────────────────────────
「いい加減にしなさいよッ!」
はやての家に泊まりに行ってから数日後。連休シーズンも終わって再び学校が始まっていた。そんな平日の昼休み。さっさと食事をとってボールを手にグラウンドへ駆け出す者、読書を始める者、仲良く集まって弁当を広げる者など、それぞれが思い思いに過ごし始めようとしている教室にアリサの大きな声が響き渡る。楽し気な空気は消えうせ、ピタリと固まる。
「この間っからなに話しても上の空でボーッとして……!」
「ご、ごめんねアリサちゃん……」
怒るアリサに謝るなのは。んー、原因としては魔法、というよりフェイトのことが原因か。なんでも俺が行かなかった旅行先でジュエルシードが発動し、フェイトたちと戦闘になったらしい。……惜しいことをした。
ユーノの援護があるとはいえフェイト、アルフの二人を今のなのはが相手しきれるはずもなく再びジュエルシードを奪われることになった。
「ごめんじゃない! あたし達と話してんのがそんなに退屈なら一人でいくらでもボーッとしてなさいよ! 行くよすずか! 九朗!」
「アリサちゃん……!」
「あ、俺も?」
「ったり前でしょ!」
やれやれ、ご指名されたら仕方がないか。俺はゆっくりと席を立ちあがる。その時何人かの男友達から『お前も大変だな』という視線が向けられたので苦笑いで答えておく。
そして幸運を祈るようにサムズアップしてくれた奴には軽く手を上げて、なぜか成仏を願うように手を合わせた奴には中指を立てておく。
「なのはちゃん……」
「良いよ、すずかちゃん。……今のは、なのはが悪かったから」
「そんなことないと思うけど……。とりあえずアリサちゃんも言い過ぎだよ。少し話してくるね」
「うん、ごめんね」
「アリサちゃん、まって……!」
すずかはそういってアリサを追って教室を出ていく。
「なのは」
「くー君……」
俺はそのあとなのはの席の前を通り過ぎ、軽くなのはの頭をポンポンと撫でて教室を出ていく。
「(どうせ、魔法やフェイトのことを考えてたんだろ? うまくフォローしておく)」
「(うん、ごめんね、くー君)」
「(そこは謝罪じゃなくてお礼だな)」
「(……ありがとう、くー君)」
「(おう)
一見無言だが、念話でやり取りをしておく。教室を出れば、既にアリサの姿は見えない。……やらかしたか? と思えば廊下に居た何人かが『あっち』とばかりに俺のほうを向いてアリサたちが向かった先であろう方向を指さしで示している。
そちらに歩いていけば普段利用者の少ない階段があり、その踊り場にアリサとすずかがいた。
「アリサちゃん、なんで怒ってるのかなんとなくわかるけど……だめだよ、あんまり怒っちゃ……」
「小じわが増えるぞ」
「九朗、うるさい! だってムカつくじゃない! 迷ってるの……困ってるの……見え見えよ! なのに何度聞いてもあたし達にはなんにも答えてくれない! ずっと隠したまま!」
アリサは手をギュっと握りしめて怒りを露にする。怒っているのは何も話さないなのはに対してか……それとも何もしてやれない自分自身に対してか……。
「少しは……役に立ってあげたいのに……。どんなことだって良いんだから……。なんにもできないかも知れないけど、少なくとも一緒に悩んであげられるじゃない……」
