ダンジョンに愛を求めるのは間違っているだろうか   作:新グロモント

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51:派閥大戦5

 【フレイヤ・ファミリア】副団長にしてLv.6のアレン・フローメル。戦場を駆け回り、敵を蹂躙しつくしていた。彼の仕事は、敵司令官であるリリルカ・アーデの抹殺である。口先だけで、ここまで戦争を拡大させた事だけは、敵ながら天晴だと賞賛できる。

 

 だからこそ、最速で殺して、戦争終結を目指そうとしていた。

 

 道中で捕まえ殺す前に冒険者から情報を聞き出していた。そして、20人目に達しようとした時、明確な位置が判明する。八つ裂きにしても満たされる事はない、秘めたる殺意。アレンの神速の槍がリリルカ・アーデを貫きそうになった瞬間、彼の手は止まった。

 

 リリルカ・アーデは、突然のアレン出現と目の前に槍先がある事から、安全装置が正しく働いた事を実感する。そして、この駒が来てくれたことに心から感謝していた。

 

「てめぇ~は、誰だ。なんで、あいつの槍(アーニャ)がここにあんだ」

 

「兄様……って、無駄でしたか。これだから、勘のいい猫人(キャットピープル)は嫌いです。この顔じゃなくて、槍を見て止まるなんて、どれだけシスコンなんですか」

 

 リリルカ・アーデの今の姿は、変身魔法でアーニャ・フローメルになっていた。だが、相手に正体がばれているので、顔の左半分だけ元に戻す。そして、シスコンにはそれだけでも十分だった。

 

 攻撃の手が止まる。それが大事だ。

 

「おぃ、俺の質問に答えろ。あいつは、どこにいる」

 

「リリには何のことかわかりませんね。ですが、この槍の持ち主が今どうなるかは、その兄様の行動次第といった所でしょうか」

 

 アレンがリリルカを締め上げる。

 

 ここでリリルカを殺すのは、赤子の手をひねるより簡単だ。だが、アレンにとって、妹であるアーニャ・フローメルは己の命より大事であった。過去に色々あったが、それも全ては妹を守る為である。

 

「死にてぇ~のか」

 

「アレン様の妹は、まだ(・・)生きている」

 

 アレンの奥歯が砕けた。

 

 つまり、そういう事だった。アレンの部下たちも、状況をはっきりと理解する。人質にされたアーニャ・フローメル。彼女の命運は、今リリルカ・アーデ次第。

 

「……無事なんだろうな」

 

「それは、アレン様次第です。丁重に手を放してください。それこそ、フレイヤ様を降ろすみたいに」

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)に向けて、戦いに明け暮れて鍛えていたせいで大事な者を見守ることが出来なかったアレンの痛恨のミスだ。今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)に向けては、ファミリア全体が一丸となり鍛えていたが、そこを狙われる。

 

 まさか、闇派閥のような事はやらないだろうと勝手に思い込んでいた。だが、ふたを開ければこの状況だ。今までの闇派閥が可愛いレベルに見える。

 

 有無言わさず、殺すべきだった。だが手を止めてしまい、聞いてしまった。アレンの中で妹の命と仲間の命が天秤にかけられる。

 

「……妹を解放しろ」

 

「じゃあ、やる事やってください。手始めに、貴方の部下を全員殺してください。そのあとは、白兎(ベル)様と一緒にオッタル様を潰すのを手伝って貰います。あぁですが、最初は不意打ちで確実にダメージを与えてくださいね。そのあとは、白兎(ベル)様と共闘……最後の指示は、終わってから出します」

 

 眼晶(オクルス)がアレンに手渡される。

 

 アレンが妹ラブのツンデレシスコンであることは、彼の部下にとっては周知の事実だ。仕事で妹を見張れないときは、悪い虫がつかないように部下が見張るなど、その監視は徹底していた。

 

 だが、それが緩んだ瞬間にこれだ。

 

 アレンがリリルカ・アーデに背を向けた。そして、自身の槍を部下に向ける。妹の命と仲間の命を天秤にかけた結果、彼がとったのは妹の方だった。

 

 部下たちは、こうなると分かっており、各々最後の言葉をアレンに掛ける。

 

「アレンさん、妹と仲直りをしてくださいね。後、妹さんを俺に下さい」

 

「アレン隊長、シスコンも限度をこすと変態ですからね。アイツより、僕の方がアーニャさんを幸せにできますよ」

 

「アレンさん、ツンデレはもう古いです。今度俺の妹を紹介するから、アレンさんの妹を紹介してください…知ってますけど」

 

「アレンさん、いいえお義兄さんと呼んでも?」

 

 といった、何とも頼もしい部下たちの言葉。

 

