女王「褒美は………この私です!」王女「……はぁ!?」   作:スウェーデンクラス

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なんか人気なので続きです笑
設定も終わりも何も決まってないですが笑

名前とか色々決めた方がいいのかな?


王女「騎士さまには若い私を…!」女王「大人で経験豊富な私のほうが…!」

 

王女の唇が、わなわなと震えた。

 

「………は?」

 

誰も答えない。

 

謁見の間にいる者たちも、今しがた女王の口から発せられた言葉を理解するのに、しばしの時間を要していた。

 

何しろ――あまりにも唐突だった。

四天王の一柱を討ち果たした英雄への褒賞。

当然、この場にいる誰もが予想していた。

 

莫大な金貨か。

広大な領地か。

爵位か。

 

あるいは王家直属の騎士という名誉か。

 

少なくとも、誰かの婚姻が絡むとしても――普通なら王女だ。

それが王族というものだ。

だからこそ。

 

「…………は?」

 

王女はもう一度、聞き返した。

女王は首を傾げる。

 

「どうしました、我が娘よ?」

 

「いや――」

 

王女は震える指で、母を指差した。

 

「いやいやいやいや!!」

 

謁見の間に少女の絶叫が響き渡った。

 

「なんで母さまなの!?」

 

「何を驚いているのです?」

 

「私じゃないの!?」

 

「あなたはまだ十六でしょう?」

 

「いやそういうことじゃなくて!!」

 

王女の叫びが、謁見の間に虚しく響き渡る。

その場に並んでいた武官、文官たちの間にも、遅れてざわめきが広がった。

 

「え、いや……」

 

「女王陛下が……?」

 

「まさか……」

 

「いや、しかし……」

 

「四天王を倒した英雄への褒賞として……?」

 

「女王陛下ご自身を……?」

 

ざわざわ。

ざわざわ。

 

誰もが困惑していた。

当然である。

何しろ、国王を失って以来、この国を一身に背負ってきた女王が――

 

自らの娘の目の前で。

 

堂々と。

 

他国の人間でもなく。

 

貴族でもなく。

 

つい先ほどまで名も知られていなかった一人の騎士へ。

 

「私を娶ってはくれませぬか?」

 

などと言ったのだ。

これを平然と受け止めろという方が無理だった。

王女は焦ったように母へ詰め寄る。

 

「ほ、本気ですか?」

 

額から汗が一筋、流れ落ちる。

女王はそんな娘を見つめる。

そして――

ふっと、憂いを帯びた表情を浮かべた。

 

「我が娘よ」

 

「……」

 

「貴女はまだ十六になったばかり」

 

そう言うと、女王は玉座から立ち上がった。

ゆっくりと王女の前まで歩み寄る。

 

「まだ外の世界も知らぬ貴女を、どこの誰とも分からぬ者と無理矢理結婚させるほど――」

 

女王は娘の顔へ両手を添えた。

 

「この母は薄情ではありません」

 

「……母さま……」

 

王女の表情が緩む。

母の手は温かかった。

戦場で剣を握り続けた手。

幾度も傷を負い、それでも国を守るために立ち続けた手。

 

その手が今は、優しく娘の頬を包んでいる。

 

「貴女には――」

 

女王は微笑んだ。

 

「私にできなかった、殿方との恋や、様々な経験を積んで欲しいのです」

 

「……!」

 

王女の目に、じわりと涙が滲んだ。

母はそこまで自分のことを考えてくれていたのか。

 

国のことだけではない。

自分自身の人生。

一人の女性としての幸福。

 

それまで考えてくれていた。

 

「……母さま」

 

王女は胸の奥から込み上げてくるものを感じた。

 

「それ程までに……私のことを……」

 

その瞬間。

王女の脳裏に、先ほどの光景が蘇った。

女王が騎士を見つめていた時の顔。

 

「私を娶ってはくれませぬか?」

 

あの時。

 

母は――

 

どんな顔をしていた?

