高校生にダウナー系の良さは分からないか 作:朝食はパン派
入学してか2三週間くらい経った。明日、小テストがあるらしい。確か、最後の3問だか4問が激ムズのやつね。
「抜き打ちとか聞いてないし」
「成績には影響ないらしいから良かったけど……」
「ホントならいいけど。っていうか、何か私たち全然お金使わなかったわね」
HRが終わり、そんな会話をしながら廊下を2人並んで進んでいく。何故プライベートポイントを消費してないかというと、普通に貴重だからだ。
まずこのクラスは確か来月から7万ポイントくらいしか貰えないから、貯金の為にも少しでも余裕は残しておきたいわけよ。
「自炊してたからね。ユキは何ポイント残ってる?」
「ほぼ椿の部屋で食べてたから、少し出した分踏まえてもえっと………8万残ってる」
「そっか。俺も6万程度残ってるから安心だ」
いつか2000万ポイント貯めるのが夢なんだけど、現実的じゃないことは分かってる。まずそんな大金集められる奴がいるのならそれこそ二年生全体を支配してる南雲か、主人公綾小路くらいだろう。少なくとも、俺には無理そうだ。
でも、持っていればいつか役に立つかも知れない。ないよりはあった方がいいし、色々買えるものもあるしな。
「………安心? 来月も、十万円貰えるんだから節制に意味なんてあるわけ?」
あ、危ない。そういえば、五月になるまで皆クラスポイントとかプライベートポイントの概念ないんだった。毎月10万だと思い込んでるんだよな。
「いつか使いたいときに毎月10万使い切ってたら勿体ないし後悔するかもじゃん? 俺は嫌だからなぁ。ユキが使いたいなら、まぁ止めないけどさ」
「別に、使いたいわけじゃないわよ。欲しい物も特にないし、遊びに行く相手もほぼいないからね」
「いないもんね。友達」
「喧嘩売ってる?」
「今なら特売で30%オフ」
「もう一声」
「………今のは冗談だけどさ、正直俺は作って欲しいな」
「面倒なだけじゃん。人付き合いなんて」
前世では、俺もこんな感じだった。まず趣味を理解されることも少なかったし、次第にこちらから期待することを止めてしまった。
それに、ユキには俺が
「それに、椿だって知ってるでしょ。人、特に男なんて、あんた以外真面な奴がいない」
「それは…………そうかもしれない。けど、じゃあ同性なら?」
「気が向いたらね。今は椿がいればそれでいいから」
そこで話は終わった。別に、俺も強制したいわけじゃない。本人がそれで満足してるんなら口出しする権利はどこにもないし。ただ、この学校で生きていくなら独りというのはそれなりの危険を孕んでしまう。今更ながら、俺は少しだけ先を見据えて恐怖した。
今日、廊下で坂柳有栖とすれ違った。儚い雰囲気に綺麗な銀髪、杖を突く比較的小柄な少女。近くで見たらめっちゃ可愛かった。隣には、神室真澄もいた。コンビニで万引きしてるところを坂柳に見られちゃった可哀想な子。
他にも、教室に櫛田が遊びに来た。どうやら、一之瀬とは既に友達らしい。流石だなぁと感心しつつ、あんな可愛い顔して裏では嫉妬心丸出しにしてるんだろうなと思うと怖い。
「それ、美味しい?」
「普通かな。でも安上がりで、それに健康的だ」
昼休み。学生食堂で向かい合って昼食を口に運んでいると、ユキが話題を振ってきた。言っているのは、俺の手元に置かれた質素な山菜定食のことだろう。
これ、なんと0ポイントなのだ。普通にただで飯食えるとか、幸せすぎるでしょ。確かに、お世辞にも美味しいとは言えない味だけど、別に食えなくはないし。
「大金があるのに使わないとか………ホント、椿って変人よね」
「失礼だなぁ、変じゃないっしょ。ほらあそこ見てみ、先輩も食ってるじゃん」
俺は、自分から見て右側、ユキから見れば左側のテーブルで一人寂しく山菜定食を口に運んでいる先輩に視線をやる。きっとDクラスなんだろう。可哀想に。
「…………ホントだ。ポイント使い切っちゃったわけ?」
「さぁ。山菜定食の味付けがめっちゃ好きなのかもよ」
「にわかには信じられない話ね。前一口貰ったけど別に美味しくなかったし」
「味覚はそれぞれだからね。あ、じゃあ前のお返しにユキの焼き魚定食一口ちょうだい」
「いいけど。一口だからね」
「分かってるって。がぶっ」
焼き魚定食は美味しかった。確かワンコインより少し高いくらいの金額だったっけ。それにしては美味しい。ただ、ネックなのは主菜が美味しすぎるとご飯が足りなくなるところ。
小テストめっちゃ難しかった。特に最後の3問、なんですかあれ?前世では今世より勉強できなかったけど、それでも何とか高校時代を思い出したのに、解けなかったよ?
あれ高3とかの内容だよね? なんで高1に出すんだよ。普通に過去問とかいうのにこの段階で気付ける奴いないだろ。それこそ、俺みたいな特殊な事情でも持ってない限り。
「志摩くん。小テストの最後の方めちゃくちゃ難しくなかった?」
悶々と考え込んでいると、隣から声を掛けられた。初日以来、1日に数度は話す仲になった網倉だ。
「それ。途中までは中学の復習だったのに、最後の3問だけ何を訊かれてるのかすら分からなかったよ」
「だよね。成績に影響しないらしいから良かったけど、抜き打ちであれはヤバい」
「定期試験であんなの出されたらたまったもんじゃない。流石にないと思うけどさ」
「流石に定期試験はないでしょ~。あ、そうだ」
「ん?」
「今日さ、数人でカラオケ行こうって話になってるんだけど、志摩くんと、それに姫野さんもどう?」
網倉は俺とユキを交互に見る。俺はちゃんと話す気あるけど、網倉の前に座ってるユキは振り向くことすらない。多分うたたねしてるか、若しくは聞いてない。
「じゃあ、行こうかな。ユキは?」
「…………」
「これはあれだ。寝てるね」
返事が返ってこず苦笑いする網倉と、そんな俺たちの会話を聞いていたのか隣の席のユキに視線をやる渡辺。コイツは原作でも言われてたけどいい奴。話しやすい。1日に1回くらい喋る。
「昨日夜までゲームしてたからかな………。まぁいいや、俺は行くよ。ユキは起きた時にでも聞けばいいよ」
「分かった。じゃあ、また後でね~」
「うん」
網倉はそのまま一之瀬の方へ歩いて行った。多分、彼女が主催なんだろう。コミュニケーション能力が秀でてビジュアルもいい。勉強も出来て主席入学とか、ホント欠点ないよねあの人。
強いて言うなら、男を見る目がないってとこくらい。なんと原作だとあの人、綾小路に惚れてる。なんならやることやってる。しかも愛が重いのなんの、背油マシマシ家系ラーメンより重い。
ちゃんと放課後カラオケ行った。ユキも俺が誘ったらついてきたけど、あんまり歌ってなかった。男女計8人くらいだったけど、実質7人だったね。ユキは一之瀬と網倉に話しかけられてだるそうにしてたけど、俺は普通に柴田って人と話してて放置しちまった。
思ったけど、Bクラスはいい人多いね。Dクラスはあれだし、Cクラスは不良ばっかだし龍園生で見たらチビりそう。AクラスとBクラスは当たりだ。五月になったら内ゲバが開催されることに目を瞑ればだけど。