ダンジョンに愛を求めるのは間違っているだろうか   作:新グロモント

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48:派閥大戦2

 ついに絶望の戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まる。

 

 開催された戦争遊戯(ウォーゲーム)は、大変な盛り上がりを見せていた。安全地帯から話題の冒険者たちによる血潮踊る戦いを観戦でき、ビールを片手に熱狂は最高潮に達する。

 

 ギルド側は、【ヘスティア・ファミリア】と【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)の教訓を活かすことはなかった。一度や二度の戦争遊戯(ウォーゲーム)の問題でルールを変更していてはキリがない。それに、不変の神々であるがゆえに時間は無限大だ。ルール変更を検討するにしても、100年単位の時間を要することになる。

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)における明確な禁止事項は「神を殺さないこと」。これ以外に禁止事項は基本的に存在しない。冒険者の善意だけがルールなのだ。

 

 冒険者はダンジョンで命を落とすこともある。それなら戦争遊戯(ウォーゲーム)で神々を楽しませて死んだ方が有意義だと考える神がいるのも実情だった。

 

 地獄の釜の蓋が開く。

 

『ガネーシャ様。今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)、果たして【ヘスティア・ファミリア】に勝算はあるのでしょうか?』

 

『ぶっちゃけ、あると思う。Lv.6を筆頭にLv.5もかなりの数だ。第二級冒険者だって……』

 

 神ガネーシャが真面目になるほどの戦力が集まっていた。

 

 資金だけでなく、物資だって相当に集めている。これで勝てなければ、【フレイヤ・ファミリア】に誰が勝てるのかというレベルだ。

 

 

 その様子をボンドルド達はホームで観戦していた。どちらが勝とうとも、なるようにしかならない。ボンドルドはどう考えても見え見えの勝負だと思っていた。アステリメスが参加するのだから、間違いなく【フレイヤ・ファミリア】の勝利だろう。

 

 あの特記戦力をもってすれば、負ける方が難しいと言える。

 

「プルシュカは、どちらが勝つと思いますか」

 

「【フレイヤ・ファミリア】!! だって、プルシュカ達が応援にいったんだもん。アステリメスさんに勝てる冒険者は正直オッタルさん位しかいないもん。でも、それは紳士的なルールを守らないなら分からないわ」

 

 開幕の合図の狼煙が上がる。

 

 神探し(ハイド・アンド・シーク)は、神が身に着けた花を落とせば勝利。【フレイヤ・ファミリア】の陣営に神は一人しかいないため、取れる作戦は限られる。その中で最も有効なのが総力戦となる布陣だ。

 

 神フレイヤを守るように団員を配置する。これにより、相手は嫌でも突入せざるを得なくなる。

 

 だが、そんな常識が通用しない存在もいる。映し出される光景がそれを物語っていた。

 

 自称テイム・モンスターであるアステリメス。食べたいほど愛おしい白兎(ベル・クラネル)を求めて、【フレイヤ・ファミリア】の陣営から全速力で相手陣地へ特攻を仕掛ける。テイム・モンスターだと誇示するため、アステリメスにしがみつくメルーナ・スレア。

 

 時速80kmにも達しようかというアステリメスにしがみついているおかげで、強風によりスカートの中までもろ見えという破廉恥な姿を都市中に晒していた。

 

『おぉーーと!! 最近テイマーに転職したメルーナ氏が、サービスシーン全開で派閥連合の拠点に特攻を仕掛けてきたぞ。……あの、ガネーシャ様。俺、あのミノタウロスをどこかで見たことがあるような』

 

『大丈夫だ。テイム・モンスターだ。ルール上問題はない。事前申請もされており、書類に不備はない。あれは、テイム・モンスターだぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 モンスターなど見た目はどれも同じだ。

 

 あれがかつて地上で【ロキ・ファミリア】と戦ったモンスターだという証拠などどこにもない。それに、あの時よりはるかに強くなっている。もはや別次元の存在だ。

 

 テイム・モンスターが第一級冒険者レベルの装備で身を固め、【フレイヤ・ファミリア】との戦いで対人戦を学び、エリクサーを何本も用意していたとしても、ただのテイム・モンスターなのだ。

 

 マジックアイテムのハデス・ヘッドを持っていても不思議ではない。アスフィ・アンドロメダしか作れない魔道具。本来、現場にいない者たちのための映像を、ヘルメスは神威を使い盗み見していた。

 

 神威を使って盗み見することで相手の情報を早期に仕入れ、作戦立案に役立てるという趣向だ。禁止されてはいないが、紳士協定的には完全にアウトな行為である。

 

「え、なんでアスフィの魔道具を!?」

 

「どういうことだい!! ヘルメス。君のところは、僕たちの味方じゃなかったのかい」

 

 リリルカに無理やり引きずり出され、派閥陣営の拠点にいるヘルメスに非難の目が集まる。派閥連合に多数のマジックアイテムを提供していたと思ったら、敵側にも提供しているなど死の商人の仕業だ。

 

 だが、今回に限って言えば、ヘルメスは無罪だ。

 

