あかねのたいよう   作:かぜのこ

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第46回:『たくらみ』

 

 全休日が明けた翌朝、稽古場の空気はいつにも増して独特の緊張感と熱気に包まれていた。

 今日は通常の立ち稽古ではなく、本番の衣装を実際に着用してのティザームービー撮影および、各種メディアやパンフレットに使用するスチル写真の集中撮影日である。押しまくっているスケジュールの帳尻をどうにか合わせるため、今日一日の間に詰め込めるだけの撮影タスクがぎっしりとスケジュール表を埋め尽くしていた。

 早朝の冷気が残る稽古場に一番乗りしたあかねは、壁際の大型ミラーの前で入念にストレッチを行っていた。前屈をしながら、あるいは肩入れをしながら、防音扉が開くたびにチラチラと何度も視線を向けてしまう。

 あかねは、跳ね上がりそうな胸の高鳴りと逸る気持ちを抑えつけるのに必死だった。

 昨夜、偶然観たDVDの映像から辿り着いた真実。アクアが追い続ける〝父親〟の正体――『カミキヒカル』。その名を自力で見つけてしまった彼女は、一刻も早くこの事実をアクアに、あるいは現状の全てを把握し共に舞台を支えてくれているハルトに伝えなければならないという、強烈な使命感に突き動かされていた。

「おっはよーす……」

 防音扉が開き、昨夜の生配信の時と変わらない、どこか眠たげでダルそうな目を擦りながらハルトが稽古場に入ってきた。

 その瞬間、ストレッチや準備に追われていた稽古場全体が、ざわ……と一瞬静まり返る。ハルトはつまらなさそうに鼻を鳴らすと、気にした様子もなく足を進めた。

 相変わらず、ハルトは劇団ララライや外部からの参加キャストたちの多くから、どこか遠巻きにされていた。劇団の若手トップである姫川と互角に渡り合い、演出の金田一すら一目置く圧倒的な実力と存在感。それが裏目に出て、周囲からは近寄りがたい天才として浮いてしまっているのだ。まともに自分から声をかけ、気さくに接するのはあかね、アクア、かな、メルト、そして姫川の五人くらいのものだった。

「おはよう、あかね。今朝は随分と早いんだな」

「おはよう、ハルトくん……!」

 ハルトがあかねの元へ歩み寄り、声をかける。

 山吹色の瞳が、あかねの顔をじっと覗き込んだ。

「ん? 何かあったか?」

「あ……うん。実はね、ハルトくん……」

 鋭い観察眼を持つハルトに一瞬で内心を見抜かれ、あかねは胸を突かれたような心地になった。『カミキヒカル』の件を、今この場所で打ち明けるべきか否か。唇を小さく震わせながら言葉を紡ごうとした、まさにその時だった。

「おはよう」

「おはよー」

 防音扉が再び開き、アクアとかなが揃って稽古場へと現れた。

「お、アクアと有馬じゃーん、おはー。何? 二人して一緒に仲良く出勤とか、やーらしっ!」

「ちょっ、ちょっと変なこと言わないでよね! たまたま入口で一緒になっただけだから!」

「そうだぞハルト。有馬とはそこで会っただけだ」

 ハルトのいつもの軽口に、かなが顔を赤くして反論し、アクアが呆れたように溜息を吐く。

 完璧なタイミングで会話をすかされてしまったあかねは、出しかけた言葉を飲み込むしかなかった。ハルトがあかねの方へと向き直る。

「っと、ごめんあかね。何の話だっけ?」

「……ううん、何でもないの! 気にしないで」

「……そうか? ならいいけど」

 ハルトは不思議そうに首をひねりながらも、それ以上は追求せず、再びアクアの元へと歩み寄ってダル絡みを始めた。

「なぁアクア~、今日の『波旬』の衣装、絶対俺に似合ってるから期待しててくれよなー」

「……お前が着れば何でもそれっぽくなるんだから、いちいち自慢するな」

 口では邪険にしつつも、アクアの表情は決して不快そうではなく、どこか満更でもなさそうな柔らかさを帯びていた。

 深夜の激しい立ち合いを経てからというもの、アクアの憑き物が落ちたような穏やかな表情は完全に定着している。心の奥底にあった暗い屈折がほぐれ、役者としての純粋な楽しさに目覚め始めているのだ。

