姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
「本来なら即抹殺するとこやけど、大切な本を汚しとぉないし、なによりちと物入りでな――今すぐ争うつもりはあらへん。大人しくできるんやったら解放したる」
聖装すら出せない状況。素直に従うしかないと小さく頷いた。
「ふふふ。キミは話が分かる子やねぇ」
天照卿は本当に離れてくれ、ようやく僕は正面から向き合える。
――不意打ちは、しても意味ないだろうな。
狐は狡猾で計算高い。奇襲したところできっと躱される。
「まずは誉めたる。よう自力でここまで辿り着けたもんや」
「……それは、どうも」
「で、こなたの作った本はどやった? 一人で執筆から製本までしたんやで?」
彼女は床に落ちていた本を拾って、表紙の埃を払う。
「おもろかった? つまらんかった? 感想聞かしてほしいなぁ?」
まるで純粋な文学少女のように、自作品について意見を求めてくる。
たぶん、嘘や誤魔化しは通じないだろう。
「……陵辱拷問の記録。読んで気持ち良いものではない、です」
「うん。正直で良い答えやわ。こなたもそう思うよ」
「…………同意、するんですか? 自分で作っておいて?」
「こなたは陵辱も拷問も好かん。むしろ嫌い。ほんまはしとぉないからな」
てっきり超のつくサディストかと思ったが……。
「じゃあ、なんのために、こんなモノを作るんですか?」
「仲良くなれん子と、仲良くなるためにや」
そう即答されるが、いまいち理解できず首を傾げる。
「例えばやけど、カゲルヤくんが最初に手にとったこの本――」
そんな僕を見かねて、天照卿は具体例で説明する。
「それに記録されとる生徒は、こなたに常に反抗的な子やった」
どれだけ優しく接しても、自分を好いてくれなかったと告げる。
「挙げ句には、根も葉もない噂まで流してくれる始末でな」
「だったら、七聖の特権で、服従させればいい話で――」
「ふふ。こなたを心から好きになれって命じるん?」
そんなダサい真似したら、他の生徒にガッカリされると彼女は苦笑。
「――人と仲良ぉなる秘訣は『秘密』を共有すること」
天照卿は真理でも語るように告げる。
「その子はほんまに男が大っ嫌いみたいやったから、スメラギ家が抱える男奴隷たちに徹底陵辱させ――そして、その一部始終を記録として本にした」
軽く目を通した僕ですら、気が滅入る内容なのだ。
当事者の少女は、どれほど苦しく惨めな思いをしたのだろう。
しかもそれを本という、形あるものとして残されたら――
「……僕が彼女だったら、誰にも読まれたくないと思う」
まして劣等種とされる男に輪姦された記録だ。
生涯の『秘密』として墓場まで持って行きたい、と考えるだろう。
「ふふ。その通りやね。そしてこなたは優しくこう言う――『このことを知っているのはこなただけ』『絶対秘密にするから仲良ぉしよ』ってな」
天照卿がその本を所有している限り、被害者は一生彼女に逆らえない。
「すると反抗的態度が一転、こなたに心からの笑顔で従うようになる」
僕だって、生き残るために手段を選ばなかった人間だ。
その方法論を否定する資格はないが、やはり感情は別。
――悪趣味。卑怯卑劣。ドス黒い本性。
ここにある本の数だけ、犠牲となった人間がいるのだ。
「倉庫にあった卑猥な道具も、服従させるためにある、と」
「姫騎士は戦士。痛みは慣れとる。せやから快楽で責めるってわけや」
「快楽……そういう割に、部屋には血痕もありましたけど?」
「血? あぁ、ついこの間処女破ったった子のやつか。股から出血してすぐ気絶してな。
あれは即堕ちだった、と天照卿はほくそ笑む。
「相手に弱味を作り、それを握って懐柔する……むごいやり方だ」
秘密の共有? やってることは実質脅迫だ。
「……結局、天照卿の目的は? 何がしたいんです?」
「こなたはな、人気者になりたいんや」
天を仰ぐようにして、純粋な笑顔で告げる。
「もっと信者がほし。もっともっと皆に尊敬されたい。そして完璧な姫騎士として歴史に名を残す。百年後も千年後もカグヤ・スメラギは愛されたいんや――!」
強烈な承認欲求。それが彼女の原動力なのだ。
裏で暗躍して手に入れる愛、その先に何があるのかは知らないが……。
「それで、カグヤ先輩の秘密を僕に共有させて、何をさせようと?」
この人の腹は真っ黒。ただ仲良くなるだけはあり得ない。
「ほんなら単刀直入に――取引をせぇへん?」
そして彼女は流れるように提案をしてくる。
「一つ、こなたの秘密を口外しないこと。二つ、キミに特別なお仕事してほし」
「一つ目は分かりますけど、特別な仕事っていうのは?」
「とある目障りな姫騎士を、こなたの代わりに倒してほしいんよ」
目障りな姫騎士、それが誰なのかは後ほどとして。
「その取引に応じる見返りは?」
「お礼として、正々堂々と決闘したる」
「正々堂々と、決闘……?」
「思い出してみ。前回は決闘前に獄炎卿に百発殴られたやん。女王様のように難癖をつけてああいう嫌がらはしないてこと。キミも万全の状態で決闘したいやろ?」
彼女が手下を動かせば、僕なんて瞬く間に潰される、か。
「……魅力的な見返りですけど、それだけだと不十分かと」
先輩は僕に二つのお願いをした。
しかし返ってくるのは、正々堂々と勝負するという一点だけ。
「二つお願いを飲むなら、リターンも二つあるべきでは?」
「んー。そらそうか。なら一つ大サービスをつけたる」
カグヤ先輩が優雅に近づいてきて、僕の耳元で囁く。
「全部上手くいったら……こっちにも、良い思いさせたるさかい」
細い指先で、僕の股間をそっと撫でる。
先ほど潰そうとしてきたのが嘘のように、優しく扇情的な手つきでだ。
「キミは見所ありそうで気に入ってるさかい。特別にな」
「……脅迫の次は色仕掛け、ですか」
「ふふ。さすがに本番まではしてあげられんけどな。こなた処女やし」
処女と聞いて疑う僕に、彼女は男性経験は一切ないと語る。
「非処女より処女の方が人気が出やすい。歴史もそう証明しとる」
天照卿はニコリと笑って、僕の耳に吐息を掛ける。
「……男性との経験は何もあらへんけど、本をぎょうさん読んで知識はある。こなたに優しくここ弄られたら、きっと気持ちええやろなぁ…………さ、どないするぅ?」
取引を結ぶか、結ばないかと囁き問われる。
「……ちなみに断ったら?」
「そないなこと、キミなら訊かんでも分かるやろ?」
この場で殺されるわけ、か。
選択肢は一つだけ。逃げ道など最初からない。
「改めて誘うで。ここは潔くこなたと仲良ぉして――」
「仲良くはなりません」
ここまで賢しい女狐とは、友人にも恋人にもなれる気がしない。
あまり距離が近すぎると、いつか後ろから刺されそうだ。
「……ふぅん。またこなたを振るんか」
一瞬冷たい目で見られるが、彼女はすぐ元の笑顔に。
――親しくはしないが、ビジネスライクには考える。
――彼女の大サービスは余分だけど、正々堂々とは戦ってもらいたい。
決闘だけでも厳しいのに、盤外戦までやる余裕はないからな。
僕はしばし瞑目、それから渋々と右手を差し出した。
「おおきに。ひとまず取引は成立やね」
彼女は狐のように妖しく笑い、僕の手を握り返したのだった。