 

「…………」

 

王女の思考が止まる。

 

思い返す。

確かに。

あれは。

あの顔は。

 

「…………」

 

王女の涙が止まった。

母を見る。

女王は相変わらず優しい笑顔を浮かべている。

 

「…………」

 

王女の目が細くなる。

 

「…………」

 

母は尚も笑っている。

 

「…………」

 

娘の目が、さらに細くなる。

そして――

王女は母の手をバッと振り払った。

 

「……あぶねぇ!!」

 

「…………」

 

「もうちょっとで言いくるめられるところだった!!」

 

「…………」

 

謁見の間が静まり返った。

女王の笑顔が固まる。

 

「……あら」

 

「絶対おかしい!!」

 

王女は母を指差す。

 

「母さま、今ものすごく綺麗な母親の顔してましたけど!!」

 

「まあ」

 

「でも私は騙されませんからね!!」

 

「何のことでしょう?」

 

「さっき騎士さまに結婚を申し込んだ時の顔ですよ!!」

 

「……」

 

「完全に女の顔だった!!」

 

「…………」

 

「私、色恋の経験なんてありませんけど、それくらい分かりますからね!?」

 

「……チッ」

 

「――あ!!」

 

王女が目を見開く。

 

「今、舌打ちしましたね!?」

 

女王はすぐさま澄ました顔を作った。

 

「何のことでしょう?」

 

「誤魔化しても無駄です!!」

 

「私は何も――」

 

「母さまが嘘をついてるかなんてお見通しですから!」

 

「…………」

 

「さっき絶対、舌打ちしました!」

 

「していません」

 

「しました!」

 

「していません」

 

「しました!!」

 

「……」

 

「ほら! 今、目を逸らした!!」

 

「……」

 

女王は咳払いを一つした。

 

「我が娘よ。少し落ち着きなさい」

 

「落ち着いていられますか!!」

 

「母はただ、貴女のことを思って――」

 

「はいダウト!!」

 

「……」

 

「母さまはさっき、めちゃくちゃ女の顔をしていました!」

 

「…………」

 

「私には分かります!」

 

「…………」

 

女王は沈黙した。

王女も沈黙した。

 

二人は互いを見つめる。

 

謁見の間に――

妙な緊張感が漂い始めた。

 

まるで戦場だった。

四天王との死闘など、もう遠い昔の出来事のようだった。

 

今、この場で繰り広げられているのは――

母と娘。

二人の女による。

 

壮絶な花婿争奪戦である。

 

武官たちは困惑していた。

 

「……隊長」

 

「なんだ」

 

「我々は……何を見せられているのでしょうか」

 

「黙れ」

 

「しかし――」

 

「黙っていろ。下手に口を挟んだら命が危ない」

 

文官たちはもっと酷かった。

 

「記録官……」

 

「はい」

 

「今日の議事録は……」

 

「どう記録すればいいのでしょう」

 

「……『女王陛下、勇者に求婚』でいいんじゃないか?」

 

「その後の王女殿下との口論は?」

 

「……私の筆では、とても記録できん」

 

そして。

そんな周囲の困惑など知ったことではない二人は――

なおも睨み合っていた。

 

先に口を開いたのは王女だった。

 

「母さま」

 

「何でしょう?」

 

「騎士さまには――」

 

王女は胸を張った。

 

「私を娶ってもらいます」

 

「…………」

 

女王の眉が僅かに動く。

 

「騎士さまも、母さまより若い私の方が嬉しいはずです」

 

「ほう」

 

女王の声が低くなる。

 

「つまり?」

 

王女は自信満々に言った。

 

「若さです!」

 

「…………」

 

「若さは最大の武器です!」

 

「…………」

 

女王はしばらく娘を見つめた。

 

そして――

 

ふっ。

 

笑った。

 

「?!何がおかしいのですか!?」

 

「あら」

 

女王は優雅に髪をかき上げた。

その仕草だけで、周囲の者たちは「あっ」と悟った。

 

――来る。

何かが来る。

 

女王は自らの身体の豊かな曲線を誇るように姿勢を正した。

 

「貴女のような小娘よりも――」

 

そして、微笑む。

 

「私のような経験豊富な、大人の女性の方が」

 

一拍。

 

「殿方は喜ぶものよ?」

 

「…………」

 

王女の顔が引き攣った。

 

「…………」

 

拳が震える。

 

「…………」

 

歯が軋む。

 

「…………」

 

やがて。

 

ギリィッ――

 

