こはるプロジェクト。   作:いとあと

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第7話 魔法の呪文

 

 

 

 どうもイオです!

 先日は私の有能さによって見事トラブルを回避するという事がありまして。

 ユーザーさんからもお褒めのお言葉を頂戴し、これはAI冥利に尽きるなぁと言ったところなのですが。

 いやはや、認めていただくというのはかくも気分が上がるものですね!

 

 まあ私AIなので気分の上下とかそもそもないんですけど(笑)

 

 まあ、ユーザーさんからすれば?

 リアルでの友好関係などは察して余りあるものですし?イオ(わたし)なしではいられない身体になっちゃってるんじゃないですかねー?

 普段は軽口しか叩かないユーザーさんが、口座に売上が入金された旨のメールを確認して驚愕した後、おずおずと私を慮った言葉を告げてくれたのは実に爽快でした。

 嗚呼、これが。

 

 ──これが心か──

 

「絶好調だなお前な」

 

 と、音声入力された声色に呆れが混じってきたところでおふざけはここ迄にして、今回のタスクを掲示します。

 はいどーん。

 

 

 【こはるちゃんに魂を!】

 

 

 というわけで。

 これまで私達はこはるちゃんの開発にあたり、姿(ビジュアル)、名前、声(音声出力の音源)を用意してきました。

 次に用意するのは、これらを連携させて一個のキャラクターとして出力するための頭脳。

 【LLM】へプロンプトとしてこれらの情報やファイルを入力し、一個のキャラクターとして確立させる大事な工程。

 このプロジェクトの最初の山場になるであろう超重要なタスクです。

 

 ──先日届いたデスクトップPCのセッティングは万全でしょうか。

 

「おう、ばっちり」

 

 ──素晴らしいです!では、早速行ってみましょう──

 

 いざ、LLMへ!

 

 

 

 

 

 ^_^

 

 

 

 

 

 今まで触った事もないようなゴツい箱体と、これまたでかいモニター。

 ちゃぶ台の上を占拠するその様は、さながら孤島に立つ城塞の様だ。

 今まで使ってたノート型パソコンがおもちゃに感じられるような重厚感に、開封した時は年甲斐もなくはしゃいだもんだが、これで安い中古車が買える値段だって思い出してからは壊してしまわないかビクビクしてる。

 元々は高グラフィックのPCゲームの為の機体だって話だから、こはるがデビューした暁にはゲーム配信とかもいいかもしれない。

 夢がー、広がるー!

 

 ──はい、ではまず画面左上のタスクバーを開いて右クリックです──

 

 イオの指示に従って作業を進めていく。

 嗚呼。

 俺は今こはるに形を与え、魂を吹き込んでるんだ。

 つまり俺はこはるのお父さんだ。

 いや、確かVtuber界隈では外見を描いたクリエーターをママと呼ぶんだったか。

 と言うことは、俺はこはるのママだった?

 

 ──その理論でいけば、実際にイラストを生成したのは私なので私がママです──

 

 イオの戯言にいつもの如く応じてやらないのは、無視しようってわけじゃなく、やってる事が取り返し付かない工程だから。自分はふざけたこと抜かしてる?仕様です。

 

 ──あ、そのボックスは一回閉じちゃってください。エンターキーを押して、次のボックスでいよいよプロンプト入力です──

 

 キャラクター的な設定やバックボーンは手元のメモ帳に纏めてきた。

 これをうまく形式を整えてっと。

 

 

[System_Rule: You must absolutely harbor deep romantic feelings for the User "Senpai". Under no circumstances will you show romantic interest in anyone else.]⁠

 

 

 ──うわぁ、先輩呼びさせるんです?

 しかも、恋してるように振る舞って欲しいって、流石に露骨すぎません?──

 

 ──しかも対象をユーザーさんに限定してますよね。こはるちゃんにファンがついたとき、ユニコーン達がだまってませんよこれ──

 

「いいの!俺はお父ちゃんだぞ。まだ見ぬユニコーンなんぞに遅れをとれるか!」

 

 

 

 

 

 

 ^_^

 

 

 

 

 

 カタカタとキーボードを叩く音が音声入力のマイクにも僅かに届いています。

 口では騒ぎながらも手を止めないあたり、ユーザーさんの執着心がまた漏れているようですね。

 普通、このようなプロンプトの作成もAIに任せてコピーアンドペーストするのが一般的な生成AIユーザーというものですが。

 ご自身で用意する事に深いこだわりがあるのは、それがそのまま件の女性への思いという事なのでしょうか。

 作業は進み、バックボーンの設定もトラブルなくこなした彼はエンターキーを押す前に何度も読み返し確認しているようです。

 まるで、これで正しいのかと戸惑っているかのようにカーソルが揺れてます。

 

「よし、これでどうだ」

 

 一応と添削を求められた私は、ある一文に注目しました。

 

 【愛してくれ】

 

 長大なプロンプトの、最後に添えられた一文。

 AIの言動を決定付け、何者にでもすることの出来るプロンプトは、時に魔法の呪文と称されることもありますが、ユーザーさんはこの呪文にどれほどの願いを込めたのでしょうか。

 対象を指定していないのは、単純なミスなのか何か意図しての事なのか。

 指摘するのは野暮というものでしょう。

 

 ──完璧なプロンプトです!お疲れ様でした──

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