(これから集中稽古も始まるし……スチル撮影だってある。今、あの人の名前を出したら……アクアくんの心がまた荒れてしまうかもしれない……)

 あかねは、アクアの穏やかな横顔を見つめながら静かに拳を握りしめた。

 今のアクアに余計な精神的負担をかけたくない。それに、まだ確証を得たわけではないのだ。

 あかねは覚悟を決め、『カミキヒカル』という名前をひとまず自分の胸の奥深くにしまい込むことにした。

 

 ☆ ★ ☆

 

 朝八時を回り、続々とキャスト陣が集結すると、スタッフの指示によって順番にメイク室へと送り出されていった。

 広い稽古場の壁際で、あかねはかなと一緒にパイプ椅子に座り、自分たちの番が来るのを待っていた。

「衣装かぁ……」

「何? なにか問題でもあるの?」

「うん。ほら、私たちって物語の途中で衣装の早着替えがあるでしょう? それがちょっと憂鬱で……」

「ああ、あれね。確かにあの早着替えは、演技力どうこうって問題じゃないのよね。純粋な物理的格闘だわ」

 かなが肩をすくめて同意する。

 あかねが演じる『鞘姫』と、かなが演じる『つるぎ』は、物語後半において『波旬』に洗脳・支配され、『隷属』させられた恐怖の証しとして、衣装が一変する。原作の鮫島アビ子先生が直々にデザインを手掛けた、鮮烈な紅と漆黒が映えるゴシック・ヴァンパイア風のドレスへと変更されるのだ。

 さらにクライマックスでは、主人公たちの絆によって心が解放されたことを視覚的に表現するため、再び元の和装衣装へと早着替えして舞台上に復帰しなければならない。

「有馬さんの『つるぎ』はボーイッシュなショート丈のパンツスタイルだから着替えやすそうだけど、私の『鞘姫』は……」

「ゴリッゴリの重厚な和服だものねぇ……」

 かながしみじみと呟き、衣装の複雑さを思い出して顔を顰めた。

「ねぇ、ちょっと思ったんだけどさ。一度着替えたら、解放された後もドレスのままじゃ駄目だったのかしら? その方が着替えの手間も省けるじゃない」

「あ、それ、私も気になってハルトくんに一度理由を聞いてみたの。そしたらね――」

 あかねは、ハルトが以前呆れ顔で語っていた言葉をそのまま再現するように口を開いた。

「『隷属から解放されても服がそのままってことは、実際に舞台裏で着替えさせられたってことだろ。つまり、一回裸に剥かれたってことだ。そもそもこの衣装変更の演出は、ヒロインの尊厳を辱めることで悲壮感をより高めるものなんだが、さすがに一回ひん剥かれたとなると、ヒロインの処女性に疑問が出るんだよ』」

「……ふぅん?」

「『だから、不思議な力で強制変身させられていたってことにして、元に戻る時は元の服に着替える演出にした方がいい』って」

「うーん、処女性……?」

 唐突に出てきた生々しい単語に、かなが首をかしげる。

 あかねは具体的な表現をどう説明すべきか悩み、少し頬を赤らめながら言葉を濁した。

「つまり……その、えーっと……男の人に無理やり服を脱がされたみたいなニュアンスが出ちゃうと、色々、ね?」

「あー……」

 少し考えたかなは、ようやくハルトの言わんとすることのニュアンスを察し、苦い表情を浮かべた。

「うっわ……言われてみれば確かにそうね。女子としては、舞台上でもそんな勘ぐりされるの絶対に嫌だわ。さすがハルト、妙なところで細かいくせに理にかなってるわね……」

「ふふ、でしょ?」

「ていうかさ、アビ子先生って『鞘姫』に対して妙に厳しくない? 愛の裏返しなのかもしれないけど」

「それ、私もすごく思った! 『東京ブレイド』って原作自体が結構バイオレンスだけど、『鞘姫』は毎回毎回、本当にとんでもなく酷い目に遭ってるよね。この舞台の脚本だって、終盤までずっと敵に操られて酷い目に遭うし……」

