我々記者一同は大久保選手の年俸が幾らになるのか予想し合っていた。
功労者には結構な年俸を払うことで有名なヤクエナキャッツ。
しかし、最近はフロントが財布の紐をきつく締めている。
ただ、今年の日本一になるまでの過程で、ファンも大勢獲得し、大久保選手のグッズ売り上げは天井知らず。
飛ぶように売れまくっていたので、フロント側もウハウハのはず……。
色々考慮して低くても3億、高ければ5億くらい支払うのではないか……という見方が記者達の間では強かった。
『出てきました大久保選手です! ニコニコ笑顔です! これは年俸も期待できるのではないでしょうか!』
報道アナウンサーが実況する年俸改定後の記者会見。
席に座ると、大久保選手にまずはと記者の1人が切り出す。
『ズバリ聞きます。年俸幾ら行きましたか』
すると大久保選手は右手5本を開く。
『ご、5億!』
パシャパシャと写真が撮られる。
すると大久保選手はゆっくりと横に首を振り、口を開いた。
「1.5億の5年契約」
会場が静まり返る。
「いやぁ素晴らしい契約を結んでくれて感謝しかありません!」
『そ、それはその……』
「こちらの要望通りです。俺の年俸は1.5億で十分なので、他の人の契約金を弾んでくれってお願いしたんですよ。特にデロスサントスとロビンソン・カスはあと3年はいてもらいたいので複数年の大型契約をって」
『……』
私達記者には理解できない生き物を見ているようだった。
自身の給料を減らしても良いっていう選手は偶に出てくるが、これでは飼い殺しである。
『そんなことを普通されたら、球団に愛想尽かすのでは?』
「いや? 私をドラフト1位で取ってくれたヤクエナキャッツに俺は多大な恩を感じているんです。ヤクエナが困っているなら、俺が頑張ればいいだけなんで」
『……』
私達記者達はそれを見て、狂信者を相手しているように思えてしまうのだった。
【速報】大久保選手1.5億5年契約で契約更改
1:大久保ファン
奴隷契約だぁ
2:大久保ファン
大久保様、それはいかん
3:大久保ファン
他の選手の年俸にも影響するぞ
4:大久保ファン
というかプロ野球全体の年俸がデフレする
5:大久保ファン
大久保選手が物差しになってしまう
6:大久保ファン
?? 「大久保君は超一流選手なんだからそれに見合う年俸を貰わないと選手が夢をみられない」
7:大久保ファン
これはあかんですよ
8:大久保ファン
というか大久保選手をネコちゃんズは狂信者に仕立て上げるって……マタタビでも使ったのか?
9:大久保ファン
大久保選手は猫だった?
10:大久保ファン
ヤクエナフロント「大久保選手が浮かしてくれた予算でデロスサントスとロビカス選手の年俸はプラス1億ずつ、あと助っ人補強に充てます」
11:大久保ファン
というか秋の怪我祭りしたんだから選手引っ張ってこないと
12:大久保ファン
ヤクエナキャッツ、他球団戦力外投手3名獲得へ
13:大久保ファン
現役ドラフトでも投手引っ張ってくるっぽいな
14:大久保ファン
怪我人多発したからなぁ
15:大久保ファン
来年も投手不足確定か
16:大久保ファン
離脱した投手
小林 引退
奥寺 開幕には間に合いそう
少林寺 トミージョン手術で1年離脱確定
藤堂 全治9ヶ月
岡島 全治8ヶ月
森 トミージョン手術
国枝 じん帯断裂で引退
17:大久保ファン
多すぎない?
