出来たので更新です。
左腕は輸血に繋がっていて、衣服も症衣になってる。
「はぁ……」
しくじった……としか言えないな。
騎士王様の宝具を投影して相殺の方がよかったかもしれないと今だから思ってしまう。
とりあえず腕に刺されている、点滴と輸血の針を強引に引き抜こうとすると、
プシューッと扉の開く音が聞こえた。
まさかと思って視線を扉の方へ向ければ、赤いシャツを着たゴリラ……っと違う。
ほぼ人類超越者、現代に生きる現代英霊級の司令官様が入ってきた。
「起きたみたいだな」
「おかげさまでって言ったほうがいいかしら?」
「大丈夫だ。それと俺は――」
「特異災害機動対策二課の司令を務めている風鳴弦十郎でしょ?」
「……あぁ、その通りだ。こちらのことは事前に把握済みか」
「あなた達のお得意な、人様のプライベート情報根こそぎ抜き取って調べるのと比べたら大したことないわ」
ほんと、政府的な人たちでもあるけど勝手に調べた挙句それを本人の前で平然と暴露するのはいろいろと最悪だ。
まぁこっちの場合、事情は少々あれだけど手に入れてるものがあればきっと出してくるはずだ。
「んで? お偉いさんがこんな見た感じただの病院とか関連施設とかじゃなく直接自分たちのお庭、本部の医療場に連れ込んでどうするつもり? おまけに拘束とかもしないなんて」
「無理矢理なことはしない。まずは君のことを聞く……要するに話をしようと思ってな」
パイプ椅子を傍に置いてドガッと座った。
「最初に、ここに無理やり連れ込んでしまいすまない」
「政府側からしたらそれが当たり前でしょ。保護と書いて頭文字は『ほかく』『ほりょ』『らち』『かくほ』etc……いっぱいあるんだから」
「……それほどまでに、君は我々を警戒しているということだろ?」
半分正解の半分不正解。
本当の敵が内側に潜んでいたり、既に毒が効き目の遅い遅延性のもののようになってるってことぐらいだ。実際無印とXVでは信頼していた、もしくは繋がりのあった者たちが黒幕とか騒動の元凶だって展開だし。
「どうか信じて欲しいとは言わない。だが俺は君を助けたいと思っている。それが――」
「――大人の務めって? 笑えるわね」
わざとっぽく、そして嫌味っぽく悪笑いを浮かべながら見るけど、弦十郎は怯まなかった。
「それもある。そして支えるべき子供を信じるのもまた大人として大事なことだ」
そう言いながら弦十郎は許可の確認も取らず、遠慮もせずに自然と手を伸ばして私の頭に手を乗せて撫でてきた。
「――女性の身体に勝手に触れるのは年齢関係なくセクハラよ?」
「だが君は大人を信頼していない。これは俺なりの――」
「言っておくけどね、私こう見えて20歳超えてるわよ。肉体成長が止まった訳アリの人種とでも思ってくれればいいけど、そういうの気にしてる人は意外といるのよ? それと私は訴えることが出来るよ。セクハラという理由で」
そういえば弦十郎はすぐに私の頭から手を放した。
当たり前のようにしてるけど、普通に考えてセクハラなのに変わりない。
ましてや知り合ったばかりの相手を握手とかならまだしも頭を撫でるなんてことあるの普通?
「――流石にそればかりは同情するわね。弦十郎君遠慮なく触ったりしてくるから」
「ご、誤解を招く言い方をしないでくれ了子君……」
「でも実際に今やってたじゃない」
「いやこれはだな……」
いつの間にか弦十郎の後ろに白衣を羽織った眼鏡の女性…櫻井了子が立っていた。
「ハァ~イ! 初めましてね、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンちゃん! 長いからイリヤちゃんって呼ぶわね」
「好きにしなさい。最も、大半はイリヤって呼んでたからそれでいいけど。んで? あの現場にもいた科学者様も来たってことは、大方私の力と聖遺物についてでしょ?」
「もちのろん! あなたにはた~っぷりと聞き出したいわね」
「了子君、まだ彼女の信頼を得ていないんだ。イリヤスフィール君も、今は話せることだけでいいが、それでも話せることはすべて話してくれるとありがたい」
それって信頼を得て言って全てを聞き出そうとしてるって言ってるようなものじゃん。
まぁこの先いろいろと関係を持っていくわけだけど……フィーネがいるからな~……。
「……条件を呑んでくれるなら話すわ」
「無論こちらも無条件に話してほしいとは思っていない」
「そう。なら一つ目。このことは他言無用。あなたたちの最も信頼する人、あなたたちよりも上の立場の人たち。そして装者たちに話さないこと」
指を一本立てて一つ目の条件を言う。
そして二本目を立てて二つ目。
「二つ目。この話を終えたら私を釈放すること。そちらの支給する端末とかも渡さない。私の衣服に忍ばせない。忍者並みの尾行や監視をできる人を付けない」
三本目を立てて三つ目。
「三つ目。櫻井了子を今すぐここから離脱させて。部屋の外でそっと聞くのもなし。そうね…彼女の個室かオペレーター的場所にでも移動させてからにしましょう」
計三本を弦十郎に突き付けながらハッキリ言う。
「この三つを呑まないのなら私は話さないし、強行突破でここを抜け出す」
三つの条件を言ってハッキリと弦十郎を見る。
弦十郎は少し困惑しながらも悩み、了子は表情には出てないものの、私を睨んでいた。
