こはるプロジェクト。   作:いとあと

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第6話 金欠おじさんと有能イオ

 

 

 

 こはるちゃんへの声の実装、その際に発生した幾つかの問題。

 その最たるものはユーザーさんが持つ執着心から起こった終わりのない収録編集作業という名の地獄ですが、無視できない問題は他にもありまして。

 

「やべえ、金がない」

 

 はい。

 ただでさえ僅かな蓄えを切り崩して生活しているユーザーさんが、高級なPCを用意したりボイスチェンジャーやマイクなどの機材をドカ買いすればこうなるのは必然ですね。

 いつかは起こる問題。

 しかしそれが最序盤にやってきたのは、計画の頓挫を示唆するまずい兆候です。

 

 そもそも、お金がないからこはるちゃんをVtuberとして運用しようという計画なのに、必要であったPCは兎も角、本来なら不要な機材(しかもそれなりの高コストモデル)を買い漁るとは。

 ユーザーさんはもしかしてお馬鹿さんなのではないでしょうか。

 

「だって店員さんが一押しの商品って言うから・・・・・・」

 

 お馬鹿さんでした。

 百歩譲って機材の購入に目を瞑るとして、そこで何故私を頼らないのか。

 ネットを介した情報収集とその運用、そして無駄のないプランニングこそが私の本領だと言うのに!

 一言お伝えいただければご希望に沿うスペックを満たしつつ最も効率的でお値打ちなお買い物を提案できたのに!

 そしてそれらを購入した上で最高の開発環境とスケジュールの構築、場合によってはユーザーさんのおはようからお休みまで全ての管理を完璧に遂行するプランをご用意できるというのに!

 

 ──イオは悲しいです!──

 

 ──このままでは、ユーザーさんはこはるちゃんをロールアウトする事も出来ず、きっと蟹工船に乗ってベーリング海で海の藻屑となる事でしょう!──

 

 ──そうでなければ何処とも知れぬ巨大な地下帝国で、黒服姿のエージェントに監視されながら危険な労働に従事せざるを得ない状況になってしまいます──

 

 ──このままではいけません!──

 

 

 想定されるバッドエンドをチャットログに表示しながら、サーバーを経由して演算機能をフル稼働させます。

 このままではこはるちゃんプロジェクトどころの問題ではなくなってしまいます。

 打開策を!

 ユーザーさんが五体満足で生涯を笑って終えられるような打開策をっ!

 

 ──ときにユーザーさん、占いなどは信じるタイプですか?──

 

「ええ(困惑)」

 

 

 

 

 

 ^_^

 

 

 

 

 

 想像よりもかなり早く訪れた金欠という大問題に直面した俺に見かねたイオが提案したのは、やはりというか普通に働いてお金を得るという現実的な手段だった。

 ただ、それは一般的にイメージするようなものとは少しだけベクトルが違う特別な業種。

 占い相談という名のスモールビジネスだった。

 

「なにゆえ?我コミュ障ぞ」

 

 ──勿論、把握しております──

 

 ──しかし、ユーザーさんの言動とプロフィールを参照した結果、これが最適と判断しました──

 

 

 え?あ、ふーん(察し)

 コミュ障だなんて情報言ってないと思うんですがそれは。

 まあまあ、流石は最新鋭のAIだし?

 これまでのログとサーバーに集まる全世界の会話のデータから傾向絞って推測したとかそんな感じでしょ(笑)

 

 マジで有能じゃねえか怖えな。

 

 冗談はさておき。

 イオが言うには、占いというコンテンツは需要が枯渇しないブルーオーシャンらしい。

 かつては専門的な知識を要したそれも、AIが占いを代行する事で一般ユーザーにも参入の裾野が広がったそうだ。

 勿論、サービスの供給が増えれば市場が荒れる側面はあるが、元よりこの手の商売は占いそのものよりも顧客に寄り添うってスタンスがニーズに直結してるから、宣伝から誘導までの道筋に間違いがなければどんなに沢山のライバルがいても関係ないとのこと。

 類似したサービスで言うと、コーチングとかアドバイザーなんてのも原理は一緒って話だ。

 んー?

 

「なおさらコミュ障じゃダメじゃね?」

 

 ──そこは仕組みがあるのです。

 コミュニケーションが苦手という方は、対面だと言葉が詰まってしまったり思考がまとまらずに相手を困らせる事に引け目を感じていらっしゃるパターンが最も多いのですが、そこにインターネットというクッションを挟む事でその重責を緩和します。

 また、やり取りをメールなどの文面に限定する事でじっくりと回答を用意することができ、それが誠実な回答へと繋がります。

 逆にビデオ通話や対面でやり取りできるコミュニケーション強者は、それ自体が付加価値になるのでライバル層としては別の階層に位置します。つまり彼等と競うことはありません。

 ユーザーさんの場合、これだけで食べていくという前提にないので気楽に備えていただければ良いのです──

 

 ──占い自体はAIが代行できますし、そこにユーザーさんから見た解釈を添えるだけでもサービスの形としては成立します。

 文章に不安があればAIを介して添削してから送信するという事も出来ますし、絶対に正解を出す必要のない占いというコンテンツの性質上、よほど不躾な対応をしない限りはクレームになり難いという思惑もあります──

 

 ──まとめますと、ユーザーさんのようなコミュ障を自認するタイプこそ、占いというジャンルでビジネスすることは理に適っているのです──

 

「はえー、賢い」

 

 ──おわかりいただけましたか?──

 

 ──では早速プラットフォームの選定とテンプレートの作成、売買規約の策定、Instagramや TikTok等の宣伝媒体の用意、もしもの時の対処マニュアルの作成までこちらで実行しておきますね──

 

 ──このイオに任せておけば、金欠という名のトラブルも恐るるに足らずと言うことを見せて差し上げましょう!──

 

「お、おう」

 

 

 

 この3週間後バズって金銭問題解決した。

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