ド田舎で魔術を修める転生者、人は彼女を魔女と呼ぶ   作:うぃっちくらふと

4 / 4
4 事件はまだまだ終わってない

 アレから、フレデリカは私の作った――作った……というか、錬成したというのが正しいけど――夕食を美味しそうに食べてくれた。

 その間、私とフレデリカは村長やリノを交えて、ぽつりぽつりとお互いのことについて話したのだ。

 どうもフレデリカは私と同じで親がいないらしく、私は少しだけ親近感を感じた。

 彼女の場合は村ではなく、アルバート伯爵家に育てられた感じらしい。

 

「お互いに、守りたいものが似てるのですね」

「私は君ほど、強い信念を持っているわけではないけどね」

 

 なんて話をした。

 ずいぶんと謙遜をしているけれど、絶対そんなことはないと思うけどな。

 アルバート伯爵のことを話すフレデリカは、尊敬する父を自慢したい娘そのものだ。

 ――何にしても、細かい話は明日しようということになった。

 これはなんというか、フレデリカが一枚上手なんだろうな。

 お互いのことを腹を割って話し、一日村に泊めた時点で――私としては、無視できない存在になったのだから。

 

「――ここ最近、大陸全体で魔物の出現が増加傾向になっている」

「ずいぶんと、規模の大きな話ですね」

「ああ、しかし君はピンと来ていないみたいだな」

「あいにくと、この辺りではまだそういった話は広まっていないものでして」

 

 魔物の出現が増加傾向。

 なんとも剣呑な話だ。

 ともあれ、私とフレデリカは村長宅で話をしていた。

 リノが出してくれたお茶に手を付けつつ、フレデリカからより詳しく話を効いていく。

 

「しかし――今回、君の村の近くにも魔物は出現した」

「まったくない話ではありません。私も過去、何度か魔物を退治してきたことがあります」

「それは勇敢だな。冒険者ではない普通の人間が魔物を討伐するのは、あまり褒められたことではないが……まぁ、君に関しては今更か」

 

 なんだか、解っているといった様子でフレデリカは頷く。

 含みのある言い方だなぁ。

 悪い意味ではないのはわかるけれども。

 

「とはいえ、アレが先触れであるという可能性は否定できないだろう?」

「そうですね。といっても、今は様子を見るしかないのですが……ああそうだ、アレの更新はしておくべきか」

「アレ?」

「まぁ、ちょっとしたことですよ。リノ!」

 

 言いながら、私はキッチンで片付けをしているリノに声をかける。

 

「はーい、なになに?」

「ちょっとこれ、いつものお守り。外に出る人に配っておいて」

「わかった! 私も持ってっていいよね!?」

「もちろん。っていうか外に出る人間で一番小さいのはリノだろ、ちゃんと持ってないとだめ」

「はーいはい」

 

 いいながら、懐から取り出した大量のお守りをリノに手渡す。

 これは魔物よけのお守りで、私が作ったものだ。

 昨日の獣人相手には気休めかちょっとした時間稼ぎにしかならないだろうが、それくらいの力があれば十分である。

 

「定期的に、新しいものへ更新しています。長時間そのままにしておくと魔力が抜けて効果が薄れるので」

「なかなか便利なものを持っているな……それで、魔物の活性化についてなのだが」

「……解ってます。原因について、知恵はお貸しします」

 

 正直、個人的には結構気になる題材だ。

 魔物は魔力から生まれ、魔術とは類似性がある。

 中には魔術を使う魔物だっているんだから、私の興味の対象だ。

 ただし、だからといって”それ以上”の力を貸すとなると、私は尻込みしてしまう。

 

「ですけど……それ以上は難しいと思いますよ。魔物が活性化して多く出るということは、それだけ村の近くにも魔物がでるということです」

「解っているさ。君と一日話をして、君がこの村へ強い恩義を感じていることは、良く解っている」

「でしたら……」

「ああ、君を無理に外へ引っ張り出すつもりはない」

「ありがとうございます」

 

 その言葉で、ホッとする。

 話のわかるフレデリカ様でよかった。

 これが普通の騎士や貴族だったら、絶対に問答無用で私を連れて行く。

 だいたい、研究だったらここでもできるんだ。

 それをどうして、わざわざ遠方まで足を運んでそこに滞在しなきゃいけないのだろう。

 そもそも私は、本当にただの独学で魔術を学んだ魔女でしかない。

 あまり期待されても、困る。

 

「ただ、私はもう少しこの村に滞在しようと思う」

「……と、いいますと?」

「少し気になるんだよ。もし魔物の出現が少しずつ”広がっていく”ものだとすれば、この村周辺での魔物の出現は今後増えていくはずだ」

「それを確認したい……と」

「そういうことだね」

 

 それは確かに。

 色々と合理的な判断だ。

 この村で確認できることだし、何より私が側にいる。

 私という専門家の力を借りつつ私の能力も測れるのだから、一石二鳥というやつだろう。

 

「まずは一旦、外に出ようか。建物の中で話をしていても始まらないだろう」

「……ですか」

 

 そう言って、二人でお茶を飲み干すと、早速外へ出かけることにした。

 

 

 ○

 

 

 それから、しばらく私とフレデリカは村の外周を歩いて回った。

 話の内容は様々だが、今話しているのは魔物が出現しやすい”魔力の淀み”の話だ。

 

「この大陸には、いわゆる龍脈と呼ばれるマナの血管のようなものが流れているのは、フレデリカ様もご存知ですよね」

「まぁ、龍脈という言葉は聞いたことがある」

「血管には、良い流れの部分と悪い流れの部分があります。こう、血を流した時にすっと通る方と、障害物があって通らない方……みたいな」

 

