ダンジョンに愛を求めるのは間違っているだろうか   作:新グロモント

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55話に続き、56話も優しい話が作れてよかった。

皆が大好きな友情や愛がテーマです。



56:愛

「小人族(パルゥム)狩りだぁぁぁぁぁぁぁ!! あのクソったれな小人族(パルゥム)を炙り出せ、俺の前に必ず生きて連れてこい。捕らえてきた奴には、誰であろうと全財産1億ヴァリスを即金でくれてやる」

 

 【フレイヤ・ファミリア】副団長にして、戦争遊戯(ウォーゲーム)において仲間殺しを強要され、自害させられる。その様子を赤裸々に、オラリオ中に放送されていた。

 

 しかも、『神威』による音声までしっかり拾われており、妹のために仲間すら裏切るという惨めな醜態を晒した。だが、その行動は刺さるものには刺さった。それを生暖かい目で見つめ、アレンの足にしがみ付くアーニャという妹がいた。

 

「兄様。アーニャの事がそんなに大事だったニャンて」

 

「うるせぇ、離れろ。暑苦しいんだよ」

 

 豊穣の女主人に常駐している戦力を考えれば、彼女を人質にとるなど難しい。それこそ、豊穣の女主人を潰すことを前提にする戦力がいる。だが、同じ武器とすり替える程度ならば、難しくはない。

 

 ヘファイストス・ファミリアの協力があれば、アーニャが使う武器と同じものを用意できる。獣人であるため、匂いに敏感である事が予想されるため、それを本物と入れ替える。変身魔法が使えるリリルカ・アーデならば出来る。

 

 少し考えればわかる事だった。

 

 だが、あの時は冷静で居られなかった。それに、悪魔みたいな事を平然とやる小人族(パルゥム)だ。人質を取っていても不思議ではなかった。

 

 完全にブラフだった。おかげで、オラリオ中でシスコンのレッテルが張られている。

 

 アレンは、シスコンである事は変えられない事実であるから甘んじるにしても、戦争遊戯(ウォーゲーム)で恥を晒され、仲間を殺させられた罪の清算はさせてやると思っていた。幸い、あの小人族(パルゥム)をぶっ殺したいと思っている連中は数多くいる。

 

 アレンの掛け声に同調したのが、【ロキ・ファミリア】のティオネ・ヒリュテだ。敵情視察かと思われたが、彼女が恋する団長フィンが積み上げてきた小人族(パルゥム)の名声を瓦解させたことで、ファミリアを越えて手を組むことになった。

 

「だめね、あの小人族(パルゥム)は、変身魔法が使えるから顔だけでは分からない。一番可能性が高いのは、【ヘスティア・ファミリア】のホームだけど、どうする?こっちは、ロキからの命令であのファミリアには関わるなって厳命でてんのよね」

 

「こっちだって、フレイヤ様から関わるなって言われている。だが、小人族(パルゥム)をぶっ殺さないと気が収まらない。あれは、害悪だ。いるだけで周りを不幸にする。これもフレイヤ様のためだ。お前も、『勇者』と主神のためと割り切れ」

 

 関わると碌な事にならない【ヘスティア・ファミリア】。

 

 その評判がある意味、リリルカ・アーデを守っているともいえる。教科書に載るような闇派閥みたいな戦い方をして、他人の命を何とも思わない小人族(パルゥム)の恥さらしとして恐れられていた。

 

 だが、多額の賞金がかかれば、動く人も増える。そして、変身魔法が使えると分かっているならば、マジックアイテムを作っている中小ファミリアにとって商機到来だった。

 

 戦いには全く役に立たないが、変身魔法を見破るだけの機能を持つ眼鏡を売り出せば特需到来でバカ売れする。暴利の値段であっても、賞金額が凄まじいため、皆が買い求めていく。

 

 古来より、金採掘より採掘道具を売るビジネスの方が儲かる。今まさに、それが到来していた。他にも、小人族(パルゥム)とそれ以外を見分ける機能を持った眼鏡なども作られ始める。これらを併用する事で逃げも隠れもできなくなる。