18:大久保ファン
ヤクエナでは日常
19:大久保ファン
それに野手でも怪我2人にFA宣言した3人も……
20:大久保ファン
流石に引き留めに動くやろ
21:大久保ファン
でも金満球団が獲得に動くって噂あるし
22:大久保ファン
どうなるか……ファンとしては来年も強いヤクエナを見たいけど
23:大久保ファン
これで優勝争いができれば最高だけどなぁ
「さぁ始まりましたスポーツジャンク! 本日はヤクエナキャッツの大久保投手と球界OBの皆様です! どうぞよろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします」」」
俺はとあるテレビ番組からオファーがあり、そこに参加していた。
参加している球界OBの皆さんも結構豪華で、メジャーで長年活躍したダルさん、メジャー経験のあるユーティリティ内野手の河崎さん、解説でお世話になっている新田さん、元監督の高中元監督と130キロ台の投球で投げていた星川さんの5名が俺と一緒にひな壇に座る。
憧れの選手ばかりで正直ガチガチに緊張している。
「何や、大久保選手ガチガチやないか!」
MCの芸能人の方にツッコミを入れられるが、
「はい、凄い方ばかりなので正直日本シリーズのマウンドよりも緊張しています!」
「そんなバカな!」
穏やかな雰囲気で始まり、最初の話題になる。
【大久保ごめん、投げさせすぎた】
「高中さんやなこれは」
「本当にごめん、というか今日はこれを言いにこの番組に出た」
ゲラゲラと周りに笑いが起こる。
「あれ、今だから話しますけど、あれ高中監督に私が直訴していたからですよ。全部高中監督が泥をかぶってもらったので、こっちも申し訳なく思ってました」
「そうだったん!」
MCの方が驚いたようにツッコむ。
「いやぁ〜41完投した昨シーズンですけど、俺としてはあれくらいは投げられるように高校から鍛えていたので」
「高校時代も相当投げていたと聞いておりますが」
女性の司会の方が高校時代を振る。
「高校時代も基本自分が投げていたので……うちのお義父さん……高校時代の顧問に2年からエースを任されたので、全部投げる気でいましたので、それに合わせて連投できる体づくりはしましたが」
「でも、蓄積疲労ってのもあるから、多投は将来に響くよ〜」
ダルさんが絡んできた。
そんなダルさんから俺に聞きたい事があるようで、
【メジャーには行きたいのか?】
「これ聞いておきたい。行けるとしたらどんなチームが良い?」
「メジャースカウトがヤクエナの試合を見てくれているってスタッフに言われてますが、正直メジャーからどう見られてるんですかね?」
「うちの元いたチームからは連れてきてほしいって連絡入れられてるけど」
「ダルさんのチームからですか?」
「うち以外からも大型契約取りたがっているチームは複数あると思うよ」
「なるほど……」
まぁメジャーにいきたい気持ちは無くはないけど、それは日本で200勝達成してからって言っておく。
「日本で200勝となると……あと132勝……普通の投手だと15年くらいかかるけど、大久保選手なら5年ちょっとでできちゃうんじゃないか?」
「まぁチームの投手運用次第ですね。打線が打ってくれないとチームに勝ちは付かないので」
河崎さんに総返答する。
「さて、話題が温まって来たところで、大久保選手にこの話題を振ってみましょう」
【年俸1.5億でいいの?】
星川さんからの質問で、令和の今の時代で使われるの大丈夫なのかって聞かれた。
「金には困らないんで」
「「「おお……」」」
「言うやないか」
MCもツッコむ。
「いやいや、プロで稼げているうちはいいけど、やっぱり引退後を考えるとねぇ……」
そう言われたので、高中監督がニヤニヤして俺のほうを見ている。
「高中さん、何かしってはるんか?」
「いやぁ……大久保、君の趣味言っていい?」
「どうぞ」
俺は了承すると、高中監督は俺の趣味はデイトレードや株の売買が趣味だと話す。
「結構じゃぁ儲かってるん?」
「年俸の数倍は資本持ってる感じで……」
「そりゃ年俸減らしても大丈夫か……」
ちなみに俺の総資産は今年で100億を突破していた。
株の配当金だけでも数億は転がり込んでくるし、不動産投資も始めていて、商業ビル何かを何軒が保有していた。
来年には中央の馬主資格も取れそうなので、節税の為に馬主にでもなるか〜ってことを考えていた。
あとはなんでライズボール投げられるのとか170キロ投げても肩や肘の負担大丈夫なの……とか色々質問されたが、1つ1つ答えていき、番組は普通に終わるのだった。