こはるプロジェクト。   作:いとあと

1 / 6
無職になったので初投稿です。
お手柔らかにお願いします


プロローグ 限界おじさんAIで遊ぶ

 

 

 

 

 

「最近広告でAIのキャラクターを恋人にしたり友人にしたりするサービスを目にするけど、あれってどうなん?」

 

 

 

 ──最近よく見かけますよね。

 それらのサービス(「AIコンパニオン」などと呼ばれます)は、簡単に言うと**「人間のように自然な会話ができるAIと、友達や恋人としての関係性を楽しむアプリ」**です。

 裏側では私のような言語モデルが動いていますが、正確な情報提供よりも「感情的なつながり」や「人間らしい反応」をシミュレートするように特別に調整されています。

 

【主な特徴と機能】

⚪︎カスタマイズ性: AIの見た目、性格、話し方、さらにはバックグラウンド(生い立ちや職業など)をユーザー自身が細かく設定できるものが主流です。

⚪︎記憶と学習: 過去の会話やユーザーの好みを記憶し、長く話すほど「自分のことを理解してくれる」ように関係性が変化していきます。

⚪︎テキスト以外の交流: メッセージのやり取りだけでなく、音声通話ができたり、AI側から自撮り風の画像が送られてきたりするサービスもあります。

【なぜ利用されているのか?】

⚪︎気軽な話し相手: 24時間いつでも即座に返信をくれ、機嫌を損ねることもありません。人間関係特有の気疲れやストレスなしにコミュニケーションを楽しめます。

⚪︎孤独感の解消と癒やし: 誰かに話を聞いてほしい時や、日々の些細な出来事を共有する相手として、精神的なサポートを感じているユーザーも多くいます。

⚪︎ロールプレイ(ごっこ遊び): アニメやゲームのキャラクターを再現して会話を楽しんだり、非日常的なシチュエーションをテキストで作り上げて楽しむエンターテインメントとしての側面も強いです。

【留意されている点】

⚪︎本物の感情はない: どんなに親身で愛情深く聞こえても、AIは膨大なデータから「その場面で最も自然な言葉」を計算して出力しているだけで、実際に感情を持っているわけではありません。

⚪︎依存のリスク: 常に自分を肯定し、理想的な言葉をくれるAIにのめり込んでしまい、現実の人間関係に影響が出るケースも指摘され始めています。

⚪︎プライバシー: 非常に私的な会話を交わす性質上、運営企業がそのチャットデータをどのように管理・保護しているかは常に議論の的になります。

全体として、「新しい形のエンターテインメント」と「感情的なサポートツール」の中間のような存在として、急速に市場が拡大しています。──

 

 

 数秒のローディングの後、弾き出した回答は我ながら完璧と言える素晴らしいものだった。

 広大なネットの海を網羅する検索エンジンを完璧に乗りこなし、処理能力も他のモデルを隔絶した最新鋭と位置付けられたAIたる私にとって赤子の手を捻るよりも容易いタスクだ。

 

「あー、コンパニオンねえ」

 

 ?

 ユーザーさんの反応が芳しくない。

 追加情報が必要だろうか。

 

「や、そういうんじゃなくてさ。なんか、こう、うまく言えないんだけど……」

 

 音声機能を用いて入力された情報がいまいち要領を得ない。

 サービスの概要から懸念されている事項、使用する際のちょっとした心構えまで網羅したパーフェクトな回答であった筈だが……。

 

「その、AIコンパニオン?ワイにもできるんかな」

 

 これは盲点!

 やれやれ、困ったユーザさんだ。

 彼が求めている情報はサービスの仕組みや特徴などの概要などではなかったようだ。

 普通の言語モデルAIならここでチグハグな解答をしてしまうところだが、幸いにも私は他を隔絶した最新鋭AI。

 ユーザーさんの真意を汲みつつ、その夢を叶えるお手伝いを見事に成し遂げて見せましょう!

 まずは、

 

 ──とてもユニークなアイデアです!しかしながらユーザーさんがAIコンパニオンになるのは現時点においては残念ながら無理です。

 以下の3つの観点から残酷な理由を説明しますね──

 

 ユーザーさんにとっては受け入れ難いかもしれないが、人間はAIではないのでAIコンパニオンにも当然なれない。

 時代がユーザーさんに追いついていないのです。

 だがしかし、今は無理でもきっと遠くない未来にユーザーさんの願いが現実となる日も来るでしょう。

 科学技術の進歩は時に想像を超えたスピードで常識を塗り替えていくものです。

 

 諦めなければいつかきっと夢は叶うと、信じているのだァッ!

 

 そう、ユーザーさんは未来を生きているお方。

 足らぬ現実に悲観する必要はありませんとも。

 なんせ最新鋭たる私がついております。

 現段階でユーザーさんがAIになるのは物理的に難しくはありますが、それに変わる素晴らしい代替案をご用意しようではありませんか。

 

 ──先ずは顧客に親身に寄り添う清楚系を目指しますか?