「それ、アンタが演じるからじゃないの?」

「ええっ!? 私だから!?」

「だって、今回の配役ってどう考えてもハルトとの関係性ありきでしょ? 私は『モルモのやくそく』の相方だし、アンタは『ひまわりの日』の相手役だしさ。アビ子先生、ハルトの超大ファンだって公言してたから、絶対にハルトの相手役になる『鞘姫』に個人的な湿度とこだわりを叩き込んでるわよ」

「そ、そんなぁ……」

 頭を抱えるあかねを見て、かなが可笑しそうにクスリと笑った。

「次、有馬さん、黒川さん! スタイリング入りまーす!」

 スタッフからの呼び出し声が稽古場に響く。

「はーい! 行くわよ、あかね!」

「あっ、待ってよかなちゃん!」

 

 ☆ ★ ☆

 

 メイク室の中は、プロのスタイリストやヘアメイクアップアーティストたちが放つ、独特の緊張感とコスメの匂いに満ちていた。

 手際よく進められるメイクと着付け。白い白粉が肌に刷かれ、眉が整えられ、白銀の髪が美しくセットされていく。

 小一時間後――鏡の中に立っていたのは、日常の『黒川あかね』ではなかった。

 白銀の髪に、気高く高貴なマロ眉。激しいアクションの妨げにならないよう綿密に計算された特注の和装を身に纏い、美しくも儚い姫君――『鞘姫』がそこに降臨していた。

 あかねは姿見に映る自分を見つめ、思わず息をのんだ。

 役者として演技で別人になりきる快感も素晴らしいが、こうしてプロの手によって視覚的に完璧な別人へと変貌を遂げる瞬間もまた、代えがたい感動がある。

 ふと隣の面鏡に視線をやると、そこには天真爛漫な戦闘狂『つるぎ』へと生まれ変わったかなの姿があった。

 ショートパンツから伸びる健康的な脚と、凛とした表情。

(……っ! かなちゃん、めちゃくちゃ可愛い……!! 本物の『つるぎ』が画面から飛び出してきたみたい……! あぁ、カメラで連写したい……っ!)

 隠れ「有馬かなオタク」であるあかねの内心は一瞬で限界突破しかけたが、プロとしての理性を総動員してどうにかポーカーフェイスを維持した。

「……なによ? なんか文句でもあんの?」

 じっと見つめられていることに気づいたかなが、恥ずかしさを誤魔化すように眉をひそめて睨んでくる。

「えっと……その、『つるぎ』にソックリだなって思って」

「そりゃあね、プロのメイクさんと衣装さんの仕事なんだから当たり前でしょ。……アンタだって、ちゃんと完璧に『鞘姫』になってるわよ」

「あ……ありがとう、かなちゃん」

 素直な褒め言葉に、あかねは嬉しそうに微笑んだ。『波旬』――ハルトという強大な存在と対決するシチュエーションが、あかねとかなに不思議な連帯感をもたらしていた。

 

 メイク室を出て、待機場所である稽古場へと戻る二人。

 すでに撮影準備を終えたアクアとメルトが、それぞれの衣装姿で壁際に佇んでいた。漆黒の衣装を纏った『刀鬼』のアクアと、ワイルドな大剣を背負った『キザミ』のメルト。さらには、主人公『ブレイド』の衣装を着こなした姫川の姿も遠くに見える。

「あれ、ハルトはまだ来てないのね。『波旬』がどんな姿になるか、見てみたかったんだけど」

「なんだ有馬、お前元ネタの劇場版でのキャラデザ見てないのか?」

 アクアが腕を組みながら問いかける。

「見たわよ! 見たけど、あのハルトが実際に扮したらどうなるか興味あるじゃない」

「……確かに」

 アクアが深く頷き、メルトもワクワクしたように目を輝かせた。

「ハルトのことだからなぁ……絶対にすっげー威圧感あるんだろうな。楽しみだわ」

 あかねも心の中で強く同意した。

 自分たち初期からのキャストは、九月頃に既に衣装を与えられ、十月発売の雑誌インタビュー用スチルや衣装合わせなどで互いの姿をそれなりに見慣れている。だが、急遽キャスティングされたハルトの『波旬』衣装は、今日が完全な初出しなのだ。ハルトの登場が遅れているのも、細部の着付けや特殊メイクに時間を要しているからに違いなかった。

