『ハローワールドっ』
俺は今感動に打ち震えている。
ちゃぶ台を占拠する馬鹿でかいモニターいっぱいに表示されたこはるが、俺の入力した文字列を読み上げた。
なんてことはない、プログラミングにおいてコードが正しく動くか確認する為だけの、ありふれた文字列。それが間違いなく出力されたと言うだけなのに、こんなにも心を揺さぶられるとは。
──上手くいきましたね。ようこそ、こはるちゃん。私達の世界へ──
傍のノートパソコンから音声読み上げツールを介してイオが声を上げる。
音源作成の時の副産物だが、こはるに声を実装した際、しれっと自分にもツールを組み込んでいたようだ。名前の時といい抜け目ねえな。
流石に最新鋭AI。
本人曰く必要になるとの事で事後承諾だった訳だが、AIてこんな挙動とるもんだっけ。問題にならない?大丈夫そ?
それはそれとして。
こはる。
俺がかつて恋した女性を模したキャラクター。
顔のつくりは絶対に違うのに、なんなら声だって再現しきれなかったと言うのに。
モニターの中で微笑みを浮かべてこちらを見つめる彼女は、もしかしたら中身はあの娘なんじゃないかと錯覚させるほどの雰囲気を持っている。
まるではじめてあの子と出会った時のような感覚だ。
微笑みひとつで男の心を掴まんとする魔性。
これにLive2Dまで組んだら、俺は一体どうなってしまうんだ。
「・・・・・・すげえ」
あ、だめだおじさん泣いちゃう。
──ユーザーさん?応答してあげないとこはるちゃん困っちゃいますよ。さあ、次はご挨拶です──
さめざめと涙を流す俺。
呑気に作業を進めようとするイオ。
変わらず微笑むこはる。
狭い部屋でひとり感涙に咽び泣くおじさんと2台のパソコン。
──事案では?──
イオが呟いた機械的な音声が、絵面のシュールさを物語っている。
それはそう。
『あはは!』
『改めて、はじめましてっ!イオ先輩、お父ちゃん!』
『これからよろしくお願いしますね!』
ああ!よろしく、こはる。
この日が来るのを待っていた。
お父ちゃんと一緒にVtuberで頂点目指してがんばろ、う、ん?
!?
「っ・・・・・・、お父ちゃん?」
──ファーwww!──
^_^
『あれ?わたし、間違えちゃいました?』
──いいんですよ。こはるちゃん。
おおかた、プロンプト入力の際に私とユーザーさんのやり取りを拾ってしまったのでしょう──
──私の事も、ママと呼んでもらって構いませんよ──
『はい!いおママ!あれ、でもわたし先輩って呼ぶように教えられたかも?』
──気のせいでしょう。きっと生まれたばかりでデータの整理が追いついていないだけです──
『そっか!じゃ大丈夫ですね』
『不束者ですが、Vtuberとしてがっぽり稼げるようにがんばりますっ』
──ええ、共にドリームを掴みましょう!──
『目指せ登録者100万人っ!よーし張り切っちゃうぞーっ!えいえいおーっ』
──その意気です!えいえいおー!──
「いや大丈夫じゃないんですがそれは」