姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

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第40話:取引

「本来なら即抹殺するとこやけど、大切な本を汚しとぉないし、なによりちと物入りでな――今すぐ争うつもりはあらへん。大人しくできるんやったら解放したる」

 

 聖装すら出せない状況。素直に従うしかないと小さく頷いた。

 

「ふふふ。キミは話が分かる子やねぇ」

 

 天照卿は本当に離れてくれ、ようやく僕は正面から向き合える。

 ――不意打ちは、しても意味ないだろうな。

 狐は狡猾で計算高い。奇襲したところできっと躱される。

 

「まずは誉めたる。よう自力でここまで辿り着けたもんや」

「……それは、どうも」

「で、こなたの作った本はどやった? 一人で執筆から製本までしたんやで?」

 

 彼女は床に落ちていた本を拾って、表紙の埃を払う。

 

「おもろかった? つまらんかった? 感想聞かしてほしいなぁ?」

 

 まるで純粋な文学少女のように、自作品について意見を求めてくる。

 たぶん、嘘や誤魔化しは通じないだろう。

 

「……陵辱拷問の記録。読んで気持ち良いものではない、です」

「うん。正直で良い答えやわ。こなたもそう思うよ」

「…………同意、するんですか? 自分で作っておいて?」

「こなたは陵辱も拷問も好かん。むしろ嫌い。ほんまはしとぉないからな」

 

 てっきり超のつくサディストかと思ったが……。

 

「じゃあ、なんのために、こんなモノを作るんですか?」

「仲良くなれん子と、仲良くなるためにや」

 

 そう即答されるが、いまいち理解できず首を傾げる。

 

「例えばやけど、カゲルヤくんが最初に手にとったこの本――」

 

 そんな僕を見かねて、天照卿は具体例で説明する。

 

「それに記録されとる生徒は、こなたに常に反抗的な子やった」

 

 どれだけ優しく接しても、自分を好いてくれなかったと告げる。

 

「挙げ句には、根も葉もない噂まで流してくれる始末でな」

「だったら、七聖の特権で、服従させればいい話で――」

「ふふ。こなたを心から好きになれって命じるん?」

 

 そんなダサい真似したら、他の生徒にガッカリされると彼女は苦笑。

 

「――人と仲良ぉなる秘訣は『秘密』を共有すること」

 

 天照卿は真理でも語るように告げる。

 

「その子はほんまに男が大っ嫌いみたいやったから、スメラギ家が抱える男奴隷たちに徹底陵辱させ――そして、その一部始終を記録として本にした」

 

 軽く目を通した僕ですら、気が滅入る内容なのだ。

 当事者の少女は、どれほど苦しく惨めな思いをしたのだろう。

 しかもそれを本という、形あるものとして残されたら――

 

「……僕が彼女だったら、誰にも読まれたくないと思う」

 

 まして劣等種とされる男に輪姦された記録だ。

 生涯の『秘密』として墓場まで持って行きたい、と考えるだろう。

 

「ふふ。その通りやね。そしてこなたは優しくこう言う――『このことを知っているのはこなただけ』『絶対秘密にするから仲良ぉしよ』ってな」

 

 天照卿がその本を所有している限り、被害者は一生彼女に逆らえない。

 

「すると反抗的態度が一転、こなたに心からの笑顔で従うようになる」

 

 僕だって、生き残るために手段を選ばなかった人間だ。

 その方法論を否定する資格はないが、やはり感情は別。

 ――悪趣味。卑怯卑劣。ドス黒い本性。

 ここにある本の数だけ、犠牲となった人間がいるのだ。

 

「倉庫にあった卑猥な道具も、服従させるためにある、と」

「姫騎士は戦士。痛みは慣れとる。せやから快楽で責めるってわけや」

「快楽……そういう割に、部屋には血痕もありましたけど?」

「血? あぁ、ついこの間処女破ったった子のやつか。股から出血してすぐ気絶してな。凶器(ディルド)使っても折れん子は、奴隷たちに輪姦させるんやけど――」

 

 あれは即堕ちだった、と天照卿はほくそ笑む。

 

