと切り出した瞬間だった。レッドシューズの口元は三日月のような弧を描くように歪んだ。
「やはり…やはり私に会いに来てくださると信じていました。ラプチャーのクイーン、その複製とは思いますが、そのお顔、間違えるはずがありません。一度お顔を拝見した時は他人の空似かと思っていましたが、私の研究、ラプチャークイーンに対しての発言、もはや疑いようもありません」
「…フム、妾がここに来た理由も、すでに見当がついておるようじゃのう」
妾の顔がリリスちゃんに会う時以外、澄まし顔なことが功を奏した…。レッドシューズが豹変しすぎて、めちゃくちゃ怖いのじゃが…。護衛をつけたかったのじゃが、それではレッドシューズの本性を見ることも出来なかったじゃろう。
人類とラプチャーの戦力差から、原作よりはマシと言っても良いが、マシであるだけで、九割がた敗色濃厚と言ったところじゃ。その戦略図であるなら、レッドシューズはラプチャーに鞍替えしようと画策しておる。その実験も進めておると思うておったのじゃが、当たりのようじゃな。
「お主の侵食コード研究、妾も手伝おうと思うてのう。妾の見立てが正しいなら、お主の作ろうとしている侵食コード、ラプチャーにしか得のしないモノではないのかえ?」
「…そこまでの知見を得ているのですか…素晴らしいです。では具体的に、どう手伝ってくれるのでしょうか?」
「妾の体を実験材料にするのはどうじゃ?自分で言うのもアレじゃが、量産型ニケよりも確実に高性能のはずじゃ」
「………」
レッドシューズは、あの三日月のように曲がった笑顔は鳴りを潜め、顎に手をあけ考え出した。
「どうしたのじゃ?」
「いえ、どうしてそこまで手を貸してくださるのか、疑問に思いまして…私が思いつく限りなら貴女に対するメリットは、ラプチャーの支配する地上に君臨できる。…十分すぎるメリットにも考えられますが、それは私の研究が成功すればという条件のもと、成功する保証もないですし、そもそもどこで私の研究が知られたのか…その上で、接触してくる方は貴女以外いらっしゃらなかった。妙なんです…まるで、私の実験が最初から成功することを知っているかのようなんです」
す、鋭いのう…。妾以外の他のニケに手を出させずに、実験をそれとなく邪魔してやろうとした妾のパーフェクトプランが気取られたのじゃが………。伊達や酔狂でV.T.C.の技術顧問になってはおらぬということじゃな。あのエイブにバレることなく、シンデレラに侵食コードを埋め込むような技術力も持ち合わせておるし…。仕方がないのう…。
「それはじゃのう………」
◆◆◆
はぁ、レッドシューズの相手は疲れるのう…。切りたくないカードを切らされてしもうたわ。
しかし、これで最低でも侵食もなく、シンデレラは予定通り実戦投入されるじゃろう。安心したらどっと疲れた、早く勝利の翼号に戻らなければのう。
「妾じゃ、予定も終わったので、すぐ帰投する」
『かぐやか、ちょうどいい時に来た。お前の非番の時に、侵食能力が強力なラプチャーが発見されてな、今さっき決まった個体名は通称"ウルトラ"、リリス達を連れてゴッデス部隊で討伐の運びとなった』
通信の奥にいる指揮官から耳を疑うような事態が起ころうとしていた。
「待て…指揮官、そのラプチャーは妾が相手をする」
『行かせてやりたいが、既に俺たちが出撃してるからな。お前が到着する頃には、もう戦闘は終わってるかもしれないぞ』
「…できるだけ早く到着する。妾も行くから、戦闘予定地点を送信してくれるかえ?」
◆◆◆
「少し前に、かぐやから通信が入った。俺たちが目標としている特殊個体ラプチャー"ウルトラ"との戦闘には、彼女が合流する。彼女の戦闘データを頭に叩き込んでおけよ、下手をすると巻き添えを食うぞ?」
リリーバイスを除いたゴッデスのメンバーは、同じ隊の一員ではあるが、かぐやと同じ戦場で肩を並べて戦うなどといった作戦行動は行われなかった。