 

 そのお値段は、50万ヴァリス。だが発売当日で100個も売れてしまう。

 

 これには、街の治安を守っている【ガネーシャ・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】も何故か見て見ぬふりをする。まだ、人的被害は出ていない。オラリオでもトップクラスの冒険者が、商業系ファミリアに特需をもたらしているだけだ。

 

 いわば、経済活動。そうとらえている。

 

 マジックアイテムまで導入して捜索しても見つからないとなれば、やはり【ヘスティア・ファミリア】のホームにいる可能性は高い。そこで、アレンは近くに居た弱小ファミリアの神の頬を札束で殴り、【ヘスティア・ファミリア】のホームに同行させた。

 

 神に対して配慮する為、顔には麻袋を被せている。これで、【ヘスティア・ファミリア】に顔が割れる事は無く、仕返しも来ないという配慮だ。

 

 アレンは、玄関先でノックする。

 

 だが、誰も出てこない。だから、再度強くノックする。

 

「居るのは分かってんだ。でてこねーなら、このホームごと吹き飛ばすぞ。今から、5秒くれてやる。5,4,3,2」

 

「わかりました。だから、壊さないでください」

 

 扉から出てきたのは、アレンが最も会いたくない男の一人であったベル・クラネル。

 

「リリルカ・アーデとかいう小人族(パルゥム)がここにいるだろう。引き渡せば手荒な事はしねぇ」

 

「アレンさん!! あ、あの……リリは、今不在で。何処にいるかもさっぱり」

 

 アレンが連れてきた神を確認する。

 

「不在は本当ですが、居場所を知らないは嘘です」

 

「どこにいる。オラリオか?」

 

 これは、面倒なパターンだとアレンは思った。

 

 【ヘスティア・ファミリア】のホームに居ない。だが、居場所はベル・クラネルが知っている。つまり、逃亡の補助をしたという事だ。

 

 しかし、ベル・クラネルがリリルカ・アーデの居場所を吐く事は無い。しかも、神がいるならば、沈黙こそ正解だ。下手に口を開けば、真偽でバレてしまう可能性がある。

 

「……」

 

「ちっ、黙り込んだか」

 

 どこにいるかわからない小人族(パルゥム)一匹を探し出すのにどれだけ苦労する事か。変身魔法や透明化のマジックアイテムがそれらを更に難しくする。

 

 だが、どこかに居るのだけは確実だった。アレンはここでの時間のロスを避けるため、その足で街中を駆け巡り目視で探す。誰かが発見の報告をあげれば即座に駆け付ける手筈を整えていた。

 

………

……

…

 

 街中を駆けずり回る最中。

 

 アレンはとある露店に目が留まった。子供二人がホットドッグを売っている。1つ2ヴァリスと原価回収すらできているのか怪しいほどの価格破壊だ。

 

 おひとり様1つまでと限定ではある。

 

「いらっしゃいませ。おひとつ2ヴァリス。出来立てで美味しいわよって、アレンさんか」

 

「お前等何してんだ。ちげーな。リリルカ・アーデっていう、小人族(パルゥム)をみなかったか。【ヘスティア・ファミリア】で指揮官をやっていたクソ野郎だ」

 

 2ヴァリスを手渡し、ホットドッグを受け取るアレン。

 

「プルシュカちゃんは、見た? 私は、見てないかな」

 

「今日のお客様には、いなかったかな。でも、探せるわ。人探しに便利な遺物だってあるんだから」

 

 アレンは、この便利な子供達を高く評価している。

 

 【フレイヤ・ファミリア】に入り浸り、何処にでも顔パスで入れる数少ない存在。戦争遊戯(ウォーゲーム)の時ですら、アステリメスとかいう化け物を連れてくるわ、貢献度で言えばMVPはこの二人だろう。

 

「よし、じゃあいくぞ。後で、金はいくらでもくれてやる」

 

「いやよ。まだ、今日の分を売り切ってないんだから」

 