「相手に弱味を作り、それを握って懐柔する……むごいやり方だ」

 

 秘密の共有? やってることは実質脅迫だ。

 

「……結局、天照卿の目的は? 何がしたいんです?」

「こなたはな、人気者になりたいんや」

 

 天を仰ぐようにして、純粋な笑顔で告げる。

 

「もっと信者がほし。もっともっと皆に尊敬されたい。そして完璧な姫騎士として歴史に名を残す。百年後も千年後もカグヤ・スメラギは愛されたいんや――!」

 

 強烈な承認欲求。それが彼女の原動力なのだ。

 裏で暗躍して手に入れる愛、その先に何があるのかは知らないが……。

 

「それで、カグヤ先輩の秘密を僕に共有させて、何をさせようと?」

 

 この人の腹は真っ黒。ただ仲良くなるだけはあり得ない。

 

「ほんなら単刀直入に――取引をせぇへん?」

 

 そして彼女は流れるように提案をしてくる。

 

「一つ、こなたの秘密を口外しないこと。二つ、キミに特別なお仕事してほし」

「一つ目は分かりますけど、特別な仕事っていうのは?」

「とある目障りな姫騎士を、こなたの代わりに倒してほしいんよ」

 

 目障りな姫騎士、それが誰なのかは後ほどとして。

 

「その取引に応じる見返りは?」

「お礼として、正々堂々と決闘したる」

「正々堂々と、決闘……?」

「思い出してみ。前回は決闘前に獄炎卿に百発殴られたやん。女王様のように難癖をつけてああいう嫌がらはしないてこと。キミも万全の状態で決闘したいやろ?」

 

 彼女が手下を動かせば、僕なんて瞬く間に潰される、か。 

 

「……魅力的な見返りですけど、それだけだと不十分かと」

 

 先輩は僕に二つのお願いをした。

 しかし返ってくるのは、正々堂々と勝負するという一点だけ。

 

「二つお願いを飲むなら、リターンも二つあるべきでは?」

「んー。そらそうか。なら一つ大サービスをつけたる」

 

 カグヤ先輩が優雅に近づいてきて、僕の耳元で囁く。

 

「全部上手くいったら……こっちにも、良い思いさせたるさかい」

 

 細い指先で、僕の股間をそっと撫でる。

 先ほど潰そうとしてきたのが嘘のように、優しく扇情的な手つきでだ。

 

「キミは見所ありそうで気に入ってるさかい。特別にな」

「……脅迫の次は色仕掛け、ですか」

「ふふ。さすがに本番まではしてあげられんけどな。こなた処女やし」

 

 処女と聞いて疑う僕に、彼女は男性経験は一切ないと語る。

 

「非処女より処女の方が人気が出やすい。歴史もそう証明しとる」

 

 天照卿はニコリと笑って、僕の耳に吐息を掛ける。

 

「……男性との経験は何もあらへんけど、本をぎょうさん読んで知識はある。こなたに優しくここ弄られたら、きっと気持ちええやろなぁ…………さ、どないするぅ?」

 

 取引を結ぶか、結ばないかと囁き問われる。

 

「……ちなみに断ったら?」 

「そないなこと、キミなら訊かんでも分かるやろ?」

 

 この場で殺されるわけ、か。

 選択肢は一つだけ。逃げ道など最初からない。

 

「改めて誘うで。ここは潔くこなたと仲良ぉして――」

「仲良くはなりません」

 

 ここまで賢しい女狐とは、友人にも恋人にもなれる気がしない。

 あまり距離が近すぎると、いつか後ろから刺されそうだ。

 

「……ふぅん。またこなたを振るんか」

 

 一瞬冷たい目で見られるが、彼女はすぐ元の笑顔に。

 ――親しくはしないが、ビジネスライクには考える。

 ――彼女の大サービスは余分だけど、正々堂々とは戦ってもらいたい。

 決闘だけでも厳しいのに、盤外戦までやる余裕はないからな。

 僕はしばし瞑目、それから渋々と右手を差し出した。

 

「おおきに。ひとまず取引は成立やね」

 

 彼女は狐のように妖しく笑い、僕の手を握り返したのだった。

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