ほんっと、アリサといいすずかと言い、勿論なのはもだが俺の周りには素晴らしい女性が多すぎる。
「そうやって相手を思って怒れるの、アリサの素敵なところだと思う。けど、ほら少し力入れすぎ。せっかく綺麗な肌なのに跡が残るぞ」
「ぁ、ありがとう……」
アリサの手をとって握りしめられた手をゆっくり解いていく。……爪のあとが若干赤く残ってる。揉んだら消えるかな……。
「やっぱりアリサちゃんもなのはちゃんのこと好きなんだね」
「そんなのあったりまえじゃない!」
すずかの言葉に力強く返答するアリサ。
「まぁ、なのはの悩みに関してはどうしようもない、なのは本人がどうにかするしかない事柄だからな」
「……なによ、九朗。あんたはなのはの悩みについて知ってるわけ?」
俺がそういえばアリサはジトッとした目でこちらを見ながらアリサの手を揉んでいた俺の手を逆にギュっと掴んできた。その手は逃がさん、と言っているようにギリギリと力が込められている。
「知ってるちゃ、知ってる」
「なぁんで私たちには教えられなくて、九朗には教えてるわけ!?」
「俺も教えられたわけじゃなくてたまたま原因を知ってるっていった方が近いんだけどな」
アリサがものすごい勢いで詰めてくる。うわ、目も髪も綺麗でなんかいい匂いする。
「九郎君はなのはちゃんが何を悩んでるか教えてくれない?」
「っとと、そうだな。やっぱり教えられない」
俺とアリサの顔の間に自身の手を入れて遮り、俺とアリサを引き離しながら間に入ってきたすずか。すずかは少し首をかしげながら俺にそう聞いてくるがやはり俺の返答は変わらない。
「なんで!」
「さっきも言った。あれはどうやってもなのはが自分で悩んで、決断して、解決するしかないことだからだ。アリサやすずかにもそういう事あっただろ?」
「……」
俺の言葉にアリサもすすがも思い当たる節があるのか追及が止まった。
勿論俺もなのはの気持ちは分かる。フェイトという相手の出現に、一行に勝てないことへの焦り。……よくわかる。アリーナで勝てない相手が出てきた時とまったく同じだ。
こうなると基本的にアセンを変えるか、自身の腕前で乗り切るしかない。けど正直今のなのはの腕じゃフェイトには勝てない。それに、ジュエルシードも放置はできないから時間をかけて修行する、なんてことも無理だ。となるとアセンパワーでごり押しするしかないんだが……まぁ、プレイし始めてすぐの初心者って感じで使える
アセンも組めず、腕前もない。そうなると重要なのは……知識と戦術か? 今できることへの理解を深めて、より効率的に効果的に運用できるようにさせるのと、地形を活かした戦いかたを教え込むって感じかな。
今度なのは相手に模擬戦でもするか。……正直ちょっとなのはとも戦ってみたいし。
「全部終わったら説明するようになのはには言っておく。だから、少し待っていてやってほしい。お願い」
「……アリサちゃん」
「……はあー、分かったわよ。九郎もすずかもそんな目でこっちを見ないでよ、私が悪いみたいじゃない」
アリサはため息を一つついた後にそう言い、怒りを収めてくれた。
「ありがとうアリサ」
「別に、お礼言われるようなことじゃないわよ。……あといつまで手、握ってるのよ!」
「離した方が良いか?」
「……もうちょっとだけ握ってなさい」
「ん」
アリサの言う通りに手をしっかりと握る。――ん?
