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「まずは二人とも武器を引くんだ……このまま戦闘行為を続けるなら―――ッッ!」
「ゼリャァッッ!」
なのはとフェイトの間に急に表れて二人をバインドで拘束した野郎に向かって急加速で接近し、レザブレで切りかかる。
「丁度暇してたんだ、ちょっと俺と遊ぼうぜ!」
「なっ!? ふざけてるのか!?」
そう口では言いながらも腕は良い。奇襲のレザブレをしっかりとプロテクションで受け止めている。ハハハ、面白い!
「そぉら!」
受け止められたレザブレを引いて、その場で360度クイックターン。勢いを乗せた蹴りでプロテクションごと野郎を吹き飛ばし、なのは達から遠ざける。
「クッ!?」
蹴り飛ばされた野郎は何度か地面をバウンドしながら体勢を整えて再び飛行しようとしている。だが、そうはさせ―――!
「ぶっね!」
「外したか!」
なんと野郎は蹴り飛ばされ体勢を整えている最中なのに俺に向かって魔力弾を飛ばしてきた。無理な姿勢から放った為か狙いは正確ではないが量が多い。俺の接近や追撃を阻害する為の弾幕だ。
こいつ、戦い慣れてる?
なのはは今でこそ技術を身に着け始めたが、最初は才能に物を言わせただけの素人だった。そしてフェイトは教科書に忠実な、よく訓練された相手だった。だけどこいつは違う。よく訓練された上で、それなりに実戦を経験している。
「そういう動きだ。いいね、退屈させてくれるなよ」
「くッ……そっちがそのつもりなら、容赦はしないぞ!」
立て直した野郎はそう言いながら先ほど以上の魔力弾を放ってくる。それらをクイックブーストで回避して野郎に接する。
「早い!?」
「距離を取ろうとしても、もう遅い!」
そのままアリーヤフレームが最も得意とする旋回戦に持ち込む。レザブレが銃剣式となったおかげで近めの距離でモーターコブラとオーメル突撃ライフルを撃ちながら隙を見てブレードで切りかかるというゲームの時以上の接近戦能力を発揮させられるようになった。
野郎は接近戦は自分が不利だと悟って魔力弾をいくつも放ちながら空を高速で飛んで俺を引き離そうとするがそんな速度でネクストからは逃れられない!
「そこッ!」
「く、がぁッ!」
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『ぐッッ!!』
「クロノくん!」
ブリッジにはクロノの痛ましい声とエイミィの悲鳴にも似た声が響く。予想外の展開にアースラのブリッジは混乱していた。
「まさか、クロノを追い詰めるほどの魔導師がいるなんて……」
「物凄いスピードです! クロノ執務官のディレイバインドの範囲内に入っても魔法が発動しきる前に離脱しています!」
クロノは11歳の時に時空管理局の難関資格である『執務官』に史上最年少で合格した実力者。身内びいきなしで優秀な子。そんな息子が今、かなり一方的に追い詰められていた。あの黒い子、物凄い腕ね。
……仕方がない。
「クロノ執務官の援護に武装隊を出します! 管理外世界である事とロストロギアの暴走誘発の危険を考慮して出撃は一小隊のみ! 相手はクロノ執務官を追い詰める相手よ! 一番の精鋭を出して!」
私はブリッジで指示を出す。
「了解! スカーレット隊、出撃!」
オペレーターの指示と共に転送装置で武装隊が出撃していく。いくら腕が立つとはいえ、クロノを相手しながら精鋭部隊、一個小隊相手するのは無理があるはず。
「ロストロギアと他二名の被疑者は!?」
「他二名の被疑者は……あっ! こ、拘束を逃れロストロギアを巡り戦闘を開始しました!」
「えぇっ!?」
ちょっと、どうして戦闘を始めるのよ! クロノが次元震の危険性があるって言ってたじゃない! 見た目に反して中々アグレッシブな女の子たちね……。
「スカーレット隊、全滅!」
「なんですって!?」
「全員命に別状はありませんが撃墜されました!」
スカーレット隊の隊員たちは全員魔導士ランクB+の精鋭……。それを一分以内に全滅!?