 ダイダロス通りに住む貧しい者達にとって、この破格の食事はありがたいものだった。アレンが来たからこそ、散り散りに客が逃げたが、先ほどまでは行列が出来ていた。

 

「ちっ、俺が全部買い上げてやるから、いくぞ」

 

「おひとり様一つまでです、お客様!! どうしてもっていうなら、代わりの店員を連れてきて。そうでなきゃ動かないから」

 

 アレンは、しぶしぶ引き下がり、代わりの店員を本当に連れてきた。店員の名は、アーニャ・フローメル。兄様から直々のお願いと言う事で、ウキウキの彼女だった。若干目に♡が見えるような気がするほど、今の彼女は色々不味い状態だった。

 

「ここは、ニャーに任せて先にいくニャ。兄様からのお願いを完璧にこなすニャ」

 

「アレンさん、薄い本が厚くなるようなことをしたら、フレイヤ様に言いつけるからね」

 

「エッチなのはいけないと思います」

 

 プルシュカとニーナは、アレンに攫われて小人族(パルゥム)狩りに参加する事になる。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 アレンが子供店長二人を拉致って連れてきた様子に小人族(パルゥム)狩りの同志であるティオネ・ヒリュテが正直な気持ちを伝える。

 

「あのね~、背丈は近いだろうけど、その子供達に変装してないと思うわよ。絶対にないとは言えないけど」

 

「はぁ?ちげ~よ。プルシュカが小人族(パルゥム)を見つけ出せるっていうから、連れてきた。さぁ、何処にいるか教えろ」

 

 プルシュカとニーナは、【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】が仲良く人探しとは、平和になったなと実感する。こういう少しの協力がいつしか、大きな協力になると信じている。

 

「探してあげてもいいけど、プルシュカのお願いも聞いてくれる?」

 

「あぁ、いいぜ」

 

 金ならあるアレン。金欠だと言われている【アスクレピオス・ファミリア】の足しにはなるだろうと思っていた。

 

「一つ、アレンさんは、店番をしてくれたアーニャさんと仲直りする事。そうね、1日(24hr)だけ一緒に過ごして昔のように、おはようからお休みまで一緒に過ごす事。そして、お昼ごはんは、お出かけ先で食べるように」

 

 完全にデートしてこいと言っている。だが、デートと言う言葉を使わない事で敷居を下げた。

 

「二つ、アーニャさんを”お前”とか”おい”じゃなくて、今後アーニャって呼ぶこと」

 

 仲良くなる秘訣は、名前を呼ぶことから始まる。そう、始まってしまう。

 

「三つ、アレンさんは、フレイヤ様もシルさんも同じように敬う事。フレイヤ様に恩義があるのは知ってるわ。でも、姿かたちが違えど同じなんだから、それで敬意を示さないのは違う」

 

 ヘルンが化けている時はそれに該当しない。だが、神フレイヤであるときは、敬うべきだ。

 

「その程度でいいなら、直ぐにやってやる。で、何処にいるんだ、あのクソったれは」

 

「運がいいわね、今日は占いもやるつもりだったから、”星の羅針盤”も持ってたわ。どれどれ……リリルカ・アーデが居る方角は、アッチだ!! オラリオの外だな。方角からラキアかな」

 

 オラリオですら探すのが困難だというのに、ラキアに逃げ込まれ逃亡されたら流石に探すのに時間がかかりすぎる。だが、まだラキアなら、十分対処できる。

 

「おい、怒蛇(ヨルムガンド) 。お前はニーナを抱きかかえな。こっちは俺が背負っていく。……ラキアにいるなら、日帰りできる距離だ。クソったれをぶっ殺しに行くぞ」

 

「めんどくさいわね。でも、後の憂いを断っておかないと団長も困るわよね。あれが生きているだけで害悪なのは認めるわ。……でも、居場所が分かった後からは、この子達には見せないからね」

 

 ティオネは普段は落ち着いて見せているが、本質は変わっていない。彼女は、好きな相手が淑女を好むと言うからその仮面を被っているに過ぎない。元・【カーリー・ファミリア】所属だった彼女たちは、人には言えないような凄惨な経験を散々重ねてきたのだ。