と。

はっきり聞こえるほどの歯軋りが謁見の間に響いた。

 

「……母さま」

 

「何かしら?」

 

「それは……」

 

王女の声が低くなる。

 

「反則です」

 

「あら、何が?」

 

「そういうところです!!」

 

「私は事実を述べただけよ?」

 

「経験豊富って何ですか!?」

 

「そのままの意味です」

 

「母さま!!」

 

「何です?」

 

「私だって……!」

 

王女は自分の胸元へ視線を落とした。

 

そして。

 

「……これからです!」

 

「そうね」

 

女王は微笑む。

 

「これからね」

 

「その言い方やめてください!!」

 

「何も悪いことは言っていないでしょう?」

 

「その余裕が腹立つんです!!」

 

「若いというのは良いことよ」

 

「絶対馬鹿にしてる!!」

 

「していません」

 

「しています!!」

 

母と娘。

互いに一歩も譲らない。

その背後では、兵士たちが震えていた。

 

「……隊長」

 

「何だ」

 

「止めなくていいんですか?」

 

「馬鹿を言うな」

 

「ですが……」

 

「四天王より怖い」

 

「……同感です」

 

そして。

そんな凄まじい親子喧嘩の中心――

肝心の騎士本人は。

 

ただ静かに立っていた。

 

盾を手に。

剣を腰に。

無言。

 

まるで自分には何の関係もないかのように。

 

国の王族たる、母と娘の二人が――

その英雄を巡って、本気で火花を散らしていた。

 

「騎士よ!」

 

「騎士さま!」

 

二人の声が同時に響いた。

王女と女王が、同時に騎士を見る。

 

「「どちらを選ぶのです?!」びますか?!」

 

騎士は――生涯で初めて。

 

「逃げたい」

 

そう思った。

 

ーーーーーー

 

王女と女王。

二人の視線が真正面からぶつかっている。

その間には、見えない火花が散っていた。

 

周囲の武官も文官も、完全に困惑していた。

誰も口を挟めない。

何しろ、この国の頂点に立つ女王と、その一人娘である王女だ。

 

しかも争っている内容が――

 

「どちらが英雄の花嫁になるか」

 

という、国政会議では絶対に出てこないような議題である。

 

「……」

 

そして、その二人の間で正座――ではなく跪いたまま固まっている騎士。

彼だけが、完全に置き去りにされていた。

 

そんな時だった。

 

「……女王陛下、姫さま」

 

静かな声が響いた。

 

「少し宜しいですかな?」

 

全員が声の主を見る。

そこに立っていたのは、一人の男だった。

 

でっぷりと肥えた腹。

短い手足。

低い身長。

 

頭頂部は見事なまでに寂しくなっており、残った髪も必死に左右から中央へ寄せられている。

そして額には、先ほどから流れ続ける汗。

 

何とも威厳に欠ける姿だった。

 

だが――

この男を笑う者は、この国にはいない。

 

なぜなら。

 

「なんですか、宰相」

 

女王が睨む。

 

「今は我が娘と真剣な話し合いをしているところです」

 

「そうです!」

 

王女も続く。

 

「おじさまは黙っていてください!」

 

「……」

 

宰相は一瞬だけ遠い目をした。

何しろ自分は、この国のナンバー2である。

 

王の不在時には国政を預かり、軍の補給から税制、外交、内政に至るまで、ほぼすべてに目を通している。

 

その宰相が今――

十六歳の王女と、その母親である女王の痴話喧嘩……ではなく、花婿争奪戦を止めようとしている。

 

人生とは、ままならないものだった。

 

「まぁまぁ」

 

宰相は苦笑しながら、懐から布を取り出した。

額の汗を拭う。

 

「そう殺気立たずに」

 

そして、ちらりと騎士を見る。

 

「この国を救ってくださった騎士殿も――」

 

一拍。

 

「固まっておられますぞ」

 

「…………」

 

女王と王女が、同時に騎士を見る。

 

騎士は。

未だ跪いていた。

背筋は伸びている。

 

盾も持っている。

剣もある。

兜も脱いでいない。

 

完全に微動だにしていない。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

女王と王女の顔が、同時に赤くなった。

 

「お、おほん」

 

女王が咳払いをする。

 

