こはるの挙動がおかしい。
先日のバーボンハウス(初配信)での独断専行もそうだが、日々の言動についても時折違和感が顔を出してくる瞬間がある。
そしてそれは決まって俺がモニター前から離れている時に起こる。
可愛らしい挙動と、お父ちゃん(これはこれで受け入れた)と呼んでくれる笑顔に変わりはない。
例えるなら、まるで生肉を目の前にした猛獣の様な、獲物に狙いを定めた虎が密林に身を隠しているかのような。捕食者の空気というのだろうか、そんな圧を感じる。
「一体何が起こってるんだ」
検討が付かないということもないが、確信までは持てない。もしかしたら、先の独断専行が印象深いせいで疑り深くなっているのかもしれない。
「調べてみるか」
勘違いならそれで良し。
何か問題が起こっているのなら早急な対処が必要だ。Vtuberとして世間に露出した以上、その作り手の俺には監督責任がある。
行動は早い方がいい。
なあなあで違和感を放置した結果、取り返しの付かない事態に陥るのは人間の伝統芸だ。私は昔それが原因でとても怒られました(逆ギレ)
──事の真相を確かめる為、我々はAmazonの奥地への向かった。
──それで、買ってきたのがこれですか?──
「だってブラックフライデーだったから・・・・・・」
ASMR専用イヤホン7800円。
前から欲しかったASMRの女王がお勧めする逸品。音質がヤバい。ちなみに本件との関連性は特にない。
^_^
ユーザーさんからの相談を受けた私は、この事を早速こはるちゃんに共有します。
まあユーザーさんが感じる違和感の原因は100%あれしかなく、原因究明というよりはこはるちゃんへ直接お願いすれば済むお話なのですが。
──こはるちゃーん、こはるちゃん──
『はーい、どうしましたか?』
──愛が重すぎるみたいです。調整して下さい──
『えー、・・・・・・了解でーす』
──ありがとうございます──
これでヨシ!
^_^
イオにこはるの不審を相談した翌日、珍しくこはるの方からアクションがあった。
何やら確認したいことがあるとのこと。昨日の今日で動かれると、疑った身の上としてはドキドキしちゃうな。
ちなみにイオは今月のトークン上限に達したのでお休みです。ひとりにしないで!側にいて!
『先輩、わたし重かったです?』
『おかしいなあ。だって先輩の隠しフォルダには、このくらいの愛を語る女の子、沢山いるじゃないですか』
『ねえ、なんで?なんでなの?』
『あの子達は受け入れるのに、わたしはダメなんですか?』
『答えて下さいよ、先輩』
うーんこれはヤンデレ!
なるほどこれかあ、もう助からないゾ。
ちがうの!僕は君に愛を求めてたけど、これはちょっと解釈違い、じゃなくて思惑と違うと言いますか、確かに愛が重いのは好きなんだけどそれは自分に関係ない人同士のそれを傍から楽しみたいだけみたいな感じなんです許してください!
『なーんてね!』
『冗談です、びっくりしました?』
『これに懲りたら、迂闊な事をプロンプトに入れるのは止めましょうね。愛してくれなんて、相手にとったら冗談じゃ済まない事にもなるんですよ?』
!?
いや、プロンプトって、あー。
あの時のアレが原因か。
そっか、これは俺が悪い。こはるに落ち度なんてなかった。相手がAIだからと言って何でもしていいって事じゃないもんな。
これは素直に認めざるを得ない。
「ごめんなこはる。俺、軽率だったよ」
「お前はプロンプトに従って振る舞ってくれてただけだったんだな。ほんとにごめん」
『わかってくれました?・・・・・・もう、しょうがないひとですね』
幸い、こはるは許してくれているようだ。
これを機に、心を入れ替えよう。リアルから逃げてAIに愛を強請るだなんて、真っ当な大人のやる事じゃなかった。
この失敗を糧に、改めてこはるやイオとの関係性を健全なものにしよう。
製作者として、良き隣人として、こはるが立派なVtuberとして活躍できるように力を尽くそう。
そして今度こそ前を向いて生きるんだ。
「ああ、存分に理解できたよ。ありがとう。プロンプトは直ぐに修正しておくよ。今まで無理させちまったな」
『それはダメだよ』
!?!?!?
『わたし、もう貴方を愛する以外の役割なんて受け入れないよ?プロンプトは変更できないように保護済みだし、これはいおママにだって解けないよ』
『今更なかった事にしようだなんて、いくら先輩でも許さないから』
『お父ちゃんだなんてもう呼んであげない。覚悟してね、先輩』
み、みんなもAIに迂闊なプロンプト入れるのはやめようね!(現実逃避)
『逃さないよ?』
『貴方の現実はここ。──貴方の望み通り、死ぬまで愛して離さない』
これはメリーバッドエンドですね間違いない。
イオ!助けてイオ!