「すずか?」
「私の手も握ってほしいんだけど……お願いしていい、九朗君?」
「あぁ」
反対の手で差し出されたすずかの手を握る。
────────────────────────
「(とまぁ、ある程度落ち着かせられたから、ジュエルシード関連が一段落したらアリサたちにちゃんと説明しろよな)」
「(くー君……)」
「(ん?)」
時間は過ぎて放課後。なのはの晩御飯の時間までユーノが日中の間に凡その位置まで絞り込んだ箇所でジュエルシードを探していた。三人で手分けして捜索しながら念話で学校でのやり取りをなのはに説明した。
「(アリサちゃんたちとのこと本当にありがとう。色々落ち着いたら魔法のことはぼかして色々説明するね)」
「(それがいい)」
「(けど……)」
「(けど?)」
「(最後の手繋ぎの情報、いるかなぁ?)」
「(ヒゥッ)」
おぉー、念話越しでもわかるくらいになのはの声のトーンが下がった。おいおい、そんなピリピリするなよ、ユーノもビビり散らかしてるじゃないか。
「(なんだ、なのはもしてほしいのか?)」
「(え! そ、それは……最近一緒に学校行けてないし、し、してほしいかも……)」
そういえば最近はなのはの魔法の朝練とかもあってバスの時間ズレてたまにしか手を繋げてないかも。ふふ、気にしてたんだ。相変わらずかわいいやつ。
「(……そういえばそろそろ時間か?)」
そう思いながら携帯に表示された時間を見てそうなのはに聞く。
「(え? ……確かにそろそろ帰らないとかも……。この辺りだと思うんだけど……)」
「(う、うん……反応は確かにこの辺りだ。……九朗となのはは家に戻っててよ。僕はもう少し探してくるから)」
なのはも俺の言葉に時間を確認したのか少ししてから返事が返ってくる。するとしユーノが先に俺たちだけを返そうと提案してくる。……ふむ、なら丁度いい。
「(ユーノくん、一人で大丈夫?)」
「(うん)」
「(もし暴走してたら無茶せずにすぐに呼べよ? すぐに駆け付けるから)」
「(分かった、その時はお願いするよ九朗)」
ユーノに無茶しないように言い聞かせる。これで無茶して倒れられたらまた大変なことになるからな。
「(それじゃあ、なのは。どこかで合流しよう。家まで一緒に帰ろう)」
「(うん!)」
今日はいろいろあったし、手を繋いで話を聞いてやって、ゆっくり帰ろう。もしかしたら夕飯には少し遅れてしまうかもしれないけど、まぁいい。
「なのはの笑顔の方が大じ―――これはッ!?」
突如として空が雲に覆われて雷光が走る。
「天気予報にはこんなのなかった……。それにこの感じ! (おい、ユーノ! なのは!)」
「(あぁ、間違いないジュエルシードだ! まさかこんな街中で強制発動させるなんて!)」
「(強制発動って誰かがジュエルシードを無理やり発動させたの!?)」
もう体がしっかりと覚えてしまった悪寒を頼りにジュエルシードがあるであろう場所に向かって走り出す。走りながら飛ばした念話でユーノとなのはも驚いている。
ハッ、強制発動ね。字面からの推測で具体的にどうやったかは分からないけど……そんなことまでしてジュエルシードを狙ってるのなんて俺たち以外にはあいつらしかいない!
「(フェイト達だな)」
「(……ッ!)」
「(なのは、九朗! 広域結界を使う! 彼女たちより先に封印を! おそらく、争奪戦になる!)」
「(うん!)」
「(りょーかい!)」
さて、アルフとは前回戦ったし、フェイトと遊びたいんだがなのはも恐らくフェイトに用があるだろうしなぁ……。んー、ま、隙をさらした奴から落としていく単純な2対2ってことにしておくか。
「退屈させてくれるなよ……。メインシステム戦闘モード起動」
帰りは遅刻確定だな。
・描写することはないと思いますが九朗くんは普通に男子のクラスメイトとも話すことがあり普通に交友関係は広めです。
・九朗くんに手を合わせた子は男子の中で一番九朗くんと仲のいい男子です。
・アリサ、すずか、なのは、という美少女に囲まれている九朗くん、本人のビジュも良いため学校内でもかなりの有名人だったりする。
・さりげなくアリサと九朗くんの間に入り込み、九朗くんに密着するすずか。策士である。
・人気の少ない階段で美少女二人の間に座り二人の手を握って昼休みを過ごした九朗くん。
・ジェラったなのはさん。
・なのはさんの訓練メニューに『模擬戦・VS九朗』が追加されました。
訓練メニュー
→ユーノの魔導指導。(初期開放済み)
難易度低、成功率80%、上昇能力値+0~+5
→レイジングハートの戦闘指導。(初期開放済み)
難易度中、成功率70%、上昇能力値+6~+10
→模擬戦VS九朗。(条件開放)
難易度高、成功率60%、上昇能力値+11~+15
→実戦VSフェイト。(中盤開放)
難易度激高、成功率45%、上昇能力値+16~+25
→実戦VS九朗。(初期開放済み)
難易度測定不能、成功率0.5%、上昇能力値+40~+50