一番星と騎士王に憑かれてる子 作:とっとこ走れないハム之助
「っていう感じで友だちになったみなみちゃんと空那くんだよ、お兄ちゃん。」
「いやどういう感じだよ、マジで。お前がいろいろと非人道的なことをしたくらいしか分からなかったんだが…。」
ルビーさんとそんな掛け合いをしているのは、彼女と同じ蜂蜜色の髪を持つイケメン男子生徒…星野アクアマリンくん。
アクアマリンことアクマリくんとルビーさんのお二人が、アイがこの世に遺した双子らしい。
本人があの後、いろいろと教えてくれたよ。
『ねぇねぇ、ソラくん!!私の子どもたち、美形すぎじゃない!?』
んー…耳もとで叫ばないでくれないかな?
美形なのはもう十分なほどに伝わってるから、一回落ち着こう。
じゃないと死ぬよ…僕とアルトリアの鼓膜が。
「どうも、聖城空那です。」
「妹から聞いていると思うが、一応言っとく。俺は星野アクア。まぁ好きに呼んでくれ。」
「それじゃあアクマリくんで。」
「やっぱアクアって呼んでくれ。」
なんでも良いって言われたのに、ほんの数秒で前言撤回されちゃった件。
なかなか出てこないような、独特でいい感じのネーミングだと思ったんだけどなぁ…。
あの世界的有名キャラクターなドクターマ○オの略称に似てるし。
『アクアにここまで言わせられるのは、たぶんソラくんくらいだよ。』
『これが天然というものなのですね。勉強になります、ソラナ。』
最初はみんな好きに呼んでいいって言うくせに、最終的に僕の名付けを受け入れてくれるような人はほとんどいないんだよねぇ。
ほんとなんでだろう?
みんな数秒で、前言撤回しすぎだよ。
もしかして、ハイスピード手のひら返しみたいなものが巷で流行ってたりするの?
僕の名付けがなぜかほぼ毎回拒否されるという問題について考えていると、いつの間にか話題が別のものへと変わっていた。
「不知火フリルがいたんだよ!!」
ルビーさんとみなみさんが目をキラキラと輝かせながらそう告げた。
たしかに彼女…不知火フリルはすごく有名だからね。
僕ら若い世代の芸能人を最前線で牽引している役者の一人だし。
「ふーん…興味ない。俺の最推しは今も昔もアイだけだから。」
どこ吹く風な様子でそうつぶやいたアクアくんは、ほんとに興味がなさそうである。
まぁ興味がないこと自体は別にいいんですが……アイを喜ばせるようなことを言わないでほしかった。
それ、火事場に油と爆薬をまき散らすくらいにイカれた行為だよ?
「あっ⋯!あそこに実物がいるよ!!」
そう声を張り上げて、校舎の玄関口を指差すルビーさん。
僕たちがそちらへと目を向ける。
その先にいたのは────黄緑色の双眸を僕へと向けている、獲物をロックオンした肉食獣の如き美少女…不知火フリルであった。
「あの、アクアさん⋯。」
「あぁ、なんかこっちに来てるな…。」
ルビーさんは自分の世界に入り込んでしまったから気づいていないけど、アクアくんとみなみさんは不知火フリルがこちらに近づいてきていることに一瞬で気づいた。
僕らのすぐ近くまでやってきた不知火フリルは口を開き────
「久しぶり、なーそら。だいたい一ヶ月ぶり?」
「うん。フリルリと会うのは一ヶ月ぶりくらいだね。」
いつものように僕とあいさつを交わした!
「なー、そら⋯?」
「ふり、るり⋯?」
「えっ?えっ?これどういう状況!?」
『二人は相変わらず変わってるなぁ…。』
『ソラナと彼女が出会うと、やはり場は混沌で満たされるのですね。』
アイはまだいいけど…アルトリア、キミはダメだ。
次にそんなことを言ったら、極刑の一つ…三時のおやつを抜きにする刑を実行させてもらうよ。
覚悟しておいてね。
※※※
「で、なんで俺たちはフードコートでハンバーガーを食ってるんだ?」
「さぁ?僕らみたいな年頃の学生がその場のノリで決めたことは理解しようとしてできるようなものじゃないから、気にするだけ無駄だと思うよ。」
「なんか大人ぶってるけど、お前も年頃の学生だろ…。」
たしかに、アクアくんの言う通りだ。これは一本取られちゃったなぁ。
「まぁたしかに男二人で放課後にハンバーガー店に行くってのも、らしいっちゃらしいんだが……ハァ、なんだかなぁ。」
僕以外の人類が誰一人として気づいていないだけで、ここには美少女の幽霊が二人いるよ。
……まぁそのうちの片方はキミの実のお母さんだけど。
「それで…結局、話したいことってなにかな?僕としてはこのままハンバーガーを食べて帰ってもいいんだけど、アクアくんはそれじゃ良くないんでしょ?」
「まぁ…うん、そうだな。」
「じゃあ先に話を済ませちゃおう。」
「すぅー…。心して聞いてくれよ?」
なに?
そんなにヤバい感じのことなの?
フリルリ曰く今日あまの最終回に出てたらしいし、役者としての仕事とかの相談だと思ったんだけど…。
「なぁ空那……お前、美形と恋愛したくないか?」
「んー…アクアくん、怪しいマッチングアプリのサイトでも見たの?」
そんなことをつぶやいてしまった僕をどうか許してほしい。