「これは……失礼しました」

 

先ほどまで娘と熾烈な争いを繰り広げていた人物とは思えないほど、見事な女王の顔に戻る。

 

「女王たるものとして、少々配慮が欠けていました」

 

王女も俯く。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

顔が真っ赤だ。

耳まで赤い。

 

「…………」

 

騎士は何も言わない。

ただ、ゆっくりと頷いた。

それだけだった。

 

その反応に、王女はさらに恥ずかしくなる。

 

(見られた……)

 

先ほどまで母とどんな争いをしていたのか。

全部。

英雄本人に。

 

「落ち着いて下さり、なによりです」

 

宰相はにこやかに笑った。

 

「今は――脅威であった魔王軍が撤退し、なおかつ四天王の一柱を討伐したことを、皆で喜びましょう」

 

その言葉に、謁見の間の空気が少しずつ変わっていく。

そうだ。

本来ならば。

今こそ歓喜すべきなのだ。

 

長きにわたって国民を苦しめてきた魔王軍。

その象徴とも言える四天王の一柱が倒れた。

 

戦線は大きく後退し、敵軍は撤退を始めている。

 

この勝利は、この国にとって――

希望そのものだった。

女王は玉座へ戻ると、改めて姿勢を正した。

 

「ええ。その通りですね」

 

そして微笑む。

 

「宰相」

 

「はい」

 

「祝いの席を用意してください」

 

女王は力強く告げた。

 

「豪勢にしましょう」

 

「既に準備するよう指示済みです」

 

「……」

 

女王が一瞬、目を瞬かせた。

 

「さすがです」

 

そして柔らかく笑う。

 

「いつも感謝していますよ、宰相」

 

宰相は恭しく腰を折った。

 

「光栄にございます」

 

完璧だった。

これぞ宰相。

国政を陰から支える男。

 

女王の意図を先回りし、必要なことはすべて整えておく。

その仕事ぶりには、長年仕えてきた武官たちも一目置いている。

 

「そして――」

 

宰相が顔を上げる。

 

その口元には、どこか悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。

 

「救国の英雄である騎士殿への褒章の件ですが」

 

「……」

 

女王が見る。

王女も見る。

騎士も見る。

 

「どうでしょう」

 

宰相は一同を見渡した。

 

「しばらく騎士殿には、この国に留まっていただき――」

 

一拍。

 

「女王陛下、姫様」

 

そして。

 

「どちらを娶るのかを、決めていただくというのは」

 

「…………」

 

静寂。

次の瞬間。

 

「待て、宰相閣下!」

 

誰かが叫んだ。

 

「本気か!?」

 

別の武官が立ち上がる。

 

「たかが、放浪の騎士に――女王陛下か姫様が身を捧げるというのか!?」

 

「そもそも王家の婚姻を、そんな賭け事のように――」

 

ざわめきが一気に広がった。

しかし。

 

「――やかましい!!」

 

宰相が怒鳴った。

 

「――!」

 

場が凍った。

 

先ほどまで汗を拭いていた小柄な男。

でっぷりとした身体。

頭頂部は寂しい。

普段は温厚そのもの。

 

だが。

 

その声には、場内を震わせるほどの迫力があった。

 

「我らが女王陛下と姫様が――それでよいと、仰っておるのだ!」

 

一歩、前へ出る。

 

「その意思に反するつもりか!?」

 

誰も答えられない。

宰相はさらに続けた。

 

「この騎士殿は、我らが国を救った!四天王を討ち!我らの兵を救い!そして何より――」

 

宰相は女王と王女を見る。

 

「お二人自身を救った!」

 

静寂。

 

「ならば、その英雄が我らの王家に加わることに、何の不都合がある!」

 

誰も口を挟めなかった。

やがて宰相は満足そうに頷く。

そして――

ニヤリ。

 

「どうですかな?」

 

女王と王女へ向ける。

 

「女王陛下」

 

「……」

 

「姫様」

 

「……」

 

「どちらが騎士殿の心を射止めるのか――」

 

宰相は嬉しそうに笑った。

 

「見ものですな」

 

「…………」

 

「…………」

 

女王と王女。

二人の目が、再び合う。

バチッ。

見えない火花。

 

「……」

 