「てめぇら、全員地獄で覚えておけや。アイツの件は、生きてまた会えたら考えてやる。それと、最後の奴。てめぇーは地獄でも殺す」

 

 アレンの槍が全員の心臓を貫いた。そして、その足で【フレイヤ・ファミリア】の陣地に向かう。

 

 報いは後で受ける。今は、ただ一人の兄として、妹を守る行動をする。それが、兄と言う生き物だ。

 

 

◇◆◇◆

 

 神フレイヤの瞳から涙が止まらない。

 

 眷属がまた一人一人と命を落としていくのが分かってしまう。恩恵を与えた彼らの命が潰えていく。これが自らが望んだ事なのか。愛した男性と幸せになりたいという事が、ここまで罪なのだろうか。

 

 眷属たちの反対を押しのけ、白兎(ベル・クラネル)を願った事が罪だったのか。

 

「フレイヤ様、我々が必ず勝利して貴方様の願いを叶えます。だから、どうか応援をしてください。それが我々の支えになります」

 

「こっちには、まだオッタル様がいます。彼一人いれば残ったファミリアだって片づけられます」

 

 眷属の言葉は、神フレイヤの心には届かない。

 

 既に半数の団員を失い、幹部や幹部候補も次々に死んでいく。これで得られるのが白兎(ベル・クラネル)ただ一人だというのならば、どうしようもない。この戦争が終われば、オラリオからの撤退も考えなければならない。

 

「そう、オッタルはまだ無事なのね」

 

 神フレイヤの元にたどり着くための最後の関門…オッタル。

 

 今、そのオッタルと派閥連合の切り札である白兎(ベル・クラネル)が雌雄を決しようとしていた。五体満足で体力全開で届けられた白兎(ベル・クラネル)の前に立ちふさがるのは、『オラリオ最強』の冒険者。

 

………

……

…

 

 オッタルは、白兎(ベル・クラネル)が冒険者として何処まで成長したか確かめようとしていた。その為に、白兎(ベル・クラネル)の最大威力が発揮できるチャージまで待つ。

 

 白兎(ベル・クラネル)は、オッタルから提供を受けた武器を捨て、背に隠していた一本の”壊れない魔剣”を手にする。ヴェルフの最新作であり、【ガネーシャ・ファミリア】から提供を受けた素材でコッソリ作った余剰の一本。

 

 その威力は折り紙付きであり、第一級冒険者でも消し炭にできる。それにチャージを重ねる事で威力は数倍になる。

 

 対するオッタルは、ミスリル製の大剣だ。背に背負っている覇黒の剣をこれからの楽しみと取っておいていたが、相手の気持ちは違う。

 

 今更、交換するのは不可能だ。

 

「僕は、フレイヤ様に…いいえ、シルさんにあって、この戦争を止めないといけないんです。だから、通してもらいます」

 

「いいだろう。力を示せ」

 

 武器の差、レベルの差など関係などない。鍛えぬいてきた己自身との戦いであるとオッタルは思っている。だから、相手が魔剣を使ってチャージしようとも文句は言わない。

 

 二人の全力がぶつかり合おうとしてた。

 

「銀月の慈悲、黄金の原野、この身は戦の猛猪を拝命せし…」

 

「燃え尽きろ、外法の業 ウィル・オ・ウィスプ!!」

 

 一対一の男同士の戦い。そう思っていたのは、オッタルただ一人だった。個として最強だが、相手は集団で戦う。何もオッタルに気を使う事などない。白兎(ベル・クラネル)たちは彼等の都合で動くのだから。

 

 ヴェルフの対魔力魔法(アンチ・マジック・ファイア)がオッタルの魔法ヒルディス・ヴィーニを打ち消した。

 

 『オラリオ最強』の冒険者であるオッタルも、今の白兎(ベル・クラネル)の魔剣フルチャージをマトモに食らっては駄目だと本能が察知する。だが、オッタルは気が付いた。もし、避ければ後方にいるフレイヤ様に直撃するのではないか。

 

 自らがやれと言った攻撃を避けるだけでも屈辱なのに、それを回避してフレイヤ様が死ぬようなことになれば、彼は自分を許せないだろう。

 

 ならば戦猪招来(ヴァナ・アルガンチュール)で受けきってみせるとオッタルがスキルを発動した。

 

 

 




愛と平和の医療系ファミリアの優しい話…ですよね?
心臓が震えるファンタジーでハートフルファンタジー。

PS
アニメしか見ていない作者。
もうすぐ、アニメ編までおわるんだが、どうしようか。

Youtube知識のみの学区編。
ベル君が学区の問題児クラスに編入して、エイナさんの妹を吊り上げるって話だったはず。

(|)「特別講師のボンドルドです。今日から短い期間になりますが、精一杯務めさせてもらいます」

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