転生したら、一夏ちゃんと山内がいた 作:チャコールグレード
あたしは
キュートでチャーミングな試験管生まれのJKだよ! 遊び心で作られたあたしは、物心ついた時にはホワイトルームっていう虐待施設にいたの。
来る日も来る日も他の子供と競争させられて、あたし頑張った。生まれ持った才能があったこともあって、ソコソコ高い能力をゲットできた。ゲットしたからにはガンガン本領発揮していきたいです。へへ。
今、あたしは白い場所にいる。
なんでここにいるのかは不明だ。あたしはホワイトルームを出た後、高度育成高等学校に入って楽しく過ごしてたはずなのに。目が覚めたら真っ白な場所にいた。ホワイトルームではない。はじめは心臓発作かなにかで死んだのかと思ったけど、どうやらそういうわけでないようで。
「ふむふむ。やっぱり入学後に戻るのは無理かぁ。
でっかい端末をパチパチパチ。
この空間にある唯一の物だ。画面に映っているのは読めない記号がほとんどで、読み取ることができる部分にはこのように書かれている。
──開始地点を選択できます。
これだけだと意味不明だから順を追って説明すると、まず、あたしは過去に戻れるんだってさ。原理はわかんないけどそう書いてる。
高校の入学前からリスタートできるから、日時を指定すればいいみたい。誰もそんなこと頼んでないんだけど、直前までいた時間に戻るのは無理なんだって。
迷惑だなぁ。このガラクタ、ぶっ壊しちゃうぞ?
「ずっと迷ってても話が進まないから、そろそろ選択しよ〜。はぁ、またホワイトルームに戻らなきゃいけないのかぁ」
歴史が変わって高校行けなくなったりしないよね?
もしそうなったら暴れよーっと。みんな殺してあたしも死ねばいいや。皆殺しは無理でも何人かは殺れるでしょ。あいつらだいたい嫌いだから、それくらいの憂さ晴らしはしないとね☆
「っと、次の選択。仲間を選んでください……どういうことだろ? 飼い犬をくれるってことかな?」
仲間を選べ。
画面にはそう書いてある。もしかして、今回は相棒が貰えるって感じ? わぁ嬉しい。それじゃ、最強の天才であたしのことを崇拝してて、あたしの言うことならなんでも実行出来るさいきょーの相棒を
『了解しました。同行者に山内
「は?」
なんか、冴えない男子の顔が出てきた。
なんか、サムズアップしてる。ムカつくんだけどこいつの顔、なんなの?
てか山内って、もしかしてあたしが入学する前に退学になったっていう、あの山内? あたし調べによれば知能が低くて卑怯者で往生際が悪くて、嘘ばっかりついてるっていうあの山内?
フ ザ ケ ン ナ☆
なんで一夏ちゃんがそんなのとタッグ組まなきゃいけないの。
『確定します』
「あっはっはっ。わかった。ぶっ壊すね〜」
パソコンみたいな機械をもちあげてー、どかん!
もちあげてー、どかん! おらおらさっさと取り消すんだよー! さもないと粉々になるまで床に叩きつけてやるから
『ギギ……パートナーを変更しまジュ』
「おっ、えらいえらい!」
『ヤマウチヲ、同行者に……ギギ、ヘンコ』
「変更しなくていいから消去してね〜」
あたしは端末を蹴っ飛ばした。
すると、目の前が光でいっぱいになった……!
□
「すげえ! 俺、人生やり直せるのか! ありがとう一夏ちゃん! 女神かよ! 女神だよ! これで俺は最強だ!」
あたしは無視した。
光が消えたら山内が出てきて、一応、説明したらテンション上がりまくって今ココ。
なんだろー、スッゴク褒められてるけど嬉しくなーい。一夏ちゃんはお前の女神にはなりませーん。
「ところでお兄さん、いきなり変なところに出てきて大丈夫ですか?」
「大丈夫ではないね。これなに? 君達は誰なの」
仲良くするなら、まだコッチの方がマシだ。
あたしは知らない人に話しかけた。
山内と一緒に出てきた、見た目は少し年上くらいのお兄さんだ。山内を拒否したせいで、このお兄さんが仲間にされちゃったみたいだね。しらないひとだ。
「あたしは
「こうどいくせ……えっ、何。凄い名前の高校みたいだけど、俺がそこに入るの? なんで?」
お兄さんはうろたえている。
そりゃそうだよね。いきなり呼ばれたんだから当然の反応だと思う。ではでは。一夏ちゃんは優しいから、ちゃんと丁寧に説明するよ。
ってなわけで、あたしは情報を共有した。
ホワイトルームとかそういうのは抜きにして、ここはよくわんない場所で、なんであたしたちが呼ばれたのかもわかんない。でも、高校に入学してなんかよくわからないけど頑張らなきゃいけないみたい──ってな感じでザックリ。要点はちゃんと伝えたよ。
「なるほど……異世界転生ってやつか? あー、もしかして俺は死んだのか? 過労かな……はぁ」