それもそのはず、かぐやの戦闘スタイルは、超高出力の光学兵器を主軸とした広域殲滅型、近付かれた時の近距離支援に量産型ニケが二名ほど同行することはあれど、同じゴッデス部隊の誰かが同行することは、ドロシーのロールアウト後、一度たりともなかった。
戦略級の火力を持ち合わせたニケは、その一人だけで戦場を支配し、部隊としての総合力で活躍するゴッデス部隊で運用するには、ロスが大きすぎる故に、ここぞといった単独での投入こそが最も効果的であったからだ。
戦闘データや、ログこそ目を通すように言われていたが、いざ同じ戦場で肩を並べるとなれば、百戦錬磨のゴッデス部隊であっても緊張が走る。
「一つよろしいですか、指揮官。彼女は何故、私たちの戦闘に加わるのでしょうか?彼女の戦闘データが正しければ、過剰戦力になるのですけど?」
手を挙げて発言したのはピンクの髪と真っ白な服が特徴的なドロシーだった。
「さあな、彼女が出撃するって一方的に言ってきたんだ。リリスを含めたゴッデス部隊は俺の指揮下に入っているが、かぐやに至っては、その単体戦力から、俺の指揮権限と、人類連合軍の総意と、かぐや個人の意思からなっている。つまり仮にだ、俺が出撃しろってかぐやに言っても俺の命令を『嫌だ』と言って無視できる。ゴッデス部隊の指揮官である俺と平等の権限を持ち合わせた『
「事情は読み取れました…指揮官も権力には弱いのですね」
「バカを言え、俺は美人の申し出に弱いだけだ」
「…指揮官?」
直後、リリーバイスから指揮官に向けた殺気のようなものが届き、感じ取った指揮官は粟立つような錯覚を覚えた。
「…コホン、他に質問は?」
「かぐやは私より強いのか?」
「紅蓮か…率直に言うなら、対人戦闘なら紅蓮の圧勝だな、用途が違う。同じ条件で、ラプチャーの軍団との戦闘なら、間違いなくかぐやが強い」
納得が言ったと言わんばかりに、紅蓮は『フン』と鼻を鳴らした。
「他に質問は?…無いなら、
◆◆◆
『対象のラプチャー、ウルトラを確認。リリスは中央突破、レッドフードはリリスと足並みを合わせながら援護、スノーホワイトはリリスとレッドフードの援護だ、紅蓮とラプンツェルはスノーホワイトの周囲のラプチャーの掃討に専念しろ』
かぐやのこだわりは幾つかあった。その一つはニケに対する侵食が脅威となる大型のラプチャーであること。
対象が発見され次第、彼女が出撃し、ラプチャーの軍団を余裕の表情で殲滅して一時間足らずで出撃から帰投を終える。今回もその類いのラプチャーのはずだった。
「危ない!リリス!!!」
油断も慢心もしたわけでは無いが、データ上よりラプチャーの弾幕が厚く、リリスの突破力を生かしきれなかった。
そして現場判断でリリスより前に出たレッドフードが庇うように、リリスを狙ったウルトラの侵食コードの触手に貫かれる。その数秒後を予測できない指揮官では無かったが、上空から降ってきた触手を全て撃ち抜いた最強の兵器のサプライズ登場に、俺は心底安堵した。
「どうやら手こずっておるようじゃのう…しかし、安心するのじゃ、妾が来た」
ゴッデス部隊最強兵器、ワンマン・アーミーが、戦場に降り立った。
お疲れ様でした。
レッドシューズとの会合、原作を知ってて、結末を知っててもレッドシューズに直接あったら、内心怖すぎるよね…。
かぐやの設定が盛られに盛られる。一人で軍隊と同じ戦力に数えられるって、男の子の好きな展開すぎる…。最強の兵士をリリスとするなら、最強の兵器がかぐやって感じ…めちゃくちゃ好きな設定…。
ここで、レッドフードを侵食させるウルトラの討伐をするんですよね…厄ネタに会いに行くって、レッドシューズとウルトラも合わさった副題だった…?
これもう、かぐやは、デウスエクス・マキナでしょ…。
もしかして続くかも?