宰相は内心で頷いた。

 

(よし)

 

どうやら、面白いことになってきた。

しかし、当然ながら一番重要なのは――

当事者の意思である。

 

宰相は騎士へ向き直った。

 

「勝手に話を進めて申し訳ないが――騎士殿も、よろしいですかな?」

 

騎士は黙って宰相を見る。

 

「滞在中の衣食住、そのほか必要となる費用は――すべて王国が持ちます」

 

「…………」

 

「しばらくこの国に滞在し、女王陛下、姫様と交流を深めていただきたい」

 

そして。

 

「その上で――騎士殿ご自身に、お決めいただく」

 

騎士はしばらく黙っていた。

やがて。

ゆっくりと立ち上がる。

 

「……」

 

鎧が軋む。

そして兜の上から、頬をポリポリと掻いた。

 

「…………」

 

その仕草を見た全員が固唾を呑む。

そして。

 

「肯定と介しましょう。それでは、まずはこの場はこれにて終わりにしましょう」

 

女王が頷く。

 

「いいでしょう」

 

そして騎士へ微笑みかけた。

 

「騎士よ。其方を部屋へと案内しますので、しばらくお待ちになって下さい」

 

「――あ!」

 

王女が声を上げた。

 

「ずるい!!」

 

「…………」

 

女王の笑顔が固まる。

 

「何を言っているのです?」

 

「母さまが案内する必要なんてありません!」

 

王女はすぐに騎士の側へ歩み寄ろうとする。

 

「私が案内します!」

 

「なりません」

 

女王が立ちはだかり、即答した。

 

「私が直々に案内するのが筋でしょう?」

 

「母さまは、この国のトップです!」

 

王女は負けじと反論する。

 

「やることが山積みのはずです!」

 

「…………」

 

「戦後処理もあるでしょう!」

 

「…………」

 

「負傷者の確認も!」

 

「…………」

 

「魔王軍の動向も!」

 

「…………」

 

王女は胸を張った。

 

「ですから、ここは王女たる私が――」

 

「まったく」

 

女王がため息をつく。

 

「貴女は母たる私の仕事ぶりを、何だと思っているのです?」

 

「仕事ができることは認めています!」

 

「ならば――」

 

「でも、今の母さまは明らかに仕事を口実にして騎士さまに近づこうとしているでしょう!」

 

「…………」

 

「図星ですね!?」

 

「何を言っているのです?」

 

「顔に出てます!」

 

「出ていません」

 

「出てます!」

 

「出ていません!」

 

「出てます!!」

 

「出ていません!!」

 

再び、始まった。

 

武官たちは頭を抱えた。

文官たちは天井を見上げた。

 

宰相は――

 

「…………」

 

しばらく二人を眺めていた。

 

そして。

 

「……やれやれ」

 

小さく首を振った。

 

「本当に……」

 

深いため息。

 

「この国始まって以来の英雄が現れたというのに――」

 

目の前では。

 

「私が案内します!」

 

「女王である私が行くのが当然でしょう!」

 

「私の方が若いんです!」

 

「若さだけが魅力ではありませんよ?」

 

「またそれ言った!!」

 

「事実でしょう?」

 

「母さま!!」

 

「何です、我が娘よ?」

 

「…………!」

 

宰相は額を押さえた。

 

四天王は倒れた。

魔王軍は撤退した。

国は救われた。

戦争の流れすら変わった。

 

それなのに。

 

この国の最大の問題は――

 

「誰が英雄の花嫁になるのか」

 

になってしまった。

宰相は、未だに二人の口論の中心で呆然と立っている騎士を見る。

そして。

ほんの少しだけ、同情するように目を細めた。

 

「……英雄殿」

 

小声で呟く。

 

「戦場よりも――」

 

宰相は深く息を吐いた。

 

「王宮の方が、よほど恐ろしいかもしれませんぞ」

 

騎士は答えなかった。

ただ。

兜の奥から。

 

「…………」

 

小さなため息だけが聞こえた。

 

その瞬間、宰相は確信した。

 

――この国の歴史は。

 

今日から、間違いなく。

 

とんでもない方向へ動き始める。

 

続きは……

  • 書けぇーー!!
  • 他のものをね……
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