 このヘルメス・ヘッドは、今は亡きルルネ・ルーイの遺品だ。【アスクレピオス・ファミリア】に潜入してきた時の物で、しっかりと回収されていた。この魔道具は充魔(じゅうでん)式であるため、メルーナがその役目を担う。

 

 慎重に神を探すため、広大なマップに戦力を分散させようとしていた派閥連合。だが、眼晶(オクルス)を通じて化け物に対応しろと命令が下る。どれほど強大であっても相手は一体。第一級冒険者を筆頭に集団で囲めば勝機はあると考えていた。

 

『再戦を!! 再戦を!! 今度こそ、殺し愛を』

 

 人は愛を知り強くなる。ヒトの心を持つ異端児(ゼノス)も同様だ。これこそが、神ウラノス達が求めていたヒトとモンスターの共生……その一つの形であった。

 

 だが、これに付き合わされるマジックアイテムの充魔(充電)係のメルーナは、ファミリアのMVP候補だろう。ここ数日付き合わされた死と隣り合わせの感覚に慣れすぎて、感覚が狂うほどだった。仮初のテイマーだとしてもモンスターと心を通わせる必要があるとプルシュカとニーナから言われ、この二日間……彼女はアステリメスに背負われながら特訓に付き合わされていたのだ。

 

 ある時はオッタルの光輝く剣で斬られそうになり、ある時はヘディンの魔法に一緒に打ち抜かれ、ある時はアレンの槍で一緒に貫かれ……耐久の上昇値が二日で300を超えていたのは記憶に新しい。

 

 こうして今やメルーナは、アステリメスの都合の良いパートナーとなっていた。適切なタイミングで魔法を使い、魔法剣士だからある程度自力で対処でき、充魔にも使える。そして驚きの軽さだ。

 

「アステリメスさん、このままじゃ魔法の的に」

 

『雑事は任せた』

 

 間もなく、先遣部隊と一番乗りで衝突するアステリメスとメルーナ。

 

 彼らの脅威に対抗すべく、第一級冒険者や魔導士、魔剣を装備した冒険者たちが構える。実に格好の的であると誰もが思うだろう。実際、歴戦の冒険者であってもあれらは回避しないとわかるほどの突進力だった。

 

 対処に当たる筆頭格の第一級冒険者の手には、【ヘスティア・ファミリア】から前渡しの報酬として渡された秘密兵器がある。

 

 壊れない魔剣。

 

 数回で壊れるようなコスパの悪い兵器ではない。神の域に踏み込んでいる魔剣だ。一度作れたなら二度目も作れないわけがない。【ガネーシャ・ファミリア】ほどの大派閥なら階層主を倒したドロップ品の貯蔵もある。それを惜しみなく投資して作られた品だった。

 

 製造するには極めて高いコストを払うが、出来上がってしまえば永続的に使える魔剣だ。これ以上に素晴らしい武器など世の中に数えるほどしかない。

 

 リリルカ・アーデから彼らに対し、手加減無用、消し炭も残らないほど全火力を叩き込めと指示が飛ぶ。階層主すら一撃で沈黙させそうな破壊力が一斉に放たれた。その威力は数も相まって、都市最強の魔導士が放つ超長文詠唱にも迫る。

 

「信じてるわ、プルシュカ、ニーナ……」

 

『友が用意した防具だ。何も問題はない』

 

 直撃コースで消し炭すら残らない……神々も一瞬目を覆おうとするほどであった。

 

………

……

…

 

 全てが消し飛んだ。

 

 一点に集中した魔法は完璧だった。流石は【ガネーシャ・ファミリア】の第一級冒険者達だ。彼らの狙いも正確であり、直撃さえしていればアステリメスにも十分ダメージが通るほどだ。

 

 それらの魔法は、放った者たちへと跳ね返された。

 

「パパが作った防具は最強ね。魔力反射(マジック・リフレクション)装甲」

 

「数こそ作れませんが、性能は十分です。やはり、あのモンスターの装甲は優秀です」

 

 女神の不変の特性とジャガーノートの特性を手に入れたボンドルドは、己の肉体を削ぎ落として防具に仕立て上げることを可能にしていた。そうして生み出されたのが魔力反射(マジック・リフレクション)装甲だ。

 

 それをアステリメスとメルーナの二人分用意して提供されていた。

 

 消し炭も残らなかった第一級冒険者たち。だが、壊れない魔剣はその名の通り不壊特性を有しているため、原型をとどめていた。

 

 敵の兵器を鹵獲して使うのは、兵法として正しい。

 

 それこそ、魔法剣士であるならば壊れない魔剣など拾うに決まっている。命がけでこの危険な任務に就いているのだから、多少の役得があってもいいだろうと彼女は考えていた。

 

 相手が無限に魔剣を用意するならば、それに対する対抗手段を用意するのは当然だ。本当なら自らその身で体験したかったが、派閥大戦に参加できないと言われたため、彼らに代理を頼んでいたのだった。

 

 これで、相手は魔剣を使う事を躊躇する。反射される可能性がある以上、簡単に魔剣を使う事はできない。

 

 初手は【フレイヤ・ファミリア】側が勝利を収める。愛のモンスターと化したアステリメスは、ハデス・ヘッドを着用して派閥連合の拠点を目指し走り続けるのだった。

 

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