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「お邪魔しまーす」
一度家に戻り、親に事情の説明と着替えやらなんやらを詰め込んだリュックを背負い再びやってきたはやての家。
「あ、お帰りー!」
お、お帰り? 一度替えるときに渡された合鍵を使って家の中に入ると直ぐに車椅子の音と共にエプロン姿のはやてがお玉を手にリビングから現れる。
「……」
「どうしたん急に固まって? あ、さては私が美少女過ぎて見惚れてもたかな? んー、はやてちゃんてば罪な女やなー!」
「あながち間違いでもないかもな」
「ふへぇ?」
自信満々なはやての言葉を肯定しながら頭を撫で、はやての隣を通り抜けリビングに入る。
「な、なな、なななな!」
廊下ではやてが顔を赤くしてバグっているが気にしないしばらくしたら復帰するだろう。……にしても、エプロン姿でお帰りと言いながら寄ってくる美少女……。
「知らない間に結婚したのかと思った……」
危ない危ない。もう少し押されていたら戸籍謄本を確認しに市役所に走って行ってたかもしれない。今、俺の顔変になってないよな? いや、変になってても見られないようにすぐ脇を通り抜けてリビングに逃げてきたわけだけど。
「なな――! もうっ、九朗くん! お世辞でもあんまり女子にそんなこと言うもんとちゃうで! 九朗くん、カ、格好ええから、勘違いする子が出てくるで!」
「別に誰にでも言ってるわけじゃない。はやてに初めて言ったよ」
「ピェ」
復活したはやてがそれなりのスピードでリビングに入ってきて注意してきたのでそう言ってやったら変な声を上げてまた固まった。
「ってアカン、アカン……落ち着けぇ……」
あ、今度はさすがに復活が早い。
「はぁー、もうほんと九朗くんは女たらしやなぁ。そんな女たらしには罰としてお夕飯の準備を手伝ぉてもらいます! ほら、荷物置いたらこっちにきぃ!」
「別にたらしではないと思うんだが……」
騙してもてあそんでいるんじゃなくて、どれも本当に思った言葉だし。と、まぁそれは置いておいてさすがに二回も用意されるのを持つつもりじゃなかったので手伝いに関しては望むところだ。
ということで、俺とはやては並んでキッチンに立ち、夕飯の準備をするのだった。
「なかなかいい時間だな」
「そやねぇ」
夕飯の肉じゃがも美味しくてはやての料理の腕には感心してばかりだ。夕食のあとは昼間と同じようにしゃべったり、ゲームしたりして過ごした。はやてはよく笑い、よく喋る。まるで
「ぼちぼちお風呂に入ろうか。九朗くん先に入ってきてええで」
「んぇ? いや、家主より先に入るのは……。そんなに気を使わなくても」
「そっちこそ遠慮しんでええよ? 私はこんな足やし時間かかるから―――あ、それやったら私と一緒に入る? ――」
自分の足を軽くポンポンとたたきながらそう自嘲気味に笑うはやて。確かにはやての足を考えると危ないのか……。
「――なんちゃって、冗談やで――」
「ありだな。入るか」
「え、えぇ!? あ、ちょ、九朗くん!?」
よいしょっと、俺は着替えの入ったリュックを肩にかけてはやてをお姫様抱っこで持ち上げる。……ちょっとだけ魔法を使って身体能力を上げているのは内緒だ。
「俺のは全部リュックに入ってるからいいとしてはやてのパジャマとかを取りにいかないと。どこに連れていればいい?」
「く、九朗くん?」
「ん?」
俺は腕の中で目をぐるぐると回しながら縮こまるはやてを見る。
「ほ、本気なん?」
「(転んで怪我とかしたら危ないし)本気だけど」
「そ、そうかぁ……」
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アカンアカンアカンアカンアカンアカン―――! なんで、なんでこうなった!? 私は脱衣所の床に座らせられ九朗くんに服を脱がされていた。物ごっつ恥ずかしかってんけど、背中側は壁やし、九朗くんの膝が私の足の間に入ってて前にも逃げられへん。そもそも九朗くんに抱えられてここまで来たから車椅子がないし移動手段がないんやけど。九朗くんに抱えられたままの状態でタンスからパジャマや下着を取り出しただけでも恥ずかしかったのにこんなことになるやなんて……。うううぅ……なんであの時の私はあんな冗談を口にしたんや!?