「……一つだけ聞きたい。なぜ了子君はダメなんだ?」
「科学者ってのは研究とか調べのために共有をするものよ。私の力を直接見られたとしても、その正体を知る資格はない。何よりこういうのは一番偉い人が一人で対応するべき事案よ。信頼できるから傍に置いている? こっちからしたら警戒マックスって捉えられる」
なにより――と言葉を続ける。
「私の直感が、彼女には聞かせるなって告げてきてる」
本当だったら盗聴器や監視カメラ類も言いたいけど、そこまでの要求まで呑んでくれる可能性は…あるんだろうけど後々に面倒ごとになるのも嫌だしやめておく。
「これを呑んでくれないなら私は話さないし速攻ここを抜け出すけど、あなたはどうする? 付き合いの長い仲間を取るか、今目の前で得られる情報を取るか」
またまたニヤつきながら見据える。
弦十郎はしばらく悩んだ末、了子へ振り向いた。
「すまない了子君」
「えぇ~本当にダメなの~?」
「話の内容で共有できるものだけ彼女から許可をもらって共有はするつもりさ」
「も~しょうがないわね~……共有できそうな部分だけ聞かせて頂戴ね?」
「あぁ」
そう言って櫻井了子基フィーネは部屋を後にした。
後で共有してって……100%盗聴してるだろうに。
んで、櫻井了子は消えたわけて、弦十郎がこっちに向いた。
「これで二人だ。話してくれるか?」
「櫻井了子の条件は吞んだとして、他二つは?」
「もちろん呑むさ。ただできれば、我々が連絡等で使用している通信機は持っててくれないか? 一応金も振り込むから移動の際や食事、自販機等で役立つ代物だぞ」
「呑まないってことね? よしじゃあこことはおさらば――」
「待て待て待て! そう早まるな!!」
何その自殺するところを止めるような言い方は……。
「わかった。全てを呑む。だからこそ了子君も」
「その行動の意味を無くそうとした本人が偉そうに言わないで」
「……すまない」
珍しく圧されてるなこのゴリラ。
まぁちょっとした魔術で圧力を上げてるんだけど。
さてと、そろそろ話そうか。
「さて……あなたの主な目的はこれでしょ?」
干将を投影し、自身の手に生み出す。
弦十郎はすぐにそうだと言った。
「君のその聖遺物をどこからともかく取り出す力。それも破損した物すら元通りに、何事もなかったように再び手にし戦える力はどういったものなんだ」
「それを知らない人に説明するのは結構大変なんだけどな~……」
とりあえず、話せる範囲で話しておこう。
※ ※ ※
「ん、ん~ッ!!!」
シャバの空気は美味しいぜェ!!
って感じで無事トッキブツの本拠地から釈放されて、私は身体を伸びーっとしていた。
完全な解放!!うん、実にいい!!約束通り監視も盗聴器も発信機等諸々付けられてない!!
ゴリラでもわかるよう、私なりに説明はしたけど……いやまぁあのゴリラはアレで司令を務めてるから知能も高い。
けど巫女が私の話を聞いてないわけがない。
絶対、100%、盗み聞きしている。
まぁ最も、トッキブツも衛星とかで監視してる可能性はある。
何しろあれほどの勢力なんだ。
普通にあり得るけど……まぁ、ないか。
さぁて、あとは仮拠点に帰ってからいろいろと準備しないとだね。
「……ふっ」
チラッと、後方の、ごく普通に取り付けられている防犯カメラへ視線を向ける。
そのカメラのレンズは私へ真っすぐ向いていて、ズームでもするように中が動いているのが丸わかりだ。だからこそ、チラッと見て舐めるように笑みを浮かべながら、前へと視線を戻してその場を去った。
※ ※ ※
その日の夜、二課本部の検査室。
暗い施設でそこだけが照らされている。
そこに一人、櫻井了子が険しい表情を露にしながらコーヒーを飲んでいた。
「魔術師の世界では一般的な情報だけ開示……大抵は私も知る事ばかりか。チッ、こっちが秘かに盗み聞きしているのにやはり気づいていたか」
まとめられ、秘かに運んできたであろう報告等の書類も、イリヤが弦十郎に伝えたことだけ。
そのほとんど、全てとも言える情報が、彼女も知り得る情報ばかり。
故に苛立ちを露にしていた。
「明らかに弦十郎ではなく私に警戒していた。アインツベルンの魔術師なだけはあるか。しかし大半がホムンクルスである以上、奴もホムンクルスのはず……末裔と呼ぶほど昔に滅んだはずの奴が何故生きているのだ?」
コーヒーを置き、一枚の紙を手にする。
それは写真であり、写真にはイリヤの姿があった。
「アインツベルンは投影魔術を使うような奴らとは思えない。奴だけが違うのか? そもそもどうやって今も生き続けている? 何よりどうやってこちらの動きや情報を得ているのだ?」
イリヤはイリヤであってイリヤではない。
それを知らない了子はただただ疑問を抱き続けるだけ。
「異分子…というべきか。奴のせいで計画は面倒なことになりつつある。だがデュランダルは依然としてこちらの手にあるのだ。奴もいずれ始末することに変わりない」
了子は写真を破り捨て、コーヒーカップを再度手に取り検査室の証明を消して出る。
「……容易に越したことはないというべきだな。奴の対策も考えておこう」
彼女の瞳は一瞬、黄金に変異していた。
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