 

 大切な存在を守るためならば、その淑女の仮面を脱ぎ捨てることなど何とも思っていない。

 

 その日の夕方……ラキア王国にて、バラバラに解体され野生動物の餌と化していた冒険者の遺体が発見される。ラキアの治安はここ最近急速に悪化しており、街ではよくある日常の事件の一つとして処理されたのだった。

 

 

………

……

…

 

 ラキアで一人の冒険者が命を落としたのとほぼ同刻、【ヘスティア・ファミリア】のホームにおいて蘇生魔法により再生を果たす者がいた。

 

「あああああ゛ぁぁぁぁぁぁ! はぁ、はぁ……ここは……白兎(ベル)様! ヘスティア様!」

 

「よかった、リリ。蘇生魔法は成功だって」

 

 荒い呼吸とともに目を覚ましたリリルカ・アーデは、己の完全な勝利を確信した。

 

 彼女は蘇生魔法の特殊な性質を逆手にとり、自らの死を完全に偽装することに成功したのだ。事前に自らの腕を切り落としてホームに保管しておき、本体は囮となって敵の注意をできる限り遠くへ引き付ける。失った腕一本程度ならば、高度な回復魔法や最高級のエリクサーを用いれば後からいくらでも再生可能だ。

 

 眼晶(オクルス)で死の直前までホームと連絡を取り合い、命が絶たれると同時に残しておいた部位を触媒として蘇生魔法を実行させたのである。

 

 この作戦が成功したことで、空間や距離という概念を完全に無視した超遠距離からの「デス・ワープ」が実現したのだった。

 

「これでリリの完全勝利です! さぁヘスティア様、すぐにファミリアの新規団員登録手続きへ向かいますよ!」

 

 変身魔法を発動させたリリルカ・アーデは、その姿を『金髪』『長髪』の『エルフ』へと変貌させる。その容姿はかつて異端児(ゼノス)の情報をオラリオ市内で収集していた際に用いていた姿であり、古くからオラリオに実在していた人物として認知されているものだった。

 

 これで、彼女の存在を疑う者は減るだろう。

 

 さらに、リリルカ・アーデの最期を直接見届けたのは【フレイヤ・ファミリア】のアレン・フローメルと【ロキ・ファミリア】のティオネ・ヒリュテという、オラリオ最高峰の冒険者たちである。彼らが止めを刺し損ねるはずがないという強力な先入観が働き、これ以上ない完璧な証人となった。

 

 死亡時の状況や場所も含めて、何一つ不備のない完璧すぎる計画であった。

 

 この狂気の作戦を実行し成功した事で、ヴェルフは彼女に聞いてみた。

 

「リリすけ、何でそこまでやるんだ」

 

「愛、愛ですよヴェルフ様。リリは白兎(ベル)様への愛がある限り不滅なのです」

 

 どっかの鉄仮面の冒険者が使いそうなセリフをいうリリルカ・アーデ。ここに、そのセリフの著作権を持つ者がいたら、褒めたたえただろう。この素晴らしい愛を。

 

「そういえば、サポータ君。何て名前で登録するんだい?」

 

「そうですね…ここは、リリカル・クラネルなんてどうですか。後、フェルズ様……街で出回っている魔道具のジャミング装置作っておいてくださいね。ここまで来たら共犯ですよ」

 

 あまりにも隠す気のないその安直なネーミングに、ファミリアの仲間たち全員から一斉に却下される。結果、妥協案として”リリカル・マジカル”という名で登録されることになった。この名称は冗談のようではあるが、実際のエルフ族の間では意外にも珍しくなく、極東で例えるならば「山田一郎」のようなきわめてありふれた名前なのである。

 




さて……学区編がもう来てしまう。
アニメまだですか。

ベル君がニイナさんを釣り上げて、ダンジョンでトラブルを起こして、ToLoveってくらいしか知らないん作者でごめんなさい。
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