九朗くんは私の冗談を本気にしぃ、ほんまに心配してくれとるみたいやから今更冗談とは言い辛くなっちゃったし……。
「脱がすぞー、ほらバンザイして」
「う、うん……」
私は内心大混乱しもっても九朗くんの言葉に従ぉて両手を上にあげる。するりと九朗くんの両手が私のシャツの内側に入り込んできてゆっくりとシャツと持ち上げていく。
「ぁぅ……」
「ん? なんだこれ? ってあぁ、これ下着か。なんだっけキャミって言うんだっけ?」
「じ、じろじろ見な! アホか!?」
シャツだけやと思たらキャミソールごと一気に捲り上げた! おかげで一気に上裸になってしもた。とっさに左腕で胸を隠し、右手でいつまでも人の肌着をじろじろと見てる九朗くんを叩く。
「ん、ごめん。ほら次は下も脱がすから立たせるね」
「た、立たせるって私の足は……」
「うん。だから俺の肩とか、洗面台の淵に捕まって体重かけちゃって良いよ」
「わ、わかったわ」
九朗くんが私を抱えて立ち上がらせる。ほんで九朗くんはし、下を脱がせるためにしゃがみこみ、私は彼の言葉の通り彼の肩に手を置いてリハビリの時に使う平行棒のように体重をかける。
「……」
「っ」
九朗くんの手がスカートのホックに伸びる。そんでパチリゆう音とも共にホックが外されてスカートが地面に落ちる。九郎くんはしゃがんでいて彼の頭の高さは丁度私の腰ぐらいだ。ほんで私が肩に手を置けるように彼の髪の毛がたまにお腹に当たってこしょばいぐらいに彼は私に近寄ってる。つまり……その、彼の視界にはドアップで私のショーツが広がってるわけで……。
あ、あああぁぁぁぁあ、アカンアカン! めっちゃ恥ずかしい! 顔が熱て、恥ずかして、死んでまいそうや!
「……脱がすよ?」
「うん」
あぁ! そこはもうキャミの時みたいに一気にいって! どうして改めて確認するんや! へ、返事したら変に意識してるみたいになるやん!?
「ひぅ……!」
九朗くんの手がショーツの端をつかみ、スルスルと下げていく。身にまとっとったもの全部が取り払われたのを素肌に当たる空気が自覚させる。私、出会うたばかりの、それも初めての男子の友達の前で裸になっとる……。おまけに彼の視界の高さは変わっていない。つまり今彼の目の前には私の―――。
「―――ッッッ」
ダメ! 意識したら絶対アカン! もう恥ずかしすぎて何がなんやら。私の意識がぐるぐるとしとる間に九朗くんは私を浴室に連れていき風呂場の椅子に座らせる。
「先に体やら頭洗っといて。……それもやってあげた方が良い?」
「ひ、一人でできるから大丈夫!」
そう返事をすると九朗くんは一度浴室を出ていく。浴室の扉越しにうっすら見えるシルエット的に彼も服を脱いどるみたい。って今の内に体、せめて前だけでも洗わんと!
「入るぞー」
「って早いわ!」
男子の着替えやらなんやらは早いとは聞いてたけどここまで早いんかい!
「って……」
「はやて?」
振り返った先にいた九朗くんの身体に私は声を失う。よぉは知らんけど町でたまに見かける恐らく同年代の男子に比べたら細い方やと思う。それでも確実に女子とは違う……男の子の、体。
「……あー、背中流そうか?」
えぇい! もうどうにでもなりぃや!