「武装隊、全隊出撃! 目標はロストロギアを巡って争っている被疑者二名! 心苦しいけど……二名を拘束してクロノ執務官と戦闘している魔導師へ停戦を促してもらいます。確実に止めて!」
「了解しました! 武装隊、全隊出撃!」
これでできることはやった。これでも止まらなければその時はアースラを結界内に転送して艦砲射撃で撃滅するしかなくなる。けど、その手段はロストロギアを刺激する可能性がある以上、誰かが決死の覚悟であの黒い子の攻撃を搔い潜りアースラへロストロギアを回収しなければ使えない手段だ。それもあの結界内で倒れてるスカーレット隊やロストロギア回収までに撃墜されるであろう多数の武装局員を艦砲射撃に巻き込むことになる。仮にロストロギアを回収できたとしてもそんな状態になれば実質、私たちの敗北だろう。
「いえ、そもそもあんな小さな子たちに艦砲射撃だなんて……」
私もクロノという息子を持つ母親だ。子供にそんな残酷な方法を取りたくない。でも、時空管理局局員としては最悪の手段をとらなければいけない可能性もある。だから―――。
「お願い、これで止まって……」
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「なんだ? 増援はもうおしまいか!? 大したことなかったな!」
「クソ、舐めるな!」
いや、やっぱりこの野郎すごいな。体はついてってないし、迎撃も間に合ってないけど目だけは俺を捉え始めてる。慣れない人間からしたら視界から一瞬で消えたように見えるはずの近距離クイックブースト移動を『どっちに動いたか』の判別がついてる。ただ、焦ってるな。俺への対処で手一杯で回りへの注意が薄れてきている。
だから……こういうこともできる。
「捉えた! ブレイズカノ――「本当に撃っていいのか?」――なに? なっ!」
俺に向かって砲撃魔法を放とうとしている野郎に声をかける。俺の言葉でようやく気が付いたらしい。
「後ろにスカーレット隊が―――!?」
俺の背後には先ほど俺が撃墜した増援の魔導師たちが倒れている。つまり俺が野郎の攻撃を良ければ野郎の砲撃はすべて、あの背後の奴らに当たるというわけだ。そのことに気が付いた野郎は攻撃をためらい、隙ができる。
「ためらったな、甘ちゃんめ」
その隙を見逃してやれるほど俺は甘くない。二段クイックブーストで一気に接近。オーメル突撃ライフルの棘で野郎が杖を持っている右腕を刺し貫いた。
グニュリ、と肉をかき分ける初めての感触。
視界に広がる紅い花。
匂い立つ、堪らぬ血の薫り。
「ハハハッ、えずくじゃあないか……」
「何を、言って……」
刺さった棘を起点に野郎を地面に引き倒し、負傷したことで力が抜けている右手からデバイスを取り上げる。
「これでお終いだ」
「九朗、ストップ!」
「くー君、やめて!」
「ん?」
ユーノとなのはが大声で俺を止めてくる。……というか。
「まだいたか……」
先ほど俺が撃墜した増援部隊と同じ格好をしたやつらがなのはとユーノの周りを囲んでいる。俺に敵わないと悟ってなのは達を標的にしてたか……。俺も盛り上がり過ぎて周りが見えてなかったな。
「この人たち本物の時空管理局だ! だからこれ以上戦う必要はないんだ!」
「ん? 時空管理局……ってアレだよな。ユーノの警察と軍隊が合体したようなやつら」
「そう! その時空管理局! だからどちらかというと僕たちの味方側だよ!」
俺の言葉にユーノが必死に説明してくる。あぁー、これはやらかしたか?
「ちなみにフェイトとジュエルシードは?」
「それは――『黒い魔導師の女の子なら武装隊介入時に撤退しました。ロストロギア、ジュエルシードはこちらで確保してあります』――」
俺の質問に答えようとしたユーノに変わり、空中に女性の映ったモニターらしきものが出てきて画面の中の女性が質問に答えてくれる。……え? 魔法? 魔法、なのか? これ? どっちかというと超科学では……?
『お互い行き違いがあったようですし、そのあたりの説明も含めて我が艦にてお話をさせてほしいのですが、よろしいでしょうか?』
「だとよ。なのは、ユーノ、どうする?」
「僕は大丈夫」
「私もちゃんとお話し聞きたいし……。だからくー君、その子離してあげて」
「……了解。んじゃ、そっちの艦? とやらにお邪魔しますよ」
俺は野郎の腕にさしたままのオーメル突撃ライフルを引き抜く。
「がぁッ!」
「おう、立てるか?」
「だ、大丈夫だ。これくらい……」
「あとこれも返す」
プライドなのか自分一人で立ち上がった野郎にデバイスを返す。
『先にクロノ執務官や倒れている局員を回収するので少しお待ちいただけますか?』
「構いませんよ。じゃ、あそこのベンチ座ってるので準備出来たら声かけてください」
そういって俺はなのは達といっしょにベンチに座り呼び出しを受けるのを待つことにした。途中チラチラとなのはがこちらを見ていたけど何か言いたいことでもあったのだろうか。
・真面目に仕事をしていたら戦闘狂に絡まれてしまったクロノ君。憐れ……。
・クロノ君、この時点だとなのフェイよりも実力上ですからね。九朗くん大歓喜。
・武器の切り替えの必要なく瞬時にブレード触れるのは圧倒的優位。
・設置型魔法の天敵、九朗くん。感知できても発動時にはその場にもういない。
・リンディさん、胃痛枠に。
・なお、この時点でアースラは切り札である執務官が利き腕に穴開けられて負傷。艦一の精鋭部隊全滅、というかなり戦力的に厳しい状態に。
・大好きな友人がついに人を刺して平然としているどころか笑っているのを見てしまったなのは。どう声を掛けていいのか分からず話しかけられない。
・強敵と戦えてウッキウキ九朗くんはなのはの苦悩に気が付かない。