 私は左手を一直線に真っすぐ水平移動させ、次に右手をぐにゃぐにゃと揺らしながら移動させる。

 

「前者の場所には魔物が発生しにくく、そういった場所に人里は形成されていきます。そこに地理的な条件が重なって、街は発展していくわけですね」

「悪い流れの部分に、魔物が発生しやすい。……そうか、そういう部分にダンジョンが発生するわけだな」

「魔力は空間すら歪めますからね。それで、ええと。私が住むこの村を始めとした一帯は、散発的に極端に良い流れの場所が幾つか存在します」

 

 それがこの村と、周辺の村だ。

 一つ一つが小さな場所で、故に村は小さく点在している。

 この極端に良い流れの場所でしか取れない薬草があって、それがこの辺りの特産品だ。

 

「魔物の出現が活発になっているなら、普通に考えて悪い流れの場所から、より多く魔物が出現し始めるはずです。この辺りは他の魔術師も調べてるとは思うのですが……」

「残念ながら、そういった傾向にはないようだ。もしそうなら、今頃ダンジョンで魔物が大量に発生しているはずだが、そうなってはいない」

 

 つまり、本来の魔物の出現とは全く異なる流れで、魔物が出現しているということ。

 ここまでは、どうやら外の人たちも調べているらしい。

 いやそもそも、私が自分の知識だけで答えを出せる内容だ。

 調べる以前の問題である。

 

「しかしまぁ、そういうことであれば私に話を持ちかけたのは、正解だったかも知れません」

「と、言うと?」

「この村周辺でしか、検証できないことがあります。これは私たちの住む村周辺特有の魔力的な現象で、おそらく知っているのは私だけです」

「なるほど……」

 

 村人たちだって、このことは知らないだろう。

 他所の村人なら、なおさらだ。

 それにしても、他所の村人……かぁ。

 

「ただ、そのためにはちょっと面倒なことがあるんですよね」

「面倒……というと?」

「他の村にも協力を要請しないと行けなくて――」

 

 私が、ちょっと憂鬱になりながら話を続けようとしたその時だった。

 

「――大変だ、ウィチタ!」

 

 村人の一人が、息を切らせて叫びながら、こちらに寄ってくる。

 

「どうしたんだよ、ライルさん」

「それが――」

 

 はぁ、はぁと何度か深呼吸をするライル。

 その様子に、私は嫌な予感を覚えつつ――

 

 

「山菜を取りに行ったリノが、まだ戻らないんだ!」

 

 

 私はフレデリカと外で話をし初めてから、すでに数時間が経過していることを、自覚した。




お読み頂きありがとうございます。
感想、評価いただけるとうれしいです。
特に高評価は非常に励みになります。
よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

意味深に助言を送る見た目だけミステリアス女、弟子が大成して大汗をかく(作者:ミスジョ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ミルシアは見た目だけミステリアスなうすほそ銀髪TS転生者である。▼如何にも神秘的な見た目から繰り出されるのは、酒とギャンブルが大好きなだらしない姿。▼しかも、初めて出会った若人を勝手に弟子と呼び、意味深な助言を送るのが趣味だった。▼周囲からは見た目だけ残念女と呼ばれ、本人もそれを自認していたが――ある時、彼女の弟子が世界を救って英雄になってしまう。▼そして堂…


総合評価:1251/評価:8.14/連載:5話/更新日時:2026年09月10日(木) 17:03 小説情報

非課税少女ミミカ(作者:税の作文)(オリジナル:現代/コメディ)

35歳の元工場勤務、14歳の魔法少女に転生。▼しかも固有能力は――▼【非課税】▼……それ、魔法少女の能力か?


総合評価:1837/評価:8.29/完結:14話/更新日時:2026年08月31日(月) 18:30 小説情報

儚い系うすほそエルフになったので自由を謳歌する(作者:うすほそ~(挨拶))(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

人生に疲れていた社畜は、気がつけば異世界で儚い系うすほそエルフとなっていた。▼当然チートも持っている。▼ちょっと儚すぎること以外、何一つ不満のない状況を手に入れたのだ。▼これからは自由に生きていい、そんな幸福感に満ちながらうすほそエルフ”リリア”の新たな人生は始まった。▼しかし儚すぎる見た目のせいで、生き急いでいるようにしか見えないうすほそは、周囲に多大な心…


総合評価:1414/評価:8.38/連載:5話/更新日時:2026年08月30日(日) 12:35 小説情報

転生少女が工房を開いたら、有力者たちのたまり場になった(作者:暁刀魚)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

 転生者のアリエルは才能に恵まれていたものの、出世に興味がなかった。▼ 学生時代の研究は一部の人間にやたらと評価されていたが、それをひけらかすと嫉妬されて面倒だと考えるのがアリエルだ。▼ あまり人の来ない田舎の故郷で工房を構えることに決めるのは、自然なことだった。▼ しかしどういうわけか、アリエルの工房には常に学生時代に知り合った有力者が各地から集まってくる…


総合評価:5158/評価:8.55/短編:3話/更新日時:2026年05月29日(金) 12:10 小説情報

TS侍女は逃げられない(作者:TSスキー)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

前世で男だった記憶を持つ男爵令嬢エリナは、八歳の頃から同い年の侯爵令嬢ソフィアに仕えている。▼立派に育った主人を内心では妹のように可愛がり、専属侍女として一生その世話を焼いて暮らせれば、それで十分。自分自身の結婚など御免だった。▼そんなある日、お嬢様に政略結婚の話が持ち上がる。▼貴族の娘として婚姻を当然の責務と受け入れるお嬢様。しかし、覚悟と不安は別のもの。…


総合評価:2291/評価:8.69/短編:2話/更新日時:2026年08月21日(金) 18:13 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>