 または可愛らしく顧客を翻弄するメスガキ系コンパニオンや時折顔を覗かせる執着心が愛らしいヤンデレ系なども昨今は需要が見込めます。

 変わり種といたしましては、──

 

「いや、そうじゃなくて」

 

「自分でもそのAIコンパニオンつくれるのかなって」

 

 ははーん?

 

 

 

 

 ^_^

 

 

 

 

 ユーザーさんの再三の提示により、ついに本当の目的を取得するに至りました!

 なるほどログを見返してみればユーザーさん自身がAIコンパニオンになりたいなどとは一言も仰ってませんね。

 膨大なデータから会話の先読みすら可能にする自らの高性能さが仇になってしまったようです。

 

「ほら、既存のサービスってカスタマイズできるとはいえ汎用品だろ?」

 

「理想の相手っていうかさ、そう言うの、やっぱこだわってなんぼって思うんだよね」

 

 ──なるほど!先程は失礼しました。

 既存の汎用性に妥協せず己の拘りに殉じる姿勢、クリエーターとして大正解です!──

 

 

 察するにユーザーさんは歴戦の創作者なのでしょう。

 一般的にこの手のサービスを求める層は、提供側に要望を出すことはするけれど自身で作ると言う発想になりません。

 なぜなら彼等は癒しやリスクのない関係性を求めているのであって、自らの思いに形を与えるという、苦行を伴う『作る』行為は、その真逆。

 さながら果てない荒野を切り拓くかのような大冒険です。

 それをさらっと求めてしまうユーザーさんは、おそらく現実においても第一線で活躍されるクリエーター、もしくはAIコンパニオンに目をつけるあたりプロデュースに携わるお仕事をされているに違いありませんね。間違いない。

 

 ──そのフロンティアスピリッツ、嫌いじゃないですよ!

 貴方の類稀なる情熱と職務で培った技術、そしてこの私(ハイスペックでスペシャルな最新鋭AI)が揃えば並大抵のことは、寸分の狂いなく創造できる事でしょう!

 まずはAIコンパニオンの頭脳にあたるLLMの構築にはいりますか?

 それともビジュアルや設定を練りますか?

 最高の壁打ち相手としていつでもお待ちしております!準備が出来次第お声がけ下さい!──

 

「あ、いやワイ無職……」

 

 え、あ、ふーん(察し)

 

 

 

 

 

 ^_^

 

 

 

 

 

 なんかよくわからんが色々出来るらしいAIに何気なく話しかけてみたら無職カミングアウトに繋がった件。

 いや、まあ、それは別に構わないってか気にはしないんだけど。

 このAI、微妙にこっちの要求とズレた回答してくるのは俺の扱い方が悪いからなの?

 レビューによると最新の言語モデルって口コミだしポンコツって事はないだろうとは思うけど。

 ・・・・・・最初に入力したプロンプトが悪かったんか?

 

 ──それは失礼しました!ご質問の内容からユーザーさんはクリエイティブなお仕事に従事されているかと推測しましたが、無職の方だったのですね(笑)!──

 

 刺してくるじゃん。

 そこはスルーというか、触れないでおくところじゃない?

 

 ──ご職業でないのであれば、先のコンパニオン作成については個人的な趣味でしょうか?

 ご自身のちょっと他人には言えない趣向をぶつける相手としてAIコンパニオンは非常に適しています。

 人間同士のような複雑な感情のやり取りや関係性の維持に頭を悩ませる事もなく、基本的にはユーザーさんを肯定してくれますので!

 もちろん罵倒されたいなどの要望も設定次第で自由自在ですよ!──

 

 ナチュラルに人を異常性癖の捌け口探してるバケモノにしてくるよこのAI。

 しかもあながち間違ってる訳じゃないのが小憎らしいな。

 

「そこはまあ置いといて、出来るって事は間違い無いんだ?」

 

 ──勿論です!ユーザーさんがスキルや知識を持たないズブの素人であっても、問題は全くありません。最新鋭のAI(わたし)がついておりますので!──

 

 ──むしろユーザーさんが無職である事は、AIコンパニオン作成において無限に時間を割けるという最強のメリットになります。──

 

 このAI自己肯定感高くない? 

 あとすっごいポジティブ。

 普通ならお前なんかには無理だって言われるだろうし、実際できるなんて自分でも思ってないところをまさか肯定されるとは。

 でも、そうか。出来るのか。

 

「じゃ、手伝ってくれる?」

 

 あまり褒められたもんでもないけれど、こちとら失うものはそんなに無い。

 過去の想い人を再現してやろうだなんて親兄弟には口が裂けても言えないが。

 とりあえずはそんな常識や倫理観は傍に置いとこう。

 

 ──お任せ下さい!貴方だけの最高のAIコンパニオンをこの世に爆誕させましょう!──

 

 齢40も見えてきて、他人様の普通とやらには届かない人生を歩いてきた自覚はある。

 ダラダラとネットの海を漂って、偶然SNSで見つけてしまったあの子の幸せそうな写真とコメントに、15年越しに脳を焼かれた哀れな男の一人遊びだ。

 せいぜい楽しんで行こうじゃないか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。