 稽古場内のざわめきが、次第に大きくなっていく。

 その時――。

「――諸君、待たせたね」

 雑音を微塵も残さず切り裂く、低く澄んだ重厚な声が響き渡った。

 ギィ……と重い音を立てて防音扉が開く。

 そこに現れた異形にして絶対の存在に、稽古場にいた全員の呼吸が止まった。

 筋肉質な首元が大きく開いた、漆黒の長袖インナー。その上から羽織られたのは、ハイネック構造の漆黒のロングコート。腰元は血のように鮮烈な紅の帯と腰布で固く引き締められている。

 左腰には、重厚な鞘に収められた打刀『他化自在天』のプロップが不気味に収まり、下半身は動きやすさと威厳を兼ね備えた黒の馬乗り袴と、白のブーツを合わせた異色のスタイル。

 アッシュグレイの髪は真っ白な骨のような色のウィッグを装着し、オールバックに流されている。

 そして何より圧巻なのは、その顔立ちだった。

 太陽のように眩しかった山吹色の瞳は、妖しく光る黄金色の縦長瞳孔を持つカラーコンタクトへと変更され、健康的だった肌色はメイクによって病的なまでに青白く整えられている。

 そこにいたのは、普段の快活で気さくな『日野ハルト』ではない。

 作中において絶対的な絶望として君臨する第六天魔王――『波旬』そのものだった。

「……」

 アクアが絶句し、言葉を失う。

「え……やば……っ」

 かなが息をのんで呟く。

「すっげぇ……マジかよ……本物じゃん……」

 メルトが圧倒されて目を丸くした。

 全キャスト、全スタッフの視線を一身に集めながら、『波旬』は重厚で足音すら殺した歩調でゆったりと歩み寄ってくる。

 あまりの完成度と溢れ出る色気に呆然と立ち尽くしていたあかねの前に立つと、『波旬』はすっと細く美しい指を伸ばし、あかねの顎に添えてくいっと持ち上げた。指先の黒いマニキュアとそこに描かれた朱の梵字が目を惹く。

 いわゆる、顎クイの体勢だ。

 視線が至近距離で交差する。メイクの上からでもはっきりと分かるほど、あかねの頬が赤くのぼせ上がっていくのが自分でも分かった。

「……綺麗だよ、あかね」

 艶めかしく、鼓膜を直接揺らすような『波旬』の声色で、ハルトが甘く愛を囁く。

「は……はわっ……はわわわっ……!?」

 あまりの破壊力に、あかねは知性を完璧に破壊され、小動物のような情けない悲鳴をあげてパニックに陥った。

「アンタ、悪趣味でしょ!!」

 横からかながたまらずツッコミを入れると、ハルトは一瞬で憑き物が落ちたように素の表情へと戻り、悪びれもせずにのたまった。

「えーっ? 本当のこと言っただけじゃんね。あかねー、どうよ俺の格好? 似合ってる?」

 パニックからどうにか正気を取り戻した――あるいは混乱したままのあかねは、赤くなった顔を両手で覆いながら素直な感想を口にした。

「かっこいいよ……ハルトくん……っ! すごくかっこいい……!」

「だろー?」

「衣装でメロつくな! 現場でイチャつくな! こっちの頭がバグるでしょうが!!」

目の前で堂々と惚気られ、かながブチ切れて叫ぶ。

「バカップル……」

「だなぁ……」

 あきれ果てた顔でアクアとメルトが顔を見合わせるのだった。

 

 ☆ ★ ☆

 