「お、お願いするわぁ……」
そうして私も九朗くんも頭と体を洗ぉて湯舟に浸かる。これまたどうしてこうなったかわからんけど、九朗くんの胸に私は背中を預けて、寄りかかるような姿勢で湯舟に浸かってる。
「なぁ」
「どうしたん?」
気恥ずかしさや背中に感じる九郎くんの身体の感触にドギマギして長い間黙っとったけど、唐突に九朗くんが口を開いた。
「その……先に謝っとく、ごめん。これから大分アレなことを聞く。答えたくなかったら答えなくていいし、出ていけというならすぐに出ていく」
「なんや? バスの中であんなにドストレートにものを言うてきた九郎くんとは思えへん配慮やな。一体何を聞かれてまうんやろ?」
「……お前、親いないのか?」
あー、その話題か。いや、そやんな。こんなにおっきな家やのにまったく人の住んでる気配がしぃひんし、……私にはわからへんけど多分"親が出てくる場面"ゆうものがあってそこで親が出てこぉへんかったから九朗くんは違和感を感じたんやて思う。
「そうやで。私はずっと前に親を亡くしてそれからずっと一人暮らし。一応、お金やら行政的な手続きとかはお父さんの親類の人が支援してくれてるんよ」
「成程ね……」
そう言うて九郎くんは黙りこむ。振り向いて彼の顔を見ると目を瞑っており、なんかを考え込んでるようやった。
「今日、俺を泊めさせたり、引き留めるようなことをしたのは寂しかったから?」
「……ッ。……なぁんや、やっぱりドストレートに聞いてくるやんけ。気ぃ遣えるならもう少しだけ遣ぉててほしかったな」
「悪いな、品切れた」
「入荷数少なすぎやろ。もっと多めに入れといてな」
「あぁ、検討しとく。で、答えは?」
話題も逸らされへん、か。
「……寂しかった……多分、そうやと思う。ううん、寂しかったわ。そやから少しでも一緒におったくて今日はこないして泊まりにさそったん。……迷惑やった?」
「いや、別に。この連休シーズン特にやることなくて暇だったし。あ、はやてはいつでも連休か?」
「そんなわけへんやろ! アホか!」
なんやいきなり! まるで人をニートみたいに! 一人暮らしだってねぇ! 掃除に洗濯、料理とやること多いんやから! しかも私の場合通院もせなあかんし、エライんやから! 九朗くんのあんまりな物言いに思わず突っ込みを入れてまう。
「ふふっ。やっぱりはやては落ち込んでる顔よりそうやって元気な顔の方が似合ってるぞ」
「ぅえ! あ、ありがとうな……」
振り返ってツッコミを入れると九朗くんが私の頬に手を添えて笑う。目ぇ少し細めて微笑んどる。その頬はお湯の影響で上気したいて濡れた髪が張り付いてる。なんか、 私なんかよりめっちゃ色っぽくない?
「ただ、出会ったばかりの男とこうしてお風呂まで入っちゃうのはダメだと思う。はやては美人なんだし、もう少し危機感持った方が良いと思う」
「お、お風呂は冗談のつもりやってん! それに誰でもこうしたわけとちゃうから!」
「そう?」
「そうや!」
誰でもええわけがないで。あの時助けてくれた九朗くんやから私はさそたんや。誰もかれもが助けてくれず立ち去っていくばかりで、次第に助けを求めること自体が怖なってしもたとき、
『おい』
『へ?』
『タイヤ、持ち上げるから荷物押さえとけ』
『う、うん!』
九朗くんが現れた。誰も私のことを見えへんふりをしとるような中で、彼の水色の瞳がこちらを見とった。
「九朗くんだからやで?」
「俺だから?」
もう一度彼の瞳を見る。
「そうやで。……ホンマ、ありがとうな。九朗くん」
瞳の中に映るウチの顔は確かに似合ぉてる綺麗な笑みを浮かべとった。
その日は九朗くんといっしょにベッドに入り手をつないで眠ってもろた。二人分の熱のこもったベッドがむっちゃ幸せで、私は笑顔で眠りにつくのやった。
なんでこんなにはやてちゃんをピックしてるかって? この作品、初期設定だとはやてちゃん単独ヒロインものだったからです!
・エプロン、お玉装備の新妻スタイルはやてちゃんにバグり散らかす九朗くん。人間性が薄かったらこんな反応はしなかった。
・脱衣プレイとか業が深すぎませんかね、はやてちゃん。
・そしてまた女子の裸を見る九郎くん。こいつ裸見てばっかりだな……。
・多分ギリギリセーフな描写だと思う。怒られたらこの話は消える。
・これ以降九朗くんはたまにはやてちゃんの家に遊びに行くようになる。
・カットしたけどお風呂あがったらタオルで体中を拭かれてまたドギマギするはやてちゃんがいたよ。
・一番恐ろしいのは初期プロットだとなぜかR18シーンへ、って書かれてるとこだよな。初期構想は2年ぐらい前なんだけど当時の俺は二人にお風呂場で一体ナニをさせようとしていたんだ……。