「えっ、おにいさんは社会人だったの? 見た目はあたしより少し上くらいだよね?」
「いや高校一年生」
「タメじゃん。高校生なのに過労とかカワイソー」
苦労してたんだなぁ。あんまり興味ないけど今回は頑張って生きるんだよ。
お兄さんの名前は
呼び方はそのうち決めよう。当面の間は苗字でいいや。
「なぁ、もしかして俺ハブられてる? 疎外感を感じるんだけど……そんなことないよな? へへ」
「そんなことないよ。よろしく山内君。よくわからかいことになっちゃったけど、そっちは経験者なんだよね? 頼りにするからよろしく」
雨宮くんは山内に友好的だ。
あたしも必要最低限の会話はしないとな〜。
うんそうだね。そうしよう。実はいいところがあるかもしれないし、情報だけ見て全てを判断するのは可哀想だ。あたしってすごく心が広いなぁ。
「おう! 大船に乗ろうぜ!」
「船? その高度育成高等学校って、世界観ファンタジーなの?」
会話、噛み合ってないなぁ。
雨宮くん、本当に船に乗ると思ってるよ。もしかして天然? あたまわるい? あたし、全く頼りにならない人達に囲まれる感じ? なにそれやだー。
「ぶはっ、なんだよファンタジーって! 安心して俺についてこいってことだよ!」
「……あー、そういう。ファンタジーじゃないのか……はぁ。オッケー。よろしく」
雨宮くんの元気度があからさまに下がった。
転生するならファンタジーが良かったのか。でも元気だして欲しいな。あの学校も非日常であることに変わりはないから。
「そんじゃ、頑張っていこうぜ! 俺達で天下を取って、最っ高の高校にしてやるんだ! ヒャッホー! 奇跡、サイコォ! フォーーーッ!」
「山内君、声がでかい。おい山内」
うるっっせえ。
人生逆転のチャンスが来てめちゃくちゃ嬉しいのはわかるけど、うるっっせえ。
そしてあたしは見逃さなかったよ雨宮くん。
今、ブラックが顔を出したね? ヘラヘラしてるだけの人ではないってわかって、一夏ちゃんの好感度が0.01ポイント上がったよ。最大値は100ね。
「さあ冒険に出発だ! 待ってろよ坂柳! 俺を裏切ったDクラスのクソども! 目にもの見せてやるからな! ははははは!」
山内の高笑いが始まった直後、あたし達は白い光に包まれた……!
景色は綺麗だったけど、うるっっせえ。
途中で捨てていくことできないかな、コイツ。
□
俺は山内
高校生活の途中でメスガキに嵌められ、クラスメイト達には裏切られた可哀想な男だ。
おかげで退学になってしまい、家に帰ってからはずっと辛い思いをしていた。あんなに頑張ってたのに、なんで俺がこんなことに。ふざけんなって枕を濡らす日々が続いていたんだが、やっぱり神様は見てくれてるもんなんだな。
「俺は最強のアドバンテージを手に入れた! こうなったら俺がクラスを引っ張ってやるぜ! 見てろよ、綾小路、堀北! いいや、全員だ! 全員に目にもの見せてやる! はははは!」
今の俺には見えている。
そう、輝かしいサクセスストーリーが!
□
俺は
朝まで女性をちやほやしていたら、いつの間にか変な空間に飛ばされていた。たぶん死んだんだろう。
こんなことになるなら、無理して飲酒とかしなければよかったな。きっと脳卒中だ。最近、頭痛かったし。
「えっ、ホスト? ホストやってたの?」
「家がホストだったから」
「ごめん意味わかんないんだけど、こっち来れてよかったじゃん。もう働かなくていいし」
「良くはないよね。死んでるんだから」
そして訪れた新たな出会い。
天沢一夏と山内春樹という、この世界の住人達。状況はやや複雑で、俺は転移。二人はループ。夢でも見ているみたいな気持ちだ。
まだ現実味がないけど、ここからは新たな人生ということになる。異世界転生ってやつが本当にあるなんて思わなかったけど、こうなったら信じるしかないな。
「ところで山内どこいった?」
「知らなーい。一夏ちゃんは興味なーい」
さて、光から飛び出したらバスの中だった。
どうやら高度育成高等学校とやらに向かっているようだ。カバンの中には説明書きが入っていて、内容は以下の通り。
『状況
飛び級で入学
配属
Dクラス』
なんと、飛び級で入学する流れのようだ。俺、定期テストで一位とか取ったことないけど大丈夫?
天沢さん……一夏ちゃんはかなり頭良いみたいだけど、俺はそこまでじゃないぞ。高校の範囲は多少はわかるけど、不安だ。落ちこぼれにならなきゃいいなぁ……。
「まさか、途中で消滅したとか……?」
「願ったり叶ったりだねっ」
「ひどすぎるだろ。山内をなんだと思ってるんだ」
かくして、俺の第二の人生の幕が上がった。
山内は消えた。