ある日、友達の頭が訪ねてきた。
頭だ。生首だ。
そいつが言うにはうっかり取れてしまったらしい。
「頭って、うっかり取れんの?」
「手を切ることくらいあるでしょ、そんな感じ。」
「スケールが違うよ!」
どうやら頭の中では軽いこととして捉えてるみたいだ。頭しかないのに頭が空っぽらしい。
玄関先で生首と世間話するのも外聞が悪いのでとりあえず家にあげてみた。
「一応、なんでそうなったか教えてくれる?」
「うっかり落としちゃったんだ。」
「うっかり頭は落ちないよ。」
「多分、君も外せるよ?」
「人を見下ろしたいからね、遠慮しておくよ。」
なんだか気の抜ける会話の中で、うっかり頭が外れることがあったか記憶をたどってみる。
当然、無い。
「本体はどこにあるの?」
「道端に置いたまんま、頭の良さだけじゃ動かせないしね。」
「やかましいわ。それで、回収しに行きたいわけ?」
「正解。良い友達を持ったね。」
図々しい奴だ、と思った。けれど、こいつには今頭しかない。人を頼るしかないと思えば、友達の僕が適任だろう。
「どこで身体落としてきたんだ?」
「学校に向かう時の三つ目の交差点。行けばわかるよ。」
生首を持ち運ぶわけにはいかないのでリュックサックに頭をしまって持ち運ぶことにした。
「ここ、狭いんだけど。」
「ピッタリフィットの特等席だろ。」
「まあ優しいから我慢してあげるけどね。」
やっぱり図々しい奴で合っていたらしい。
ーーー
「リュック揺らさないでもらえる?」
「揺らしてるつもりはない。」
「頭だけでも酔うんだから。」
「そうか?じゃあこうだな。」
僕はリュックを手に持ち替え、ぐるりと1周させた。
「お前、身体あったら殺してやるからな。」
「頭でっかちにはできないよ。」
話してる間に一つ目の交差点に着いた。
どうやら、リュックから声が聞こえてくるのは誰も気にしていないらしい。
二つ目の交差点に着いた。
人影が気づけば消えている。
「この時間に人がいないのは珍しいな。」
「こんな片田舎だし当然でしょ。」
自分の町への愛なんてものはないらしい。
「お前生首だから避けられてんじゃないか?」
「誰も気にしてないでしょ。」
ーーー
「三つ目の交差点を右ね。」
交差点を右に曲がるとそこに頭の無い体が立っていた。
数える気にもなれない。
頭の無い身体が視界を埋めつくしていた。
僕は気がつけば、踵を返して
「もう遅いよ。」
身体のひとつに触れられて僕の頭も
とん。
とん。
とん。
と転がった。
逃げるのは無理そうだ。
「頭ってこんな簡単に落ちるんだな。」
「言っただろ?うっかり落ちるって。」
二つの頭は顔を見合わせた。
そして笑った。
「じゃ、次の人、行くか」