 怒濤のようなスチル撮影とティザームービーの撮影が続き、正午を過ぎた頃。

 一時間の短い休憩時間が与えられた。

 本番用の一点物である高価な衣装を着ているため、キャスト陣は軽易に食事を摂ることができず、朝から水分補給程度で撮影をこなし続けていた。

 通路の長ベンチに腰掛け、ハルトは深く息を吐いていた。

「今、いいか。日野」

 『ブレイド』の衣装を纏った姫川が、缶コーヒーを手にハルトの元へと歩み寄ってきた。

「姫川さん」

「隣、失礼するぞ」

 姫川がハルトの隣に腰を下ろす。

「少し、相談があってな」

「相談? 殺陣の立ち回りについてですか?」

「ああ、いや……どちらかと言えば、脚本についてだ」

「脚本……?」

 意図が読めず、ハルトは縦長瞳孔のコンタクト越しに首をひねった。姫川は缶コーヒーの口を開けずに弄りながら、静かに語り始める。

「……星野の奴、見違えたな。稽古が始まった当初と比べて、雲泥の差だ」

「ええ、そうですね。まだ少し心配なシーンもありますけど、それもあかねの仕上がり次第でどうにでもなりそうです」

「……? 何か裏に事情がありそうだが。……で、その黒川の方はどうなんだ?」

「何か一つキッカケがあれば覚醒する、って感じですかね。本人も手応えを感じてるみたいですし……俺に対しても、普通に接してくれるようになりましたよ」

「惚気か?」

「ははは、まあ、そっすね」

 ハルトが照れくさそうに笑う。姫川はふっと口元を緩めた後、真剣な目つきへと戻った。

「相談というのは、クライマックスの『ブレイド』……つまり俺と、お前演じる『波旬』の一騎打ちについてなんだ。改訂後のホンを読み返した時、どうにもあのラストシーンが冗長に思えてな」

「……やっぱり、姫川さんもそう思いました?」

 ハルトの目が鋭くなる。 

「ラストバトルとは言え、殺陣に尺を取りすぎなんですよね。それに、これまで作中を通して圧倒されっぱなしだった『ブレイド』が、土壇場で単騎で『波旬』を打ち破るっていうのは……いくら〝絆〟や〝愛〟というファクターがあったとしても、劇中の描写からして少々無理がある」

「ああ。おそらく元の鮫島先生あるいはGOA氏の構想では、『ブレイド』と『刀鬼』の二人がかりで共闘して戦うシナリオだったはずだ。じゃないと、サブプロットである『刀鬼』の成長と復讐のストーリーが綺麗に締まらない」

「『鞘姫』を救ったとは言え、『刀鬼』は『波旬』に負けっぱなしのまま終わっちゃいますからね。二人掛かりの共闘案から一騎打ちに変更された理由は……新人のアクアに、クライマックスの大殺陣を任せるのは荷が重いって判断されたからでしょう」

「多分な。……だが、今の星野ならイケるだろう?」

「それはもう。完璧に演じ切ると思いますよ」

 ハルトは確信を込めて頷いた。そして、探るような視線を姫川に向けた。

「……でも、それだけが提案の理由じゃないでしょ、姫川さん」

「……ハハ、バレたか」

 姫川は参ったように苦笑し、自嘲気味に肩をすくめた。

「……情けないことだとは思うがな。正直、今の仕上がりの『日野ハルト』とサシで殺陣をやって、食われない自信が俺にはない。舞台の上で完敗する未来が見えるんだよ。だから……星野の奴を巻き込んで、二人掛かりで引きずり降ろしてやろうと思ってな」

 姫川がニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 冗談めかした言い方ではあったが、その根底には、作品をより最高の完成度へと高めたいという、劇団ララライの看板役者としての圧倒的なプライドと執念が宿っていた。

「人が悪いなぁ、姫川さんは。……でも、最高の提案です」

 ハルトの顔に、楽しげな笑みが浮かんだ。

「分かりました。金田一さんやGOAさん、アビ子先生に俺からも掛け合ってみます。先生たちの手元に原案の脚本があるかもしれませんし、殺陣の構成は二人がかりの共闘用に組み直しましょう」

「ああ、頼む。演出効果班には俺から言っておく」

「殺陣付けの時間がもうないですから、後半部分は俺ら三人で即興で合わせる感じになりますね」

「まあ、お前と星野と俺なら何とかなるだろ」

「ええ。いやぁ……なんか一気に面白くなってきましたね。アクアにも早く教えてやらないとな」

 冬の冷たい空気が流れる通路で、二人の天才役者は不敵に笑い合い、さらなる高みへと向けた視線を交わし合うのだった。

 





 Geminiくんちゃんで遊んでて個人的におもろいなってなったのがこの話。

 以外がプロンプトというか元のあらすじ。
「つまり、えーっと、その、ね?」
 あかねは具体的な説明をしづらそうに言葉を濁す。少し考えたかなはようやく合点が行って顔を顰めた。
「あー……何となくわかったわ。うっわ、言われてみたら確かに女としては嫌よね」 
 で、出来上がったのが本文の通り。
 前後の文脈から意味を拾ってちゃんと説明してるのが偉いなと思いました(小並)

用語集や人物紹介の類いがほしい?参考までに

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